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真田十勇士

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巻ノ九 筧十蔵その八

「そうしたことですな」
「拙者はそう思う」
「ですな、剣も人を斬ることに心を奪われる魔道に堕ちれば終わりです」
 根津は己の歩んでいる道から考えて述べた。
「あとは人斬りの外道になるだけ」
「それは剣に溺れておるのじゃ」
「人を斬ること、殺めることに喜びを見出し」
「それも同じであろう」
 遊びに溺れることと、というのだ。
「やはりな」
「左様でありますか」
「ううむ、遊びでも何でも溺れぬことですな」
 由利も考える顔になっている。
「そしてそのうえで、ですな」
「遊んでじゃ」
「学ばれる、それが殿のお考えですな」
「それが正しいかどうかはわkらぬがな」
「左様ですか」
「うむ、では都に行きな」
「遊びましょうぞ」
 また言う清海だった、喜んで。
「是非共」
「兄上、間違っても博打ですらない様にして下さい」 
 伊佐は兄の博打好きを見て言った。
「これまで何度もありましたが」
「安心せい、わしは博打には強くなった」
「そう仰って何度負けられたか」
「だから今度こそは大丈夫じゃ」
「全く、兄上は」 
 伊佐は清海のそんな反省しない態度にむっとした顔になっていた、だがそうした話をしつつだった。幸村一行は安土から都に向かうのだった。
 その幸村達と別れた白虎はだ、琵琶湖のその水を見ていた。遠くに何艘か舟も見える。
 水と浜、それに舟を見つつだ。佇む白虎のところにだった。
 漁師の身なりをした男達が何人か来てだ、こう言って来た。
「無明殿はですな」
「この琵琶湖をですな」
「御覧になられ」
「そしてそれをですな」
「半蔵様にお知らせする」
 表情のない目でだ、白虎は漁師達に答えた。
「この琵琶湖、そして近江のことを調べた上でな」
「そうされますか」
「この近江は交通の要」
「この国をよく調べ」
「半蔵様にお伝えしますか」
「そうする、それに」
 白虎は漁師達にさらに言った。
「あの御仁のこともな」
「真田家のご次男の」
「幸村殿ですな」
「どうも他の十二神将の方々も会われましたが」
「無明殿もですな」
「今我等十二神将は天下の流れを調べている」
 自身も含めてというのだ。
「その我等が次々とあの方と会うとは」
「妙なことですな」
「不思議なことですな」
「考えてみますと」
「これが縁か」 
 表情のないままだ、白虎は言った。
「人と人のな」
「我等と真田殿の」
「縁ですか」
「そうやもな、あの御仁まだ若いが」
 しかしというのだ。
「相当な方、しかもそこからさらに大きくなられる」
「左様ですか」
「では相当にですか」
「大きくなられますか」
「そう思う」
 こう漁師達に話した。 
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