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戦国異伝

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第二百二十話 戸次川の戦いその二

「あの町を」
「長崎か」
「あそこでも港を開き貿易を考えておられるとか」
「明、南蛮とか」
「どうやら」
「ふむ。貿易を大々的にか」
 家康は信長のその政を知り言うのだった。
「琉球との貿易もされたいというし」
「やがては外にですな」
「南に船を出したいとも考えておられるというしな」
「信長公は相当大きなことを考えておられますな」
「そうじゃな、しかしそれで南蛮とどうなるか」
「南蛮とですか」
「よからぬ話を聞く」
 ここでだ、家康は顔を曇らせてこう言った。
「南蛮、特に耶蘇教のな」
「と、いいますと」
「他の国を攻め取り人買いの如きこともしておると」
「人買いですか」
「売った者を奴婢としておるとか」
「奴婢、ですか」
 これには本多だけでなくだ、他の徳川の家臣達も驚きの声をあげた。
 そしてだ、驚きを隠せない顔で家康に言ったのだった。
「幾ら何でも」
「奴婢はないのでは」
「その様なものは流石に」
「本朝では久しくありませぬし」
 こう口々に言うのだった。
「明でもです」
「あの様なものをまだ持っているとは」
「幾ら何でも」
「わしもそう思うのだが」
 家康も言うのだった。
「どうもな」
「まことだと」
「そうだというのですか」
「その様じゃ」
 こう家臣達に話すのだった。
「どうやらな」
「ですか。では」
「南蛮が若し本朝の民を奴婢としておるのなら」
「その時はですか」
「民を守らねばなりませんな」
「うむ」
 その通りだとだ、家康も頷いて答えた。
「そんなことをされてはたまったものではない」
「民がいてこその国ですから」
「その国を保つ為にも」
「民を奪われてはなりませぬ」
「そこは戦をしてでもですな」
「そういうことじゃな、とにかく今はな」
 家康は南蛮の話から戦の話に戻した、肥後に向かいつつ言った。
「島原等への備えはじゃ」
「はい、あの地の国人達に任せますな」
「あの辺りは」
「肥前もな」
 その国もというのだ、その島原等がある。
「鍋島殿の家臣の方々にな」
「守って頂き」
「そして我等は」
「このまま南を下り」
「薩摩を目指しますな」
「島津の主力は吉法師殿、奇妙殿の方に向かわれた」
 信長、信忠親子が率いる主力にというのだ。
「我等には一万の軍勢が来る」
「しかしその一万がですな」
 嫡子の信康が家康に言って来た。
「手強いですな」
「そうじゃ、薩摩隼人じゃ」
「天下にその強さを知られた」
「その強さは相当じゃ」
 だからだというのだ。
「油断はならぬぞ」
「ですな、では」
「先陣はじゃ」
 家康は本多忠勝を見て彼に告げた。 
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