真田十勇士
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巻ノ七 望月六郎その九
「この方ならな」
「では、か」
「我等と共にか」
「殿にお仕えするのじゃな」
「そうさせてもらう、殿」
もう幸村をこう呼ぶのだった。
「これから宜しくお願いします」
「ではな」
「これよりそれがしは真田の末席におり」
そしてというのだ。
「殿に何処までもお仕えします」
「頼むぞ」
幸村は望月の言葉に微笑んで応えた、こうして望月六郎もまた幸村の家臣となった。これで彼の家臣は六人となった。
望月も加えた一行はさらに西に向かい遂に近江との境まで来た、ここで清海が幸村にその大きな口で言った。
「いよいよですぞ」
「そなたの弟殿がおられる山にじゃな」
「入ります」
まさにそだというのだ。
「ご期待あれ」
「ではな、案内してもらおう」
「案内は任せて下され」
清海は幸村に是非にという口調で話すのだった。
「それがし、山とその中の寺ははっきりと覚えていますので」
「ではな」
「行きましょうぞ、ただ」
「ただ、どうしたのじゃ」
「いや、これで弟も入りますと」
こんなこともだ、清海は言った。
「また賑やかになりますな」
「確か御主の弟殿は御主と正反対だったな」
由利は清海の言葉に首を少し傾げさせて問うた。
「そうだったな」
「そうじゃ、しかし一人多いとじゃ」
「その分だけ賑やかになるというのか」
「そうじゃ、もの静かで生真面目な奴じゃがな」
「そうじゃな、確かに一人多いとな」
それだけでだとだ、由利も清海のその言葉に頷いた。
「賑やかになる」
「そうであろう、しかし殿の下には強い者が集まる」
清海自身も入れてというのだ。
「どんどんな」
「これで六人」
海野も言う。
「天下の豪傑と言っていい者がな」
「一人一人が一騎当千、その者がこれだけ集まる」
穴山も背にある鉄砲に触れながら言う。
「何か嬉しいのう」
「そうじゃな、そして次はな」
清海がまた言う。
「わしの弟じゃ」
「山に入るか、面白い」
望月が笑って言うことはというと。
「若し狒々なり山の怪が出ればな」
「御主が倒すというのだ」
「熊を素手で退けたことが何度もある」
望月は根津に笑ってこのことを話した。
「だから山の怪もな」
「退治したいか」
「おればな」
「ふむ、そう言うとじゃ」
「御主もか」
「鬼でも土蜘蛛でもじゃ」
根津が話に出す山の怪はこうしたものだった。
「おって悪さをしておればな」
「倒すか」
「そうする」
まさにというのだ。
「わしが刀でな」
「御主なら出来る」
鬼でも土蜘蛛でもだ、根津の腕ならば倒すことが出来るというのだ。
「例え相手が怪でもな」
「その自信はある」
「ここにおる者なら誰でも出来るな」
清海も言うのだった。
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