陸軍兵士が誤って海軍鎮守府に移籍させられてしまったようです
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移転先は海軍!?
前書き
どうも皆様今晩は深夜から動き出す変態夜桜デビルでございます!今回艦これss初めてなので暖かい目で見守って下さい!
「…作戦通り敵基地の破壊が完了しました」
『御苦労。速やかに帰還し報告書を提出しろ』
「了解しました。…ふぅ」
「何かあったの〜?」
無線を切るとすぐ横から声がかけられる。この時おり緩い言葉遣いはどうにかならないのか?
「いや、生き残りがいないかを確認次第速やかに帰還しろという報告だけだ」
「そっか〜でも、これで生きてる人はいないんじゃない~?」
チラリと後ろを見ると炎に包まれた無残な建物と走り出した大型の物資輸送車が一台視界に映る。数分前までは綺麗で騒々しい陸軍基地だったものだ。
「一人取り逃せばこの基地の同盟基地が俺たちの基地を特定、襲撃してくる可能性がある。それは中尉も同じ考えなんだろう」
「う~ん…なら、これ投げておく?」
「構わない」
ちらりと見せてきたものは小型の手榴弾四つ。俺の了承と共にピンッと全てのピンを引き抜き未だ燃え続ける基地の残骸に放り込む。相変わらず躊躇がない
「…帰るぞ。ここにもう要はない」
「うん〜行こう~」
歩き出した直後、大爆発が起こる。これで生きてる奴はいないだろう
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「…」
「空いておる、入れ」
「失礼します」
破壊した基地から数時間後、無事に本拠地に帰還した。すぐさま中尉室へ向かい。到着には三分とかからなかったがすぐに中尉室の扉を二回程ノックする。あの人結構時間に厳しいからな。ノックしてすぐ入室許可が降りたので扉を開け、頭を下げてから部屋に入る。
「今回の陸軍基地襲撃作戦の報告書と今回の報酬についての書類をお持ちしました」
「おお、仕事が早いな。暗闇」
「恐縮です」
堂々とした面持ちでにこやかに笑うこの男は北東第四陸軍基地の中尉一応今は俺の上司だ。
「そんなに畏まらなくていい。それにしても貸出兵の戦績は聞いていたがここまでの成果を上げてくれるとは思わなかった。助かったぞ」
「いえ、報酬に応じた戦闘を心掛けていますので中尉が報酬の出し惜しみをしなかった結果です」
中尉が先に言ったが俺の名前は暗闇。陸軍所属だが階級はなく、貸出兵としての仕事が主になっている。今回は本部からの命令で貸出兵としてこの中尉が指揮する軍に一時的に配属され、今回の作戦を行った。貸出兵?報酬?となっていると思うから少し説明をする。まず、貸出兵についてだ。貸出兵は読んで字の如く貸し出される兵士のことで貸し出される兵士が所属している陸軍基地が人手不足な陸軍基地に料金や物資を報酬として貸し出す仕組みとなっている。条件上貸し出された兵士が戦死した場合は報酬は払われず、その兵士を失うことになり損をする。もちろんそんな条件があれば依頼が終わったあとに貸し出された兵士を殺せば依頼は達成できて、報酬は払わなくていい一石二鳥では?と考える輩がいる。その通りだ、殺してしまえば報酬は払わなくてもいいのだ。だから貸出兵は殆どこの世に存在していない。さて、次は報酬についてだ。これは簡単だ。まず、貸出兵を借りるだけで固定料金を支払う必要があり、任務等の数、任務の難易度などで料金や物資等をプラスで支払ってもらうことになっている。もし、支払うのを拒むことや払えなかった場合はその基地のあらゆるものを強制的に売却・解体し支払ってもらうことになる。説明は以上だ。
「貸出兵の噂は聞いておるから当然の報酬の量だ。それにしっかりと依頼もこなしてもらえている追加で何か用意したい。要望はあるか?」
「よろしいのですか?」
「構わん。今回の依頼は半壊まで追い込むのも厳しいものだった。それを全壊させ、物資の回収までも済ませている。更にはこちらで手配したのは部下数名と物資輸送車一台のみ。このまま帰してはこちらのプライドがないのだよ」
報告書と報酬についての書類に目を通していた中尉は書類を置くと煙草に火を着けながら笑いかけてくる。
報酬の上乗せは何度かしたことはあったが今回のように責任者が自主的に追加するのは初めてだ。手配してもらった部下の判断力や射撃力も他の陸軍よりもよかった。ここの軍人たちはいい上司に当たったみたいだ。
「ありがとうございます。では、後程追加報酬の書類をお待ちします」
「わかった。今回で依頼の方は完了だが、疲れもあるだろう部屋で休み明日の朝物資を乗せた船に乗っていくといい。…心配するな野暮な真似はしない」
