ソードアート・オンライン~共鳴の宴舞台~
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SAO:アインクラッド〜共鳴しあう絆の中で〜
ボス戦、始動
前書き
一行でわかる前回のあらすじ
トラウマ?ナニソレオイシイノ?(((;° –°)))ガタガタ
「やぁっ!」
「はあっ!」
フォルテとヒナが狩人を吹き飛ばした直後、回り込んでいたリークとフィーネが攻撃を仕掛ける。
攻撃自体はいたって普通の動き。
上層で使われるものもあれば、中層、下層でしか通用しないものも混ざっている。
技術の緩急。
スイッチを使い、プレイヤーの戦法をいきなり変えることでモンスターを戸惑わせるように、プレイヤーの動きを変えまくり、同じような現象をもたらす。
というのをリークが思いついて今やってる。ぶっつけ本番で。効果は未知数。
だが、それでも実際ダメージは通っている。それも単に、二人がトッププレイヤーだという理由で説明ができる。
簡単に言えば早すぎるのだ。
この二人はスピード重視にステータスを振ってきた。
最速とまでは言わないが、かなりの速さまでは登りつめている。
凄いのはそれだけではない。
この化物のような速さの攻防を、二人でやっていること。
スピードが高いということは、重い装備をつけられず、防御も低くなる。
その代わり移動範囲と移動速度が上がり避けやすくなるが、二人いるならば当然その範囲が重なるだろう。
そうすると互いが互いの邪魔をしてしまうだろうし、下手をすればどちらかを攻撃してしまうかもしれない。
そんな状況で互いの動きを確認し、先読みしながら高速の戦いを続ける二人は、一種の化物だ。
だが向こうも立派なボス。己のHPがざりざりと削られていくのを黙って見ているわけがない。
狩人は攻撃を受けながらも両手を上に挙げ、思いっきり地面に叩きつけた。
もちろん、そんな大振りな攻撃が当たる訳がない。
だが問題は、そこではなかった。
「にゅぐぅぬっ!?」
「くッ、衝撃波か!」
おそらく全方位のプレイヤーにノックバックを与える技なのだろう。二人のHPが二割と少し減少し、後方まで押し戻される。
あと変な声が聞こえた気がするがまぁいつもの如く気にしない。
「フォルテ!ルイン!スイッチ!ヒナは後方支援!」
「「「了解!」」」
変な声出した人が即座に対応するがタイムラグが生じてしまう。ちゃんとしたスイッチの効果は期待できないだろう。
狩人の方は、衝撃波を撃った後アメフトのような姿勢でタックルの予備動作を始めていた。
「パワー勝負なら、負けねぇぞ!」
真正面から、ルインがタックルを受け止める。
それだけではさっきと同じパターンだろう。実際、今度は左足がルインに向かっている。
だが。
「うぉらぁぁあああ!!」
(何故か)雄叫びを上げながら、剣の腹で受け止めた狩人の肩を滑らせ、後ろに受け流す。
そこには、テニスラケットのように棍を振るうフォルテがいた。
「《響き渡る律動》!!」
一閃。
ガガガガガガガンッ!!と
フォルテの棍が当たった場所に幾度ものダメージエフェクトが飛び散り、狩人が吹き飛ぶ。
残りHPは、四割と五本。それなりの耐久を持っているようだ。
《響き渡る律動》は共鳴棍専用スキルのいわば単発連撃技である。
動き自体は単発技だが、音が反響して何度も聞こえるように、攻撃を当てた場所に何度も追撃が発生するのだ。
そしてそんな攻撃を腕や足などの箇所に当てた場合、低確率で共鳴棍特有のデバブが発生する。
そう、こんな風に。
「なんだ……あれ?」
狩人のHPバーの下に見たことのない、棒を折ったようなアイコンが表示される。
「特殊状態異常––––––骨折。その箇所を使う攻撃をすると、ダメージが発生します」
「うっわ受けたくねぇ……」
「今度やってあげましょうか?」
「丁重にお断りするよッ」
体制を立て直した狩人が近い位置にいたルインに飛びかかる。
彼はもう一度受け止め、そこを今度はフォルテ、リーク、フィーネの三人で攻撃を始める。
ルインが攻撃をせずに防御に徹底しているため、フォルテも攻撃に参加している。
事件は、一本目のバーが消え、二本目のバーが一割ほど削れた時だった。
「かはっ……!?」
徹底しているとはいえ、ルインの武器は大剣。剣の中では防御に向いてはいるがボスクラスのモンスターの攻撃をそう何度も捌き切れるはずもない。
つまり簡単に言えば。
