黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
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13部分:第十三章
第十三章
「縁というか因縁がありましたし」
「因縁!?」
「私達が倒したのよ」
沙耶香がその因縁について話した。
「私達二人でね。彼女の祖母をね」
「それが因縁でしたか」
「そうよ。それが因縁なのよ」
まさしくそれだというのである。
「それがそのまま続いていてね」
「私達とあの方には浅からぬ縁があるというわけです」
「ふむ。どうにもこうにも深いものですね」
「そうよ。それで彼女はね」
その依子の話に戻った。
「仕事として裏の陰陽道もやっているけれど」
「自らの欲望の為にもですか」
「使うことを躊躇しないわ」
そうだというのである。
「私の魅了は生まれてから備わっている力でそれは使っても魔術ではないけれど」
「あの方は陰陽道を御自身の欲望や目的の為に使われますので」
「今回の事件もそうね」
この巴里での美女、美少女の連続失踪事件についてである。この事件の核心でもある。
「己の目的の為に陰陽道を使っているのよ」
「そこが許せないのですか」
「許せないというのはないわ」
そうした感情はない沙耶香だった。
「彼女はそうした女だから。ただ」
「ただ?」
「事件の解決を依頼された」
今彼女が言うのはこのことだった。
「それなら。事件を解決させるだけよ」
「そして美女を全て解放して頂けるのですね」
「そうよ」
「その通りです」
沙耶香だけでなく速水もモンテスの言葉に声で頷いてみせた。
「それだけよ。彼女が相手でなくても」
「そうさせて頂くつもりです」
「割り切っておられるのですね」
モンテスはこれまでの依子にまつわる話と二人の仕事に対する考えをそれぞれ聞いて述べた。
「それはまた」
「そうかも知れないわね。ただ」
「ただ?」
「楽しませてはもらうわ」
こうも言うのであった。
「私のいつものやり方でね」
「いつものですか」
「それは聞いているわね」
「はい、自由に捜査を行いその手段については一切何も言わない」
「つまり事件の解決まで全て私の好きにやらせてもらうわ」
こう言うのである。
「それでいいわね」
「はい、ではそれで」
「私もですね」
そしてそれは沙耶香だけではなかった。彼、速水もなのだった。彼はここでモンテスに話すのである。
「それにつきましては」
「それも聞いていますので」
彼についても述べるモンテスだった。
「既に」
「そうなの。だったら」
「私達については」
「全てお任せします」
穏やかな笑みと共の言葉だった。
「それではその様に」
「これで事件は解決したわ」
沙耶香は微笑んでこう言ってみせたのだった。
「無事ね」
「もうですか」
「そうよ。解決したわ」
言いながらであった。コーヒーを一杯飲む。そしてこうした言葉も出してみせたのだ。
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