FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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戦車
前書き
大魔闘演舞最終日、シリルとナツどっちがルーシィの救出に行くか迷う今日この頃・・・
どっちを大魔闘演舞に参加させようか・・・
その日の夜・・・シリルside
「なっさけない!!天下の妖精の尻尾が揃いも揃ってなんてざまだよ!!」
「いやぁ・・・」
「すみません・・・」
酔っぱらってきたカナさんが机に座りながらそう言うので俺とウェンディは少し顔をうつ向かせながら謝罪する。でも今日のAチームのバトルパートは本当は俺らが勝ってたからなぁ・・・情けないって言われると少しひどい気がする。
「街中の酒場巡りで来なかった奴が偉そうに」
「見てたよ!!どこの酒場にも魔水晶ビジョンがおいてあるんだ」
「まぁ惨敗記念にパァーッとやるか!!」
「もう!!マスター!!」
エルフマンさんに文句を言われたカナさんだったが試合は見ててくれたらしい。マスターが惨敗記念とか言ってたら隣にいたレビィさんが怒る。
「しかし、とんだ1日だったな」
「そうね、私も負けちゃったし・・・明日からお互い頑張らないとね」
「ミラさん今日負けたわりに元気ですねぇ」
エルザさんとミラさん、俺がそう言う。ミラさんは今日の最終戦で負けたから落ち込んでるかな?って思ってたけど、全然気にしてないみたいでよかったです。
「明日は俺が出る!!絶対に巻き返してやるんだ!!」
「頑張れナツぅ!!」
ナツさんとハッピーがそう言う。
「ほう。火竜が出るってんなら俺も出ようか」
「そろそろ、修行の成果を見せてやるといい」
ガジルさんとリリーがそう言う。本当ガジルさんはナツさんと戦いたがるよね。同じ|滅竜魔導士として気になるところはあるんだろけど。
「あれ?ルーちゃんとグレイは来てないの?」
「そういや見かけねぇな」
俺たちはハニーボーンのそばのお店で残念会をしているのだが、この場にグレイさんとルーシィさんが来ていないのにレビィさんが気づく。
「そりゃあ2人ともあんな負け方したんだ」
「顔を出しづれぇんだろうなぁ」
マカオさんとワカバさんが2人の来ていない理由をそう推察する。
「あんな負け方したのに普通に来てる俺ってなんなんだよ」
「シリルらしくていいと思うよ」
「そうだよ!!俺にはグレイ兄もルーシィ姉もシリル兄もかっこよく見えたぜ!!」
俺を励ますようにウェンディとロメオがそう言う。優しいな、2人共。
「なーんてことになってたらどうしよう!!」
「なってねぇよ」
「相変わらず想像力豊かね。しかも長い」
ジュビアさんがいつもの妄想劇に入って1人で泣いているとグレイさんとルーシィさんが遅れてやって来る。
「ルーちゃん、大丈夫?」
「全然平気。逆にやる気出てきちゃった!!」
心配してルーシィさんに近づくレビィさん。ルーシィさんは親指を立てて大丈夫なことをアピールする。
「シャルルとセシリーは?」
「まだダメみたいです」
「ポーリュシカさんがそばにいてくれてるから大丈夫だとは思いますよ」
グレイさんにウェンディと俺はそう答える。
「よし!!みんな揃ったな!!」
マスターはそう言うと机の上に飛び乗る。
「聞けぇいガキども!!今日の敗戦は明日の勝利への糧!!やってやろうじゃねぇか、ワシらに“諦める”という言葉はない!!目指せ!!フィオーレ一!!」
「「「「「「「「「「オオッ!!」」」」」」」」」」
マスターの言葉を受けて俺たちはドンチャン騒ぎを始める。やっぱ落ち込んでる妖精の尻尾なんか妖精の尻尾じゃないよな。明日からは巻き返して、絶対に勝ってやる!!
