FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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星降ル夜ニ
「各チーム、隠密の参加者は前へ」
そう言ったのは昨日の予選の時に立体映像で出てきたカボチャだった。
「行ってくるぜ」
「頑張って!!」
「グレイさん!!ファイトです!!」
カボチャに言われグレイさんが前に歩いていく。ルーシィさんとウェンディがグレイさんにエールを送る。
「絶対負けんなよ!!特にガジルのチーム!!それと剣咬の虎!!大鴉の尻尾!!それと・・・」
「要するに1位を取って来ればいいってことです!!」
ナツさんがどこに負けるなと細かく言おうとするので俺が簡潔にそう言う。
『いよいよ始まりますね。果たして隠密とはどんなゲームなのか。解説のヤジマさん、注目の選手はいますか?』
『うーん、本命は剣咬の虎のルーファスくんだろうけど、ワスはグレイくんに注目したいねぇ』
チャパティさんとヤジマさんがそう言う。
『本日のゲスト、青い天馬のジェニーさんは?』
『もちろん、うちのタクトくんよ。すっごく強いんだから』
チャパティさんに注目選手を聞かれジェニーさんはそう答える。それにより会場のボルテージがより一層上がってくる。
「グレイ様、申し訳ありませんが負ける気はないですよ」
「当たり前だ。全力で来い」
ルール説明のためにカボチャの周りに集まった参加選手たちの中、隣同士に並んでいるジュビアさんとグレイさんがそう言う。
「悪いが俺も全力でやらせてもらう。ジュビアのために!!」
「あうう・・・」
リオンさんにそう言われジュビアさんは顔を赤くしていた。
「ほっとけよ、バカが移るぞ」
グレイさんはそう言った後、みんなが気になっていたであろうことをついに聞く。
「つーか、予選の時から気になってたんだが、お前何?」
グレイさんはカボチャに一歩歩み寄る。俺も気になってました。何かなあれ?マスコット?
「見ての通り、カボチャですぅ」
「あれ?質問した俺が悪いのか?」
カボチャから分かりきった答えを返され焦るグレイさん。
「ジュビアもカボチャに見えますよ?」
「いや、見た目はカボチャなんだが・・・中身が・・・」
ジュビアさんもどうやらグレイさんの言葉の意図を読みきれていなかったらしくグレイさんはなんと質問すればいいのかわからなくなっていた。
「毎年いるからあんま気にしたことなかったけど」
「たぶん、主催者側の役員だと思うの!!」
タクトさんとベスさんがグレイさんにそう言う。すると2人はカボチャの方を向き直り姿勢を正して頭を下げる。
「「キャラ作り、ご苦労様です!!」」
「ノーノー!!楽しんでやってるからいいんだカボ!!」
「無理矢理キャラを濃くすんなよ・・・」
更なるキャラ作りを目指し始めたカボチャにグレイさんがそう言った。
「ちょっと待ってくださいや」
和気藹々とした雰囲気の中、大鴉の尻尾のナルプディングが割って入る。
「これから始まる隠密って競技、どんなもんか知りやせんがね、いーや、今後全ての競技に関してですがね、どう考えても2人いる妖精さんが有利じゃありやせんかね?」
「ああ?」
ナルプディングは決勝に2チーム残った俺たち妖精の尻尾を見てそう言ってきた。
「仕方ありませんよ。決勝に同じギルドが2つ残るなんてすごいことなんですから・・・か・・・カボ」
カボチャがそう言う。てかまだ完全に役作りできてないし。
「いいのではないかな?私の記憶が歌っているのだ。必ずしも2人いることが有利とは言えないと」
「オラも別に構わねぇだ!!」
「アチキもいいと思うよ」
「チッ」
剣咬の虎のルーファスさん、四つ首の猟犬のイェーガーさん、人魚の踵のベスさんが認めたことによりナルプディングは不満そうに舌打ちする。