「お心遣い感謝します。お言葉に甘え明日の朝船に乗せていただきます。それでは失礼します」
スッと頭を下げ部屋を出る。心配するな、野暮な真似はしない、その言葉はあまり信用出来ない。何度寝込みを襲撃されたことか…
「はぁ…」
ボリボリと頭を掻きながら割り当てられた部屋へと歩みを進めた。
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「ただいま」
「お帰り早かったね〜」
部屋の扉を開け帰宅を知らせるとすぐに帰宅を労う言葉が帰ってくる。律儀な奴だ。
「報告書と今回の報酬についての書類を持って行っただけだからな」
「そっか~はいお茶~」
「ありがとう…中尉から報酬の上乗せと今夜はここに泊まれとのことだ」
「珍しい、と言うか初めてだね〜自主的な追加報酬なんて~」
ズズッと熱い緑茶を啜りながら考える。相手からの報酬上乗せ、これはこちらを信用していると取るべきなのだろうか?事例がない分過信するのは危険だが、疑い過ぎれば雰囲気や話し方に疑っている事が現れる可能性もないとは言えない。
「…信用しても大丈夫だと思うか?李悠」
「そだね〜その追加報酬の書類はまた渡しに行くの?」
「あぁ。書き終わり次第な」
「そっか〜なら、その時僕もついて行くよ〜」
「そうか。それは助かる」
先程から時おり緩い話し方をしているのは同じ貸出兵の李悠。もちろん男だ。一般の兵士より少し背が小さいが精密な射撃や重機関をも軽々と扱う力強さを兼ね揃えている。しかし李悠の十八番はその高い射撃スキルや力強さを凌駕する洞察力の高さだ。目の動きや口の動き、はたまた指先の些細な動きで粗方の心中を把握することが出来るらしい。これで中尉の提案に裏があるか判断できる。
「それじゃあ~ぱぱっと書いちゃおう〜」
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「…中尉、追加報酬の書類をお持ちしました」
「入れ」
「「失礼します」」
李悠の提案通り素早く追加報酬を書類に書き込み中尉室へ。先程と同じく入室許可が出たので頭を下げながら部屋へと入る。
「おぉ、李悠も一緒か。しかし早いなまだ二十分そこらしか経ってないと思うが?」
「弾薬の補充等を怠れば戦闘に支障が起こりかねませんので出来るだけ早く銃の状態と補充数は確認しますので。こちらが追加報酬の書類になります」
「私の部下にも見習わせたいものだ。ふむ… 弾薬300発 SMG(サブマシンガン)の空マガジン4個 HG(ハンドガン)の空マガジン2個 ムーンクリップ、ハーフムーンクリップ 各2個 閃光手榴弾、手榴弾、C4、各4個 それにプラスで物資か…本当にこれだけでいいのか?暗闇」
「はい。消費した物は購入しなければならないので補充させていただけるのならこちらとしても助かりますし、その上物資の追加となれば文句の付けようがありません」
中尉に提出した追加報酬の書類に記入したのは今回の依頼で消費した物と報酬物資の増加だけだがこちらとしては報酬分だけで上は満足する。しかし貸出兵は報酬が多い分消費した物は現地で手に入れるか買い直して補充必要がある。その為報酬はほぼ消費した物を補充するのに使ってしまう。その為今回の提案は素直に助かる。
「李悠、お前はどうだ?」
「僕もこの条件で問題ないですが、追加していいのならハンドガン用の調整キットを2つ程お願いしたいです」
「銃の調子が悪いのか?何ならこちらで調整するが?もちろん調整・修理費は必要ないし予備の銃も渡す」
「(どうする?調整してもらうか?)」
「(…予備の銃も貸すみたいだし応急処置だけだと心配だからね)」
「(…)」
素早く李悠にアイコンタクトをとる。少し間が空いたがアイコンタクトが帰ってくる。調整するだな。了解と合図を送る。
「調整の申し出ありがたくお受けします。お願いします」
「お願いします」
腰のホルダーから一丁のハンドガンを引き抜き中尉の机に置く。李悠も続けて愛用のリボルバーを置く。
「確かに預かった。他の銃は大丈夫か?」
「はい。ハンドガンの調整・修理は難しいですし他の武器はもう既に整備等終わっていますので」
「そうか。整備には時間が少し時間がかかる、渡すのは明日の朝で構わないか?」
「僕は問題ありません」
「私も大丈夫です」
「わかった。整備兵にそう伝えておく。それにしてもベレッタ92fにコルトSSAか珍しいものを使っているな。持ってもいいか?」
「構いません」