王宮にて・・・第三者side
「よし。誰もいないな」
男はそう言うと静かに扉を開け、通路へと出ていく。
「待て」
「!」
男はそそくさと目的の場所へと向かおうとしていたが、後ろから声をかけられて立ち止まる。
「あんたか」
「久しぶりだな。ノーラン」
ノーランは振り返らずに声だけで自分の後ろにいるのが誰なのか判断する。
「あんたは今は目立った行動しちゃいけないんじゃなかったのか?」
「城に忍び込むのは目立った行動とは言わねぇよ」
そう言ってノーランの後ろに歩み寄ってきたのは魔女の罪のカミューニだった。
「先に聞いておく。お前の目的はなんだ?」
「さぁ?何のことやら」
ノーランはカミューニに嫌みっぽくそう答える。カミューニは一瞬殴ってやろうかと思ったが今は不法侵入中、騒ぎ立てるわけにはいかないのでぐっと堪える。
「今日の戦いのお前は今まで見た中で一番ひどかった上にあまつさえ反則行為に手を染めた。だから俺は思ったんだ。お前には別の目的があるのだと」
「今までで一番ひどかったはひどいな。シリルが予想外に強かったんだよ。さすがにあんたを倒しただけのことはある」
2人は2人にしか聞こえない声でそんな話をしている。
「俺の目的が知りたいといったな。だったら教えてやるよ」
ノーランは体を翻しカミューニに顔を近づける。
「お前らと同じだ」
「は?」
カミューニは一瞬意味がわからなかった。ノーランは体をさらに翻し歩き始める。
「ゼレフに似た謎の魔力。それが俺の目的だ」
「お前もゼレフを倒すために大鴉の尻尾に潜入してるのか?」
カミューニはノーランと同じように足を進めながら話をする。
「半分は正解。もう半分はハズレだ」
「ほう」
カミューニは敢えてどちらが正解かは聞かなかった。それは今日の戦いのキレのなさを見ればどちらが正解かなんて言わずともわかるからだ。
「じゃあなぜ謎の魔力を追っている」
「我々の目的はただ1つ。ゼレフの元へと帰ること」
「あぁ?」
ノーランの言った言葉にカミューニは変な声を出す。
「それってどういう―――」
どういうことかと聞こうとしたが、後ろからカミューニは足音が聞こえてきたことに気づき振り返る。そこにはまだ誰も見えなかったが、間違いなく誰かがこちらに近づいてきていた。
「ちっ。おいノーラン・・・っていねぇ!!」
カミューニはノーランに誰か来ていることを伝えようとしたが、ノーランの姿はすでにそこにはなかった。
「やっべ!ひとまず撤退するか」
カミューニはノーランがいなかったことに驚き声を出してしまったため、急いで王宮から逃げ出した。
「しかしゼレフの元に帰るってどういうことだ?マジ意味わかんねぇ」
カミューニはノーランの言葉にひっかかりを覚えたが、特に気にすることなく王宮から逃げていった。
シリルside
「次は誰だ!?景気付けにかかってこい!!」
「いいぞナツ!!」
「弱ぇぞマックス!!」
俺たちはさっきの宴会の続きをしているのだが、ナツさんとマックスさんがなぜか勝負することになり、一瞬でナツさんがマックスさんを沈めてしまったため暴れたりないナツさんが挑戦者を募っているのである。
「大丈夫ですか?」
「しっかりしてください」
ウェンディと俺は伸びているマックスさんを揺するが完全に白目を向いているため目覚める気配がない。やれやれ・・・
「おもしれぇ。俺が相手してやるよ」
「よせよ。お前とナツじゃ遊びじゃなくなる」
ガジルさんがナツさんと戦おうとしたがその隣にいたラクサスさんが冷静に止める。
「おうおう、丸くなったものだねラクサス」
「やめなよガジル」
ガジルさんはラクサスさんが止めたことに対し頭をポンポン叩きながらそう言い、レビィさんがそんなガジルさんを後ろから止めようとする。
「貴様!!ラクサスになんてこと!!今我らの誇りが踏みにじられている!!」
それを見たフリードさんはガジルさんに怒りを覚えそう怒鳴る。
「ラクサス親衛隊雷神衆、集合!!」
フリードさんがエバーグリーンさんとビックスローさんを呼んだが2人はカナさんに酔い潰されてしまっており立ち上がることができない。
「姉ちゃん強ぇじゃねぇか」
「へ?」
2人を酔い潰しそれを笑って見ているカナさんに1人の男が近づいていく。
男はカナさんの隣に座るとお酒の入ったグラスを机に置く。
「俺と比べてみねぇか?」
「ほう・・・どちら様か知らないけど、酒で私と勝負?」
男の人に挑戦されカナさんはそう言う。
「オイ!!誰だか知らねぇがやめとけ!!」
「こう見えてもこの女化けもんだぞ!!」
無謀なチャレンジをしようとする男の人にマカオさんとワカバさんがそう言う。どうなるかおおよそわかるけどね。カナさんがお酒で負けるわけないし。
