戦国異伝
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第二百二十一話 肥後の戦その二
「その敗北のせいでな」
「どうしてもですな」
「気持ちが落ち込んでおるわ」
「その覇気も」
「ない、これではな」
「戦においても」
「頼りにならぬか」
家康はこのことを残念に思った、それが顔にも出ていた。
「残念じゃがな」
「ですな」
「しかしじゃ」
「しかし?」
「その両家の方々もな」
気落ちしている彼等でもというのだ。
「率いる将帥次第じゃ」
「ではこの度は」
「龍造寺の方々は鍋島殿に率いてもらい」
家康はさらに語った。
「大友の方々はな」
「立花殿、高橋殿にですな」
「率いてもらおう」
「弱兵も名将が率いればよし」
酒井がここで言って来た。
「そうしたことですな」
「そうじゃ、そしてこの度の戦は」
ここでだ、家康は。
傍らにいる信康に笑みを向けてだ、彼に告げた。
「竹千代、頼んだぞ」
「はい、それでは」
信康も父に確かな声で答えた。
「この度の戦は」
「わしは後詰に回る」
戦全体の采配は取らないというのだ。
「任せたぞ」
「では」
「御主の戦を見せてもらう」
家康は父として我が子に告げた。
「存分に戦うのじゃ」
「さすれば」
「十六神将全てを預ける」
信康にというのだ。
「存分に使うのじゃ、そしてな」
「戦にですな」
「勝つのじゃ、よいな」
「さすれば」
信康は父の言葉に確かな顔で頷いた。家康は実際に後詰に周り本陣での采配は信康が採ることになった。その中で。
信康は早速だ、こう言った。
「では先陣はじゃ」
「はい、それですが」
「是非です」
ここで出て来たのは立花と高橋だった、二人で信康に言って来た。
「それがしにお任せ下さい」
「いえ、それがしにです」
二人で競う様にだ、信康に言うのだった。
そして鍋島、堂々たる恰幅で面頬が目立つ兜を持っている彼まで出て来てだ。信康に対して言って来た。
「先陣はそれがししかおりませぬ」
「隆信殿の、ですか」
「殿はそれがしにとって兄でもありました」
隆信の母は夫と死に別れてから鍋島の父の妻となったのだ。その為二人は義兄弟の間柄でありその絆が強かったのだ。
「ですから」
「仇討ちの為に」
「それがしに先陣を」
「いや、島津には恨みがあり申す」
「耳川の時から」
立花と高橋は今度は鍋島に言った。
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