「なんで2人だと有利になるの?」
「そこからでさ!?」
タクトさんはなぜか2人いるのが有利だと分かってなかったらしい。大丈夫なのかなあの人。
「さすがだねぇ、それが王者の余裕って奴かい?」
「仲間は君にとっても弱点になりうる。人質、強迫、情報漏洩。他にもいくつかの不利的状況を構築できるのだよ。記憶しておきたまえ」
「忘れなかったらな」
ルーファスさんに仲間が同じ競技にいる弱点を挙げられそう返すグレイさん。
「フィールドオープン!!」
ようやく参加者たちのお話に一段落ついたのでカボチャが隠密を行う会場を作り上げる。
「なんだ?」
次第に闘技場の中にたくさんの建物が建っていく。
「街!?」
「うわっ!!」
「でかいぞ!!」
「すげぇ・・・」
「どうなってるんですかこれ?」
次第に出来上がっていく街。もしかしてこれって具現化魔法か?すごい魔力だな。
「ジュビア!!リオン!!他の奴等はどうした?」
街が完成するとさっきまで近くにはずのジュビアさんたちがいなくなっていることに気づくグレイさん。
「みんなが消えた?」
ジュビアさんも同様にいなくなったグレイさんたちを探している。
「なるほど、こういう思考か」
リオンさんは何やらこの競技の意図を感じ取ったらしい。
「おおっ!!なんだこれ!?すげぇ!!」
タクトさんは現れた街に大はしゃぎでもはや競技のこと分かってないんじゃないかな?
「ここでかくれんぼ?うわぁ、どこに隠れよう」
ベスさんは現れた街で隠れる場所を探している。
「かくれんぼにしてはおかしいだなぁ。鬼がいねぇ」
イェーガーさんは周辺に誰もいないことを不審に思いそう言う。ちなみになぜ俺がこんなに状況を見えているかというと・・・
『会場の皆さんは街の中の様子を魔水晶ビジョンにてお楽しみください』
ということで観客席のどこからでも見ることのできる巨大魔水晶ビジョンを見ているためだったりする。
『参加している8名は互いの様子を知ることはできません。
隠密のルールは簡単!!互いが鬼であり、追われる側なのです』
「なんだと?」
「どういうことなんですか?」
チャパティさんの説明がイマイチわからなかった俺。チャパティさんはルールの続きを話始める。
『この街の中で互いを見つけどんな魔法でも構いません、一撃を与える。ダメージの有無を問わず攻撃を与えた側が1ポイント獲得です』
ちなみに攻撃された方は1ポイントマイナスになるらしい。でもそれじゃあ隠密なんかじゃなくて激しい戦いになりそうな気がするんですけど・・・
俺がそう思っていると魔水晶ビジョンに映っているグレイさんたちの周りに何かが現れる。
「ん?」
「なんだろう?あれ」
俺とウェンディは画面をじっと見つめる。現れた何かは次第に人の形へとなっていき、やがてこの競技に参加している8名と瓜二つの人物たちがたくさん姿を現した。
「同じ顔がいっぱい?」
「うぷっ・・・」
「ナツさん!?大丈夫ですか?」
ルーシィさんがビジョンを見てそう言い、ナツさんが吐き気を催したことにウェンディが心配する。
「大量のグレイとか・・・気持ち悪ぃ・・・」
「グレイさんに限らず同じ顔がたくさんあったら気持ち悪いと思いますよ?」
ナツさんにそう突っ込む俺。さすがに俺は吐き気まではいかないけどね。
「これは厄介だな。どれが本物のグレイか、我々もわからなくなりそうだ」
エルザさんがそう言う。この中から本物の敵に攻撃しなきゃいけないのか、中々難しそうなゲーム。
『これは皆さんのコピーです。間違えてコピーに攻撃をしてしまった場合、1ポイントの減点となります』
チャパティさんがそう言う。コピーに攻撃してもいけないなんて、ますます難しそう・・・
『さぁ、消えよ!!静寂の中に!!闇夜に潜む黒猫が如く!!』