机に置いた俺の愛用している自動拳銃-ベレッタ92fと李悠が愛用している回転式拳銃リボルバー-コルトSAAを手に取り中尉は物珍しそうに観察していく。中尉が珍しがるのも無理はないベレッタや回転式拳銃を使っている陸軍が殆どいないからだ。ベレッタ92fやコルトSAAは言わなくてもわかるようにフルオートでの発砲は不可、ベレッタ92fはダブルアクション、コルトSAAはシングルアクションであり、フルオートが相手だとどうしても不利になる。その為陸軍ではフルオートのグロックや一撃の強いデザートイーグルといった拳銃が主に使用される。俺達はどちらの銃も使いにくく、昔から使っていた今の銃に落ち着いたのだ。
「ふむ、長年使っているみたいだな。傷も汚れも大分目立っている。回転式拳銃リボルバーの方もハンマーが少し浮いているしシリンダーの穴も少し広がっているな。部品交換もしておくか?」
「はい、そろそろ部品の買い替えをする予定でしたので助かります」
「わかった。そう伝えておく」
「…中尉、少しお聞きしてもよろしいですか?」
「どうかしたか?李悠」
少し話に入ってこなかった李悠が中尉に声をかける。ここで声をかけたということは中尉の何かに気づいたのだろう。ここは少し黙っていよう。
「単刀直入に申し上げます。中尉、貴方は今回の作戦で破壊した陸軍に誰か大切な人を殺されましたね?」
「っ!?」
「判断材料はあります。まず作戦前と作戦後での口調と声色が少し高くなっていること。しかしこれは作戦達成での喜びによるものかもしれないと判断しましたが貴方の視線は僕たちと話している時も動いてました…その写真立てに」
「…流石は貸出兵というところか。そうだ、私の妻と子供は殺されたのだあの陸軍たちの手によってな。…ここに来る前焼け焦げた町があっただろう?あの町は五年前は綺麗で静かな場所だった。だが、奴ら陸軍が拠点にすると言い出した。もちろん町長たちは反対したが…それが失敗だった。その夜町は火の海となったのだ。その時私は准位で士官学校に行っていたのだ。そして、町の崩壊を知らされた…」
「その復讐ですか」
「違うとは言えないな。だが、奴らは関係の無い一般市民を皆殺しにした…それは許されない行為だ」
「…それは承知しています。復讐に僕たちを使ったことも仕事の範囲ですので気にしていません。しかし、もう貴方は昔と違って上に立つ人間です、そんな貴方がまた復讐に動くことになればここの兵達を少なからず失うことになり、また虚しくなるだけ「李悠その辺りにしておけ。後の話は俺が聞く先に部屋に戻っていろ」…了解」
止めどなく話し続ける李悠に制止の声を掛け、先に部屋に戻るよう告げる。少し渋るように黙ったが素直に了承し部屋を出て行った。さて、
「中尉、李悠の無礼お許しください」
スッと頭を下げて謝罪する。頭を下げるのは慣れている。まぁ、頭が軽いとはよく言われるがな。
「いや、李悠の言うことも分かる」
「…中尉、貴方を信用し、少し私と李悠の話をさせてもらえますか?」
「…聞こう。そこに掛けてくれ。煙草は置いてある物を吸ってくれていい」
「ありがとうございます…ふぅ」
指示されたソファーに座り目の前のテーブルに置いてある葉巻を手に取り、火を着ける。
「…それで、話とは?」
「私と李悠の昔話です」
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「…お前たちが陸軍で使われない銃を使っているのはそんな理由があったのか」
「はい。李悠の無礼も今の話で分かると思います」
「あぁ、あの言葉は自身の経験だったのだな。十分過ぎる程分かった」
話し始めて一時間程が経ち外は真っ暗になっていた。話をしている時過去の事が脳裏に浮かんできた。鳴り響く銃声、もがき苦しむ味方兵や敵兵、淀んど空気、体を突き抜ける激痛、数年前の話だが未だに克服することができないな…
「長話にお付き合いありがとう御座いました。…李悠のことも気になりますのでこの辺りで失礼します」
「あぁ、李悠にすまなかったと伝えてくれ」
「了解しました。それでは、失礼します」
ソファーから立ち上がり、中尉に声をかけてから部屋を出た。
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「やっぱりここにいたか。部屋にいろと言った筈だが?」
「…少し風に当たりたくなっただけだよ」
戦車置き場の一角、軍事バイクに背を預けながら紫煙を吐き出している李悠を見つけた。李悠はこの場所がお気に入りのようで部屋にいない場合は殆どここにいる。
「まだ、堪えるかあれは?」
「うん。多分消えることはないよ。それに暗闇もそうでしょ?」
「…あぁ。絶対消えないだろうな。…李悠、中尉からお前への謝罪と予備の銃を渡された」
