その電車から、降りてはいけない
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気づくのが遅かった
電車から、きっと降りてはいけなかったんだ
でも、さっき電車内で体験したあの気持ち悪さと比べたら、だいぶましだった
しばらく外にいよう。ひょっとしたらまた電車が来るかも知れないし、あの電車が異常なだけだったのかもしれない
きっとなんとかなる。私はそう自分に言い聞かせていた。
「電車から降りた。駅でいろいろやってみる」
すると
「降りちゃったか・・・・」
「降りたらダメだったのに!」
「とにかく駅から動いちゃダメ」
「線路を戻ってもダメだよ!」
というたくさんの返信が来た。動いちゃダメなのはわかってるんだけど
どうしても、喉が渇いちゃったんだよね
でも、食べたり飲んだりしたらダメなんだよね、駄目なんだよね?
でも・・・・でも・・・・
食べたい、食べたい、食べたい・・・・・食べたい食べたい食べたい食べたい飲みたい飲みたい食べたいたべたいのみたい・・・・
気づけば私は、欲求に負けていた。近くにあった自動販売機のコーラを飲み干していた
しかし、なんだか腐ったような味がする、変なにおいもするし、ぬるい
私は思わず全部吐き出した
物を吐いたおかげで、食欲は失せた。だが逆にだるくなってしまった
だるい、眠い・・・・寝たらダメなんだよね、帰れなくなるんだよね。でも寝たい
なら、眠気覚ましにいろいろやろうかな。まずはツイートだ。つぶやきながらなにかやろう
「さっき自動販売機のコーラ飲んだ。不味くて吐いた。_ト ̄|○、;'.・ オェェェェェ」
「時刻表を見てみたけど、紙がぐずぐず崩れてて、なんだか気持ちわるいし読めない」
「改札通れないし、駅員もいないなぁ」
すると、さっききさらぎ駅を説明してくれたあのフォロー外の人から、返信が来た
「降りてしまったんですね。食べ物も食べてしまったんですね。もう何もしちゃ駄目です。じっとしててください」
じっとしていろと言われても、じっとしていたら眠たくなるし、なにかしなくちゃ今にも死んでしまいそうだ
でも、なにかしてても、発狂したくなる。
あまり叫ばないほうがいいんだよね、口笛とか歌とかもダメなんだよね
何もかもダメなんだよね、ダメなんだよね
ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
どうしたら、どうしたらいいの、どうしてこうなっちゃったの、わからない、わからないよ、助けてよ、怖いよ
・・・・ふと、周りに目をやってみた。時計を見れば、8時を過ぎている。駅の周りは真っ暗だ
祭りでもやってるんだろうか。鈴の音、太鼓や笛の音が聞こえる
音はトンネルの向こうからだ。何かあるかも知れないいってみよう
「祭りでもやってるのかな」
「太鼓の音とか聞こえる」
「いってみる」
たくさんの「行ったらダメだ」の返信には、あまり目を通さなかった
ただ、一つ、目に止まったのは、あの説明してくれた人の返信
「あなたからは、生きた気配がしない」
「もう気づいたほうがいい」
助かりたい、助かりたい、早く早く助かりたい
音が聞こえるのに、人がいないわけないじゃないか。早く助けてもらおう
家に帰って、早く帰って、友達に行けなくてごめんって謝って
おいしいご飯食べて・・・・水飲んで・・・・
・・・・涙が、涙が止まらない
考えたくなかった、でも、気づいちゃったんだ
あの電車に乗った時からしていた嫌な気配を思い出した
そして、無人の電車を歩き回ったとき、見たんだ。黒い人のような塊がたくさん座っているのを
それに、わかってた、生年月日と住所がわからない時から、ほかに何も思い出せないことも
気づいちゃったんだ
わたしはもう、しんじゃってるってこと
だって、生きた心地がしないんだ。自分が生きている気がしない
この電車は、異世界に行く電車。どちらかといえば、あの世
あのまま電車に乗っていても、降りていても、私は元の世界には帰れないんだ
だってもう、自分の名前も思い出せないんだ。もう無理なんだよ
歩いているのに、異常に眠い。私は最後の力を振り絞って、駅に戻った
そして、駅の椅子に座って。眠った・・・・
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