そのアナウンスと共に闘技場の人物像の近くに取り付けられている巨大な銅鑼が叩かれ、大きな音が鳴り響く。
『隠密、開始!!』
ついに大魔闘演舞の競技が始まった。俺たちはその様子を魔水晶ビジョンから見届ける。
「でもこれってかくれんぼというよりも・・・」
「鬼ごっこ的な要素の方が強いよね」
ウェンディと俺はビジョンを見ながらそう言う。
『グレイ様がいっぱーい!!これだけいるんだから1人ぐらいジュビアがもらっても!!』
たくさんのグレイさんのコピーを見たジュビアさんが目をハートにして偽グレイさんに飛び付く。
『グレイ様~ん♪』
ブッブー
ジュビアさんがグレイさんのコピーに後ろから抱きつくとそんな音が聞こえてくる。
『ああん!!』
ジュビアさんが映し出されるビジョンに-1と記された後、ジュビアさんは違う場所へと飛ばされてしまう。
『おおっと!!ジュビアがコピーへの攻撃で減点1です!!』
さっきの抱きついたのが攻撃と判断されてしまったようだ。ドンマイです、ジュビアさん。
『この場合、10秒後に別の場所よりリスタートとなります。また、他の魔導士にやられてしまった場合も1ポイント減点され、10秒後に別エリアにてリスタートです』
そんなルールがあるのか。だったら初めから言ってくださいよ。
『時間内であれば、リスタートは何度でも可能です。制限時間は30分。一番得点を稼いだチームが1位です』
次々にルールを競技開始後にいい始めるチャパティさん。昨日の突然の予選開始といい、段取りがなってなさずきですよ。
『この競技、隠れるより見つける方が難しいだろ!!』
グレイさんはポイントを奪取するためかたくさんいるコピーの間を走っていた。
『いやいやいやいや』
『!!』
走り回っているグレイさんに後ろから声をかける男がいる。グレイさんは立ち止まりそちらを振り向く。
『ルールは早めに理解しておいた方がいいでさ』
『誰だ?』
『大鴉の尻尾、ナルプディング』
グレイさんの前に現れたのは昨日俺たちを襲ったノーランのいるギルドのこの競技の出場選手、ナルプディングだった。
『てめぇの方からやってくるとはな』
『ヒッヒッヒッヒッヒッ』
不敵に笑うナルプディング。
『見つける手間が省けたぜ!!』
グレイさんはそう言い魔法を放つ。
『氷槌!!』
グレイさんの攻撃が見事にナルプディングに命中する。
『これでポイントもらえんだろ?』
決め顔のグレイさん。しかし・・・
ブッブー
鳴った音はジュビアさんがコピーに抱きついた時になった音と同じだった。
『何!?攻撃は命中したはず!?』
「一体どうして!?」
ビジョンのグレイさんと隣にいるウェンディがそう言う。
『ヒッヒヒヒヒヒヒ』
するとグレイさんが倒したナルプディングの後ろから不気味な笑いをしながらまたナルプディングが現れる。
『まさか・・・』
『残念。それはコピーでさ』
なんとグレイさんが攻撃したのはナルプディングのコピーだったのだ。
「本物は後ろにいたのか」
「てことはコピーに攻撃しちゃったから、減点1!?」
「そういうことですね」
ナツさん、ルーシィさん、俺がそう言う。グレイさんはさっきのジュビアさん同様別エリアへと飛ばされ、ビジョンには-1が表示される。
「でもおかしくないですか?今ナルプディングのコピー口動きまくってましたよね?」
「そういえばそうね」
「しかもナルプディングさんの声に合わせて口が動いてましたよ?」
俺がおかしいと思った点を上げるとルーシィさんとウェンディが賛成してくれる。俺は何気なく大鴉の尻尾の方を向くとノーランと目が合う。そのノーランはこちらを見て笑みを浮かべていた。
まさかあいつがやったのか?いや、でもそんなことしたらルール違反だし、いくら元闇ギルドだとしてもそんなことするはずないよな。
ノーランside
シリルの奴がこっちを見ていたが、確信を得られなくて諦めたのかビジョンの方へと視線を戻す。