「ん?…これまた珍しい銃だね〜」
「ワルサーP38にトカレフ…確かに珍しいが俺たちにとっては扱いやすいだろ?この基地もグロックやデザートイーグルをハンドガンのメインにしているみたいでこの二丁しか他にないらしくてな」
「う~んハンマーが少し硬いけどダブルアクションだから問題ないね〜」
「少し射撃場に行くか。流石に不良品では無いと思うが一応な?」
「うん、僕も試し撃ちしておくよ~」
カチャカチャとハンマーやマガジンを弄る李悠。その姿はいつもの様子に見える。もう、大丈夫だな
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「調子はどうだった?」
「SAAに慣れてるから最初は外したけど慣れれば平気だったよ〜」
「流石だな。トカレフ(これ)は弾道が少し下に落ちてるように感じる。後で調整を頼む」
「分かった〜後で見ておくね~」
約百発程撃ち今は休憩スペースで銃の使い心地を確認する。ワルサーは命中率の高い自動拳銃である為外すことは殆ど無いがこのトカレフ、まさかのコピー品であり性能は本物よりも大分下回っている。まぁ、調整は明日には終わるし、襲撃が無ければこのトカレフを使うことはないからいいのだが
「さて、そろそろ暗くなってきたから部屋に戻るぞ」
「うん〜帰ろう〜」
「お〜い、そこのアンタら」
「んぁ」
帰ろうと立ち上がった瞬間後ろから声を掛けられる。半身で後ろを見ると軍事服を着崩した柄の悪い男二人がこちらを見ていた。
「その両耳のピアスからしてアンタら貸出兵だろ?」
「…そうですが、何か用ですか?」
俺の耳についている銀のピアスを指を指しながら俺と李悠を交互に見る男。見た目も柄が悪く口も悪い。
「そんな喧嘩腰にならないでくれ…コイツ見た目と言葉遣いが悪いだけだからよ。さて、それは置いておくとして俺達はこの基地の整備兵なんだが中尉の命令でアンタ達の銃を見させてもらってな少し状況を伝えに来ただけなんだ」
「そこまで酷かったか?」
「いや、部品は交換すれば問題ない。俺たちが来たのは塗装の色と付属品について聞きに来たんだ」
俺達を宥めようと前に出てきたのは中年顔の男。軍人としてはまだ言葉遣いのいい方だ。さて、塗装の色と付属品だったな
「塗装はグリップ以外は全て銀でお願いします。付属品は必要ありませんがロングバレルの修復と重量を少し上げてもらえると助かります。李悠貴方はどうします?」
「僕も塗装は同じ銀でいいかな〜 付属品は邪魔だから必要ないよ~」
「ほぉ、回転式拳銃はわかるが、自動拳銃で付属品アタッチメント無しとは珍しいな」
「あまりゴテゴテしたものは苦手でして」
「軽量なものは確かに使いやすいからな、よくわかる。メモ取っておけよ。それじゃ、その条件で整備させてもらうからな」
男が声をかけると先程の男が素早くメモ帳にペンを走らせメモ帳をしまう。
「よろしくお願いします」
「あぁ。よし戻るぞ」
頭を下げると男はニカッと微笑み男を引き連れて歩いて行った。
「人は見た目に寄らないって本当だね~」
「そうだな。案外内心はいい奴みたいだしな」
喧嘩腰の男は宥めてきた男がメモを取るよういう前にメモを取る準備をしていた。宥めてきた男の言う通り見た目と言葉遣いが悪いだけで意外としっかり者のようだ。
「さぁ、僕達も部屋に戻ろうか~」
「あぁ」
腕時計を見ると時刻は23時少し前。そろそろ部屋に戻らないと警備兵に注意されかねないからな
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「ん?これなんだろ~?」
「どうかしたか?」
部屋に戻る途中消灯時間を過ぎてしまい真っ暗闇の中歩いてきたが警備兵に見つかることなく無事部屋に到着した。部屋の鍵を開けていると隣にいた李悠が何かを見つける。
「うん。ここに箱みたいなのが置いてあるんだけどよく見えなくて」
「このタイミングだと追加報酬の箱だろうな」
李悠がかがんでいる場所を見ると薄らと箱らしきものが見える。流石は遠距離射撃人だ視野が広い。言われるまで気づかないものまでしっかりと見つける。
「取り敢えず中に入って確認するぞ」
「うん〜」
ガチャりとドアノブを回し部屋の中へ入る。
「出たのは朝だったから真っ暗だな」
部屋の扉を開けると中は真っ暗だった。この真っ暗な中我武者羅に電気のスイッチを探しても武器を踏む危険性を考えると少し躊躇してしまう。
「僕が電気つけるよ〜暗闇見えないでしょ?」
「あぁ。頼む」
そんな中軽い口調で中に入っていく李悠。この闇の中でも目が見えるようで部屋の中からは何かに躓くような音は一切聞こえない。俺も視力上げるか?
