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ランス ~another story~

作者:じーくw
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第1章 光をもとめて
  第4話 明日がなかった盗賊団

 
 ランスとユーリは、洞窟内を進んで行く。
 そこは先日倒した盗賊団のアジトとは違い、洞窟内には至るところに燭台が立っており、火も灯っている。洞窟内とは思えないほど明りが充実しており、実に進みやすい。

「成程、アジトだけ見れば良く解る。随分と前回とは違うな。ちゃんとした盗賊団のようだ」
「ふん。全部盗品だろうが」
「……だろうな。ちゃんとした盗賊団ってのも妙な話だが」

 ランスも同意だったようだ。
 ……ユーリは苦笑いする。もう完全にのランスの性質を理解しつつあった。そして、更に数分後。分かれ道に突き当たった。左右に分かれている通路。ユーリは目を瞑り……奥を探るように集中させた。

「……左。だな。人の気配がするのは。それに空気も若干違う」
「なら左だ。ごくろう」

 ユーリの言葉を受けて左へと進むランス。
 人間の心理では迷えば左を選ぶ確立は高いが、今回は人の気配も濃いから更に間違いないだろう。そして更に進んでいき、行き着いた先は岩で出来た階段があり、その傍には白髪の盗賊が居座っていた。位置的には隠れられる場所もなく筒抜けの為当然見つかってしまう。

「なんだ? てめえらは。ああ、そうか。入り口のヤツに入れてもらった新しい仲間か?」
「ああ、まあそんなトコだ。ボスは奥か? 一応今日中には挨拶しときたいんだが」
「へへへ、ま、当然の筋だな。オレはムララだ。このかぎりない明日戦闘団のエース格。次期ボス候補ともっぱら噂の男だ!オレにも挨拶をしていった方が今後のお前たちの為になるぞ!」

 斧を肩に担ぎながら、豪快に笑う男。
 正直……、どれだけ贔屓目に見たとしても強くは見えない。ただ図体だけだ。でかいだけの男、そんな印象だ。なのに、豪快な上自信満々な態度だ。
同じく自信満々なランス。同属か……と思ったが、ランスは自分以外の自身満々な態度の男には苛立つようで。

「おい! いい加減さっさと奥へと案内しろ!」
「へへっ!確かにこの奥にボスはいるが、案内してほしけりゃ、オレ様に200GOLD払ってきな。次期ボスになる男に取り入っておいても損はねぇぜ?」
「むか……むかぁぁ!!!」
「はぁ……」

 この後のシーンが目に浮かぶようだ。
 ユーリ自身も確かにあの男には少なからずムカついていた男だったから、代わりにランスが殺してくれたと判断していた。

 そして、ユーリが考えていた通り、次の瞬間には自称次期ボスの男は血を噴出しながら絶命した。それはそれは呆気なく、たったの一撃でムララは死んだのだ。ランスはまだまだ怒りが収まらない様子で、ムララの死体を蹴りまくっている。その間にユーリは少し先へと進んだ。奥にある階段を見ていたのだ。

「ふん! なんだ? この歯ごたえの無さは。こんなんが次期ボスだと? ならこの盗賊団も大した事ないな」
「おい、ランス。どうやら奥の階段にも結界が張ってるみたいだぞ?」
「なんだとっ!!そう言うことは、さっさと言え馬鹿者。おい、解除方法を教えろ!」

 ムララの死体をげしげしと、蹴りながら言うが、相手は死体であり、物言う筈も無く、ぬなしく時間が過ぎるだけだった。

「ええぇい!! 今すぐ生き返れ!生き返ってオレ様に解除方法を教えろ!」
「無茶言うな。化物じゃないんだから。……この辺りに気配は無いな。はぁ、さてどうする? オレなら先へと進めるが?」
「馬鹿者!そんなものは却下だ!美女はこのオレ様が格好良く救わねばならんのだ!さっきの道を戻って方法を探すぞ!」
「はいはい……。了解。ええぃ面倒なヤツだな。」
「文句言うな!」
「文句くらい言うわ!」

 先程の分かれ道。今度は右側へと進んでいく。そこにも小部屋があり、棚やベッドが置いてある。その辺に物が散乱している。どうやら、詰め所の様な場所らしい。

「ここなら、何か手がかりがあるかもしれないな。探そう」
「おう! 任せた。下僕1号」
「……お前もやるんだよ。いい加減にしろ。ほら、やる気出せ。結構広いんだから」

 2人は手分けして部屋を探る。
 ユーリは部屋の右半分を、ランスは部屋の左半分を探した。

「むむ! !こいつは……」
「お? 見つかったのか?」
「女の下着だな!結構過激なものだ……素晴らしい。ここには女がいるのか」
「………はぁ」

 ランスが食い入るように見ているのは女物の黒いパンティーだ。
 嗅いでみたり、左右に伸ばしたりして遊んでいる。客観的に見ても、いや、どう見ても変態だ。……余計な事を言うと更に五月蝿くなりそうだから黙った。
 そして、これだけ、真面目に探しても見つからない。だから、もう自分が行くと言おうとした時だ。
 
 背後から突然声が響き渡る。

「おんや?盗賊以外のお客さんは珍しいね?」

突然の声。
まるで気配が無かった場所からの声に2人は瞬間的に振り返り、同時にランスは剣を構え、ユーリは剣の柄を握った。
まさか、明らかに雑魚の巣窟だと思っていた矢先にこれ程まで気配を無に出来る使い手がいるかと、手に汗を握っていた。
気配を消す技術は使い手の力量に比例する。それが格下であれば、見抜くのは分けないが、この声の主は違う。

「何者だ?」
「あっ、ゴメンゴメン。驚かせた? 危害なんか加えるつもり無いから。全然。と言うか動けないし」

 ユーリは振り返った先にそう言うが、そこには誰もいない。
 だが、声だけは延々と聞こえてくるのだ。

「ん? 何処にいると言うのだ?」
「ここだよ、ここーー」

 話しかけても声はちゃんと返ってくるからこの場にいるのは間違いなさそうだ。注意深く2人で探していると、普通ならありえない場所にいた。
 《壁の中》に。

 その姿は赤い髪、そしてだらしない髭、顔と両手だけを壁の中から出したしょぼくれたオヤジがそこにはいた。
 なぜ、こんな所に?と思ったがランスが先に声をかけた。

「驚かせやがって。なんなんだ? 貴様は。壁に埋るのが趣味の変態か?」
「違う違う。埋められたんだって。僕の名前はブリティシュ。何も好きでここにいるわけじゃないって。出来たら出してもらいたいほどだよ」

 珍妙な出会い。
 だが、この男は只者では無いのだ。今でこそ、何処か抜けたような表情、そして仕草だったがあの声を駆けた瞬間まで気配を感じなかったのは只事じゃく只者ない。
 そして、そのだらしない中年オヤジだが……何処か身に纏っている雰囲気がある。もう、年季は経っているが……嘗ての英雄だった。とか?
 英雄、とは言いたくないかもしれない。先ほどから、ランスに『かまってかまってー』と言い続けているから。
 英雄の成れの果て、と表現をし直したほうがいいかもしれない。

 このユーリの感覚は間違ってなかった。間違ってないどころか、的を得ていた。これは後に語られる事になる程の出来事。


 年号が変わった一年目。
 全てが始まると言っても過言じゃないその歴史の変わり目に。

 3人の英雄が嘗ての英雄に出会ったのだ。








~盗賊団アジト 盗賊の迷宮 詰め所~






 壁にめり込んだ男は出してくれないか?と懇願していた。ユーリは、先程の様に固められている壁にゆっくりと触る。暫く目を瞑り……、目を開けた。

「それで、どうかな? 出せそうかい?」
「……ん、すまない。これは非情に強力な力を感じる。簡単に破壊出来る様なものでもなさそうだ。解呪出来るかと思ったが……、≪今の力≫じゃ無理の様だ」
「そんなぁ……。ん……。(今の力?)」