「よくやった。ノーラン」
アレクセイがビジョンを見たままそう言う。
「あまり不正をしすぎると運営からマークされていざというときに動きにくくなりますよ」
「問題ない。私を侮ってもらっては困る」
アレクセイは淡々とそう告げる。別にあんたを侮っている訳ではないんだかな。まぁいい。俺の目的は別にある。今はこいつらに溶け込んでおけばそれでいい。
俺は競技が行われている魔水晶ビジョンへと視線を戻した。
シリルside
いつの間にか参加者たちが全員コピーたちの中に溶け込んでしまっており、どれが本物なのかさっぱりわからない状況になっていた。
「みんな群衆に溶け込んじゃった」
「どれが本物なのかわかりませんね」
「こんなのどうやって見つけるんだよ!!」
ルーシィさん、ウェンディ、ナツさんも同じことを思ったらしくそう言う。
「迂闊なふるまいをすれば敵に自分の存在を知らせてしまう。どうする?グレイ」
エルザさんがそう言う。これは俺が行ってた方がよかったかも。性格的にもこういうのは苦手じゃないし俺には目があるから本物の敵がどれなのか見分けることができる気がする。もう遅いけど。
『見ーつけた!!』
『グワッ!!』
俺たちがビジョンを見ているとナルプディングがグレイさんに巨大化した腕で攻撃する。
「グレイ!!」
「そんなバカな!?」
「なぜバレた!?」
俺たちはグレイさんが攻撃されたことに驚く。だってグレイさんは何も不審な動きなんかしてなかった。バレるはずなんかないのに・・・
『こいつ・・・また俺を狙って・・・』
『いいカモでさ』
さらに1ポイント減点され最下位になり別エリアに飛ばされるグレイさん。ナルプディングはこの競技初の得点を得たため1位に躍り出る。
『静かなるゲームが続く第一ゲーム隠密!!まずはナルプディングが首位に立った!!』
実況のチャパティさんがそう言う。
『この自分や敵だらけのフィールドで実体を見つけ出すにはどうすればいいのでしょう?』
『色々方法はあるけどねぇ。例えば相手の魔力を探るとかね』
『フフッ。タクトくんならもっとすごい方法をとれるわよ。たぶんこのゲーム一番有利なのはタクトくんかもね』
チャパティさんの質問にヤジマさんが答える。それを聞いたジェニーさんが得意気にそう言う。タクトさんが一番有利ってどういうことかな?
「相手の魔力を探る。大体の方向はわかるだろうが特定するのは困難だぞ」
「俺みたいに特殊な目を持ってる奴は別ですけどね」
エルザさんがヤジマさんの解説を聞きそう言うので俺もそれに答える。
「グレイ!!何やってんだ!!同じ奴に二度もやられやがって!!」
「グレイさーん!!頑張ってくださーい!!」
グレイさんを鼓舞するナツさんと応援するウェンディ。ルーシィさんは大鴉の尻尾の方へと視線を向けている。
「大鴉の尻尾・・・シリルとウェンディを襲ったのもそうだし、どうやら徹底的にうちを潰したいみたいね」
ルーシィさんの言う通り、ナルプディングはグレイさんを徹底して攻撃してる。マスターの息子がマスターで何か互いに毛嫌いしてるようだし、この大会中は何度もこういうことがありそうだな。
『しかし、中々動きが見られなくなりましたね』
『やはりみんな下手に動くと自分の居場所がバレるから無闇に動けないみたいどねぇ』
チャパティさんとヤジマさんがそう言うとジェニーさんが『フフッ』と笑う。
『いいえ、そろそろタクトくんは動くと思うわよ?』
ジェニーさんがそう言うのを待っていたかのように突然魔水晶ビジョンの中で走り出した男がいた。
『彼はそういう子だから』
走り出したのは青い天馬のタクトさんだった。
『まず1人!!』
『ちっ!!』
タクトさんはそう言うとナルプディングを攻撃する。さらにそのまま走り去るとベスさん、イェーガーさんを次々に撃破していく。
