箱庭に流れる旋律
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笛吹き、呆れる
「えーそれでは此れより、ギフトゲーム“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”の攻略会議を行うのです!他コミュニティからは今後の方針を委任状という形で受け取っておりますので、委任されたサラ様とキャロロ様は責任ある発言を心がけてくださいな。」
「分かった。」
「はいはーい!」
と、こんな感じの流れで始まった攻略会議。私は面倒だから参加しないつもりだったのに『音楽シリーズ』ってだけで巻き込まれるし、本当にさっさと終わらないかしら・・・気付いたらあのウェイトレス弄る流れに入ってるし。相変わらずね、この問題児たちは。ご主人様にはもう少しアクティブになってほしいとは思うけど、あそこまでになられるのはさすがに、ね・・・
・・・って、本当に始まらないわね、もう。・・・寝ようかしら。
「―――話を進めていただけますか?」
「・・・・・・ぁ、りょ、了解なのですよ!」
あ、仕切り直しが入った。これならすぐにでも進みそうね。
「さて、それでは優先順位の高い問題から話を進めていきたいと思います。それでよろしいですね?」
「ああ、そうしてほしい」
「優先順位って言うと、あのお城に行ったっていう組織の要人のことかしら?」
そんな話を聞いた気がするから聞いてみたけど、黒ウサギは首を振った。違うみたいね、これは。
「いえ、そちらではなく・・・あ、勿論そちらはそちらで重要な問題なのですが」
「まあ、それは当然そうよね。でもそう考えると、何か重要な問題なのかしら?」
と、飛鳥が黒ウサギに聞いた。その問いかけに対して黒ウサギは少しばかり苦笑いを漏らしてから。
「えっと、ですね・・・ここに、先ほど女王から送られてきた手紙が、あります」
その言葉に、場に一気に緊張が走った。若干名苦笑いしてる人もいるけど、あの女王からの手紙だなんて、何が書かれてるのか分かったものじゃないわね・・・
「・・・それの内容は?」
「え、えっと、ですね・・・おそらくこの場で最初に確認されるべきなのはラッテンさんなので・・・ご自身の目で、どうぞ」
と、渡された手紙。一体何が書かれているのかした。少し怖くなってくるけど、これを読まないわけには・・・
『奇跡の歌い手君に何かあったら、私が全力でそこの蜥蜴をブッ飛ばすから♪』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねえ、そこの顔隠してるの」
「フェイス・レスとお呼びください。なんでしょうか?」
「この手紙、なんなの?」
「まぎれもなく、クイーン・ハロウィン直筆の手紙・・・というよりは脅迫文ですね」
「冗談、よね?」
「いいえ、全く違いますが」
「ふざけてるわね!?」
手紙をテーブルにたたきつけて、それから頭をかきむしりたくなるのをどうにか我慢する。
え、何?ご主人様に何かあった、っていう理由だけであの女王が動く気なの?それもブッ飛ばす?それ『アンダーウッドごと』ってつくわよね?
「・・・ねえ、百歩、いいえ一億歩くらい譲ってこの内容が本気の文章だったとするわよ?」
「ええ、そこは受け入れていただけると助かります」
「じゃあそうするわ。で、なんでこんなことになってるのよ?」
と、私は回し読みされている手紙とそれを読んだ人間の反応をそれぞれ指さして問う。
「そうですね・・・状況が状況なのでざっくりと説明しますね」
「そうね・・・そうしてもらえるかしら?」
「ではざっくりと。クイーンが今代の奇跡の歌い手、“天歌奏”の大ファンである、という話です」
「・・・は?」
本気で何を言ってるのか分からない。え?あのクイーンが、ご主人様のファン?ご主人様に何かあったら自分で出張ってきちゃうくらいの?
「信じられないかもしれませんが、これは事実です。今、我々のコミュニティでは貴女方がブームのような状態になっておりまして」
「・・・私たちが?」
「ええ。例えばクイーンと私は天歌奏のファンですし、他にも色々と。貴女やユイさんのファンもいらっしゃいますよ」
・・・叫びたい気分なのを、本気で耐える。それで大丈夫なのか、クイーン・ハロウィンは。
「まあとはいえ、クイーンが自らの霊格を落として身分を隠して、クイーンズナイトの誰にも言わずにライブに行くなどということは、今後はやめていただきたいのですが」
「それで大丈夫なの、クイーン・ハロウィンは!?」
耐え切れず、本気で叫んだ。けど仕方ないと思う。だってこれだもの。かつて白夜叉と並ぶほどの魔王だったのに、これなんだもの。本当に何なのよ、箱庭ってのは・・・問題児であるほど強くなるシステムでもあるのかしら?