「うっ!眩し」
「あ、ごめんね~」
「大丈夫だ」
パチッ言う音と共に真っ暗だった視界に強い光が入り反射的に手で目を覆う。つける時に一声くらいかけてほしい。
「それにしても消灯時間を過ぎても部屋の電気がつくのは助かるよね〜」
「本部とここ以外は全部つかなかったしな」
パチパチと何度か瞬きを繰り返し目が慣れたところで部屋に入る。李悠の言う通り部屋の電気だけでもついてくれれば色々とできる。
「お風呂も入ったしもう寝ちゃおうか〜?明日朝早いしね~」
「確か朝の6時頃だったか?」
「うん。荷物とか乗せるから少し早めにって〜」
「なら、もう寝るか」
ガチャガチャと箱の中身を確認している李悠に声をかけ、2段ベッドの下段に腰を下ろす。箱の中身はやはり追加報酬のマガジンや手榴弾だった。
「うん。確認もできたから寝ようか~」
「…一応ワルサーは持っておけよ」
「わかってるよ~」
電気を消し李悠がベットの上段へと上がっていく。
「…久しぶりにゆっくり寝られるね〜」
「作戦中は殆ど十数分の仮眠を数回だったからな…正直眠い」
「だよね~。僕も凄く眠いや」
ふわぁと小さな欠伸が聞こえる。今回作戦完了までに三日かかった。敵本拠地ということもありうかうかと睡眠を取ることが出来ず三日合わせても一時間程しか眠っていない。激しい戦闘に極度の睡眠不足となれば眠くなるのは当然だ。
「李悠、お前は先に寝ろ。俺はもう少し警戒した後に寝る」
「ん~分かった~おやすみ~」
「あぁ。おやすみ」
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「暗闇〜朝だよ~」
「…あぁ、今起きる」
李悠の声で目が覚め返事を返してから端末を取り出すし時間を確認すると5時少し過ぎを表示している。昨日李悠が眠ってから一時間程警戒していたが何も無かった為早々と寝た。しかし、久々にこんなに寝たな
「おはよう…李悠」
「うん、おはよう暗闇〜」
サッと服を着替え、紫煙を燻らせている李悠に声をかけてからテーブルに軽食と共に置いてあるコーヒーを一口啜る。
「朝から機嫌がいいな」
「うん、久しぶりによく寝たからか体が凄く軽くてね〜」
「そうか?確かに疲れは抜けているがあまり変わらなくないか?」
「そう?う~ん僕疲れに敏感なのかな〜?」
「…そうかもしれんな」
軽食のパンを噛じりながら煙草に火を着ける。
「さ〜て、そろそろ弾薬を詰めなくちゃね。食べ終わったら手伝ってね~?」
「了解した」
そう言って李悠は煙草を消し、テーブルの横に置いてあるマガジンに弾薬を詰め始めた。
「暗闇〜僕少し不思議に思ったんだけど、何で中尉は僕たちの使ってる武器の弾薬とマガジンを知ってるのかな~」
「それは追加報酬の所に何の弾薬が何発必要で弾薬全部で何発いるのかを書いておいたからだな」
「あぁ〜300発って全弾薬合わせてってことだったのか~」
「そういう事だ。誰でも弾薬やマガジンの種類は聞かないとわからないからな」
カチャカチャと次々とマガジンに弾を詰めながら笑う李悠。今詰めているマガジンは俺が使っているSMGのマガジンだが何年も弾詰めを頼んでいるからかもう見なくても弾を入れられる程だ。
「…ご馳走様。食い終わったし手伝うぞ」
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「っとよし、これで終わりだね~」
SMGとSR(スナイパーライフル)にマガジンを差し込む。リロード用のマガジンにも既に補充は済んでいるので後は昨日預けたベレッタとコルトに補充すれば全ての弾薬補充は完了する。
「5時20分…少し早いが中尉室に向かうか。中尉ならこの時間にもう居るだろう」
「そうだね〜預けた銃も早く見たいし行こうか~」
「…その必要はねぇぞ」
立ち上がろうとした瞬間入口のドアから少し機嫌が悪そうな声が聞こえる。すぐ様その方向を見やると大きな欠伸をしながら昨日の喧嘩腰の男が立っていた。
「やっぱり驚くよな。心配するな襲撃しに来た訳じゃねぇ。整備が終わったから中尉に頼んでマスターキーを借りて入っただけだ」
「ベレッタ92fとコルトSAA…持ってきてくれたんですか」
ニヤリと笑いながら近づいてきた男は俺の目の前に両腕を突き出す。その両手にはマスターキーと銀に輝く二丁の拳銃が握られている。
「整備兵は受け渡すまでが仕事だからな。ほら、握ってみろ。傷を落とすために少し削ったから重さも形状も多少変化してる筈だからな。握りにくかったら遠慮なく言ってくれ」
「…」
「…」
男から銃を受け取り握ってみる。確かに少し細くなったし、重さもロングバレルの重量を上げた為重くなったがこれくらいなら問題ない。
「どうだ?」
「多少握りと重さに違和感はありますが問題ないです」
「新品だからかハンマーが少し硬いね。シリンダーも少し回るのが遅いけど使っていけば馴染むと思うから僕も問題ないかな~」
「はは…恐れ入ったな。銃の傷付き具合で熟練者だとは思っていたがここまで変化に敏感だとは」
「今では体の一部と同じですから。銀の塗装も光沢があって綺麗ですし傷も綺麗に消えてますね。流石です」
すっと銃を光に当てると綺麗な光沢が現れる。剥がれていた塗装も全て銀に塗り替えられ、傷も綺麗さっぱり消えている。流石は整備兵と言ったところか
「整備兵にとっちゃ基本だけどな。塗装に関してはベレッタはシルバーグレーにクリアをコルトはシルバーにクリアを吹きかけてある。滅多なことじゃ剥がれないと思うがあまり雑に扱うんじゃねぇぞ?」
「はい。ありがとうございます」
「うん~!やっぱりシルバーが一番しっくりくるね〜」
少し呆れ顔の男は呟く。アレだけ傷ついたものを見れば当たり前だとは思う。しかし本当に綺麗になった。李悠も満足そうだ。
「そういや貸出兵は専門の整備兵を持たないと聞いたが本当か?」
「はい。私達の軍には整備兵はいませんので軍の契約している整備所に預け、予備の銃を借りるのですが仕事柄長く預けることはできませんし、貸し出される銃は軍のものなのでグロックとデザートイーグルしかありませんから」
「…何なら俺がなってやろうか?」
「「え?」」
男の言葉に俺と李悠は揃って驚く。いきなり何を言い出すんだこの男!?