『これはどうなっているのでしょうか!?先程まで全く動きを見せていなかった青い天馬のタクト選手が次々に攻撃を加えていく!!』
『まるでどれが本物なのか初めからわかっているみたいな動きをするねぇ』
チャパティさんとヤジマさんが驚きながらそう言う。
『タクトくんは音楽の魔法を使うの。そのためにはどの音がを確実に聞き取る絶対音感が必要不可欠になってくる。タクトくんは絶対音感で本体とコピーの足音の微妙な音程の違いを聞き分けて攻撃してるのよ』
ジェニーさんがタクトさんが突然のラッシュを見せたことをそう解説する。音楽の魔法か。どんな魔法なのかすごく気になる。
『ちっ。あんな奴がいたらますます下手に動けねぇ』
ビジョンの中のグレイさんがそう言う。すると、目の前の地面が突然盛り上がる。
『ニンジンミサイル!!』
『うおっ!!』
地面からベスさんがニンジンで攻撃してきたがグレイさんは辛うじてそれを避ける。
『あれれ?外しちゃった』
すると今度はベスさんの下から緑色の植物のような物が現れベスさんを弾き飛ばす。
『なんだ?』
『ハッハー!!魔法を使うところを見ていただぁ!!』
ベスさんに攻撃を加えたのはイェーガーさんだった。
『うおっ!!』
今度はそのイェーガーさんに攻撃が入る。
『俺も見ていたぞ』
『リオン』
どうやら攻撃したのはリオンさんのようだ。
『見つけたぞ、グレイ』
互いを見据える2人、そこにどこからか人形のような物が現れ攻撃してくる。2人はそれをジャンプして避ける。
『音楽魔法、クルミ割り人形』
攻撃をしてきたのはタクトさんだった。
『お前がリオンか!?』
タクトさんは挑戦するかのようにそう言った。なぜかグレイさんに・・・
『あっちだアホ』
『こっちだバカ』
グレイさんはリオンさんを指さし、リオンさんは自分の方を向かせる。タクトさんはポリポリと頬かくと、
『お前がリオンか』
まさかのやり直しを始めた。
『レオンから話は聞いている。蛇姫の鱗のエースとして様々なクエストを成功させているようだな』
最初に名前を間違ったのにドヤ顔で話を続けるタクトさん。
『ということはお前が・・・露出魔のグレイ』
『俺の覚え方どうなってんだ!!』
真顔で面白いことをいうタクトさんにグレイさんが突っ込む。でも覚え方としては間違ってないから何も言えないな。
『2人まとめて倒せば2ポイント入るからな』
魔法を放つ体勢に入るタクトさん。
『面白い』
『やれるもんならやってみやがれ!!』
リオンさんとグレイさんも同様に魔法の体勢に入る。誰の攻撃が最初に入る?
『グレイ様!!』
『『『!?』』』
突然3人の上から声が聞こえ見上げるグレイさんたち。そこにいたのは上から飛び降りてきたジュビアさんだった。
『ジュビア!?』
『パンツ!?』
『なぜに上から!?』
驚く3人。ジュビアさんは足を広げてリオンさんとタクトさんに同時に攻撃する。
『おいおい、手助けは無用だぜ』
『わかっています』
『眼福・・・』
『ヒビキさんたちだったら喜びそうな角度だった・・・』
リオンさんとタクトさんはそう言い別エリアへと飛ばされていった。リオンさんかっこいいのにジュビアさんが絡むとおかしくなるからかなり残念なんだけど・・・
『ジュビアはあなたに勝ちます。マスターと約束したから』
『じーさんと約束だぁ?』
ジュビアさんの言葉に訝しげにそう言うグレイさん。
『ええ。勝ったらグレイ様を好きにできるんです』
ジュビアさんは顔を赤く染めながらそう言う。詳しく聞くとなんでも負けた方が勝ったチームのいうことを聞かなきゃいけないらしい。つまるところ罰ゲームというわけである。
『ざっけんなぁ!!おいじーさん聞いてねぇぞ!!そのローカルルール俺たちにも適用されんだろうな!!』
ビジョン越しに凄むグレイさん。会場中にこの声響いてますからね?