俺はカナさんとその男の人のお酒比べを見物してみることにした。
しばらくして・・・
「「ウソだろ!?」」
マカオさんとワカバさんが驚きの声を上げる。なんと予想を裏切り、カナさんが先に酔い潰れてしまい今は御店の床に崩れ落ちている。
「ガハハハハッ!!」
男の人はさらにお酒を一杯飲み干すと大笑いしながら立ち上がる。
「マジか!?」
「カナが飲み比べで負けたの!?」
「ぶっ倒れるカナなんか初めて見たぞ!!」
「あの人すごすぎです!!」
「カナさん大丈夫かな?」
ジェットさん、ラキさん、ウォーレンさん、俺がカナさんが倒れたことに驚き、ウェンディは横たわるカナさんを心配そうに見つめている。
「こいつは戦利品にもらっとくぁ」
男はそう言ってカナさんの上に着ている水着を奪っていく。
「シリル見ちゃダメ!!」
「痛ッ!!」
上半身を隠すものがなくなったカナさんを見ていたわけでもないのにウェンディに目を塞がれてしまう。力強い強い!!
「何すんだてめぇ!!」
「ギルダーツに殺されんぞ!!」
マカオさんとワカバさんがカナさんの上着?を取られたことに激怒するが男は酔っていて聞こえないのかただ大笑いするだけである。
「返せや!!」
「あまりうちのギルドなめてっと・・・」
マカオさんが後ろから男を殴ろうとするがフラフラしていたその人は前に倒れるように避ける。
「ヒック」
男の人はそのまま倒れた反動を使い起き上がると後ろにいるマカオさんとワカバそんの顔にチョップを入れ、2人を床へと叩きつける。2人の頭が叩きつけられたところの床は見事に凹んでしまっていた。
「なんだこいつ!?」
「父ちゃん!!」
ウォーレンさんとロメオが男の人と倒されたマカオさんたちを見てそう言う。
「バッカス?」
「ああ?」
エルザさんは男を見て名前を呼ぶ。男もそれに気づくと跳び跳ねるように起き上がる。
「よぉ、エルザじゃねぇか。ヒック」
「くさい」
「相変わらずいい女だねぇ」
バッカスと言われた男もエルザさんのことを知っているようだ。
「久しぶりだな」
「知り合い?」
ルーシィさんがエルザさんに質問する。
「7年も姿を眩ませてたんだって?」
「そうだな。お前は今日の大魔闘演舞には出ていなかったようだが」
エルザさんがそういうとバッカスさんは大笑いを始める。そういえば四つ首の猟犬にこんな感じの人いたような気が・・・
「今日のところは若ぇ連中に任せておこうと思ったんだがよぉ、ウォークライとノバーリの様を見ちゃ黙ってられないのが男の魂ってもんよ!!明日は俺が出るぜ。魂が震えてくらぁ」
バッカスさんはそう言ってエルザさんから離れていく。
「明日以降ぶつかることがあったら、いつかの決着をつけてぇな」
フラフラしながら扉に向かって歩いていくバッカスさん。バッカスさんは足を止めて横目でエルザさんを見る。
「魂はいつでもワイルドォ?」
「フォー・・・」
突然振られたエルザさんは力ないフォーを言う。というか顔が嫌そうなんですけど。
「乗り悪ぃよエルザ!!」
バッカスさんは大笑いしながら扉を開けて出ていってしまう。もちろん扉は開けっ放しです。
「なんなのあいつ?」
「元気な人でしたね」
ルーシィさんとウェンディがいなくなったバッカスさんの方を見ながらそう言う。
「四つ首の猟犬のS級に当たる男、奴とは仕事先でぶつかることが多くてなぁ。その強さはよく知っている」
「あの酔っぱらいの人が強いんですか?」
エルザさんに俺はそう聞く。
「ああ。酔いの鷹、酔・劈掛掌のバッカス。何度か戦ったことがあるが決着はつかなかった」
「エルザと互角!?」
「すごい・・・」
「あの人が?」
エルザさんにそう言われルーシィさん、ウェンディ、俺は驚いている。
「なーに、昔の話だろ?今のエルザか負けるわけねぇ」
「エルザが戦う前提なのか?」
「俺がやってもいいけど」
いつの間にか取っ組み合いを始めているナツさんとグレイさんがそう言う。俺は今日バトルパートに出たからたぶん明日は戦ったりすることはないだろうけど、どれくらい強いのか見てみたいなぁ。
翌日・・・
『さぁ、皆さんおまちかねの大魔闘演舞2日目が始まりましたぁ!!』
実況のチャパティさんの声が会場の観客たちを盛り上げる。昨日はあのままナツさんとグレイさんをなんとかなだめてお開きとなり、今は大魔闘演舞2日目を迎えていたりする。
『2日目のゲストは週刊ソーサラーの名物記者、ジェイソンさんです』
『COOL!!』
今日のゲストは24時間耐久ロードレースとナツさんvs.ラクサスさんの決闘の時に司会を務めたハイテンション記者のジョンソンさん。
『さぁ競技パートはすでに始まっております。その名は『戦車』!!