「んやな、俺も長いことここで働いてきたんだが、上からの命令で別の陸軍に移転することになってな?移転先は俺が決めていいと言われたんだが生憎俺はここ以外の陸軍を詳しく知らなくて悩んでたんだ。んで、ちょうどお前らに専門の整備兵がいないとわかったんでな。言ってみたんだがどうだ?」
「…とても魅力的なお話ですがそんなに簡単に決めてしまっていいのですか?それに私達専門のとなれば依頼先までついてこなくては行けないんですよ?それに貸出兵の依頼は突然変更になったりしますし」
「んなこたわかった上での提案だっての。んで?どうするよ?」
「うん~僕は賛成かな〜。整備がしっかり出来る人が居れば安心できるし」
確かに専門の整備兵が居れば心強い。俺も李悠も少なからず整備の知識はあるが専門のしかも長年の熟練者には遠く及ばない。しかも大半は李悠に任せている。あまり気乗りしないが…
「…わかりました。その提案受けさせてもらいます」
「よし!成立だな。いや〜良かった~もう荷物纏めてたから断られたらまた戻すのめんどくさかったんだよ」
「もう荷物を纏めていたのですか?」
「おう!昨日銃の整備が終わってからな。だってお前ら今日ここ出ちまうし、それに…昨日銃を見た時お前ら専門の整備兵になろうって決めたしな」
笑顔で答える男。昨日決めてたと言っていたがもし俺達が断っていたらどうしたんだろうか?
「っとそろそろ船に向かった方がいいぞ。俺は中尉に報告してから行くからよ」
男の言葉に腕時計を見ると5時40分を過ぎていた。荷物は武器以外は持ってきていないのでこのまま向かえばいいだろう。
「そうですね…そろそろ向かいます。それではまた後で」
「また後でね~」
別れを告げ部屋を出る。少し出るのが遅れたが間に合うだろう。
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「すみません。お待たせしました」
「おぉ、貸出兵。いや、まだ出航には時間があるから問題ないぞ」
停泊している船に乗り込むと船長らしき男がいた。待たせたかと思い謝るがそんなことはなかったみたいだ。
「おぉ、早いなお前ら」
「あ、整備兵さん」
小さめなリュックを肩にかけ歩いてきた先程の整備兵に声をかける。
「整備兵ってお前…あ〜そう言えば名前言ってなかったか。俺は牧田 優だ。気軽に優って呼んでくれ。そんでお前さんらは?」
「私は暗闇と言います」
「僕は李悠だよ〜よろしくね~」
少し遅い自己紹介。普通は顔を合わせたらすぐだと思うが名前を言うことがなかったから仕方ないな。
「暗闇と李悠な。聞いていいかわからんがそれは苗字か?それとも名前か?」
「苗字と名前を混合している暗号名です。本名は本拠地でも伏せさせてもらってます」
「その喋り方もか?」
「いえ、…本当のしゃべり方はこれだ」
「僕はこれが素だよ〜」
「李悠の喋り方は大丈夫何だが暗闇は出来ればその喋り方にしてくれるか?堅苦しいのは苦手でよ」
「わかった。だが依頼の時は我慢してくれ」
「あぁ。依頼ならしゃあねぇからな」
苦笑いを浮かべ優に言うとわかっていると言ったように了承してくれた。
「(…貸出兵。お前の基地から無線だ。繋ぐから少しまってろ)」
「(了解)無線が入るみたいだ。悪いが少し口を閉じてくれ」
突然耳に付けている無線からノイズが走り、声が聞こえる。驚いたがすぐ様対応し、二人に口を閉じるよう言うとすぐに二人共口を閉じた。しかし本拠地からしかもこちらからの連絡無しで無線が入るとは何かあったのか?