「ほう、そりゃおもしれぇ」
ナツさんはそのルールを聞いてニヤニヤしている。何妄想したのかな?
『だからジュビアは負けませんよ』
『上等だ』
2人が魔法を繰り出そうとしたその時、
『妖精まとめてゲットでさ!!』
どこからともなく現れたナルプディングがグレイさんとジュビアさんを攻撃する。
「あいつ、またグレイを!!」
「おのれ・・・」
その後も続く攻防戦。そんな中でもナルプディングはグレイさんばかりを徹底的に攻撃している。
『それにしても、剣咬の虎のルーファスが全く動きませんね。いまだに誰も倒さず倒されてもいません』
「そういえば・・・」
「ルーファスさんなんていましたね」
チャパティさんに言われて現フィオーレ最強ギルドのルーファスさんのことを思い出す俺とウェンディ。何をやってるんだ?
『この競技は地味すぎる』
『こ・・・これは・・・』
突然姿を見せたルーファスさん。しかし、問題はあの人が現れた場所。会場にいるすべての人が驚いたに違いない。
『私は覚えているのだ。1人1人の鼓動、足音、魔力の質』
ルーファスさんがいるのは具現化して作られた建物の中でも一番高いものの頂点に立っていたのだ。
「あいつ、なんであんな目立つところに・・・」
「これだと誰でも簡単に見つけられますよ!?」
「グレイ!!上だぁ!!」
「あいつ狙ってください!!」
ルーシィさんとウェンディがルーファスさんのいるところに驚き、ナツさんと俺がルーファスさんを狙うようにグレイさんに声をかける。
『覚えている。覚えているのだ』
ルーファスさんはそう言うと両手の人差し指と中指を立て、頭のこめかみの部分を押さえる。
『記憶造形』
そう言うと街の中が夜みたいに暗くなる。
「記憶造形?造形魔法?」
ルーファスさんの魔法を見てエルザさんがそう言う。
暗くなった街の中、本物のグレイさんたちだけがなぜか目立つように光っている。
『星降ル夜ニ!!』
ルーファスさんから7つの光が放たれる。それはそれぞれ、隠密参加者を捕らえる。しかしナルプディングとタクトさんだけはそれを辛うじて避けていた。
『あんたは目立ちすぎでさ!!』
建物の上にいるルーファスさん目掛けてパンチを放つナルプディング。しかし、その目の前にいたはずのルーファスさんが寸前で消えてしまった。
『しまった!!コピーか!!』
『安心したまえ、減点にはならない。それは私がそこにいた記憶』
ルーファスさんはさっきの魔法をナルプディングに命中させる。すると今度はその足元に1本の線が現れる。
『見えましたよ。その動き』
今度はタクトさんがルーファスさんに攻撃を試みる。
『音楽魔法、G線上のアリア!!』
ルーファスさんの下を通る線の上をなぞるように魔力の刃を放つタクトさん。しかし、その攻撃もルーファスさんには当たらなかった。
『覚えておくといい、例え私を見つけてもその攻撃は当たらない』
タクトさんに攻撃を加えるルーファスさん。それを見た会場は大歓声に包まれる。
『全滅!!一瞬で首位に立った!!これがルーファス!!これが剣咬の虎!!』
チャパティさんのアナウンスにより力が入る。
『主催者の皆さん、この競技は面白くない。だって私には隠れる必要がないのだから』
両手を広げ勝ち誇るようにそう言うルーファスさん。
「強い・・・」
「フィオーレ最強の冠は伊達じゃない・・・か」
ウェンディとルーシィさんがルーファスさんを見てそう言う。
『ふざけやがって!!隠密ってルールを守りやがれ!!』
グレイさんが隠れることをしないルーファスさんに飛びかかる。しかし、それを待っていたかのようにナルプディングがグレイさんを攻撃する。
