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戦国異伝

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第二百十九話 九州に入りその七

「兵達を整えたことじゃが」
「はい」
「見事と言っておく」
 こう我が子に言うのだった。
「あれでな」
「有り難きお言葉」
「しかしじゃ」
「はい、それでも義弘殿は臆しておられませんでした」
 信忠もこのことについて述べた。
「全く」
「そうじゃな、つまりじゃ」
「どれだけ多く整った軍勢を見て怯えぬ方もおられる」
「そしてそうした者こそがじゃ」
「真の者ですな」
「そういうことじゃ、あれはあの者だけでなくじゃ」
「四兄弟全ての方が」
「ああじゃ」
 こう話すのだった。
「島津四兄弟はな」
「それだけ肝が大きいですか」
「そしてそうした相手との戦はな」
「激しくなる」
「わかっておればよい」
 信長は息子の返事に満足している声で返した。
「そのことがな」
「有り難きお言葉」
「しかし我等はじゃ」
「その島津に対して」
「勝つ」
 必ず、というのだ。
「これよりな」
「その強い島津にも」
「その勝ち方を見せる」
 信長、彼にというのだ。
「その戦をよく見るのじゃ」
「畏まりました」
「ではな、明日出る」
 出陣の時もだ、信長は話した。
「皆の者もわかったな」
「はい、では」
「我等も」
 控えていた重臣達も応えた。
「明日この太宰府を発ち」
「戦に」
「そうする、無理な突っ込みは避けよ」
 幾ら数が多かろうがというのだ。
「ではな」
「島津の釣り野伏せですか」
 黒田が言って来た。
「あれに気をつけ」
「そうじゃ、島津はよくな」
「僅かな兵で敵を誘い出し」
「そして然るべき場所でな」
「周りに伏せていた伏兵達で一斉に攻めてきます」
「我等はその島津家と戦うのじゃ」
 それ故にというのだ。
「迂闊に攻めず、追わずな」
「大軍で戦う」
「それも油断なき様」
「そうして進めていく」
 今回の戦はというのだ。
「ではな」
「さすれば」
「この度は」
「慎重に兵を進め」
「全軍で戦いましょう」
 重臣達も応える、そしてだった。
 そうした話をしてだった、織田家は太宰府からだった。本軍や後詰まで出陣してそうしてだった。
 南に下りていった、その彼等を見てだ。
 大友と龍造寺、それに両家に従っていた豪族や国人達もだった。こぞってその織田の軍勢に馳せ参じた。
 信長はその彼等を全て受け入れて言った。
「さて、これでじゃ」
「九州の北は、ですな」
「当家に降っていく」
 こう兼続にも話した。
「このままな」
「これも戦わずしてですな」
「勝つ」
「そういうことですな」
「だからじゃ、戦はただ敵に勝つだけではない」
「戦わずして勝つことも」
「それも戦なのじゃ」
「そうですか、だからこの戦で」
「天下を一つにするのじゃ」 
 ただ島津に勝つだけではないというのだ、こうしたことを話しつつだった。
 信長は大軍を南に進めていった、その中で高橋と立花も信長の前に現れた、その二人を見て言うのだった。 
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