FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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怨みは夜の帳に包まれて
地面に仰向けに倒れるユキノさん。
絶句する会場にいる人たち。
かつらが飛ぶチャパティさんと帽子が飛ぶヤジマさん。さらにはひっくり返っているジェイソンさん。
『し・・・試合終了・・・』
チャパティさんがやっとの思いで終了のアナウンスをコールすると、それと同時に終了のゴングが鳴り響く。
『勝ったのは人魚の踵、カグラ・ミカヅチ!!』
さっきまで静まり返っていたのがウソのように大歓声に包まれるドムス・フラウ。
カグラさんはユキノさんに一瞥することもなくその場から離れていく。
「さすがカグラちゃん」
「やったー!!」
「勝った勝った!!」
「カグラなめちゃいけないの!!」
「あの星霊魔導士も大したもんだけど相手が悪かったね」
カグラさんが勝ったことで人魚の踵の皆さんは喜びながらそう言っていた。
『剣咬の虎二日目まさかまさかの0ポイント!!』
『おもしろくなってきたね』
『COOL!!カ・グ・ラCOOL!!』
今の今まで忘れてたけど、そういえばスティングさんが競技パート0ポイントだったからバトルに負けたとなればその日の獲得ポイントは0になってしまうのは当たり前である。つまり剣咬の虎は昨日と点数の変動が今日一日一度も起こらなかったのだ。
「セイバーの女か弱かったのか、マーメイドの女が強かったのか・・・」
「後者だな」
ユキノさんとカグラさんの戦いを振り返りグレイさんとエルザさんがそう言う。
「すごかったね、シリル!!」
「ちょっと鳥肌立った」
無邪気な笑顔でそう言うウェンディにそう答える俺。
「わ・・・私が敗北・・・剣咬の虎が・・・」
悔しくてなのか、それとも王者としての期待に応えられなかったからなのか、闘技場に倒れたままのユキノさんは大粒の涙を流していた。
「ユキノ・・・」
「そんな・・・」
仲間の敗北に泣きそうになっているカエルと虎。するとその隣に置いてある手が待機場所にある岩の柵にヒビをいれる。
「スティング君・・・?」
心配そうに見つめている赤茶のエクシード。スティングさんの顔は歯をむき出しにし、悔しさを滲ませていた。
「命・・・」
闘技場にある出入り口から出ていこうとしていたカグラさんが足を止める。
ユキノさんは自らの提案した賭けの重大さにようやく気づいたのか、その表情には恐怖を感じているような印章を受ける。
「そなたの命は私が預かった。よいな」
「はい・・・仰せの通りに・・・」
カグラさんはそう言い闘技場から姿を消す。
『これにて大魔闘演舞二日目終了!!
1位は10ポイント追加で36ポイント、大鴉の尻尾!!
二日目は0ポイントながら2位をキープした剣咬の虎!!
同じく2位蛇姫の鱗!!ともに現在20ポイント!!』
二日目が終わり、現在の順位と得点が発表されていく。そんな中でも蛇姫の鱗のトビーさんはバトルパートでクロヘビに破られた靴下のことをまだ引きずっているらしく、リオンさんに慰められていた。
『そして4位に10ポイント追加で計19ポイントの人魚の踵が2ランクアップだね』
人魚の踵では戦いを終えて帰ってきたカグラさんをみんなで囲んでいた。ソフィアさんが早速セクハラしようとしてたけどリズリーさんとアラーニャさんに止められて悔しそうな顔してたけど。
『5位は17ポイント、1ランクダウン青い天馬!!COOL!!』
『そして6位に1ランクダウン!!四つ首の仔犬!!』
「ま・・・マジか・・・」
6位と発表された四つ首の仔犬の面々は真っ白になっている。しかし、その理由は1つ順位を落としたからではない。
「あの・・・俺らのギルド名・・・四つ首の仔犬になってんすけど・・・」
四つ首の仔犬の一人が振り絞るような声でバッカスさんにそう言う。
「漢と漢の約束じゃあしょうがねぇ。ガハハハハハッ!!おーし今夜も飲むぞ!!ワイルドォ!?」
「フォー・・・」
