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異界の王女と人狼の騎士

作者:のべら
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第二十二話

 早朝だというのに、学校は普段とは異なる慌ただしさに包まれていた。

 校門の前には制服警官が立ち、出入りする人間をチェックしている。
 奥の駐車場には数台のパトロールカーと同じくパトランプをつけたワゴン車が2台、消防車が2台停めてあるのが見える。

 あの事件が発覚したようだ。でも、消防車は変だな。

 俺は携帯を見るが、学校からのメールはない。通常連絡事項があればまずメールで周知するんだけど、そこまで回っていないんだろうか。
 ニュースサイトに接続する。……俺の高校で火災が発生というニュースが目に入った。
 読んでみると、使用されていない廃校舎で火災が発生したこと。普段人気は無く、火の気は無いこと。消防と警察で出火原因について調査中(AM5:00)。

 つまり犠牲者は出ていない?……まだ発見されていないと言うことなんだろうか。だから学校からも連絡がない? ということなんだろうか?
 
 時間がまだ早いから、登校する生徒の数はまばらだ。部活の朝練に来ているヤツらくらいだろう。
 普段こんな時間に来ない俺が行くのは、他の人から見ると変に思われるんじゃないか? と一瞬考えてしまったが、今はそんなことを言っている場合じゃない。

「おはようございます」
 俺は制服警官に挨拶をし、促されて生徒手帳を提示する。
 機械的に内容を確認し、すぐに返される。
 終始無言だ。
「何かあったんですか? 」

「ああ、奥の校舎で火災があったんだよ」
 と、事実だけを教えてくれた。

 俺は軽く会釈をすると、敷地の中へと歩いていく。
廃校舎の方へ行ってみたけど、立入禁止のテープが貼られていてとても入れそうじゃなかった。
 まだ始業まで時間があるから、俺はブラブラと歩く振りをしながら敷地内を歩いていく。

 昨晩、如月は地下へと沈んでいった……。
 地面の中を高速で移動でもできない限り、遠くへは行けないに違いない。如月のままなら当然人目につくから廃校舎付近の木立の中で身を潜めるはずだし、仮にアイツの体から出ていたとしたなら、寄生根は自力では動けないとか行ってたから、風任せで動くしかないだろう。

 俺は再び携帯を取り出し、昨晩の風の状況を検索する。

 ——ほぼ無風——

 つまり、どちらにしてもこの付近にしか存在し得ないんだな。
 極力目立たないように探そうと思っていたが、事態はこちらにとっては不利だ。
 火災があったせいか、廃校舎付近には消防や警察の関係者がいまだに実況見分を行っているようだし、それに学校関係者も付き合わされている。
 さらに部活とかで早出してきた生徒も校門に停めてあったパトカーを見て野次馬根性丸出しでやって来て、そのたびに教員に追い払われている。
 俺も同様に草むら付近を探っているところを担任に見咎められ、追い払われたところだったんだ。
 
 何度か野次馬に紛れながらアプローチをするも同じように発見される。あまり回数を続けるとさすがに不味いな。

 そう思った頃にはもう始業が近づいていたんだ。

 教室に行かないわけにもいかない。
 俺は校舎に足を踏み入れ、その時初めてこれからの俺を待ち受ける困難な状況を思い出さされた。
 そう……。
 教室に行けば、そこには日向寧々の姿は無い。そして、当然、彼女と付き合っていた、俺の友人の漆多伊吹(うるしだ いぶき)と顔を会わさざるをえないんだ。
 あいつは寧々がどうなったかを知ってしまっただろうか? それとも知らないんだろうか?
 俺はアイツに問われたとき、どう答えればいいんだ?

「月人、寧々ちゃんが殺されてしまったんだ。なんでなんだよ」

「なあ月人、お前、昨日、寧々ちゃんがなんであそこに行ったか知らないか? 」

「月人、お前、あそこで寧々ちゃんと何してたんだ? 」

「月人、寧々は……死んでしまったんだ。なんで一緒にいたお前だけが生きているんだ? 」

「月人、なんで寧々を護ってくれなかったんだよぉ……」

 俺は締め付けられるような苦しみを感じた。
 それは、如月に殺されかけた時に感じた痛みなど比にならないくらいの苦しみだった。
 
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