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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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Another46 空

 
前書き
その頃空は。 

 
父親の裕明に書類と弁当を届けたヤマトはかつてヤマトが腹一杯食いたいと言っていた焼き肉が食べたいとガブモンが言ってきたために、特売品の肉、野菜を購入して自宅に向かおうとしていた。

ヤマト「焼き肉なんて久しぶりだな」

ガブモン『ヤマト、焼き肉って美味しいの?』

ヤマト「勿論だ。焼きたての肉と野菜をタレにつけて食べる。そして米を食べるんだ…俺はお前達に同情するよ、こんな美味い物を食ったことないなんて……」

ガブモン『うう~……そんなに美味しいんだ。ヤマト、早く帰って食べようよ』

ヤマト「駄目だ駄目だ。焼き肉は夕飯だって決まっている。今日の昼飯は…そうだな…確か貰った卵があったからメレンゲオムレツ作ってみるか」

確か大輔から貰ったレシピがあったはずだ。
自宅に向かう途中。

空「はあ…」

ヤマト「ん?」

溜め息に反応して振り返ると空が暗い顔をしてベンチに座っていた。

ヤマト「おはよう空。…どうした?暗い顔をして?何があったんだ?」

空「ヤマト君…おはよう。今日、サッカーの朝練があったんだけど行けなくなっちゃったの。太一にそう伝えて来たの」

ヤマト「サッカーの朝練に?お前、確か久しぶりにサッカーが出来るって喜んでいたよな?…もしかして体調でも悪いのか?」

心配そうに空を見つめるヤマト。
ヤマトの優しさに感謝しながら空は事情を言う。

空「今朝ね……お母さんにお使い頼まれちゃって……やっぱり、うちのお母さん。私がサッカーやるのが嫌なのかしら……?」

ヤマト「えっと…確か、空の母さんと話をするって言ってなかったか?してなかったのか?」

空「帰った時にはお母さん、いなかったの。今日の朝に帰ってきて、私にお使いを……お母さん疲れていたから話すにも話せなかったわ」

ヤマト「そうか……」

空「……やっぱりサッカー出来ないのかな?」

ヤマト「空、ちゃんと話してもいないのに簡単に諦めるなよ。今日は空の母さんいるんだろ?だったらお使いが終わったら話してみろよ。」

空「ヤマト君…」

ヤマト「正直言うとな。俺、空が羨ましいんだ」

空「え?」

ヤマトが空の隣に座り、喋り始めた。

ヤマト「俺、両親が離婚したからさ…親父は仕事でずっと家にいないことが多いから…それに母さんも…他の奴らは親からゴチャゴチャ言われなくて羨ましいって言うけどな…俺からすれば、みんなが羨ましいんだよ」

悲しげに微笑むヤマトに空は何と言えばいいのか分からない。

ヤマト「とにかくさ。ちゃんと話し合ってみろよ。話もしないで決めつけるのはよくないぞ」

空「うん…ありがとう、ヤマト君。ところでヤマト君も買い物?」

ヤマト「ああ、ガブモンのリクエストで今日の夕飯は焼き肉だ。昼飯は大輔から教わったメレンゲオムレツ」

空「ああ、あのふわっとしたオムレツ?中のチーズもトロトロで美味しかったわよね。」

ヤマト「ああ」

空「アインスさんも料理上手だし、私もお料理習った方がいいかしら…?」

ヤマト「え?」

空「だって大輔君やヤマト君、凄く料理上手だし、何か凄い敗北感が……」

ヤマト「…別に気にしなくてもいいと思うけどな……」

空「……アインスさんに頼んで教えてもらおうかな…ごめんねヤマト君、ありがとう」

ヤマト「ああ、ちゃんと話をしろよ」

花屋に向かう空にヤマトは自分も自宅に向かう。

ヤマト「あ、チーズを買うの忘れた…」































お使いを終えた空はD-コネクションの中にいるピヨモンと会話していた。

ピヨモン『お使い、早く終わってよかったね空』

空「お母さんが欲しがってるお花の種類を伝えるだけだったからね…(……お母さんが電話で直接伝えればいいはずなのにどうして……?)」

母親の考えていることが分からず空は表情を曇らせる。

ピヨモン『急げばまだサッカーの朝練に間に合うかもしれないよ?』

空「そうね、ピヨモン。急いで帰りましょう。朝練が終わったらお母さんと話さないとね……」

ピヨモン『……空、デジモンの気配がするわ!!ベジーモンよ!!』

空「本当!!お花屋さんの前で一体何を…もしかしてヴァンデモンの手先!!?」

ピヨモン『それにしては、侵攻してるって感じじゃないけど……』

[ブツブツ……]

空「何か呟いてる……」

ピヨモン『こっそり近づいてみましょう?』

そしてこっそりベジーモンに近づく空。

[ああ、デジタルワールドでも見たことがないようなカワイコちゃんが一杯!!それが、あんなところで人間に売られていくなんて……]

ピヨモン『カワイコちゃんって……』

空「お花屋さんで売ってる花のことかしら?もしかしてヴァンデモンの手先じゃなくて現実世界に迷い込んだデジモン?」

[このベジーモンが囚われのカワイコちゃん達を救出してやる!!“ベジーモンさん、素敵!!”ってきっとモテモテだ!!植物を大事にしろ~~!!カワイコちゃんに自由を~~!!]

