時間停止で異世界ファンタジー
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第四話
あたりの光が止み、目の前に広がっていたのは予想外の光景だった。
「だ、誰だ、貴様。ブヒッ」
「……ごめんなさい……やめて下さい……許して下さい……」
街とかから始まると思っていたんだけど、違ったみたいだ。それもそうだ。これはゲームじゃないし。
「お、おい!誰だ貴様ァ!」
周辺を観察してみると此処は洞窟のようだ。そこそこに広い空間だな。
明かりとしては松明が4本ほど壁際にバランスよく配置されている。
「貴様ァ、聞いているのか!」
で、さっきから大きい声で怒鳴ってる男だけどって、うわ
「でかい豚が二足歩行で緑色」
「ブヒッ豚ではない!オークのデーブ様だ!」
「デブ?」
「デーブだ!」
身体は僕より圧倒的に大きい。
僕の身長が170cm前後だからこのデブとかいうやつは少なくとも2mはある。
それに手に持ってる棍棒のような物。あれ凄いやばそうだな。普通に怖い。
「貴様、突然俺のアジトに現れやがって。何もんだ」
「三鳩三戸」
「ミハ……トミ……わけわかんねえが、とりあえずてめえは俺をイラつかせやがったからな。ぶち殺し確定だ。フガッ」
え、僕まだ転生して5分も経ってないんだけど。
「良いところを邪魔しやがってクソガキが」
「良いところ?」
「あぁそうさ、この女を、今犯してる最中なんだわブヒヒヒ」
そうしてデブは、足元にいた女の人の頭を手で捕み僕の方に向けた。
くすんだ長い金髪に整った顔立ち。とても美人。上着がざっくり破かれたような赤い服。とても巨乳。彼女の目は虚ろで涙を湛えている。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「どうだ?上玉だろう?」
「そうですね。美人ですね」
素直にそう思う。
「そうだ。そんな美人を楽しんでる時に突然目の前にクソガキが来たら萎えるだろう?」
僕は童貞なので分からないが、デブが棍棒を持つ手に力を入れたのは分かった。
「だからお前処刑な。ブヒッ」
「え」
バッと思いの外速い。
巨体は一瞬の間に、僕の目の前にあった。
これホントに死ぬっ!
後ろに飛ぼうとするが時すでに遅い。
デブの棍棒は僕の側頭部を目指し振られていた。どうすればいい?死ぬのか?まぁでも仕方ないのかな。避けるとか無理っぽいし。死んだらまたナーシャさんにも会えるかもだし。
そんな事を思ってデブから目を逸らした先には涙する金髪おっぱい。
くそ。
「ブヒヒヒヒ!」
くそ。
「ブヒッヒヒヒフガッ!」
どうする。
「フガッフガッフガッフガッ」
止まれよこの豚。
「ブヒッヒッヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!死ねええええええ!」
あーもう。
「止まれ!」
やけくそだった。
そして世界は止まった。
「たすか、った?」
言うなれば白黒写真のような世界になっていた。僕が叫んだ瞬間、棍棒を振り僕を殺そうとしているデブの動きも松明の火の揺らぎも辺りに漂っていた埃すら時間を止めていた。
「これが、時間停止か」
詳しい発動条件はよく分からなかったけど、「止まれ」と言った時言葉に表しづらい妙な違和感を身体に感じた。つま先から上の方に静電気が走るみたいなそんな感じの。まぁ、よくわからない。
「でも、凄いなこれ。ホントに止まってる」
目の前のデブの身体をペタペタ触ってみる。
そこそこにゴツい。
後ろに回ってみるとさらに大きく感じるデブの背中。
「思いっきり緑色の肌なんだ。まさにファンタジーって感じ」
ひとしきりデブをペタペタしたので、今度は近くにいた金髪おっぱいを見た。
名前とか人となりとか全然知らないけど、美人はやっぱり大切に扱わなきゃだ。そうだよね、太郎。
僕は項垂れた彼女を抱き上げてデブから離した。壁際に寄りかからせる。多分聞こえてないだろうけど、僕は彼女の両肩に手を置いてその目を見た。
「僕、頑張って貴方を助けますね。貴方みたいな人が豚に犯されてるのは個人的に需要ないので」
あと早く危機から脱して眠たいので。
「じゃあ休んでて下さい」
彼女の目から溢れそうで止まった涙を指で落として
「三鳩三戸、いきまーす」
尻ポケットからナイフとフォークを取り出した。
後書き
誤字などありましたら、感想にお願いいたします。
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