ギルド名が変わった原因であるバッカスさんは気にする様子もなく包帯でグルグル巻きの腕を掲げながら待機場所から去っていく。四つ首の仔犬の皆さんはあんまりなギルド名に涙を流していた。
『さーて、10ポイントずつを追加したもののいまだ最下位争いとなっているのが、妖精の尻尾Aチームと妖精の尻尾Bチーム!!共に12ポイント!!』
現在は四つ首の仔犬も12ポイントなため3チームが最下位の状態となっている。
『さぁ、大会三日目はどんな戦いが待っているのか!!』
こうして大会二日目が終了する。
「まだ最下位か・・・」
「なーに言ってんだよ!!ここからが本当の勝負だろ?」
「そうですね」
グレイさんとナツさん、俺がそう言う。
「んじゃあ反撃の狼煙も上がったことだし・・・宴だぁ!!」
「「「「イェーイ!!」」」」
ナツさんの言葉に俺たちは両手を上げて騒ぎ立てる。まぁうちは勝とうが負けようがいつだって宴をするんだろうとは思うけどね。
夜・・・
「ダハハハッ!!おーしもっかい行くぞ!!魂はいつでもワイルドォ!?」
「「「「「「「「フォー!!」」」」」」」」
今俺たちはギルドの皆さんと宴会をしているのだが、もうほとんどの皆さんがお酒に酔いつぶれて眠ってしまっている。
しかし俺たち妖精の尻尾Aチームのメンバーは元気いっぱい大盛り上がりである。ただエルザさんは用事があるとのことで席を外しているので、変わりにハッピーとセシリー、そしてなぜかプルーが騒いでいるのだけどね。
「ガハハハッ!!あんたらいいノリしてるよな?」
「それはお互い様でしょ!!」
バッカスさんとハッピーがそう言う。今日の宴会にはなぜか四つ首の仔犬のバッカスさんとロッカーさんもやって来て一緒に大騒ぎしている。
「結構遅くなったし、そろそろ宿に帰らねぇとな」
「エルザはまだかよぉ?」
「そういや遅ぇな」
「なんか用事があるとか言ってたけどな」
「こんな時間ですし、もしかしたらもう宿に帰ってるかもしれませんけどね」
エルザさんは宴会が始まる前にすでにどこかに行ってしまっていたし、何か外せない用があったんだろうな。
しかし、今日の活躍したエルザさんとエルフマンさんがどっちも宴会に出てこれないなんて、ちょっと可哀想かも。
「腕のケガは大丈夫ですか?」
「一晩寝りゃどうにかなるって!!」
「ワイルドだろ?」
「ププーン」
ウェンディの問いにバッカスさんとロッカーさんがそう答える。
「おっと、忘れるとこだった」
バッカスさんとロッカーさんは宿に帰ろうと席を立ったが眠っているミラさんとリサーナさんを見て足を止める。
「エルフマン・・・つったよな?あいつに伝えといてくれ。ワイルドなバトルだったぜ、また大会中に当たんのを楽しみにしてるってな」
バッカスさんはこの場にケガの影響のため来ていないエルフマンさんへの伝言として俺たちにそう言う。
「伝えといてやるよ。俺もお前と戦ってみてぇしな」
「次もうちが勝つからね!!」
「いつでもかかっておいでよ~」
「ププーン!!」
ナツさんとハッピー、それにセシリーとプルーがそう言う。
「漢!!」
「「「「「「「「「フォー!!」」」」」」」」」
去り際でもハイテンションのバッカスさんにつられて俺たちも叫んでしまう。
「もう・・・うるさいなぁ・・・」
その声のせいなのか、さっきまで眠っていたレビィさんが目を擦りながら体を起こす。
「そういやじっちゃんは?」
「そういえばいないような・・・」
「確かバッカスさんと飲み比べして・・・」
「その辺に転がってんじゃねぇか?」
俺たちはマスターがどこにも見当たらないことを話している。その辺に転がってるってグレイさんの言い方が中々ひどいような気がするけどね。
「ルーちゃん?」
「あ・・・ごめんね、起こしちゃった?」
「ププーン」
目を覚ましたレビィさんがプルーを抱っこしているルーシィさんに話しかける。
「それはいいんだけど」
レビィさんはルーシィさんに謝罪されるがどうやら別の点で気になることがあったらしく話しかけたようだった。
「どうしたの?浮かない顔して・・・」
「うん・・・セイバーの星霊魔導士のこと・・・」
「ああ。あのショートヘアの・・・」
「ユキノさん・・・でしたよね?」
レビィさんの問いにルーシィさんは落ち込んだままの表情で答える。