 壁にめり込んだ男、ブリティシュは残念そうにしていたが、最後の言葉に引っかかったようだ。今の、と言う事は何れは解ける様になる可能性が有ると言う事だろうか?と。……が、この姿になって文字通り動けず悠久の時を過ごしてきた呪い。
 そんな簡単にいかないのは判る。

「おい。そんな変な男はほっとけ。この靴さえあれば、あんな結界なんて簡単に越えられることが出来るんだ」
「はぁ……、おいおい。この男が聞き耳を立ててくれたから、あの結界を越えられそうなんだぞ? ランスがなんだし、恩を受けたら報いるのが普通だろう。……まぁ、壁から出す方法が無い以上は、酒場のマスターの娘の事も気になるが」

 ランスは、先にさっさと行こうといっている。単なる好奇心に過ぎないけれど、この男を出してやりたいと思ったのだが、この壁の異質さは触れた瞬間に解ったのだ。
 ブリティシュは、暫くは考え事をしていたがランス達の話を聞いて何かを思い出した様だ。

「……ああ、盗賊達が攫ってきた娘達か。多分君らが探している娘だけじゃなくて、何人かいると思うよ?」
「なんだとっ! それは本当だろうな!」
「うん。間違いないよ~。壁として過ごして来た時間の長さは伊達じゃないってね。違う声が何回か聞こえてきたし。でも、最初の娘の声が聞こえてきてから大分時間も経ったし、急いであげた方が良いと思うよ。彼女達は≪出る≫事が出来るんだから」
「よーし、それは本当だろうな?」
「ま、あくまで声を訊いただけだから。声色から女の子だったし、内容までは訊けなかったから、何とも言えないといえばそうだけど」

 ブリティシュがそう言うと、何だかランスがムカついたようだ。

「む! 何だかボクシングをしたくなったぞ」
「……え?」

 ずんずんと進んでいくランス。そして両の拳を握ってあの壁の前に立った。その顔はちょうど良い高さにある様だ。

「ちょちょ!! う、動けないんだから勘弁してよー」
「……おいランス。流石に酷いぞ」

 思わずユーリもそう言って止めようとするが、ランスはお構いなく。

「それ、ワンツーパンチだーー!」

 ブリティシュの顔面ぎりぎりの位置でのシャド-ボクシングを披露していた。当たるか当たらないかのギリギリで。

「ひぇぇ!! こ、怖いっっ!」

 顔面に当たるかどうかの寸前で空を叩く拳。中々の寸止めパンチだと思うがする意味がイマイチわからない。

「今のが嘘だったら、今度は当てるランス・パンチを見舞うからな!」
「嘘じゃないって!!」
「うむうむ、よし 嘘だったらパンチにに戻ってくるが、本当だったら放置だな。いやぁ実に残念」
「全然残念って思ってないだろ……。まぁ、さっき 本人がそう言ってくれてるし。言葉に甘えて優先させてもらおうか」
「うん、構わないよ~。どうにかしてくれようとしてくれただけでも嬉しかったよ。ありがとうねーー。(……しょーじき、フードの彼だけだけど。感謝は)」

 暫く壁を触っていたユーリだったが、やはり 何も出来ないのを確認するとそう答える。
 その言葉を聞いてブリティシュも大分穏やかな表情になっていた。彼としては久しぶりに盗賊の様な連中じゃなく、まともな人間とまともな話しが出来ただけで十分だと、それだけで感謝をしていると思う程だったのだ。

 ユーリは壁を調べている過程で、ブリティシュの手に触れた。
 その時だ。




“きぃぃぃぃぃぃ………。”




(あ、あれ?)

 突然、ブリティシュはまるで時間が停止したかのような錯覚に見舞われた。こんな感覚は1500年近く壁として過ごしている時間、戦いの歴史の中でも始めての事だった。

(?? これは一体……)

 陽気な声色から一気に真剣味を帯びた。こんなに考えるのは何百年ぶりだろうか。

『そうか……。人の身で アンタも知ったのか』

 そんな時だった。
 声が……聞こえたのだ。だが、視線を動かす事が出来ない。目の前にあの緑の傍若無人な男がいる姿がずっと見えてるだけだ。彼は固まったように動かないから、彼の声じゃない。
 だから、今しがた壁を確認している彼の声……だろうか?と思うが確認が出来ない。

『………アンタはこの世界をどう思う?』

 声は続く。
 返事をしようとしたが、言葉が出ない。時間が止まっている感覚は、比喩じゃない。実際に止まっているのだとこの時はっきりと解った。

(………。どう思う、って)
『アンタ達は奴等の一角。≪プランナー≫と出会ったのだろう。この世界の真実を知ったのでは無いのか?』
(しん……じつ?)
『……そうか、たどり着いた君達に何も言ってないと言う事か。心底嫌悪するものだ』
(キミは一体何を言っている? 何の話をしてるんだ?)
『いや……忘れてくれ。アンタの波動から、奴等を感じたから。だが、違ったようだ。知る事でもない。……そしてその意味も無い』

 まるで頭の中で会話をしているようだ。思っているだけで、伝わる。テレパシーの様に。

 だが、その次の瞬間、目の前の空間が光り輝く。



『今は助ける事は出来ない。……すまないな』






「はっ!!」


 再び世界は動き出した。
 光に包まれたかと思えば、あたりに色が戻りだし、目の前の男、ランスの表情も動き出した。

「おい、とっとと行くぞ! 他にも娘さんがいるとなれば、是非とも救ってヤらなければならんからな。ここに戻るとすれば、この場所が無意味になった時のストレス発散のためだけだ」

 がはは、とランスはイヤらしく笑いながらそう言う。
 ブリティシュは、さっきのは白昼夢(洞窟内だから実際にはわかんないけど)だったのか?と思えてしまっていた。自分以外は、時間差を感じていないのだから。

「わかったわかった……、じゃあ、ブリティシュ。手段が見つかればその時に助けに来るからな。直ぐにとは言えないが待っててくれ」
「あ~、ああ、うん。ありがとね。ダイジョウブダイジョウブ。気長に待ってるから」

 何処か歯切れがないが、とりあえずはニコリと笑顔でそう言っていた。
 そして、2人の姿が遠くなっていった。


 その後姿を見つめるブリティシュ。


 あの時の≪声≫は誰だったのだろうか?
 気のせいなどではなく、間違いなく何かが起こった。とてつもなく大きな何かが。

 口調から、緑色の男(ランス?)じゃ無い事は確かだ。ならば、消去法で言えばあの薄い赤色のコートの男になるだろう。
 確かに、あの男からは何かを感じた。

「随分と興味深い……。ここまで思ったのは1,000年は無かったな」

 ニヤリと笑うその姿には嘗ての面影が薄っすらと滲み出ていた。……が、誰もその嘗ての面影を知らないからなんともいえないから何処か寂しかった。







~盗賊団アジト 盗賊の洞窟・奥の部屋~



 そこでは鼻の奥に着くような異臭が漂っていた。
 そして、ぱん、ぱん、と肉を打つ音も洞窟を反響して聞こえてくる。

「へへへへ。おらっそらぁっ!もっと良い声を上げな!」
「ゃ……いやっ……っ、ッ……も、もうっ……」

 そして、少女の悲痛な叫び、もう殆ど声も上がっていないが、懸命に振り絞りながら声を上げていた。洞窟の最深部にある部屋の1つで無精髭の男達が少女を犯していたのだ。

 数はそれなりに多く、5名ほど周りにいた。
 一緒になり、幼けな少女を嬲るのは3名の男。思わず目を背けたくなる様な狂乱の宴。残りのメンバーは順番待ち、と言った所だろう。