「またグレイさんを!!」
「あいつ、姿を晒してる相手より」
「私たちだけを狙っているようだな」
ウェンディ、ルーシィさん、エルザさんがグレイさんを狙い打つナルプディングを見てそう言う。
『ここで終了!!』
制限時間の30分が終わったため、闘技場に具現化されていた街が消えていく。
『順位はこのようになりました!!』
魔水晶ビジョンに隠密の順位が表示される。
1位 剣咬の虎10P
2位 大鴉の尻尾8P
3位 蛇姫の鱗6P
4位 青い天馬 4P
5位 人魚の踵3P
6位 四つ首の猟犬2P
7位 妖精の尻尾B 1P
8位 妖精の尻尾A 0P
となっている。
『やはり予想通り、1位は剣咬の虎でしたね』
『見事だったね』
『妖精の尻尾は2チームとも善戦したのですが残念な出だしです』
『次に期待スような』
がっかりと肩を落とし顔を上げられずに帰ってくるグレイさんとジュビアさん。俺たちは自分たちの元に帰ってきたグレイさんになんて声をかければいいのかわからずに黙って迎え入れることしかできない。
「やっぱ弱ぇじゃん妖精の尻尾!!」
「万年最下位!!」
「もうお前らの時代は終わってるよ!!」
観客から降りかかるヤジ。それにナツさん苛立ちを爆発させる。
「何がおかしいんだこのやろう!!」
キレたナツさんを見て大爆笑する観客。
「落ち着いてくださいナツさん!!」
「もういい」
「行きましょう、ナツさん」
今にも観客たちを殴りかかりそうなナツさんを俺とエルザさん、ウェンディが止める。
「すまねぇ」
「大丈夫だよ、まだ最初だし」
グレイさんはそのまま歩いて入場してきた入り口の中へといなくなってしまう。
「グレイさん・・・」
「今はそっとしておこう、ウェンディ」
去っていくグレイさんを心配そうに見つめるウェンディ。俺も気持ちは一緒だが、グレイさんがこんなので落ち込む訳がない。俺たちは今はポイントを奪取しないと。
『続いて、バトルパートに入ります。各チーム、一試合ずつ行ってもらいます。トーナメントではありません。なお、バトルパートは本日1日目はタッグバトル、明日明後日はシングルバトル、4日目はトリプルバトルを予定させていただいております』
魔水晶ビジョンに予定が映し出される。タッグとシングルとトリプルか。バトルパートと言っても色々あるんだな。
『組み合わせは主催者側が決めるんだったわね』
『面白そうな組み合わせになるといいねぇ』
『さっそく私の元に対戦表が届いていますよ』
チャパティさんは手元にトドケラレタ対戦表を読み上げる。
『1日目第一試合、妖精の尻尾A、ルーシィ・ハートフィリア&シリル・アデナウアー!!』
「あたし!!」
「いきなり来たか」
流れを変えるためにも、ここは確実にとっておきたいところだ。
『VS.大鴉の尻尾、フレア・コロナ&ノーラン・レイビー!!』
「金髪ぅ」
「潰し合おうぜ、シリル」
対戦相手は俺たちを徹底的に潰しにきてる大鴉の尻尾。それも昨日手を合わせたノーランだ。こいつらは俺とルーシィさんで落としてみせる!!
後書き
いかがだったでしょうか?
ナルプディングがコピーを使ってグレイに近づいたのがどうしても納得できなかったのでこのタイミングから不正をしてたことにしてみました。
あと、1日目から3日目までシングルなのにいきなりトリプルになるのはあれかなぁ?って気がするので1日目にタッグバトルをやらせてもらいます。
次回もよろしくお願いします。
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