「がぁぁああああッ!?」
ルインがぶん殴られたということだ。
「ルイン!?」
「フォルテ!危ない!」
「な!?が、ぁぐぅ!?」
このギルドメンバーには盾持ちのプレイヤーがいない。
そのため、一番武器防御に向いているルインが担当することになっている。
そしてそのルインがやられたということはつまり……
こういうことである。
「ぐっが、はぁッッ!?」
リーク、フィーネと比べてスピードの低いフォルテは攻撃を避けられなかった。
がりがりと、自身のHPバーが五割ほどまで削られ、後ろまで吹っ飛ばされる。
そこで、気付いた。
フォルテは鎧を着ているわけではないが、身につけている装備品はそれなりに使える品だ。
その上で体力が半分持って行かれた。
即座に目線を動かしルインの体力を確認すると、残っているのは五割と六割の間のあたり。
軽金属鎧を装備している彼で約半分。
そして今、前で戦っている二人はスピードを落とさないように最低限の防御力で戦っている。
もしも。
同じような攻撃が、自分達より体力も防御力も低い上に、二割ほどのダメージを受けている二人が受けたら。
最悪の事態が、頭をよぎった。
忌まわしい悪夢に、二人が殺されると。
いてもたっても、いられなかった。
「うぉぉおおあああ!!」
「嘘っ!?」
「フォルテ!?」
「待てっ!バカ!」
愚直に、素直に。突っ込んでいた。
さっき二人が攻撃を受け、後ろまで吹っ飛ばされた時、リークとフィーネは先ほどと同じように翻弄する作戦に出た。
これならまだ持ち直せる、と。
そこへ、想定外が突っ込んだ。
いうまでもなく、フォルテだった。
今の二人の間に混ざるということを簡単ににいうならば。
少しでも力をかけると割れるような氷の膜の上を突っ走って通り抜けるような。
無茶苦茶な所業。
また彼の中に生まれ始めた悪夢の恐怖を消すように、全力で。
全力で––––––––通り切って見せた。
これは単に偶然ではない。
二人が集中力を極限まで高めてフォルテの道を無理矢理にでも作ろうとしたことも要因の一つだが。
フォルテの動きは、その歪な道を完璧に沿っていた。
つまりは、信頼。
フォルテも、リークも、フィーネも。
この二人ならこうするだろうと、信じていたからできた芸当である。
そして。
「《響き渡る律動》ゥゥ!!」
もう一度、この部屋にドリルのような連続音が鳴り響く。
リークとフィーネが少しずつ削っていたHPバーをさらに削り、二本目のバーを四割ほどまで削る。
今回は骨折は起きなかったが狩人は吹き飛び、あるところまで強引に移動させられる。
ところで。
話は変わるが、「一撃必殺」というものを聞いて、思い浮かぶものはなんだろうか。
スナイパーのような銃器だろうか?
雷撃を放つような魔法だろうか?
どんなものでも叩っ斬る剣だろうか?
もちろんそれもあるだろう。そして一撃必殺の技を習得すれば、このような世界では比喩なしに最強を名乗れるだろう。
だが、ただ一撃必殺の技があるだけでもそれを使えないことには意味がない。
攻撃範囲、発動速度、反動、リスクなど、様々な要因が付いて回る。
では、チームで一つ、一撃必殺の技が使えるとしたら?
そうなれば、使えるような状態を他の人が作り上げて、最高のタイミングで叩き込むことができれば、問題はないのではないだろうか。
そう、たとえばこんな風に。
「《黒曜石を貫く爪》……!!」
ザシュッ……!
聞こえた音は、一つだった。
生まれた音は、無数にあった。
狩人の身体に、いくつもの傷痕が……いや、爪痕が走る。
気づけば狩人のHPバーは既に二本目を終え、三本目の六割ほどまで削られていた。
「失敗は、しない……」
呟くように。脅すように。
「私は、航海士だから……」
感情の読み取れない、それでいて殺意のこもった声と共に。
「《雨天航海士》ヒナ……垂直に落ちる大量の水は、あなたに避ける術を与えない」
何よりも静かに、鬼の目が開かれる。
後書き
やっとヒナさん出せたよ〜
フォルテ「前々から出番欲しいって言ってましたからね〜」
さて、後は……
フォルテ「フィーネさんですね……あのさっさと出してくれないと僕とルインが八つ当たりに……」
それでは、次回のお話も!
フォルテ「耳を傾け言ってくださいね!って話を逸らさないでくださ」
ばいばい〜
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