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戦国異伝

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第二百二十話 戸次川の戦いその三

「平八郎、御主じゃ」
「畏まりました」
 本多もすぐに答えた。
「それでは」
「第二陣はじゃ」
 今度は井伊と榊原を見た。
「御主達じゃ」
「では」
「お任せ下さい」
「御主には竹千代の補佐を頼む」
 酒井にはこう命じた。
「そして第三陣じゃ」
「承知しました」
「そしてじゃ」
 四天王を入れた十六人の家臣が徳川十六臣だ、その残り十二人にもだ。家康は確かな声で告げたのだった。
「御主達は皆竹千代の下に置く」
「して殿は」
「どうされますか」
「わしは後詰じゃ」
 笑っての言葉だった。
「この度は竹千代に任せるわ」
「ですか」
「そうされますか」
「うむ」
 まさにというのだ。
「では頼んだぞ」
「はい、では」
「我等は竹千代様と共にです」
「島津に勝ちます」
「殿のご期待に添えます」
「そういうことでな、ではさらに進むとしよう」 
 こう言ってだ、家康は今は自ら後詰となってだった。
 主な家臣達は全て竹千代に預けていた。そうして先に進んでいた。
 そして信長もだ、信忠に言っていた。その戸次川に向かう途中で。
「よいな、この度はな」
「はい、それがしが」
「わしは前には出ぬ」
 それで信忠がというのだ。
「采配は御主が執れ」
「そうさせて頂きます」
「侮るな、しかしじゃ」
「怯えてもですな」
「ならん」
 このことも言う信長だった。
「断じてな」
「侮らず怯えず」
「そして常に乱れずじゃ」
「そうすればですな」
「御主なら勝てる」
「島津相手にも」
「島津の戦は知っていよう」
 敵である彼等をというのだ。
「そうじゃな」
「はい、島津はです」
 この彼等はというと。
「伏兵に、それに誘き寄せてです」
「罠にかけてくるのう」
「そうしてきます」
「ならわかるな」
「はい」
 信忠も確かな声で答えた。
「こちらはそれに乗らないまで」
「そういうことじゃ」
「では」
「わしは後詰じゃ」
 信長もこう言った。
「そこで見させてもらう」
「畏まりました」
「とはいってもな」 
 ここでだ、信長は笑ってこうしたことも言った。
「既に軍議はした」
「それで決まっています」
「だから御主はな」
 この軍議の時信長は主の座にあった、信忠は重臣筆頭と呼ぶべき座にいたがそれでも主ではなかった。
 だからだ、この度の戦もというのだ。 
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