『…聞こえるか暗闇』
「はい大丈夫です」
ザザザァとノイズが何度か入った後声が聞こえた。この声は中尉の声だな。
『突然の無線で驚いていると思うが予定が大きく変わった』
「予定が変わった?と言いますと?」
『予定ではこのまま基地に帰還することになっていたのだが大尉の命によりそのまま次の任務に当たってもらうことになった。詳しいことは依頼元に書類を送ってある。それに目を通してくれ。それと物資等に関しては早めに無線連絡で伝えてくれ。すぐに届けさせる』
「了解しました」
『いつも大尉の勝手で動かして悪いな。だが、今回の依頼主はお前の知っている者だ。気を負う必要は無いだろう。報告は以上だ。良い報告を待っているぞ』
「貸出兵の名にかけ絶対の成功を」
最後に頼んだぞと声が聞こえた後またザァザァとノイズが走り始めた。無線を切り息を吐く。連続依頼か…
「本拠地から~?」
「あぁ。予定が変更になった」
「あ〜連続か〜」
無線が終わったのを見計らい李悠が声をかけてくる。予定変更と伝えただけで伝わるのはこんな事が日常茶飯事である為だ。全く…大尉の気まぐれには本当に困る。
「悪いが俺にも説明してもらっていいか?」
「あぁ。さっき言った通り予定変更になってこのまま次の依頼先に迎うことになった」
「随分と急だな」
「さっき貸出兵の依頼は突然変更になったりするって言っただろ?今後もこんなことは日常茶飯事だ。今なら引き返せるがどうする?」
「はは、笑わせんなよ。そんな曖昧な覚悟は生憎持ち合わせてねぇ。それに逆に考えりゃ色んなとこ回れるってことだろ?おもしれぇじゃねぇか」
俺の提案にニタリと笑って答える優。何度か専門の整備兵を雇おうとしたが予定変更があることを告げるとすぐに断られてしまっていた。そのため今回もと思ったのだがそれすらも受け入れての移転だったようだ
「それじゃあ~早速で悪いんだけど〜これ書いてくれる?」
「ん?何だこれ?」
「契約書だよ〜必要事項は書いて置いたからちゃんと内容を見てから「これでいいか?」話はちゃんと最後まで聞かないとダメだよ〜」
李悠の説明を無視し優が紙をこちらに見せてくる。既にサイン欄には優の名前と印鑑が押してある。契約書を読む必要すらないということか
「確かに確認した。後はこれを本拠地に送れば契約完了だ」
「ん?なら俺はまだ専門の整備兵じゃねぇのか?」
「そうだよ〜言うなれば専門整備兵(仮)だね。まぁ、送ればいいだけだからもう専門整備兵でもいいんだけどね~」
「伝達用ドローンがないから次の任務先まで送ることができないからな。後で、物資と一緒にドローンも送ってもらう」
「おう早めに頼むぜ。流石に(仮)は見っともねぇからな」
それもそうだと笑い合う。さて、次の依頼先までもう少しだし先に物資とドローンの配送を頼むか。
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「そろそろ到着だ。荷物纏めておけよー」
「纏めておけと言われても荷物はこれだけなんだがな…」
「お、もしかしてあの島じゃねぇか?」
「んん〜島というよりも大陸じゃないかな~?」
2日程船に揺られ依頼先のある島が見え始めた。それを見て歓声の声を上げる優に訂正を加える李悠。確かに俺から見ても島というよりも小規模な大陸に見える程の大きさだ。それにしてもこんなところに陸軍基地はあっただろうか?
「さぁ、上陸だ!」
気がつくと既に船は上陸準備に取り掛かっていた。少し考え過ぎていたみたいだ。
「予定通り10時前に到着したな」
「そうだね〜ちゃんと予定通りの時間について安心したよ~」
「ん?なら、いつももっと遅いのか?」
船を降りながら話していた俺と李悠の会話に疑問を覚えたのか李悠が声をかけてくる。これから先も行動を共にするしちょうどいいから教えておくか。
「あぁ。交通手段の船や飛行機は天候に左右されるのは知ってると思うが、依頼先の地域の降水量が高いと大雨になったり台風になったりして運行が遅れるんだ」
「この辺りは天候が落ち着いてたから余裕を持って到着できたんだよ〜」
「ふぅん…貸出兵も色々と大変なんだな」
感心なさそうに答える優に苦笑いが漏れる。主に依頼を受け、遂行するのは俺と李悠だけだから依頼先に遅れてもあまり関係ないから仕方ないか…
「…見えてきたぞあの赤い壁の場所が依頼先だ」
「やっと着いたな」
上陸してから数十分程、船着場から街を抜けると大きな赤い壁が見えてくる。あそこが今回の依頼先-横須賀鎮守府だ。
「…暗闇!優と一緒に屈んで!」
「うぉ!」
突然李悠が声を張り上げた。李悠の指示通り優と共に屈むと背中に少しの重みが掛かり、すぐ上で何かがぶつかり合う音がした。
「背中貸してくれてありがと~暗闇。それにしても随分と物騒な女の子だね〜」
「チッ」
「…その服」
李悠と対峙する少女を見る。随分と大胆な服装ではあるが先程物資と共に頼んだ依頼先の情報書にあった写真の軍服とデザインが似ているような…
「いつつ、首がモゲるかと思ったぜ…。ん?何だその女随分と大胆な格好してんな」
「悪かった。多分依頼先の兵だと思うんだが…歓迎されてないみたいでな…どうする?李悠」
「う〜ん…取り敢えず鎮守府ここにいる提督さんだっけ?に話を聞いてもらわないと…「島風何をやっている!」…?」
「誰か出てきたな…」
李悠とどう突破するかと話し合っていると一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。そしてこちらに着くと徐に先程の少女、島風だったか?の頭に軽く拳を落とした。
「痛ぁ!…いきなり何するのさ長門!」
「それはお前だ全く…。家の島風が迷惑をお掛けしました」
「いえいえ、彼女も悪気はないと思いますので頭を上げてください」
スッと頭を下げる長門という女性。少し驚いたが適当な理由をつけて頭をあげてもらう。この人も僕と同じで頭が軽いのだろうか?
