リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another48 丈
前書き
その頃丈は。
受験勉強の傍ら、ゴマモンと共に釣りに出掛けることになった丈。
丈「シン兄さん!!」
シン「丈じゃないか。今日は塾はないのか?」
丈「うん、今日は休みなんだ……」
シン「そうか!進路のことで悩みがあったらいつでも相談しろよ……お前の兄貴なんだからさ…………じゃ、大学があるから行くよ」
丈「うん!行ってらっしゃい!!」
大学に向かうシンを見送る丈だったが、D-コネクションの中にいるゴマモンが声をかけてきた。
ゴマモン『へえ、あれが丈のお兄さんか』
丈「そう、今は医学生をやってるんだ……それにしても、兄さんの釣り竿、勝手に持ち出したのバレなくてよかった」
ゴマモン『言っただろ。堂々としていれば、意外にバレないもんなんだよ』
丈「そうかもしれないけど、嘘を吐くのは性に合わないんだよ」
誠実の紋章の所有者に選ばれるくらいに生真面目な丈のことだ。
多少の嘘でも良心が咎めるのだろう。
ゴマモン『気にすんなって、早く釣りに行こうよ』
丈「大丈夫なのかな……僕、受験生なのに…」
受験生なのに呑気に釣りなんかしてていいのだろうか?
お台場のふ頭に辿り着いた丈。
ゴマモン[丈~、早く早く!!]
ふ頭に着くと同時にD-コネクションから飛び出して早く魚を釣れと急かすゴマモン。
丈「慌てるなよ。騒ぐと魚が逃げちゃうぞ」
ゴマモン[丈がのんびりし過ぎなんだよ!!ピッチピチの魚を早く食べさせてよ]
丈「ちょっと待てよ……この釣り竿どうやって使うんだ?」
今まで丈は釣りをしたことがないために、釣り竿の扱いなどさっぱり分からない。
ゴマモン[何だよ、丈……釣りもしたことないのか?]
丈「しょうがないだろ、今まで医者になるために勉強一筋だったんだから!!」
ゴマモンの呆れたような口調にカチンと来たのか言い返す。
丈「第一、君は泳げるんだから、泳いで魚を取ればいいじゃないか」
ゴマモン[そう言うなって。この世界にいる何にもない時くらいはのんびりさせてくれよ~~!!]
丈「のんびりしたいのはこっちの方だよ……」
今までデジタルワールドで生きるか死ぬかの冒険だったために、現実世界でのんびり出来そうな時くらいのんびりしたいのが本音だ。
しばらくして、ようやく釣り糸を垂らすことに成功した丈。
ゴマモンはどうやら釣りのやり方を知っていたようなので教えてもらったのだ。
丈「暑いな…家から麦茶か何か持ってくればよかった…」
釣り糸が引いたのは丈が呟いたその時であった。
ゴマモン[丈、引いてる!!]
丈「これは大物だ!!行くぞ!!」
一気に力を込めて引き上げる。
釣れたのは魚ではなく、ゲソモン。
ゴマモン[ええええ!!!!?]
丈「な、何!デジモンが釣れた!?」
ゴマモン[そんな、馬鹿な!?]
泳いでいたのを邪魔されたからか、ゲソモンは怒り狂って丈とゴマモンに襲い掛かる。
丈「わああああ!?」
ゴマモン[泳いでいたのを邪魔して悪かったってば!!]
ゲソモンは聞く耳持たないのか、丈とゴマモンに墨を吐く。
ゴマモン[危なっ…もう怒ったぞ!ボコボコにしてデジタルワールドに帰してやる!!]
丈「頼んだぞゴマモン!!」
ゴマモンが海に飛び込んで進化する。
ゴマモン[ゴマモン進化!イッカクモン!!]
イッカクモンに進化すると、暴れるゲソモンに体当たりをお見舞いしてやる。
イッカクモン[ノーザンライツ!!]
イッカクモンから放たれた冷気が、瞬く間にゲソモンをカチンコチンに凍らせてしまう。
水の中にいたからなのか凍るのが早い。
イッカクモン[とどめだ!!ハープーンバルカン!!]
とどめの一撃をゲソモンに叩き込んで、ゲソモンをノックアウトした。
しばらく、イッカクモンが海の中を探索し、ゲソモン以外のデジモンがいないことを確認すると、退化して戻ってきた。
ゴマモン[ああ、びっくりした。意外な大物だったね、丈…丈?どうしたんだよ?]
ショックを受けたような顔をしている丈にゴマモンが駆け寄る。
丈「折れちゃった?」
ゴマモン[???脚でも折れたの?]
丈「違う!!兄さんの釣り竿が折れちゃった」
ゴマモン[ええ~~!!?]
丈「どうしよう。勝手に持ち出した上に折っちゃうなんて……何て言えばいいんだろう。ねえ、ゴマモン、どうしよう……」
ゴマモン[正直に言って謝るしかないよ]
丈「そ、そんな……」
そして自宅まで戻ると、自室で寛いでいたシンに釣り竿のことを説明した。
丈「ごめん!兄さん!!」
シン「……」
シンは折れた釣り竿と頭を下げている丈を見遣る。
丈「勝手に兄さんの釣り竿を使った上に壊しちゃうなんて……許してもらえるか分からないけど、僕のお小遣いで少しずつ弁償するよ」
シン「いいんだよ丈。」
丈「へ?」
予想外の言葉に丈は目を見開いた。
シン「寧ろ、嬉しいよ。お前が勉強以外のことに興味を持つなんてな。」
丈「シン兄さん……?」
シン「親父に言われた通り、医者になろうと頑張るお前は偉いよ。でも、兄貴としてはもっと子供らしく、楽しいことも経験して欲しいんだ」
丈「兄さんがそんなこと思ってたなんて知らなかったよ」
医者になるためにずっとずっと勉強し続けた弟を少し心配していたシンに丈は驚いた。
シン「じゃあ、俺はまた出掛けるから折れた釣り竿は物置に入れといてくれ」
丈「う、うん……本当にごめんなさい」
シン「なあ……丈!!」
丈「な、何……?」
シン「何だかお前、変わった気がするよ。前より何て言うか…逞しくなった」
丈「そうかな……」
照れる丈にシンはニヤリと笑って言う。
シン「ああ!!前のお前なら折れた釣り竿のこと黙ってたはず!!」
丈「そんな~~~!!」
ゴマモン『(流石は丈のお兄さんだね)』
シン「あはは……じゃあな」
丈「うん」
ゴマモン『なっ!オイラの言った通りだったろ?』
丈「うん!兄さんの気持ちも分かって本当に良かったよ……」
ゴマモン『よし、それじゃあオイラへのご褒美にハンバーガー奢ってよ』
丈「ええ……!!お小遣い足りるかな……」
ゴマモン『ははは……!!』
お小遣いに頭を悩ませながらハンバーガーショップに向かう丈であった。
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