「すごかったよね!!黄道十二門と十三番目の・・・」
「オフィウクス!!」
「そうそれ!!負けちゃったけどね」
レビィさんの言う通り、さすがはフィオーレ最強ギルドの一員だけあって本当に強いと感じた。まぁカグラさんがそれを上回るくらい強かったのも驚いたけどね。
「命を賭ける・・・なんて言ってたから、これからどうするんだろうと思って・・・」
「確かに・・・心配ですね」
ルーシィさんとウェンディがそう言う。あの場はカグラさんの機転で収まったけど、もしかしたらまずいことになってたかもしれないし・・・考えただけでゾッとするな・・・
「よその心配してる場合じゃねぇんだけどね」
「ですよね・・・」
グレイさんと俺がため息混じりにそう言う。ユキノさんのことは心配だけど、それ以上にうちは前半の出遅れのせいで最下位を争っているじょうきょうだからなぁ・・・
「なーに、まだ三日もあるじゃねぇか。ここからだ」
「ププーン」
「そうだよね。まずは優勝目指して頑張らなきゃ!!」
ナツさんの言葉にプルーとルーシィさんがそう言う。
「おーい」
俺たちが優勝に向けて気合いが入ったところで、さっきバッカスさんと一緒に宿に戻ったはずのロッカーさんが入り口のところに戻ってくる。
「おめぇらに客だぜ。ここだ、ここ」
そう言うロッカーさんの後ろから4人の人物が入ってくる。
「げぇぇ!!」
そのうちの1人を見てあからさまに嫌そうな顔をしたのはグレイさんだったりする。
「リオン」
「レオン」
「シェリアさん・・・でしたよね?」
俺たちが訪問して来た人たちの名前を呼ぶ。グレイさんが嫌そうな顔をしたのはリオンさんが来たからだろうな。
リオンさんの横にシェリアさんとレオン・・・それとレオンの隣に見たことのない男の子が立っている。オレンジ髪のその少年の頭とお尻にはなぜか猫耳と長い尻尾がくっついていた。
「その子は?」
「こいつはラウル。一応、シリルと同い年なんだぜ」
俺が聞くとレオンがそう教えてくれる。確かに身長もほとんど変わらないし、年齢が同じっていうのもわかるかも。
「そっか。よろしくね、ラウル君」
「うん!!よろしく、シリルくーん!!」
そう言ってラウル君は俺に飛び付くようにジャンプする。その瞬間、レオンがラウルの尻尾を握る。
「んぎゃ!!」
ポフッ
尻尾を掴まれたラウルは白い煙に包まれると、その煙の中から俺の胸に飛び込んで来たのは小さなオレンジの猫だった。
「「「え?」」」
俺とナツさん、ウェンディはこのオレンジの猫を見て思わず目を点にする。これって・・・
「「「エクシード!?」」」
「?なんだそりゃ」
俺たちの叫んだ声を聞いて不思議そうな顔をするレオンたち。
「もしかしてこいつも6年前にこっちに送られたエクシードなんですかね?」
「ってことになるのかな?」
「正確には13年前だけどな」
俺とウェンディ、そしてグレイさんがそう言う。
「そういやシリルたちの応援席にも猫がいたね」
「セイバーにもな」
レオンとリオンさんがそう言う。
「お前が卵から孵したのか?」
「いいえ?仕事中にたまたま見つけて」
「それでレオンになついちゃったから一緒に連れて帰ってきたの」
なるほど。てかなんでレオンじゃなくて俺の胸に飛び込んできたんだよ。なんか離れようとしないし・・・
「つーか、お前は何しに来たんだよ」
グレイさんがラウルのことを話している俺たちの間に割って入り、リオンさんに問いかける。
「決まっているだろ。ジュビアをいただきに来たのだ」
「はぁ~・・・」
真顔でそう言うリオンさんに頭を抱えるグレイさん。だけど・・・
「ジュビアならここにはいねぇぞ?」
「というかBチームの人はミラさん以外見てないような・・・」
ナツさんと俺がそう言う。ミラさんはリサーナさんと同じテーブルでスースー寝てるけど、ガジルさんやラクサスさん、そしてお目当てのジュビアさんは宿に戻ってしまったのか、今はここにはいないようである。
「何!?グレイ貴様、ジュビアをどこに隠したのだ!!」
「隠してねぇよ!!おめぇは一々めんどくせぇな!!」
掴み合うリオンさんとグレイさん。本当この2人はすぐにケンカするなぁ・・・それはナツさんとグレイさんでも一緒か。