「…その両耳のピアス。もしかして貸出兵の方ですか?」
「はい。今回の依頼を任されました貸出兵の暗闇といいます。後ろの二人は私と同じ貸出兵の李悠と整備兵の優です。早速ですが依頼者の方はどちらに?」
「ちょうど案内を頼まれたところです。お連れ致しますのでついてきてください」
「島風ちゃんだっけ?君も一緒に行こっか〜。さっきの奇襲のこと少し聞きたいからさ~」
「うぅ…」
背を向け鎮守府の方に歩いていく長門について歩き出そうとした時李悠が島風になにか話していたが聞かなかったことにしよう。
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「…長門です。依頼した貸出兵の方をお連れしました」
「入っていいぞ〜」
「失礼します」
鎮守府内を少し歩きある一角の扉を長門がノックし要件を伝えると中から男の声で入室許可がおりた。長門が先に頭を下げ入室したのを確認し俺たちも続いて頭を下げなが部屋へと入ると帽子を深々と被った男が椅子に座っていた。
「随分と早かったな…もう少し遅れると思ったが」
「早過ぎましたか?」
「いや、構わないよ。それと敬語じゃなくていい。俺とお前らの仲だろ?暗闇、李悠」
「「え!?」」
深々と被った帽子を取りニタリと笑う男。しかし、その顔を見た瞬間俺と李悠は素の声で驚いた。
「驚いたか?二人共」
「はぁ…驚いたってものじゃないよ~」
「無線で知り合いが依頼者だって聞いてたが」
「なぁ、状況がわからないんだが?」
呆れている俺に優が声をかけてくる。それもそうだこの状況だけじゃわかるわけない。
「…そこで笑ってる男は俺と李悠の義兄貴だ」
「え?」
「は?」
俺の言葉に質問してきた優も兄貴の傍らにいた長門も唖然としたような声を上げる。まぁ、当然だわな…
「だから、そこの男…いや、今回の依頼者-横須賀鎮守府の司令官は俺達の義兄貴なんだよ…」
「何だお前ら兄貴がいたのか」
「まぁ、血は繋がってないんだがな。それと暗闇口調戻ってるがいいのか?」
「ここに口外する奴はいないだろ?」
「いや、島風がいるだ「あ、島風ちゃんなら聞こえてないよ~」なんだ連れてきてないのか?…って何やってんだお前…」
呆れ顔で李悠を見る兄貴。その視線を追ってみると李悠の隣に縄で手足を縛られている島風が座っていた。目隠しに猿轡、更には耳栓までされている。俺と兄貴が話しているあの短時間で何があった。
「少しお仕置き中~」
「長門…」
「後程御説明します。それよりも依頼の方を説明されては?」
「その前に長門お前も、もう口調戻していいぞ。てか戻せ。何か気持ち悪い」
「…気持ちが悪いとは失礼だな。まぁ、いい。先程から名前が出ているが私は長門、一応提督の秘書艦を務めている。気軽に長門と呼んでくれていい」
はぁ、と溜息を一つ付くと凛とした顔つきで自己紹介をしてくれた。兄貴との会話は偶に疲れるのはよくわかる。
「了解した。それで、依頼内容はなんだ?」
「簡単に言えば敵の排除だ。それと依頼期間中お前らはこの鎮守府に所属してもらう。所属に関しては許可を取ってあるから安心しろ」
「依頼は敵の排除だな。それより少し気になったんだがここは陸軍基地なのか?」
依頼内容を聞くついでに少し疑問に思っていたことを聞いてみる。先程パッと見たがこの鎮守府は半分以上海に面している。それに銃声の音や戦車の様な重々しい音が全く聞こえないのだ。
「何言ってんだ。ここは陸軍基地じゃなくて海軍基地だぞ?」
「え?海軍基地〜?」
「…やられた」
兄貴の言葉を聞きすぐ様情報書に目を通す。すると確かに依頼先が海軍基地-横須賀鎮守府と書かれていた。中尉が言わなかったのは多分大尉命令で伝えないように命令されたのだろう。何とも地味な嫌がらせだ。
「陸軍が海軍に所属になるとは世の中何があるか分からねぇな… 」
「ん?なんだお前ら陸軍だったのか?なら海軍の依頼は無理か?」
「う~ん海軍でも陸軍でもやることはあんまり変わらないから大丈夫だよね〜?」
「敵を排除するのが依頼なら全く問題無い。依頼はしっかりと受けさせてもらう」
「そりゃあ助かる。書類の用意と空き部屋の確認に時間が少し掛かるから風呂にでも入って汗でも流してこい。長門案内してやってくれ」
「了解。それじゃあ案内するからついてきてくれ」
俺達はゆっくりと歩き出した長門の後を追いかけるように風呂場へと向かった
後書き
久しぶりにss第一話を書いた感想ですがやはり難しいですね…次の話に繋げる必要があるので終わるタイミングが特に難しいです
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