「いやぁ、これだから止められねぇよな! 盗むもんは金だけじゃねえしなぁ……ヒヒヒっ」
「いやーまったくだな! この一団。限りない明日戦闘団に入って今日ほど良かった日はねぇな!」
「かかかっ! お前、女犯すたびに言ってんじゃねぇか! 処女だから興奮度も増すってか?」
「ま~気持ちは解るもんだ!いや、最高の盗賊団だ! リーダーは、一番の娘連れて奥に行ったままだし、好き勝手出来るのがまた、最高だ!」

 そう、この少女達は、またパルプテンクスとは別であり だが恐らくリーザス城下町に住む少女たちだろう。

「ネカイのねーちゃんともヤってみたいんだけどなぁ!」
「無理無理、上手い酒でも持参しねぇと。そこら辺で買える様なもんじゃ無理だし」
「だな~~、腕はBOSSよりも立つって話だし、強引には無理だよな~」

 一発ヌいていた為、ほんの僅かな時間だが、少女を解放していた。殆ど朦朧としている意識の中……少女は想う。この悪夢の様な地獄から解放される事を……必死に願っていた。
 ……少女にとって幸運だったのは、それは直ぐに叶う事にあった。

「下衆共が……」
「がははは!むさ苦しい男共は 汚物に等しい! 即刻駆除だー!!」

 突然、聞いた事の無い男の声が響き渡ってくる。ここは洞窟を部屋に改造した場所。音は反響し、程よく伝わってゆく。その声に驚いた盗賊達は慌てて部屋の入り口の方を見た。
 そこには声の主が2人立っている。なぜ、こいつらがここに?部屋の外には結界があった筈だと。疑問の声が上がっているが、まず間違いなくこの男達は部屋に入っているのは確かだ。

「なんだぁ! てめえら!一体何処から湧いて出た!」
「いちいち答えてられるか。それに、口を開くな。……耳障りだ」

 一番近くにいた男が大声でそう言っているが、ユーリはただただ冷ややかな、いや 冷徹な目を向けていた。

「貴様らが為に溜め込んだ金品! 全て貰ってやるぞ! がははっ! 今日までご苦労だったな!」
「はぁ? たった2人でか? ここまで忍び込んだのは褒めてやらんでもないが、舐めすぎだろ? オレ達の機嫌を損ねる前に、とっとと消えな」

 だが、2人の思惑はまた別にあった。
 ランスは言葉どおり、奪うつもり満々だが、真の目的は捕らえられている少女。それをこの状況で馬鹿正直に話してしまったら、人質にとられ最悪命までとりかねないのだ。少女は何人かいる。減った所でどうとでもないと。……男達の下衆さから想像するのは難しいことじゃない。
ランスもここまで話せば、それに乗っかる形になった。元々、少女達からお礼(セッ○ス)も受け取るつもりだったから、傷でもついたら大変なのだ。

「ぅ……ぁ……?」
「だ、だれ……? また、ひどいこと、するの……?」
「じ、じぶんから、するから……痛いこと、しないで……」

 新たに現れた人物の影を見た少女達は更に怯えていた。
 まだ、人数が増えたと言う事はそれだけ欲情、性欲も増えたと言う事だからだ。事実、先程も別の盗賊団のメンバーがあらわれて、更に過激になっていたから。そして、その身体は所々に傷があり、まだ年端もいかない少女、幼さの残る少女もいた。

 その少女の中には破瓜の痛みがまだまだ残っている者もおり、トラウマになってしまっているようで、自分から下腹部へと手を伸ばしてきている。

 そんな彼女達を見て、年齢などお構いなし、寧ろ可愛ければ何でも良い、と言った奴等の言葉が聞こえてくるようだった。この手の屑に会うのは初めてではないが、心底胸糞悪いは共通点だった。

「……殺るか。こいつ等には《死》以外考えられんな。視界に入るだけでも不愉快だ……。ランスはどうだ?」
「当たり前だ! 世界中の美女、美少女は全部オレ様のもの。将来までその予約は埋っているのだ!……なのに、こんなにしやがって……。」
「優しく対応してりゃ付け上がりやがって! おら! 殺っちまおうぜ!!」

 まるでゴミを見るような目もそうだが、何よりもたった2人で向かってくる事に逆上したのだろうか、5人の男達は一斉に散開した。

「よぉし! とっとと殺して経験値だ! それに奥にはまだまだ 美少女が居るようだからな! さぁ、さっさと、行け 下僕1号!」
「……名で呼べっての。さて」

 向かってきた男達を一頻り睨んだ後、ユーリは剣の柄を握り締めた。

「……滅殺だ」
「さっさと経験値だー!」

 ランスとユーリの2人は、5人相手に逆に迎え撃つ、姿勢ではなく、向かっていった。

「アイツ、馬鹿なのか?たった2人でオレ達5人を相手をする? 勝てると思ってんのか、馬鹿め! 死ねぇ!!」

 2人が向かってくるが、背中合わせに戦ったり、連携をとったりする筈もなく、あっさりと2人は分かれる。盗賊たちは2:3に分かれると、ユーリとランスの逃げ場を阻むように囲んだ。
 其々の得物、《斧》《槍》《剣》と言った武器を手にゆっくりとじわじわ追い詰める様に近づいてくる男。

「……」

 後2、3歩で剣が届くか届かないかの距離で、ユーリは目を閉じていた。
 その上、剣も抜く様子が無い。

「ぎゃはは! びびってんのかぁ! てめぇ、もう泣いて謝ってもゆるし……て……。……ぇ?」
「あ……あれ……?」

 男達の中で比較的前の方にいた男の2人の身体が一瞬震えた。声も途中で消え入るように聞こえなくなってしまう。

「……あ?」
「なんだってんだ?」
「ッッ!!」

 一番後ろにいた男だけが みる事が出来ていた。
 あの鞘に収めたまま柄の部分を握っていた手が一瞬ブレたのが見えたのだ。まるでピン呆けを起こしたかのように。そして、いつの間にか鞘に入れていた筈の剣を抜いていた。

「……煉獄・居合」

 ぼそりと呟いたその技名。
 それを聞き取れたのは何人いるだろうか。ただ、解る事はある。……前にいた男2人は2つに分かれた事がだ。

 1人は胸元あたりから上が、1人は腰あたりから。身長が違ったから そこから切られたようだ。いや、切ったと言うより、元々2つに分かれるモノだったと錯覚するかのように綺麗な切れ目。
そこからはまだ血すら流れていない。

「……精々地獄で自慢してろ。それは下衆にしかくれてやらないモノ、餞別にくれてやった真一文字の傷をな」

 そう言い切った瞬間、鮮血が噴出す。まるで、鯨の潮吹きの様に。

「な! なにぃぃっ!」
「なにしやがったんだ!!てめぇ!!」

 あっさりと2つに分けた内の1個が壊滅した。突然の惨劇。

「がはは! 馬鹿め! オレ様を前によそ見をするとは 大バカだな!」

 そう、ユーリの方を見てしまったが故に、迫るランスの剣を見る事は出来なかった。

「ラーーンス! あたたたぁぁぁっく!!」

 鬼畜の代名詞。自らの名を技に込めて放つ大一撃。傍から見れば 『痛くない?』と思えるかもしれないが、その威力を見れば判るだろう。自らの名を冠する技に相応しいとランスが思えるのも。
 強烈な衝撃波は、残った男達の内の2人を吹き飛ばした。衝撃の中に存在する斬撃が男達を切り刻み、そして吹き飛ばす。そのまま、絶命していった。