「まぁいい。ジュビアがいないなら俺たちはこれで―――」
「グレイ様~!!」
リオンさんが帰ろうとグレイさんから手を離すと、まるで図ったかのようにジュビアさんが帰ってくる。
「ジュビアさん・・・」
「あ~あ・・・」
「めんどくさいことになりそう・・・」
ジュビアさんの登場でこじれるであろうこれからの展開を予想したウェンディ、俺、レビィさんはため息をついた。
その頃、剣咬の虎の泊まっているクロッカスガーデンでは・・・第三者side
「情けなくて涙も出ねぇぞ、クズ共」
剣咬の虎のメンバーたちは宿の一室に集められ、ソファーに腰掛け果物を頬張る男の話を聞いている。話を聞いているその姿はまるで軍隊のようだった。
「なぜ我々が魔導士ギルドの頂点にいるのか思い出せ。周りの虫けらなど見るな、口を聞くな、踏み潰してやれ。我々が見ているものはもっと大きなものだ。
天を轟かせ、地を沸かし、海を黙らせる。それが剣咬の虎だ」
そう言った白い髭を生やし、首に巨大な数珠を巻いている大柄な男こそ、剣咬の虎マスタージエンマである。
「スティング」
「はい」
ジエンマに呼ばれたスティングは1歩前に出る。
「貴様にはもう一度だけチャンスをやる。二度とあんな無様な真似はするな」
それに対しスティングは軽く会釈をする。
「ありがとうございます。必ずやご期待に答えてみせます」
「ユキノ」
「はい」
今度はユキノがスティングと入れ替わるように前に出る。
「貴様には弁解の余地はねぇ。わかってんだろうな?」
「はい・・・私は、他のギルドの者に敗北し、剣咬の虎の名を汚してしまいました」
そう言うユキノに対し、ジエンマは持っていたブドウを投げつける。ユキノの頭にぶつかったそれは、紫の液体をユキノの髪につけ、床へと落ちる。
「んなことじゃねぇんだよ!!貴様は命を賭けて敗北し、あろうことか敵に情けをかけられた。この剣咬の虎がだ」
「はい。私はいかなる罰をも甘んじて受ける所存でございます」
ユキノの髪からさっきついたブドウの身が落ちる。
「では、全てを捨てろ」
「はい、仰せの通りに」
ジエンマにそう言われたユキノは自らの身に纏っている衣類を脱ぎ始める。
「ユキノ・・・」
「黙ってください、フロッシュ」
「・・・」
悲しそうな声を出すフロッシュにレクターがそう言い、キセキは見ていられずに目線を反らす。
そしてユキノは全ての衣類を脱ぎ、生まれたままの姿へとなる。その顔は恥ずかしさで赤くなり、大きな胸の膨らみは両腕で包むように隠されている。
「ギルドの紋章を消せ」
「・・・はいっ・・・」
ユキノはお腹に刻まれているギルドマークを自らの手で消し去る。
それに対して滅竜魔導士の3人は、1人はその様子を無表情で眺め、1人は顔を背け、1人は静かに目を閉じていた。
「短い間でしたが、大変お世話になりました」
「とっとと失せろ、ゴミめ」
裸のまま正座し、深々と頭を下げたユキノにジエンマはそう言い放った。
「やることが極端だねぇ、うちのマスターは」
「あんなのひどいと思うよ」
集会が終わり、それぞれの部屋へと戻っていくメンバーたち。スティング、ローグ、グラシアン、レクター、フロッシュ、キセキはさっきのジエンマのユキノにやらせた行動についての話をしていた。
「仕方ありません。これが最強ギルドたる所以なのですから」
「俺たち全員に緊張感を常に持たせておきたいってことか」
レクターとグラシアンがそう言う。
「フローはさみしい・・・」
とぼとぼとレクターとキセキの隣を歩くフロッシュ。ローグはそんなフロッシュの姿を見て、自分が思っていることを口にする。
「これがギルドなのか?」
「あ?」
「何?」
足を止めるローグと同じくスティングとグラシアンも足を止め、目線をローグへと向ける。
「ユキノは仲間だった」
「弱ぇから消えた。最強のギルドには必要なかったってことだろう?」
スティングはそれだけ言い、レクターと共に歩き出す。
「そういえば、ユキノさんの代わりにお嬢が入るらしいですよ」
「おお!!これで最強の6人が揃うわけだな!!」
