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黒魔術師松本沙耶香 客船篇

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6部分:第六章


第六章

 沙耶香はその彼女に対してだ。こう言ってきたのである。
「それではね」
「そのお申し付けですよね」
「そうよ。まず言っておくわ」
 こう前置きしたうえで、であった。
「少し時間がかかるから」
「はい、わかりました」
 メイドも彼女のその言葉に頷いた。
「それでは何なりと」
「貴女はね」
 それまで座っていたソファーから立ち上がりであった。彼女にさらに言ってきた。
「まだ何も知らないようね」
「何もとは?」
「そう、何も知らないというのもまた」
 彼女の前に来てだ。その切れ長の目を細めさせていた。琥珀を思わせるその瞳の光は妖しく誘う様に輝いている。
「いいものだから」
「知らないことをですか」
「知らないことを知っていく」
 言いながらすっと姿を消した。彼女の前からだ。
「えっ!?」
「ここよ」
 急に姿を消したので驚く彼女に対してだ。後ろから囁いた。見れば沙耶香は彼女の真後ろにいた。そして耳元で囁いてきたのである。
「私はここにいるわ」
「何時の間に」
「さて、それでだけれど」
 後ろから囁き続けるのだった。
「貴女はこれからね」
「これから?」
「私の相手をしてもらうわ」
「相手とは」
「こういうことよ」
 白いエプロンの胸のところに後ろから手をやってである。その中に手を入れるのだった。そうしてそのうえで揉みしだきはじめたのだった。
「あっ、何を」
「何を?ここまでして何をも何もないと思うけれど」
 言葉に笑みをッ含ませながらそのうえで揉み続ける沙耶香だった。
「そうでしょ。これでわかったわね」
「貴女はまさか」
「そうよ。貴女をこの為に呼んだのよ」
 右手で揉み左手で腰を前から絡め取っている。そのうえで耳元で囁いているのである。
「この為にね」
「そんな、こんな仕事は」
「これは仕事ではないわ」
 沙耶香はそれは否定した。
「仕事ではね」
「じゃあ一体」
「楽しみよ」
 それだというのである。
「これはね。楽しみなのよ」
「楽しみ・・・・・・」
「そうよ。だから」
 前にその上体を倒す彼女に合わせて己も身体を前に折ってだ。そのうえでさらに囁くのだった。彼女を何としても逃さないかのようにしていた。
「貴女もね」
「私も?」
「楽しむといいわ」
 目を細めさせ声もそうさせていた。
「存分にね」
「けれど私は」
「女は嫌だというのかしら」
「こんなことをしたことはありません」
 こう言って拒もうとするのだった。この様な状況でもだ。
「ですから」
「そう、だからこそなのよ」
「だから?」
「だからこそなのよ」
 この言葉を繰り返してみせた。それは彼女の心に刻み込む為である。
「こうしてはじめて知るのよ」
「女の人を」
「男は知ってるわよね」
 胸を責めもう一方の手で身体に愛撫をしながら彼女に問うのだった。
 
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