「ふん。雑魚共め、オレ様に勝てる訳が無いだろう」
「一先ずお疲れだ。ランス。……このまま 先へ と言うのだがちょっと待たないか?」
「なんだと?」

 ユーリの言葉を訊いたランスは、少なからず憤怒したが、すぐに思い返す。
 この場にいたのはあの盗賊達だけじゃなく、少女達がいたと言う事を。

「うぇぇ、ばっちいな。流石のオレ様も、幾ら可愛い子ちゃんでも、他人のモノがまみれてる のは触りたくない」
「はぁ、まみれても、まみれてなくても、無茶させるなよ」

 ユーリは、苦言を言いつつも、少女達に近づいていった。

 少女達は、先ほどの惨劇を目の当たりにしている。あの屈強だった男達(少女たちから見たらだが)。抵抗しても無駄であり、寧ろ、抵抗(それ)を喜んでいるフシさえあった男達。そんな男たちをあっさりと倒した彼らを見て。
 あっさりと絶命させた彼らと、その血を見て、心底恐怖した。
 憔悴し切っていても、生存欲が脳の中に溢れ出てきたのだ。

「お、おね、がい…… い、いのちだけは……」
「な、なんでも、なんでもするっ……、それ、それも ちゃんと ちゃんとくわえるっ……」
「っ……っっ……」

 命を乞う、懇願する、涙を流す。これまでされてきた所作を考えたら、本当に一度、殺したくらいじゃ収まらない程の憤怒をユーリは覚えた。
 
 見ていられなくなったユーリは、道具袋の中に入れておいた予備のコートや水、そして色々な回復アイテムを渡す。

「……大丈夫だ。ここにはお前たちを苦しめる者は誰もいない」

 安心させる様に何度も何度もそう言う。もしも、ランスがこの場面を見ていたら、盛大に。それはもう盛大にモンクを言いながら割り込んでくるだろう。
 だが、今はランスは部屋の物色をしている為、見ていなかった。幾ら触りたくない程、他の男達の白濁液に塗れている女の子たちだが、このまま放置していく様な真似はしない。
 いつもならば、シィルにランスは任せているのだが、今はいないから、変わりにユーリを、と言う事だろう。

「ぁ……、ぁぁ……」

 喉も乾ききっていたのだろう、出された水を貪る様に飲み干した。他の2人も同じだった。
 だが、こんな場所では満足な処置も出来る筈も無い。

「一先ず、城下町に戻った方が良いだろう。……女の子絡みなんだから、ランスだって異論はないだろ?」
「当然だ。全ての可愛い女の子はオレ様のものだからな。こんな状態で死なれたら困ると言うものだ」

 完全に自分勝手な言葉なのだが、軽く笑った。ランスは確かに容赦がない所はあるし、強引に迫る事だってあるだろう。だけど、真の意味では、それなりには優しい面も持ち合わせている。だからこそ、シィルは嫌々言っているのにも関わらず ランスを慕っているのだとユーリは思っていた。

 3人の女の子達は、憔悴し切っていたようだが、何とか歩く事は出来た様であり、歩く事もままらなかった、最年少の少女は、ユーリがおぶり、一先ず街へと戻っていった。


 街の病院へと送り届けた後に。再びあのアジトへと戻ってきた。破爪の痛みと苦しみ、精神的なダメージが大きい様だが、幸いな事に、彼女達は身体に怪我らしい怪我は無い様だ。


「さて、後はこの先だけだな」

 ユーリが指さした先は、一本道。あの連中がいた更に先にある階段を降りた先にある場所だ。

「ふむふむ。パルプテンクスちゃんとヒカリちゃんを美味しくいただくぜ~!!」

 ランスも意気揚々だ。どうやら、あの連中を倒した事で、殆どの盗賊団のメンバーを一掃出来た様だ。戦闘らしい戦闘は るろんた等のモンスターのみであり、人間との戦いは無かった。
 そして、更に進んだ先にある部屋の扉の前。

「むむむ、ここから声が聞こえるぞ! 何だか、エロい声もだ」

 ランスが一番に反応した。そして、その扉には《団長室》と書かれたプレートもぶら下げていた。
 間違いなくここがそうであり、更にランスの言う通り、微かに声も聞こえてくる。声、と言うより 喘ぎ声だ。

「よし! 颯爽と突入して、ばばーーんっ! とヤってやるぜ!」

 ランスは迷わず突入しようとするが、鍵が掛かっていて開かない。

「それは当然だな。……ご丁寧にかなり頑丈な扉の様だ。カッチン鉱石とは。これ、壊すのはちと難儀だ。それに、中の状態がわからん以上、手荒な事も出来ない」

 ユーリは、扉を確認しながらそう言っていた。強引に破壊しようか、とも考えていたが 頑丈な扉である事と、確かに聞こえてくる女の子の声。それらの要素が強行突入という手段を阻んでいたのだ。


「くっそーー!! この中でまた女の子がエロいめにあっていると言うのに! もう許さんぞ! あんな男の汁まみれの女の子を見る事など!」
「……アイツ等がヤってなかったら、お前がヤってるんじゃないのか?」
「馬鹿者! オレ様のは、皇帝液! 偉大にして、最高のものなのだ! 喜ぶ事はあっても逆はないのだ!」
「そんな訳無いだろ……」

 ランスの論理は無茶苦茶だったけど、ここまでオープンだと逆に清々しささえも出てくる。
 もちろん、納得出来る訳はないけれど。そんな時だ。

「あら、見ない子ね。新入りのコ?」

 突然、背後に現れたのは、派手な格好をした女。女盗賊、と言った所だ。かなり露出が激しく、ランスはあっと言う間に鼻の下を伸ばした。

「おおっ、これはこれは セクシーな格好のおねーさんだなぁ。っとと、そうだ……デス 新人のランスクンです」
「……無駄に変わり過ぎだ。ここまで暴れてきて、今更だろ」

 ユーリがそうツッコミを入れつつ、前に出てきた。

「へぇ~ 可愛いコ達ね。おまけに元気だときた。 あたしは副団長のネカイ。気軽におねーさんとでも呼んでちょうだい。可愛らしい僕たち」
「ぐふぐふ、チャンスがあれば……うひひ」
「あはは、やらしい顔しちゃって。正直なコ。ま、嫌いじゃないけどね」

 あくまで笑顔を絶やさないネカイ。間違いなく自分達が新入りではないと言う事は判っている筈なのだが、警戒すら全くしていない様だ。いや違う それ(・・)を見せていない様だ。

「何か、困った事があったら遠慮なくあたしに言いなさいよ。 ね?」

 そう言うと同時にウインクまでする。どこぞの盗賊団の副団長と言う器には収まりきらないだろう印象を得た。

「がははは! なら、ヤらせろーー!!」

 ランスはランスで楽観的。いつも通り。
 美女を見かけたら、ムラムラ来るのが止められない様子であり、ネカイに飛びかかるのだが。

「うふっ……♡」

 軽く、妖艶に、妖しい笑みを魅せるネカイ。最小限の動きで、そして 皮一枚の距離で、ランスを躱した。ランスは、恐らく彼女の身体をすり抜けたのではないか? と一瞬錯覚しただろう。それほどまでに、鮮やかに素早く。


