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ウスニイ=ハブチャール

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第二章

「ゲルで寝起きしてな」
「移動しながらな」
「それがいい」
「モンゴル人にはな」
「文明とか言うけれどな」
 街そして村にあるそうしたものはというと。
「いいかも知れないがな」
「草原でこうして暮らすこともか」
「いいだろ、だからな」
「俺がこれからこうした生活してもか」
「いいだろ」
 また言うのだった。
「こうしてな」
「そうか、じゃあこうして暮らしていくな」
「御前のしたいようにしろ。それでな」
「それで?」
「御前もいい歳だな」
 ジェベは今度はジュチにこうしたことを言って来た、自分と同じく馬の乳を入れたお茶を飲んでいる彼に対して。
「だからな」
「結婚かい?」
「そうしたらどうだ」
「そうだな、言われてみればな」
 ジュチ本人もだ、祖父に言われて考える顔になって答えた。
「俺もそんな歳だな」
「もう二十五だな」
「ああ、そうだよ」
 その通りあとだ、ジェベも答えた。
「もうな」
「ならもうだ」
「結婚してもか」
「いいだろ」
「そうか、じゃあな」
「相手いるのかよ」
「見付けてやる」
 これが祖父の返事だった。
「わしに任せろ」
「結婚相手探してくれるのかよ、祖父ちゃんが」
「それもわしの仕事じゃ」
 家の高齢者のというのだ。
「あてもあるしな」
「可愛くてしっかりした娘がいいな」 
 ジュチは真顔でだ、祖父に妻にしたい女性のタイプを言った。
「草原で暮らしていけるな」
「わかった、そうした娘を見付けてくる」
「俺もしっかりしないといけないけれどな」
「自分のことは安心しろ」
 ジュチ自身のことはというのだ。
「御前は草原で生まれ育ってきただけにな」
「だからか」
「しっかりしている」
 こと草原のことについてはというのだ。
「だから問題ない」
「夫婦で暮らすにはか」
「ああ、街ではどうか知らんがな」
 草原ではというのだ。
「大丈夫だ」
「なら結婚してもか」
「いける、ただな」
「ただ?」
「最近どうも変わった」
 lここでこうも言ったジェベだった。
「女を殴ったりしたらな」
「ああ、何か言ってるな」
 草原で出会う同じモンゴル人達がだ、草原の中でも出会いがありその時に話すことがまましにしてあるのだ。
「そこが変わったってな」
「ああ、そうしたら駄目だ」
「まあ俺もな」
「そういうことはだな」
「自分より力が弱い相手にそんなことをしてもな」
 家畜の躾はともかくとしてだ。
「男の価値を下げるだけだろ」
「そういう考えだな、御前も」
「ああ、強い奴と喧嘩してもな」
 それでもというのだ。 
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