この競技は連結された戦車の上から落ちないようにゴールを目指すというものです。足元の戦車は常に動いているため一瞬の気の緩みがミスへと繋がります』
チャパティさんが今日の競技パートのルールと注意点を説明してくれる。
『クロッカスの観光名所を巡り、ゴールであるここドムス・フラウに一番に到着するのはどのチームか!?会場の皆さんには魔水晶ビジョンにてレースの様子をお届けします』
『COOL!!』
チャパティさんとジェイソンさんがそう言う。俺たち妖精の尻尾は魔水晶ビジョンを見て唖然としている。これは完全に失敗したな・・・
『それにしてもヤジマさん、こんな展開誰が予想できたでしょうか』
『う~む・・・』
チャパティさんとヤジマさんもビジョンを見て少々呆れ気味だ。
「なんでナツを出した!?」
「戦車って競技名で予想できるよね普通」
グレイさんとルーシィさんがエルザさんにそう言う。
「どうしても出ると聞かないもんでな」
「戦車と戦えるとか思ったんですかね?」
「いくらナツさんでもそれはないんじゃない?」
エルザさんの俺とウェンディがそう言う。いや、ナツさんじゃあそういう勘違いもしそうな気がするぞ。
『なんとー!!先頭より遥か後方妖精の尻尾Aナツがグロッキー状態です!!』
ナツさんはレースのはずなのにまるで止まっているかのようなスローモーションで動いている。ナツさんは乗り物に弱いのだから当然といえば当然ではあるのだが。
『それだけではありません。すぐ近くで妖精の尻尾Bガジルと剣咬の虎スティングまでがグロッキー!!』
『うぷ・・・』
『な・・・なぜ俺が・・・』
『おおお・・・』
3人は顔面蒼白で今にも吐きそうな勢いで競技に参加している。それを見た会場からは「えー!?」という声が聞こえる。
『これは一体どういうことでしょう?ヤジマさん』
『3人に共通する何かがあるのかねぇ』
チャパティさんとヤジマさんがそう言う。
『乗り物に弱ぇのは・・・火竜の・・・あれだろ?』
ガジルさんも以前までは乗り物なんて平気だったはず。なのに今は俺と同じで乗り物に酔ってしまっている。
『さぁ、先頭集団の方を見てみましょう!!こちらは激しいデットヒート!!』
チャパティさんはどうやら進んでいるのかいないのかさえわからない3人は放っておいて1位争いを実況するようだ。
『先頭は大鴉の尻尾クロヘビ!!それを追う青い天馬一夜、蛇姫の鱗ユウカ、人魚の踵ソフィア!!』
一夜さんとユウカさん、それとソフィアさんはナツさんたちとは違いかなりのハイスピード勝負をしていた。
『ゼーハー・・・メェーン!!』
『あんたよくその体型でついてこれるな』
一夜さんにユウカさんがそう言う。
『なんでこんな男ばっかの競技にソフィアが・・・』
一方ソフィアさんは何やら不満そう・・・昨日もシェリアさんに抱きついてたし、女の子をベタベタしてるのが好きなのかな?
