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流転の防人

作者:bf109k14
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序章「遭難」

 
前書き
ゴジラ・コマンドがアルゼナル周辺海域に時空跳躍します。 

 
小笠原諸島周辺海域・自走式ドッグ極光

穏やかに凪いだ海原に眩い陽射しが降り注ぎ、爽やかな潮風が軽やかに舞う中、日本のガラパゴスとも称される小笠原諸島目指して進む船団の姿があった。
海上自衛隊横須賀地方隊の第11護衛隊に所属するあさぎり型護衛艦やまぎり(DD―152)とうみぎり(DD―153)そしてはつゆき型護衛艦のやまゆき(DD―129)の3隻の護衛艦と彼女達(第11護衛隊)に護衛されて進む3隻の防衛省所属大型自走式ドッグ、極光(きょっこう)電光(でんこう)雷光(らいこう)によって構成された船団が小笠原諸島に存在する無人島、幻龍島へ向けて航行を続け、3隻の自走式ドッグの船上ではビオランテとの激闘を終えた後に未だに日本海で眠りにつくゴジラの目覚めに備えて防衛省と陸上自衛隊が編成した特殊戦術機動集団ゴジラ・コマンドに所属する隊員達が幻龍島にて実施する予定の実弾訓練に向けて準備を進めていた。
海原を進む極光、そのブリッジ脇のスペースでは180センチを超える長身と精悍で整った面立ちが特徴的な幹部自衛官、ゴジラ・コマンド隊長の長曽我部基久(ちょうそかべもとひさ)二等陸佐の姿があり、長曽我部は潮風を浴びながら極光の横を進むやまぎりの姿を眺めていた。
長曽我部がのんびんりとした様子でやまぎりの姿を確認していると、ブリッジからゴジラ・コマンド副隊長の羽島猛(はじまたけし)一等陸尉が姿を現し、長曽我部の傍らに移動すると輝く太陽を眩しげに見上げながら口を開いた。
「後二時間程で幻龍島に到着するそうです」
「そうか、各種機材の様子は大丈夫か?」
羽島の言葉を受けた長曽我部は羽島の方に視線を向けながら問い掛け、それを受けた羽島は小さく頷いた後に言葉を続けた。
「問題ありません、ただし機龍とガルーダについてはリモートコントロールでの訓練になりますがね」
「致し方あるまい、アイツ等は相当なじゃじゃ馬だ、アイツ等をまともに扱える奴は一種の化け物だ」
羽島の言葉を受けた長曽我部は小さく肩を竦めながら答えつつ腕時計に視線を向け、首を捻りながら言葉を続けた。
「羽島、今何時だ、止まっているだ1130(ひとひとさんまる)で」
「珍しいですね、長曽我部二佐(さん)の時計が止まってるなんて」
長曽我部の言葉を受けた羽島はそう言いながら自分の腕時計に視線を向け、次の瞬間には顔をしかめながら言葉を重ねた。
「……自分も止まっています1130で」
「何だと?携帯を確認しろ!!」
羽島の言葉を受けた長曽我部はそう言いながら携帯入れから携帯電話を取り出して画面を確認し、画面に表示された時刻が1130なのを確認して羽島に視線を向けた。
「……自分の携帯も1130で止まっています」
長曽我部の視線を受けた羽島は顔をしかめさせながら言葉を発し、それを受けた長曽我部が頷いていると突然眩い閃光が周囲を包み込んだ。
長曽我部と羽島は両目を閉じて閃光をやりすごそうとしたが閃光は更にその激しさを増して行き、やがて光の渦となって極光や船団を覆い尽くした。
光の渦は一際激しく輝いた後に消失し、先程まで海原を進んでいた筈の6隻の船団は影も形も無く消え失せてしまっていた。


アルゼナル・資料室

歪に歪んだ世界に拒絶された上にその歪んだ世界を異界から襲い掛かるドラゴンから守る為の捨石として狩り集められた乙女達の終の住み処アルゼナル、絶海の孤島に設けられた広大な基地は夜の帳に覆われていた。
夜の帳の中で眠りにつくアルゼナル、その広大な基地施設の一角にはそれまでの対ドラゴン戦のデーターを収集した資料室が存在し、そこは深夜に差し掛かろうと言う時間であるにも関わらず照明が灯っていた。
蛍光灯の照明に照らされる室内では黒に近い蒼髪のツイン・テールと琥珀色の瞳の美貌が魅力的な美少女、パラメイル第一中隊副隊長、サリアが膨大な量の資料に目を通していた。
資料に目を通していたサリアは資料を捲っていた手を止めると大きく身体を伸ばし、長時間に及んだ資料とのにらめっこの余韻で軽く硬直した身体を解した後に時計で時刻を確認した。
「……もう少し、出来るわね」
時刻を確認したサリアはそう呟くと再び資料に向き直り、琥珀色の瞳に決意の光を宿しながら呟きをもらした。
「……そうよ、まだまだ頑張らなきゃいけないの、あの(ひと)の役に立つ為に」
サリアはそう呟くと脳裏にポニーテールの黒髪とアメジストの瞳の鋭さを宿した美貌が印象的な美女、アルゼナルを率いる女傑ジルの姿を思い浮かべ、頬を仄かな桜色に染めながら言葉を重ねた。
「……役に立ちたい、大好きなアレクトラの役に」
サリアは噛み締める様な口調で呟いた後に再び資料に目を通そうとしたが、それを制する様に甲高いサイレンの音が鳴り響き、それを受けたサリアは弾かれた様に立ち上がった。
「……緊急警報」
サリアは厳しい表情で呟くと資料室を飛び出し、ライダースーツに着替える為にはロッカールームに向けて駆け出した。

司令室

サリアがロッカールームに向けて駆け出した頃、アルゼナルの司令室ではジルが厳しい表情でオペレーターのヒカルの報告を受けていた。
「……先程出現した反応は依然として出現海域周辺に止まっています、レーダー反応から考えて反応は船舶で、6つの反応内3つがかなりの大型船と思われる反応を示しています」
「船舶ですって!?そんな物が何故!?」
ヒカルの報告を聞き、ジルの傍らに立っていたショートヘアと眼鏡が印象的な美女、エマ・ブロンソン監察官が驚きの声をあげ、それを受けたジルは頷いた後に口を開いた。
「しかも、この反応は唐突に我々の警戒区域内に出現した、船舶ならば前もって接近を確認出来るにも関わらず、文字通り突然にな、第一中隊に準備が完了次第、直ちに一部を発進させて接触するよう伝えろ」
「分かりました」
ジルの言葉を受けたヒカルはレーダー画面を注視しながら即座に応じ、ジルはその言葉を聞きながら司令官用のディスプレイに映し出されたレーダー画面とそれに映る6つの輝点を厳しい表情で見詰めていた。
 
 

 
後書き
次回予告

突如アルゼナル周辺海域に出現した謎の反応、それに対してジルはパラメイル第一中隊の一部に接触を命じ、それを受けたサリアはヴィヴィアン、エルシャ、ココ、ミランダを率いて謎の反応に向けて出撃した。
一方、光の渦に巻き込まれたゴジラ・コマンドは激変した状況に戸惑いを見せていたがその最中に複数のアンノウン(国籍不明機)の接近が告げられ、それを受けた長曽我部は接近するアンノウンとの接触を図る為にスーパーX3に乗り込んで出撃した。
アルゼナルとゴジラ・コマンド、本来合わさる筈の無かった異なる世界の2つの部隊、その軌跡が今、交差の時を迎える。
 
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