ピヨモン『あいつ、自分がモテたいだけじゃない!!』

空「こんなことされたらお花屋さんは大迷惑よ!!止めなきゃ!!」

ピヨモン『でも、空……。朝練に間に合わなくなっちゃう』

空「今はそんなこと言ってる場合じゃない。行くわよピヨモン!!

そしてベジーモンの前に姿を現す空。

空「全部聞かせてもらったわ!!お花屋さんを襲うなんて私が許さない!!」

[げえ……、バレちゃあしょうがねえ。お前達からやっつけてやる!!]

空「ピヨモン、懲らしめてあげなさい!!」

ピヨモン[行くわよ!!]

D-コネクションから飛び出したピヨモン。
いきなり現れたピヨモンに驚いたベジーモンは動きを硬直させた。

ピヨモン[ベジーモンは植物型……なら炎が効くはず!!マジカルファイアー!!]

[ぎゃあああああああ!!?]

弱点の炎をまともに喰らったベジーモンは真っ黒焦げになって気絶した。

空「凄いわピヨモン。一撃で倒すなんて…」

ピヨモン[本当、自分でもびっくり……]

空「きっとブイモン達との特訓の成果よ。よくやってくれたわピヨモン」

ピヨモン[えへへ]

淑子「空!!大丈夫!!?」

空「お母さん!!?ピヨモン早くD-コネクションに!!」

ピヨモンとベジーモンがD-コネクションの中に吸い込まれた。

空「ふう…どうしたのお母さん?」

淑子「変な縫いぐるみを着た子供が花屋の前で暴れてるって聞いて……」

空「縫いぐるみ……」

多分ピヨモンとベジーモンのことだろう。

淑子「あなたも巻き込まれたんじゃないかって心配したのよ」

空「うん……私は平気よ。お使いを済ませた後だったし」

淑子「たまたまとは言え、危ない目に遭わせてごめんね、空……」

空「お母さん……」

淑子「でも、全部あなたに華道の家元の仕事を少しでも知って欲しかったからなの」

空「うん……」

淑子「とにかく、家に帰りましょう」

空「分かった……」

ピヨモン『空のお母さん、心配してくれてたんだね……』

空「ええ……」

お使いを頼んだのは、純粋に華道を知って欲しかったから、そんな母の真っ直ぐな言葉に空は複雑な想いを抱いた。

ピヨモン『嬉しくないの?空…』

空「ごめんごめん。気にしないで。さあ、家に帰りましょう!!」

空は今度こそ話そうと決心した。
母親と向き合うために。
































自宅に着いた空はD-コネクションを自室に置くと、直ぐに台所に向かう。

空「お母さん……」

淑子「何?空……?」

娘の様子に気付いた淑子は家事を中断した。

空「今まで、ずっと聞きたいって思ってた。私と華道…どっちが大切なのかなって…」

淑子「空…」

空「前はお母さんの気持ち分からなかったから反発したけど…アインスさん…友達から教えてもらって、お母さんが私のことを心配してたからサッカーに反対したんだって分かったの…でも、これだけはお母さんの口から聞きたいの…お母さんは私と華道…どっちが大切なの?」

淑子「それは勿論あなたよ…空。あなたは私のたった1人の娘だもの。だからあなたには怪我をして欲しくないの…いつかあなたも大人になって、お化粧に興味を持ったり恋をする時がやってくるから…」

空「…アインスさんも同じようなこと言ってた……でもお母さん…私、サッカーが好きなの……もう前みたいに無茶なんかしないから……続けさせて。お願い」

娘からの頼みに淑子は少し寂しそうに笑いながら頷いた。

淑子「分かったわ……でも、本当に怪我だけは気をつけて頂戴?」

空「うん」

ピンポーン。

インターホンの音に空が玄関に出る。
そこにはアインスがいた。

アインス「おはよう武之内。」

空「アインスさん!!お母さん、この人がアインスさんよ」

アインス「八神リインフォース・アインスと申します。武之内のお母様。あなたの娘さんにはお世話になりました」

淑子「いいえこちらこそ。娘がお世話になったようで……」

空「アインスさん。私、お母さんと話したの」

アインス「どうだった?」

空「アインスさんの言っていた通りだった。ありがとうアインスさん。」

アインス「それは良かった。これはお土産だ。私が作ったお萩……良かったら食べてくれ」

空「うわあ、美味しそう。アインスさんが作ったなら美味しいに決まってますよ。大輔君は果報者ね」

アインス「ふふ、ありがとう。」

空「はい!!」

仲良く会話を弾ませるアインスと空を淑子は優しく見守っていた。 
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