『やや離れたところに四つ首の猟犬バッカス!!』
『うぅー参ったな、昨日の酒がまだ抜けねぇやい』
3人の後方にいるのが昨日カナさんを酔い潰したバッカスさん。3人に比べると少しゆっくりしたスピードになっている。
『波動ブースト!!この衝撃波の中で魔法は使えんぞ!!』
ユウカさんが一夜さんとソフィアさんの前に出て魔法封じの魔法の使う。
『それソフィアには意味ないから』
しかしソフィアさんが腕を振るうとその衝撃波がユウカさんの方へと戻っていきそれによりユウカさんの魔法が消えてしまう。
『なんと!!ソフィアがユウカの波動を打ち消したぁ!?』
『正しくは跳ね返したって感じだったけどね』
チャパティさんとヤジマさんがそう実況する。
『何!?』
『自分の魔法で魔法打ち消してたら意味ないね』
動揺しているユウカさんをソフィアさんが追い抜かす。
『2人ともやるな。ならば!!』
一夜さんは2人に対抗するためにベルトから2本のビンを取り出す。
『駿足の香り!!零距離吸引!!』
一夜さんは2本の小瓶を穴の穴にくっつけて吸い込む。しかも魔水晶ビジョンも何を考えたのかメッチャアップで撮ってるし・・・
『とぉー!!』
『『なぁ!?』』
一夜さんはソフィアさんとユウカさんを交わして2位へと躍り出る。
『おぉ頑張ってんな。魂が震えてくらぁ。俺も少しだけ頑張っちゃおうかな!?』
バッカスさんはその場で足を上げると思いきり四股を踏む。
『よいしょぉ!!』
するとそのあまりの威力にソフィアさんたちの乗っている戦車が破壊されてしまう。
『こ・・・これは・・・バッカスのパワーで戦車が崩壊!!』
「あいつ・・・7年前よりパワーが・・・」
「す・・・すごい・・・」
戦車を破壊したバッカスさんを見てこれを見ている全員が驚く。
『おっ先!!落ちたら負けだぜ!!』
バッカスさんは戦車が壊れたことにより倒れてしまった一夜さんたちを追い越していく。
『なんだね?あれは』
『汚ねぇ』
『ひどい!!』
一夜さん、ユウカさん、ソフィアさんはどんどん先へと走っていくバッカスさんを見てそう言う。
バッカスさんはそのまま全速力で走っていき、先頭を走っていたクロヘビを追い越してドムス・フラウにあるゴールへと飛び込む。
『そのまま1着でゴール!!』
『震えてくらぁ!!』
ゴールしたバッカスさんを観客たちが大歓声で迎え入れる。
『四つ首の猟犬10ポイント獲得!!』
バッカスさんのあまりの強さに俺たちは唖然としてしまう
『続いて2着、大鴉の尻尾クロヘビ!!3着ソフィア、4着ユウカ、5着一夜!!』
バッカスさんによって戦車が破壊されたことで遅れてしまったソフィアさんたちも無事にゴールする。
『残るは最下位争いの3人ですが・・・』
ビジョンはいまだにゴールできていないナツさんたちへと向けられる。3人は吐き気になんとか耐えながら懸命に、そしてゆっくりとゴールを目指している。
『ば・・・バカな・・・俺は乗り物など平気だった・・・』
『じゃあ・・・やっとなれたんだな・・・』
『あぁ?』
口を押さえているガジルさんにスティングさんが何かを話している。
『本物の・・・滅竜魔導士に・・・うっ・・・おめでとう、新入り』
『ぐぅぅ・・・』
スティングさんに新入り呼ばわりされたガジルさんは怒って体当たりする。
『てめぇ!!』
『あぱぁ!!』
『うおっ・・・』
ガジルさんが体当たりするとスティングさんとガジルさんの間にいたナツさんも巻き込んでしまう。
『がはっ・・・力が出ねぇよ・・・』
情けない3人に会場からは爆笑の嵐。しかし、本物の滅竜魔導士になると乗り物に弱くなるのか。
「そういえば滅竜魔法の魔水晶を手に入れてから乗り物に弱くなったような・・・」
「つまりシリルも本物の滅竜魔導士になったってことね」
俺に対してルーシィさんがそう言う。
「でも、それだとなんでウェンディは平気なんだよ」
「なんででしょうね」
