零から始める恋の方法
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持上雪菜の記憶の欠片
『雪菜、お前に私たちはとんでもないものを背負わせてしまった」
『おとーさんなんでないてるのー?かなしーのー?ならわたしがなでなでしてあげるー!」
『そうか・・・。雪菜は優しいな・・・。だけど、わかってほしいんだ。たとえ雪菜がいくら怨んでくれても構わない、だが私たちは雪菜のためを思ってやったことなんだ・・・」
『うん!私ね、あれからすごくちょーしがいいの!だからおとーさんありがとー!』
『礼を言うほどのことではないさ・・・。いいか、雪菜。これからもしお前につらいことがあったとしてもお前は笑い続けていなさい、誰かのために精一杯頑張りなさい、その時こそお父さんたちがあげたものがきっと役に立つはずだ』
『おとーさんがくれたものー?なにくれたのー?』
『それはまだわからないはずだ。だが、いずれその時のなったら必ずわかるようになる。それが重荷になったとしても、誰かのために頑張るということ自体が素晴らしいことなんだ』
『だれかってだれー?おとーさん?おかーさん?』
『そうだな、たとえば○×ちゃんとかだな』
『え・・・?おとーさんなんていったの・・・?』
『・・・どうやら時間のようだな。雪菜、私たちがお前にあげたものは使いようによってはとてつもなく―――――――――――――』
「ん・・・」
なんだったんだろう・・・。
夢なのは確かだと思う。
だって、お父さんとお母さんはもういないから・・・。
あれは私の記憶?
でも、あんなことお父さんは話してくれなかった。
じゃあ、私が何か別のことと混同している?
わからない。
だが、夢なんてそんなものだろう。
この時はただ純粋にそう思っていた。
To:Yukina
From:Rie
件名:とどいてるー?
利英さんからメールだ。
買った後利英さんが慣れた手つきで形態の設定を済ませ、メールアドレスを教えてくれたのだ。
で、今朝学校に行く前に私がメールを送ったところ届いたのか、通学途中にメールが届いた。
To:Rie
From:Yukina
件名:Re:とどいてるー?
・届きました。メールってすごいですね。
電車などを偶に利用することがあるのだが、みんな携帯のキーをうつ速度が異常に早い。
それにくらべてまだ私はたどたどしく、どこからどうみても携帯に初めて触った人だ。
To:Yukina
From:Rie
件名:Re:Re:とどいてるー?
・流石機会だよねー。あ、雪ちゃん発見!
と、携帯電話の画面を見ていたら急に後ろから飛びつかれた。
「きゃっ!?あ、あぶないです!びっくりしましたよー・・・」
「歩きながらの携帯のほうが危ないよー。ちゃんとルールとマナーを守って楽しくやらないとダメだからねー!」
確かにそれもそうだ。
というか、そうするのが正解だ。
つい調子に乗っていたようだ。
「すみません・・・。ついメールに夢中になっていて・・・」
「まあ、誰でも最初はそうだと思うけど・・・気を付けないとダメだからねー!」
「はい・・・本当にすみません・・・」
身長的には私のほうが15cmほど上なのだが、なんだか私より利英さんのほうが大きく感じてきた。
うぅ・・・こういうのが積み重なって手放せなくなっちゃうんだよね・・・。
気を付けないと。
「わかればよし!じゃあ、学校にいこっか!」
登校中、利英さんは想夢ちゃんについて話してくれた。
当然小学校に通っているらしく、体育が特に得意なんだとか。
というか、小学生ってみんな体育好きですよね。
「わたしは図工の時間が好きだったなー・・・。なんで溶接しないの?とかおもったんだよねー」
「よ・・・溶接ですか・・・」
その発想はなかった。
小学生で溶接という単語が出てくるあたり結構変わってるんだと思う。
「たとえば小学校4年生ぐらいのときに段ボール紙みたいなのを組み合わせて鉛筆立てを作るんだけど、それってすごく脆いでしょ?」
「そうですね。継続して使うと考えるとなると木で作ったりするのがいいですよね」
「うん、でも木だとそこに鉛筆の芯があたったりするとそこのほうが黒くなったりして見栄えが悪くなっちゃうんだよね。だからやっぱりああいうのは金属でつくるのが一番なんだよ」
「は・・・はあ・・・」
確かに木だとそこのほうが黒くなっていたりしてしまって、なんか気持ち的に萎えるものがある。
せっかくの手作りが台無しだ。
その点、金属だとその心配がなくなるのでとても安心、というわけか。
確かにそうだけどなんか違くない?
「小学校の先生にそれを言ったら『なら、作ってみろ』と言われたんだよね。で、なんかどうせ作れないだろ、みたいな感じだったから本当に作ってきたよ」
それでつくってこれるひとはかなり希少だと思うんだけど・・・。
まあ、利英さんらしいというかなんというか・・・。
「それでどうなったんですか?」
「実力が認められたよ。で、最後のほうは生徒の机を作ったり、理科の実験道具をつくらせられたりしたよ。でも、そのおかげで中学校での評判はすごくよかったんだよ」
「そんなに有名だったんですか?」
確かにそんなことができる小学生ならば有名になるといえばなるが・・・。
そこまでなるだろうか。
「あ、私の中学校と小中一貫だからさ」
なるほど。
それならば、確かに有名にもなるだろう。
「やっぱりそうなるとほかの生徒に慕われていたりしたんですか?」
「いや、いい感じに雑用係になった。あと、そういうのが好みな男子とかからいっぱいラブレターもらった」
確かに利英さんかわいらしいですし・・・
こう、いい感じに庇護欲を掻き立てられるようなオーラだしてるんですよね。
ほら、今だっていい感じの位置に頭があるじゃないですか。
なでなでしたくなるじゃないですか。
「私も物好きな人からいくつかはもらったことありますが・・・なんだかみんな目線が怖かったです・・・」
むこうも緊張していたのだろうが、その当時の私はそういうのに一切経験とかがないので、とにかくおろおろするしかなかった。
で、一応その待ち合わせ場所に言ったら緊張したような顔、というか当時の私にはそれが怖い顔にしか見えなかったわけなんだけどさ・・・。まあ、そんな状況だったらオーケーサインもそれはちょっと・・・という遠慮がちなものになってしまう。
なにより、身の危険を感じることさえあるのだ。
あれは多分私を彼女にしたらそのあとどうしようか、という想像でもしていたのだろう。
目つきがとにかくいやらしかった。
因みにクズな女子生徒はもらった複数のラブレターをビリビリに引き裂いて、それを組み合わせて別の面白文章を作り上げるという趣味の悪い遊びをしていた。
因みにそいつは現在四、五又ぐらいかけて挙句の果てに援助交際じみたことをして二週間の定額をくらったとか。さらにどうでもいいが、男にすべての罪をなすりつけて自分は被害者面をし続けたんだとか。
怖い人もいたものですよね。
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