「どわぁっ!」

 ランスは、勢いよく壁と正面衝突し、倒れてしまった。ギャグっぽい感じだったから、回復の必要などは無いだろう。

「で、キミもあたしとヤリたいの?」
「いや、遠慮をしておくよ。……それよりも、オレ達は この部屋に入りたいんだがな」

 ユーリは、軽くその挑発とも言える笑みと言葉を一蹴。それを見たネカイは軽く笑った、今度は普通の彼女の笑み。

「へぇー……、可愛いじゃない。アナタ」

 そう言うと、ユーリが指さした扉の方を見た。団長の部屋を。

「ああ、団長のライハルト。最近攫ってきたお気に入りの子と一緒に、ずっと部屋に篭って遊んでいたわね」

 ネカイは、そちら側にはまるで興味がなさそうに、本当に、つまらなさそうにしていた。 

「何ぃ! 攫ってきた!!」

 ランスは、起き上がると同時に、拳を握りこんだ。

「クソっ! 羨まし……じゃなく、けしからん! でもなく、やっぱり羨ましい! と言うより、オレ様以外の男がそんな真似は許せん!!」
「ほんっと、自分に正直なコよね~。ま、ノックしたくらいじゃ返事しないでしょ。アイツ、夢中になってるみたいだし」

 ネカイは、手をパタパタとさせながらそう言っていた。ランスはムカついたのか、扉を再びノック……じゃなく、殴りに行く。無駄だと判っていても、邪魔をどうしてもしたいのだろう。

「はぁ。……それで、どうやって入ればいい? 中にいるコの事を考えたら、あまり手荒な事は出来ないんでな」

 ユーリは、そんなランスを尻目に、ネカイと話をしていた。彼女は他の団員とは毛並みが全然違うと言う事はもう判っている。
 そのライハルトとやらを庇ったり、とはしないと思ったのだ。

「ふ~ん。入りたいんだ……」

 舌をぺろりと出し軽く唇を舐めるネカイ。その仕草を見れば 色っぽいと人は思うだろう。

「まぁな。だが、不思議なものだ」
「んー? ああ、女のコ、さらってくる様な盗賊団にあたしがいる、って事?」

 ネカイは、ユーリの目を見てある程度悟った様で、そう言っていた。他の団員達の所作も大体把握をしているからだろうか。

「確かに、それもあるな。……正直、こんな盗賊団に収まる器だとは思えない」
「へぇ、随分とあたしの事、買いかぶってくれてるじゃない?」
「一応、見る目はあるつもりだ。……ランスに関しては……、まぁ 特殊な事例って事だな」
「あははっ! まぁ、確かに。アンタと真逆なタイプじゃない? あのコ」

 口元に手を当てて、本当に楽しそうに笑うネカイ。団長の事を話している姿とはまるで違った。そして、一頻り笑うと、笑みを止めて、その胸元から1つの鍵を取り出した。

「合鍵は一応、持ってるけど……?」
「ほう。……つまり、『欲しければ奪ってみろ』と言いたいのか?」

 ユーリも、朗らかな笑みを見せた。絶対的な自信がその身体から出ている様だ。
 そして、その雰囲気から、ネカイ自身も理解出来た様だ。

「いいえ、あたしも、結構見る目はあるって思うんだ~。……戦って勝てる相手か、そうじゃないか、くらい、把握出来る程度は、ね♪ つまり、アナタには勝てそうにないもの」

 あくまで笑みを崩さないネカイ。お手上げだと言っているのにも、だ。

「ただね~、合鍵を壊す事くらいはできるのよ? あたし」
「……何か要求がありそうだな」

 鍵を取り出して、くるくると回すネカイ。寸前まで距離を詰め、攻撃と奪う事を同時にする。できなくはないが、成功の確率はかなり低いだろう。そして、何よりもこの女が本当に悪い奴だとは思えない。
 さっきのあの女の子達を犯していたあの男達の上に位置するのだが、どうしても、見えないのだ。

「ええ。アナタのその袋から頭を出してるソレが欲しいの。……ソ・レ!」

 ネカイは、その長い指を1点に向けた。その先にあるのは、ユーリが背負っている道具袋。冒険者の必需品といっていいアイテムが詰まっている袋だ。

「ん? この酒か?」

 ユーリが袋の中を見てそう言った。確かに長く大きめの瓶だから 袋からはみ出ている。故に判ったのだろう。

「ええ。葡萄酒がきれちゃっててね~。買いに行くのも面倒だし……、それと交換、してあげてもイイわよ? この際種類はもう良いしね~」

 ネカイはそう言うと鍵を前にだした。確かに、早く方を付けるにはその方法が一番だろう。ユーリは軽く考え。

「ん。……これは結構良い酒なんで、少し楽しみにしていたんだが……、まぁ 良いか。たまに手に入る事もあるし」
「……へ?」

 ユーリがそう言うと、ネカイは目を丸くさせた。手に持って運んでいる程度だから、買ってきたんだろう。と思っていたのに、その口ぶりからではまるで違う事が判ったから。
 そして、確かに瓶の先の部分が覗いているのだが、そのラベルまでは見えない。だから、何の酒かはわからないのだ。

「ほれ」
「え、ええ! まぁ! それって、幻の名酒 『山裂250年』じゃない! ええ、マジでっ」

 今までみせてきた顔からは、考えられない程に、素の表情をみせているネカイ。手玉に取ろう、と言う様な仕草を見せていたから、軽く胸がすく想いだ。

「それなら、鍵と交換だけじゃなくって、気持ち良い事、してあげるわよ~。この名酒との対価なら、う~んと、気持ちよくしてあげるわよ??」

 鍵をそのまま、ユーリに渡すと、いやらしい手付きで、ユーリの身体をまさぐった。その手は、ゆっくりと、そして確実にユーリの下半身にまで伸びていく。

「それは魅力的な誘い、だが。辞退するよ」
「あ~ら? あなた、インポなの~? それとも、こっち系だったり?」
「……そのどちらでも無い、とだけ言っておく」

 オカマポーズをするネカイを見て、そう返すユーリ。その後 ランスの方を見て。

「……はぁ、オレがンな事されてたら、沸点低いアイツが何言うか判らないんでな」

 ユーリがそう言うと、ネカイは理解した様に頷いた。

「ま、確かにそんな感じよね。鍵、無いのにまだアレだけ頑張ってるみたいだし?」

 ゲシゲシッ! と今だに扉を蹴り続けているランスを見て、笑いながらネカイは言っていた。多分、あの扉の向こうから、あの声が訊こえているのだろう。

「……オレも急ぐか。遊ばれてる、と言う事は殺しはしてないだろうが、何にせよ、この盗賊団は胸糞が悪いんでな」

 ユーリは、鍵を受け取ると、進んでいった。そして、ネカイの方を見ると。

「対価、と言うなら、その酒をやるかわりに、この盗賊団は辞めろ」
「え?」
「まぁ、後少ししたら、《無くなる》だろうけどな。名前は限りない明日、とある様だが、《明日がなかった事になる》。……それでもいたいのなら、これ以上は言わない」
「あはは。あたしはただ あのライハルトに頼まれて ヤってあげてるだけだしね~。アイツがいなくなるなら、ここにいる理由も無いかなー」