グレイさんが素朴な疑問をぶつけるがウェンディはわからないのでそう答えるしかない。なんでウェンディは平気なんだ?でも乗り物酔いしてるウェンディって可哀想で見てられないかも・・・
『うおおおお・・・前へ・・・進む!!』
ナツさんとガジルさんは戦車に手をつきながらも少しずつ、少しずつ前へと進んでいく。
『かっこ悪ぃ。力も出せないのに・・・マジになっちゃってさ』
バカにしたように言うスティングさん。ナツさんとガジルさんはそんなことなどお構いなしに這いつくばりながらゴールを目指す。
『いいよ、くれてやるよこの勝負。俺たちはこの後も勝ち続ける。たかが1点2点いらねぇっての』
『その1点に泣くなよボウズ』
完全に進むことを諦めたスティングさん。ナツさんとガジルさんは吐き気を飛ばすためなのか叫びながら進んでいく。
『1つだけ聞かせてくんねぇかな?』
『『ああ?』』
懸命に進もうとする2人にスティングさんが質問する。
『なんで大会に参加したの?あんたら。昔の妖精の尻尾からは想像できねぇんだわ。ギルドの強さとか、世間体的なもの気にするとか、俺の知ってる妖精の尻尾はさ、もっとこう・・・マイペースっつうか、他からどう思われようが気にしねぇっつうか』
『仲間の・・・ためだ』
スティングさんの問いにナツさんはそう答える。
『7年も・・・ずっと・・・俺たちを待っていた・・・どんなに苦しくても、悲しくても、バカにされても、耐えて・・・耐えて・・・ギルドを守ってきた。仲間のために俺たちは見せてやるんだ。
妖精の尻尾が歩き続けた証を!!だから前に進むんだぁ!!』
ナツさんが叫ぶとギルドを守ってくれていた皆さんが感涙する。
ナツさんとガジルさんは戦車に這いつくばり、苦しいながらも懸命にゴールへと向かっていく。
『うおおおおおおおお!!』
そしてついに、2人はドムス・フラウのゴールのゲートへとたどり着いた。
『GOAL!!妖精の尻尾A、ナツ6位!!2ポイント!!』
『ポイント初ゲット・・・』
『妖精の尻尾B、ガジル7位!!1ポイント!!』
『ギヒッ』
ゴールした2人は力を使いきったためかそのまま倒れ動けなくなる。
「あいつらの執念」
「ああ、すげぇ」
「なんなんだあいつら」
意地でポイントを獲得してみせたナツさんとガジルさんを見て観客たちがざわめきだす。
「妖精の尻尾ねぇ、ちょっといいかもねぇ」
「少し感動しちまった」
「俺応援しようかな」
感動した観客の皆さんが盛大な拍手を2人に贈る。
「いいぞ!!妖精の尻尾!!」
「これからは応援するぞ!!」
そんな声を受けながらもナツさんとガジルさんは突っ伏したまま顔を青くしていた。
『なお、剣咬の虎スティングはリタイア、0ポイントです』
スティングさんはあのままゴールすることは諦めたみたいだ。そして会場にこの競技によってのポイントが加算された得点が発表される。
『さぁこれで1位は大鴉の尻尾!!』
『COOL!!』
『剣咬の虎は2位に転落です』
得点は
1位 大鴉の尻尾 26P
2位 剣咬の虎 20P
2位 蛇姫の鱗 20P
4位 青い天馬 17P
5位 四つ首の猟犬 12P
6位 人魚の踵 9P
7位 妖精の尻尾A 2P
7位 妖精の尻尾B 2P
となった。
「でもこれで初めてのポイント獲得ですね!!」
「うん!!ナツさんすごい頑張ったもんね!!」
俺とウェンディは得点表に0Pから2Pと刻まれたことで喜んでいる。まだまだ順位は下だけど、ここから巻き返していけばいいんだ。
「それよりナツを助けにいかないの!?」
「あ、そうでした」
俺たちはいまだに起き上がることのできないナツさんを、Bチームも起き上がれないガジルさんをラクサスさんとエルフマンさんが抱えて医務室へと連れていった。
後書き
いかがだったでしょうか。
次はワイルドな戦いをやらせていただきます。
次回もよろしくお願いします。
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