楽しそうに話しているレクターとスティングを見つめるローグ。グラシアンは2人を見てため息をつき、歩き出す。
「お前も同じ考えか?グラシアン」
「・・・俺にもよくわかんねぇ」
ローグに呼び止められたグラシアンは振り向くことなく答える。
「マスターのしていることが正しいことかどうかも、これがギルドのあるべき姿なのかもわからない。けど、俺はそれでも戦うよ。それしか俺には進む道がないからな」
「そうか・・・」
グラシアンの言葉に静かに答えるローグ。グラシアンはその姿を一瞥することもなく部屋に帰っていく。
「行くぞキセキ」
「うん、お休み、フロッシュ」
「お休み~」
フロッシュに挨拶したあとグラシアンのあとに続くキセキ。
「ローグ」
フロッシュは4人を見送ったあと、目に涙を溜めてローグを見上げる。
「フローも弱いから消えちゃう?」
「お前は消えないよ、フロッシュ。俺がついてるから」
「うん!!フローは消えない!!」
フロッシュはローグの言葉を聞いて両手を上げる。それから2人も自分たちの部屋へと帰っていった。
そしてシリルたちは・・・シリルside
「プハハッ!!食った食った!!」
「あんた食べ過ぎなのよ」
「オイラもお腹いっぱい!!」
「ハッピーも食べ過ぎなんじゃないの~?」
お店から出た俺たち、その中でナツさんとハッピーは膨れたお腹をポンポンと叩きながら満足気にそう言い、シャルルとセシリーがそれに突っ込む。
「それにしても、なんで宿の部屋ってみんな一緒なんでしょうかね/////」
ウェンディが顔を赤くしながら素朴な疑問を言う。
「ホント最悪よね・・・ナツはいびきうるさいし、グレイはすぐ裸になるし」
「エルザさんなんか今日俺のベッドに入って来ましたよ」
ルーシィさんと俺が愚痴をこぼす。1日目はエルザさんはルーシィさんのベッドに入っていたのだが、なぜか今日の朝は俺のベッドに入ってきていたのだ。ルーシィさんみたいに蹴り飛ばそうかとも思ったけど、後で仕返しされそうでできなかったんだよなぁ・・・
「そういえばグレイとエルザは?」
「グレイは気の毒ね」
「リオンくんとジュビアさんに連れてかれてたもんね~」
ハッピーの質問にシャルルとセシリーが答える。あの後、ジュビアさんを口説こうとするリオンさんとグレイさんから離れないジュビアさん、その2人にタジタジだったグレイさんは行きたくもない二次会へと駆り出されたのだった。メンバーはもちろんリオンさんとジュビアさんとグレイさん。レオンは長くなると判断してか早々に退散し、ラウルくんとシェリアさんはレオンと一緒に宿へと帰っていった。
「エルザは?」
「そういえば見てないわね」
「宿に戻ったんじゃないんですか?」
ナツさん、ルーシィさん、俺がそう言う。
「いや・・・これはきっとチュッチュッチュッチュッ?」
「は?」
「どうしたの~?ハッピー」
俺の意見を聞いたハッピーは意味のわからない言葉を発する。なんだよチュッチュッチュッチュッて。
「1人になるなって自分で言ってたのにね」
「1人じゃないと思うな、オイラ」
ルーシィさんとハッピーがそう言う。まぁエルザさんなら1人でも自衛出来るだろうから問題ないと思うけど。
「お?宿屋の前に誰かいるぞ?」
ナツさんが俺たちが泊まっている宿、ハニーボーンの前に立っている人を見つける。
「本当だ」
「あの人は確か・・・」
「目ぇいいわねあんたら」
俺とウェンディもハニーボーンの前にいる女の人を発見する。ルーシィさんは暗くて見えないらしく、目を細めて女の人を見つけようとしている。
「あ!!」
宿のすぐ前まで来ると、ルーシィさんもその女の人が誰なのかわかり声を出す。
その女の人は脇に大きめのスーツケースを携えており、服装は黄緑のタンクトップにミニスカートというラフな格好をしていた。
「お前は・・・」
「今日バトルパートに出てた・・・」
「剣咬の虎の・・・」
「星霊魔導士!!」
そう、俺たちの宿の前にいたのは宴会の時にも話に上がっていた星霊魔導士、ユキノさんだったのだ。
後書き
いかがだったでしょうか。
次回もよろしくお願いします。
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