 ひらひら、と手を振りながらそう言うネカイ。団長と戦うなら別に止めたりはしない、と言う事だろう。

「そうか。じゃあな」

 ユーリはそう言うと ランスの元へと向かっていった。



 その後ろ姿をじっと見つめるネカイ。


「あーんなコもいるんだ……。世界ってまだ広いみたね。良い酒もまだまだ有るみたいだし♪ 次は世界を見て回る。冒険者ってのも悪くないかな?」

 そう呟きながら、合流した2人を見ていた。片方が騒いでいるのが判る。

「ふふ、可愛いコがあたしのタイプだし~。ほんっと、可愛い顔、してたわね~♪ 次は……狙っちゃおうかな~、こっちも本気で♡」

 舌舐りを軽くした後、ネカイは何処かへと歩いて行った。

  






 団長の部屋の前にて。

「がははは! オレ様を、この程度の鍵でオレ様の歩みを阻めるか! とーーーっ!!」
「まるで、自分が手に入れたかの様な口ぶりだな。……ま、良いけど」

 意気揚々と、ユーリが渡した鍵で鍵穴にねじ込み、扉を開いた。
 どうやら錆びているらしく、回しにくそうにしていたが、力任せに回し、そして押し開けた。

「よしよし! 突撃だぁ! いいか、下僕1号。オレ様が格好よくここのボスを倒すのは決まってるのだからな」
「知らん。さっさと終わらすぞ」
 
 小言を言い合いつつ、扉の奥へと進んでいった。


 その部屋の中では、粘ついた音、そして 何かが振動する様な音も聞こえてくる。



「あ、あああぁぁぁっ……やぁぁ……」

 そして、少女のモノであろう喘ぎ声もまた、部屋に響く。あの時は、部屋の外だったから、だろう。微かに聞こえてくる程度だったが、部屋中に木霊する。

「とっても、やらしい身体をしているのね~。お嬢ちゃん?」

 口調が完全にオカマ。だが、その顔はいかつい。アンバランスな姿の男、それがライハルト。手に持っている機械で、目隠しをされ、縛られている少女をただ只管責めていた。

「い、いぁ……、わ、わたし、わたしは……、いやらしくなんかっ……ぅぅう」

 羞恥心、目隠しをされ、暗闇にされた事の恐怖、そして 敏感な部分を長時間に渡って責められ続けたせいもあり、処女はすっかり疲弊しきっていたが、それでも身体はびくん、と反応を続ける。

「これが、淫乱の素質じゃなかったら、いったいなんだと言うのかしら?」

必要以上に責め続けるライハルト。だが、その背後から迫ってくる戦士が2人。

「おい」
「……」

 そのまま、斬ってしまえばイイもの、だが 一応確認は必要だろう。

「何? 勝手にわたしの部屋に入ってきたりして、今忙しいの」

 ライハルトは、明らかに不快感をむきだして、振り返っていた。

「お前が盗賊団のボスとやらか? このランス様と、その下僕が退治しに来てやったから、ありがたく思え」
「やーね。今忙しいって言ったでしょ? このコを調教して、わたしの玩具として完成させてあげようとしているのよ」

 人間を玩具呼ばわり、それも幼気な少女をだ。……やはり、胸糞が悪くなるのは仕方が無い。

「あまり口を開かない事だ。……下衆が」

 ユーリも一歩前に出た。だが、ランスは早速剣を抜き去ると。

「オレ様だと言ってるだろうが。女の子をその意に反して攫ってきて、、道具を使っていたぶり続けてるただの変態を退治するのは!」

 ランスも人のこと……と無粋な事は言わないでおこう。

 流石に、刃を向けられたライハルトも黙ってはいない。

「ったく、わたし達、限りない明日戦闘団に楯突こうなんて……」

 腰から引き抜いたのは、2本の剣。二刀流がこの男の戦闘スタイル。

「おいたが過ぎるわねーー!!」

 間合いを詰め、攻撃してくるライハルト。ランスもそれに反応し躱す。ランスを狙った一撃だった為、ユーリは問題なく回避。
 ライハルトは、次々と、その二刀で左右から攻め立てる。ランスは、その攻撃を掻い潜り、一撃を返す。

「ちっ、ちょろちょろと すばしっこい野郎め!」
「ふん! 減らず口は、1000枚オロシがお望みかしら!?」

 互いに向き合い、決闘スタイル、と言う所だろうが。

「……オレもいるんだがな」

 ユーリのことはすっかりと忘れ去っているランスと、そしてライハルト。横から一撃でも入れればあっさりと終わりそうなのだが、それしたら、ランスにまた煩く言われるのは判りきっている。

「まぁ……、今の内に彼女を助けておくか」

 そう言うと、拘束されている少女の所へと向かっていった。

 そして、ランスはというと、剣を鞘にしまう。

「な、なんの真似よ!」

 突然の武器放棄も同然の行為を見て、驚きを隠せれないライハルト。だが、ランスは大真面目だった。にやりと笑うと。

「ランス……すとらーーーっしゅ!!!」 

 叫びながら、その豪腕を活かし、思い切り剣を振る。その勢いで剣から鞘が、まるで弾丸の様に飛び、ライハルトへと向かっていく。

 だが、そこは腐っても団長だ。虚をつかれた攻撃だが、正確に弾道を見切ると。

「舐めないでよ!!」

 二刀の剣で防ごうとするが。

「煉獄……」
「っっ!!」

 その刹那、異様な気配を背後に感じた。明確な殺意を向けられた、当てられた。全身を針で突き刺される様な悪寒が襲う。
 その気配にたじろいでしまった間に、ランスの放った鞘が、ライハルトの額の中心に直撃。

「ぎゃっっ!!」
「しめた! とどめだ! らぁぁぁんす! あたたたぁぁぁぁっく!!!!」

 最後の一撃は、いつも通り。素早い相手であれば、避けられるおそれがあったのだが、額に一撃を入れられ、昏倒しかけている相手に、隙だらけの相手に振り下ろす一撃。
 防ぐ事も、躱す事も全く出来ないライハルトは。

「ぎゃああああっ!!!」

 そのまま、吹き飛ばされ、物言わぬ骸へと姿を変えた。

「がはは、所詮は田舎盗賊団。オレ様の敵ではないわ! さぁぁて、メインディッシュを……」

 ランスが、はっとしながら見たのは、目の前にいる少女。さっきまでは、拘束されていて、色っぽく、準備完了状態だったのだが、今は違う。ちゃんと服も着てるし、足でしっかりと立っている。

「ななな!」
「おつかれ」

 そして、隣にいるのは。

「このガキが!! 貴様、オレ様の女を横取りしたなぁ!!」
「誰がガキだこら!! 何もしてないわ! それに、いい加減にそのテンション辞めろ!」

 
 ユーリである。
 先に少女の拘束を解いて、助けたら……多分、と言うか間違いなくこう言われるのは判っていたけれど、ランスの性格を更に考えたら、あの無防備な状態の少女をそのままにしておいたら、更に時間がかかってしまうだろう事は容易に予想がつく。

「あ、あの……」

 解放された事は良いんだけど、状況が掴めず、ただただ2人を見ていた。彼女の名前は《パルプテンクス》 あの酒場ふらんだーすのマスターの娘だ。

「むぐぐぐ……」
「むぐぐぐ、じゃない。さっさと行くぞ。まだ、大きな仕事があるだろ? 帰り木、ちゃんと持ってるか?」

 ユーリがそう言うと、ランスは渋々だが納得しだした。かなりまだイラついている様だが、別に彼女を襲ったわけじゃないし。帰ったら、と考えているのだろう。 

「遅れたな。オレはユーリだ。キミのオヤジさんに頼まれて助けに来た冒険者。アイツもそうだ」
「馬鹿者! このランス様をついでみたいに扱うな! 下僕が!」
「はぁ、だったらさっさと行くぞ。……もう、ここには用は無い」