「あ、今回の戦いが終わったらグッズとサインをいくつか注文してもよろしいでしょうか?」
「・・・ええ。生きて帰れたら、ご主人様も許可してくださると思うわよ。なんなら独占ライブでもなんでもするんじゃないかしら?」
「さ、早く攻略会議を進めましょう」
・・・・・・コイツ、頼りにしていいのかしら?
♪♪♪
「あ・・・奏も来てたんだ」
「春日部さん・・・貴女もこっちに?」
ジャックさんとアーシャさんに謝り、それから案内されて向かうと、僕たちが連れている子たちと同じくらいの年の子供たちと、春日部さんがいた。料理も出ていて、何とも暮らしやすそうな空間になっています。
「どうして奏はここに?」
「あ、その・・・ロロが、勝手に飛び出しちゃったので・・・」
と、僕の後ろに隠れながらロロちゃんが春日部さんに答えた。
「と、そんな感じでして。それからはひたすらレヴィちゃんに守られ続けながら進んでジャックさんたちと合流して、今に至ります」
「・・・つまり、また役立たず?」
「うぐっ・・・ま、まあそんな感じ、です・・・」
自覚はあるとはいえ、何ともぐっさりと・・・と思っていたら、いつの間にか僕の後ろにロロちゃんがいない。どうしたんだろうと思って見回してみて。
「ロロ、オマエなぁ・・・迷惑かけてるじゃねえか」
「あう・・・ごめんなさい、パパ・・・」
「いやだから、俺に謝ってどうすんだよ・・・」
「あ、そうだった・・・」
「・・・はぁ・・・」
すぐに納得しました。なるほど、ガロロさんもこちらにいらしたのなら、ロロちゃんが向こうに行くのも当然でしょう。ただ、ガロロさんがふっかいため息をついているのを見ると、どうしていいのか分からなくなります・・・
「さて、それでは話を始めましょうか」
どうしたものかなー、と考えてたらジャックさんがそう全体に声をかけます。この感じですと、元々何か話し合いをする予定だったのでしょうか?うーん・・・
「話、ですか?」
悩んでいても分かりそうにないので、聞いてみることに。
「うん。今後の活動をどうするか、について」
「今後の活動?何かする必要が?」
「実は、結構な問題が発生してたりして・・・ギフトカード出してみて?」
なんでだろうとは思いつつもポケットからギフトカードを取り出して・・・
「・・・なんですか、この変な・・・紋章?」
「ペナルティ宣告、って言うんだって。主催者側から提示された条件を満たすと、招待状とギフトカードに主催者の旗印が刻まれる・・・んだって」
私もジャックに聞いた、と言って春日部さんが契約書類を渡してくれたのでそれを見ることに。
『 ・プレイヤー側ペナルティ条項
・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。
・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。
・ペナルティは“串刺し刑”“磔刑”“焚刑”からランダムに選出。
・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。
※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課される。
』
「・・・え、なんですかこれ?」
「私にもよくわからないんだけど、どうにもそう言うことみたい」
「で、でも。僕レティシアさんと戦ってなんて・・・」
「それについては・・・あの巨龍がレティシア、って考えるんだと思う」
なんて無茶苦茶な・・・でも、レヴィちゃんとロロちゃんのギフトカードにも同じものが浮かんでいるのを見ると、そういうことのようだ。
「それで、えっと・・・どうするん、ですか?」
「それについて、何か案がないかと募っているところです。・・・なにかありますか?」
「あ、それなら私から」
と、春日部さんがジャックさんの言葉に反応して手をあげました。この様子ですと、何かあるみたいですね。
「ヤホホ、何かあるのですか、春日部嬢?」
「うん、私はこのまま全員でここに残って、謎解きに挑戦するべきだと思う」
・・・・・・・・・え?
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