 そう言うと、出口の方へと向かっていった。

「あ、あの…、ランス、さんですね。ありがとうございました。ランスさんのおかげ、と訊きました。本当に……ありがとうございました」

 怒っているランスを見て、少し怯えつつ礼を言う。

「む……、がはは。当然だ。下僕には、オレ様がちゃんと指示を出していたのだ。あの変態団長を始末する間に、キミを助けておけ、とな。がははは!」

 さっきとは明らかに違う発言だけど、パルプテンクスは先ほどの羞恥と余韻が残っているため、深く考える事は出来ない。

「ふむふむ……(さっきも見たが、良い身体ではないか。胸が得にgoodだ。直ぐにでも……だが、今は恩人と思われているからな。身体検査とでも称して、ちょっと触っちゃうか)」

 色々と画策している間に。

「ほんとにやっちゃったんだ。……ライハルトを」

 誰かが入ってきた。あの副団長であるネカイだった。

「一応、ライハルトの事は知ってるけど、こんなに早くに終わっちゃうとは思わなかったわ」
「お? 先ほどの美人なおねーさんではないか。 む? 団長をさくっと殺ったオレ様にリベンジマッチをしかけてくるか? なら、相手をしてやらんでもないぞ。ぐふふふ」
「ほんっと、自分に素直なコなのね。それはそれで楽しそうだけど……」

 ネカイは、離れていた場所で見ていた。確かに、ライハルトを直接倒したのはランスだ。だが、その後ろで、あの瞬間、ライハルトは明らかに動きが止まった。そして、その後ろ。ライハルトで見えなかったが、そこから異様な殺気も、同じく感じていた

「……戻ってきたのか」

 ユーリと目があった。そう、恐らくは彼から放たれた殺気。威圧だけで、相手の動きを止めたのだ。

「ふ、ふふふ。ほんと、すごいコ達ね」
「ん? アイツを殺ったのは、ランスだぞ」
「そーね」

 ニコリと笑うネカイ。

「でも、あのコ、そーとー溜まってるわよ? あの青い髪のコにイタズラする気満々って感じね」
「はぁ、だろうな。あんまし 邪魔して、更に遅くなるのは流石に嫌だ。……が、あのコが嫌がっているのに、させるのも……気が引ける」

 娼婦であるのなら、まだしも、彼女は一般人だ。こんな所に連れてこられた可哀想なコだ。折角助かったと言うのに、助けに来てくれた男の内の1人に襲われた、となったら、男性不信になってしまっても不思議ではないだろう。

「ふふ。その辺は、このおねーさんにまっかせーなさい」
「ん?」
「相手、してきてあげるわ。たっぷり抜いてきてあげる。山裂250年のお礼の1つ、って事で♪」

 妖艶な笑みを再び浮かべるネカイ。

「コラァ! オレ様の女と何、イチャイチャしているのだ!! ガキっ!!」
「誰がガキだ! ……それにいつ、お前の女になったのかは知らんが、そんなつもりはないわ!」

 ユーリと話しているのが気に食わないのだろう。……さっきも話をしてたのに、と言う事はおいておこう。

「ふん! だが、その前に……ぐふふ」

 最初は、パルプテンクス、そしてネカイ。照準がコロコロと変わっていくランス。パルプテンクスの身体に手を伸ばそうとした時だ。

「頑張ったご褒美、あげるわよー? ぼーや」

「お、おおっ!?」

 その手は、ネカイが取り、そしてランスに抱きついた。

「うふふふ、気持ち良い事、してあげる……♪」
「お、おほほっ!」

 まるで、ライハルトの様な口調になってしまっているランス。多分、抱きつかれている間に、色々と触られているのだろう。

「……帰らないのか? ランス」
「がははは! オレ様はこのおねーさんと一発やってから帰るぞ」
「パルプテンクスを送っていかないといかんだろ?」
「パルプテンクスちゃんはまた、後だ。だから、連れて帰ってよーし! 下僕1号。傷つけるんじゃないぞ!」

 ランスはそう言うと、ネカイの方に完全に集中した様だ。ネカイはと言うと、意味深にウインクを返してきた。

「はぁ……、ならさっさと終わらして戻ってこいよ。……絶対、後で煩く言われるのは判ってるが」

 ユーリは、ため息を吐きつつ……パルプテンクスの方へと向かった。

「さぁ、帰ろう」
「え、あ、あの……、構わないんですか? その、ランスさんの事は」
「ああ。……ま、ネカイがいるから大丈夫だ。……とと、ネカイの事は知らないのか?」
「え? あの人の事は……いや……」

 パルプテンクスは、ランスの上に跨っている彼女を見て首を振っていた。
 副団長と言う地位にいる様だが、自由奔放にしていたのだろうか、ネカイは誘拐には加わっていないと言う事だった。

「そうか。なら良い。ランス達は大丈夫だ。行こう。オヤジさんが待ってる」
「は、はいっ」

 パルプテンクスを連れて、この場所を後にした。



 その後の団長の部屋では。


「だーーー、オレ様はやりたいようにやるのだ!」
「まぁまぁ、抑えて抑えて♪ ほらほら、こっちも……っ! スパートいくわよー」
「お、おおぅっ!? そ、そんな所まで……!!」
「まぁまぁ♪ ほら、もう一度、もうちょっとイケるみたいだからね♪ どんどんいきましょ。更に気持ちよーくしてあげる♪」
「う、うおおおおっっ! オレがヤリたいのにーーーーー!!」


 結局ランスは自分のしたい様には出来ず、ネカイのなすがまま。普段自分がしたい様にしている時と変わらない、いや それ以上の快感を受けたのだが……、全然納得が行く筈もなく、でも 出すものは全て絞り出されてしまい、強引に終わらされてしまったのだった。


「ほへ……、もう、出ないぞ……」
「んふふ、たっぷり出たわね。ちょっとびっくりしたかも」

 ネカイは、それをぺろりと舐めとると。妖艶な笑みを浮かべたまま、ランスの身体から退く。

「あのコともヤってみたいんだけどなぁ……。ま、冒険者になったら、また何処かで合うでしょ。チャンスはまだあるってね~♪」

 意気揚々としているネカイ。新たな目標が出来て喜んでいる様だ。




 ……ちょうどその頃、街へと戻っていっているユーリには、悪寒が走っていたのだった。











~リーザス城下町 酒場 ふらんだーす~



 無事、娘も助け出しその報告も済ませた。
 自身の娘と再会を果した父親は力いっぱい抱きしめ、涙を流していた。何度見ても良いものだと改めて思う。親と子は……、一緒にいるべきなんだと。

「……」

 その姿を見た時、ズキリと胸の奥で響いてきた。だが、振り払うようにし、穏やかな表情で親子を見ていた。


 そして、その後に宴が始まった。
 勿論パルプテンクス以外の少女達も家に送り届けた。
 初めこそは、ランスを待たなくて良いのか?と思ったが、もうもてなしてくれる準備を始めていたからそのままはじめた。

「いや 本当に感謝する! 俺のたった一人、腹痛めて生んだ娘を救ってくれて! あんたらならって信じていたぜ!」
「お酌します。このブランディはとても美味しいと評判なんです」

 親父の意味不明な言葉はとりあえず、聞き流し、パルプテンクスが注いでくれた酒を一口頂く。
 香りも味も、そして色合いも良い。

「……確かに飲みやすく美味い。ありがとう」

 ユーリは、そのグラスを上に持ち上げ答えた。何度もあることだが、仕事終わりの一杯はいつも格別。それが、人助けだったら尚更だった。

「いやー、人は顔じゃねぇって綺麗事はよく聞くがアンタ、まさにそれだな!?酒もいける口だし、気に入っちまった!」
「……一言余計だ」

 確かによく聞く言葉だが、自分にとっては要らない言葉でもある。
 掛ける相手に良い言葉だと言う事はわかってはいるが、自分の事では間違いなく……。

(はぁ……、同じ境遇の奴はいないのかねぇ……。分かち合いたいって思うな。こういうとき特に)

 こういう話題となったら、本当に酒も進むのだ。……言わば自棄酒ってやつ。

「いやー ほれ! どーだ? 俺の娘を是非貰ってくれないか?」
「もう、お父さんったら……」

 冒険者を長く続け、重ねていけばこういう手の話も稀だが出てくる。……勿論、自身の容姿の事程は出ないけれど。

「ユーリさん。本当にありがとうございました。ランスさんにも、そうですが。……ありがとうございました。本当に……」
「構わないさ。……無事で良かった」

 ユーリはそう言うと、再びグラスを口元へと持っていった。すると、酒場の外が騒がしくなってきた。
 どうやら、もう1人の男が帰って来たようだ。

「オレ様帰還だー! さっさとご褒美をよこせ」
「あ、ランスさん!」

 ランスが帰って来たと同時にパルプテンクスが早足に駆け出した。

「あ、先程は本当にありがとうございました」
「何、気にするな。英雄であるオレ様なら助ける事など楽勝なのだ」

 ネカイが本当に上手くやってくれたのだろう。色んな意味で。

「だが、随分と遅かったな。……ま、大体想像は付くが」
「ふんっ!! 次こそは、オレ様のしたいようにしてやるのだ! 新たなもくひょうだ!」

 どうやら、ネカイはランスを手玉に取り続けた様だ。……性技でランスを上回る。性欲でランスを上回る。女版ランス、と言った所、だろうか。

(……色んな意味ですごい)

 ユーリはそう思うと再び酒を片手に持ち口に運んだ。
 そして、腰を下ろしたランスに視線を向けた。

「さてさて、ネカイねーちゃんの事は兎も角、がははは!!」

 ランスは突然上機嫌になっていた。どうやら、ネカイの1件以外にも何かが合ったようだ。

「ん? どうかしたのか?」
「がははは、オレ様はもう既に通行書を入手したのだー!」

 ばんっ! と机の上に叩きつける様にみせるランス。確かにそれは通行書だ。

「お、本物じゃねぇか。それって、結構入手するのが難しいモノだぞ。平和なリーザスとは言っても、城内に入るのには厳正な審査がいるからな」
「オレ様を誰だと想っているのだ。空前絶後の超英雄だぞ? がはははは!」

 本当に上機嫌になるランス。パルプテンクスは、そんなランスに酒をお酌。ほろ酔いも合わさって、更に大騒ぎだ。

「……何だか悪いな。騒がしくなってしまって」

 ユーリは、ランスを見ながら苦笑いをしつつ、そう言っていた。暴れる、とまではいかないが、一般的な喧騒漂う酒場の倍以上は五月蝿い、と経験上判るから。

「いえ、良いんですよ。その……私が攫われている間、お父さんがすごく心配していてくれた見たいで……、ずっと休業予定にしちゃって。お客さんが……」
「あーー、成る程、それは確かに」

 ユーリは苦笑いをしつつ、納得をしていた。
 確かに、このオヤジは ずっと負のオーラを出していた。それも他人に見える様に具現化して。
 そんなのを見せられたら、客足も遠くなる、と言う所だ。と思っていたのだが、どうやら、仕事が手につかないらしく、休業をしていた様だ。それも何日か予定している様だった。

「なら、頑張らないと、な?」
「あっ……はいっ!!」

 パルプテンクスは、本当に輝いている様な笑顔を見せてくれた。

 確かに、この事件は小さな事件なのかもしれない。リーザス王国の深淵へと通じる事件に比べたら、本当に。

 ……が、それでも。

「……良いモノ、だな」

 ユーリはそう思いながら、酒を口に運んでいた。
 
 
 

 
後書き
〜人物紹介〜

□ ブリティシュ

Lv 50/100
技能 剣戦闘Lv2 盾防御 Lv2

リーザスの近辺にある洞窟、現在は盗賊のアジトになっている洞窟の壁に埋め込まれている男。今でこそ、壁の中の変態?しょぼくれたオヤジ。だが、その正体はかつてのエターナルヒーロー達のリーダー英雄ブリティシュのなれの果て。
今から約1500年前。魔法使いシンの禁呪により、四角いコンクリ塊に封印された。
その魔法は新陳代謝を停止させ、動くことも出来ない。
人の精神と言うのは脆いモノだ。それが嘗ての英雄だったとしても。
長い年月は彼の英雄と呼ばれていた頃の面影の全てを奪い去っていた。
嘗ての輝きはもう見られないのだろうか……?


□ ライハルト

Lv18/20
技能 剣戦闘 Lv1 盗賊 Lv1

限りない明日戦闘団のリーダー。オネェ口調で盗賊団の団長。片方の目は赤目、もう片方は白目、半分が黒髪、半分がピンクと、随分と特徴的な外見。
可愛い女の子を責める事が大好きで、パルプテンクスでお楽しみの所をランス・ユーリ組に一味ごと壊滅させられた。


□ ムララ

Lv2/8
技能 盗賊Lv0

限りない明日戦闘団の自称次期ボス……らしい。
通行料として、200GOLDを巻き上げ様とした所であっという間に殺された。


□ ネカイ・シス

Lv20/24
技能 短剣戦闘 Lv1

 頼まれて、限りない明日戦闘団 副団長になる。団長であるライハルトに負けずと劣らないエッチ好き。それは、ランスを手玉に取る程であり、後に出てくるあの女戦士とどちらが上なのか……、ちょっぴり楽しみだったりする。色々な目標が出来て 今は副団長から冒険者へと変わった。

□ パルプテンクス

リーザス城下町の酒場≪ふらんだーす≫マスターの娘。
美人で人当たりが良く接客も文句なしの大人気な評判の看板娘。助けてくれたユーリやランスの事は感謝してもし足りない。最近ランスの性質に気づきつつあり、やんわりと断って回避し続けている。



〜技能名〜



□ 煉獄
使用者 ユーリ・ローランド

剣に闘気を帯びさせ剣を通常よりも強く、鋭く、頑丈にさせる技能であり各技に派生させる必殺技。
そこから、剣撃に繋げれば通常の3〜4倍以上のダメージが見込める。(本人の精神状態で変わったりする。)

その効果は武器強化にも繋がり、それなりに強度な武器であれば、壊れるリスクも大幅に減るため、煉獄は重宝している技でもある。
勿論、使い続ければ疲れちゃうから使用限度はある模様。

誰が最初にそう言い出したかは知らないが、使用している時のユーリの雰囲気から名づけたらしい。
当初、とある神官に『ギャップ萌え〜』とか言われてかなり 気にしているようだった。



~アイテム紹介~



□ 山裂250年

 酒好きの間では知らぬ者はいないとされている名酒。リーザス城下町には置いてません。




〜その他〜


□ 限りない明日戦闘団

リーザス城下を騒がせていた典型的な盗賊団。主な悪さは盗みや誘拐。

 
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