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零から始める恋の方法

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アフターケア

 翌日。
 なんというか、羞恥とかそういう感情よりもやりきったっていう感情のほうが上回っていて、特になんとも思わなかった。
 まあ、問題はというと・・・。


 「あ、上本先輩こんにち・・・なんで逃げるんですか!?」


 私を見ると全力で逃げだすようになったぐらいだろうか。
 あそこは普通私の愛に気付いてめでたく結ばれるエンドのはず・・・。


 「や!」


 と、背中をたたかれる。
 突然のことに驚きつつ、若干前につんのめりつつ後ろを振り返ると・・・誰だっけ。


 「私のこと覚えてる?」


 「えーと・・・えーと・・・佐村さん!」


 「紗宮よ。紗宮京。覚えた?」


 「紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京、紗宮京・・・。十回言えました!」


 「・・・それで、覚えた?」


 「はい!ばっちりです!紗宮京先輩!!」


 「京、でいいわよ」


 確かこの人は美術室の悪魔・・・じゃなくて、美術部員の先輩の紗宮京先輩。
 あの上本先輩と仲が良いらしく、割とライバル視している。


 「な・・・なに・・・?」


 おっと、つい視線に感情がこもってしまった。
 もっとおっとりとした感じに・・・。


 「な・・・なんでそんなほんわかした目で見るの!?」


 すこし注文が多いので、にらみつつのほんわかした感じ・・・つまり、若干引いた感じの目線を送る。


 「さっきからなんでそんな目を向けるの!?私何かした!?」


 では、今度は威圧の視線を・・・。


 「ゆっきちゃーん!」


 「あ、利英さんおはようございます」


 少し遅めにだが、利英さんもきたようだ。
 ぶっちゃけ、今までは遊んでいたというかなんというか。





















 で、昼休み。
 一時限目は数学で頭が浸食され、続いて二時限目の英語で思考がじゅうりんされ、古典で何も考えられなくなり、最後の生物で残りライフが50ぐらいになってしまった。
 しかし、鉄壁の力はすさまじく、何とか乗り切ることができた。


 「で、昨日そういうことがあった・・・と」


 「そうなんです!なんかさけられてるような・・・」


 と、ここで若干引いた目線で見られる。
 何故!?


 「いやあ・・・いきなり・・・それいっちゃう?」


 「そんな大人なあれじゃないですよ!少しだけですから!!にわかですから!」

 
 「にわかって・・・。とにかく、終わりよければすべてよしという言葉があるように重要なのはアフターケアよ」


 「アフターケア?えーと・・・それはどのようなことを・・・」


 まさか今から説明をしに行くとか?
 そんなバカな。


 「とりあえず、開き直ってデートにでも誘うのがセオリーね。あえて相手に自分を意識させてさせることで相手に自分を受け入れてもらおうという作戦ね」


 なんか唐突に恋愛教室みたいのが・・・。
 教室・・・授業・・・うぅ・・・頭が・・・。


 「いきなり二人というのは変に意識されすぎたりするから、ここは私とかあの子たちも一緒に行きましょう」


 「・・・それってただついてきたいだけじゃ」


 「はいはいはーい!では、知り合いの男の子もつれていきまーす!」


 男の子の知り合いいるんだ・・・。
 利英さんってピアノ同好会にいるか、海苔食べてるところ以外見たことないんだけど。





















 で、翌日。
 因みに昨日の放課後は顧問の先生が病欠だったため、やむなく休止になった。
 しかし、何故か利英さんが連絡を取ってくれたらしい。
 どうやったのやら。


 「やあやあ、雪ちゃん。今日もかわいいねー!」


 で、知り合いの男の子というのは上元さんの親友の央山先輩だった。
 どうしてそうなった。


 「央山先輩、昨日はお手数をおかけしました」


 「いやー、こんなかわいいこたちと一緒に入れるってのならお安い御用だよ!」


 どうやら央山先輩経由で連絡を取ったらしい。


 「で、今日はプールだっけか」


 「はい、夏にぴったりのイベントだと思いまして」


 今日集まったのは私、利英さん、上元先輩、央山先輩、紗由利さん、想夢ちゃんの合計六名だ。
 ちなみに想夢ちゃんは浮き輪完備でやるきまんまんらしい。
 なんでも初プールだとか。


 でも、なんでそんな水鉄砲でがっちり武装しているのかは不明だ。
 しかも、盾みたいなのもついてるし。


 「利英さん利英さん!」


 小声で利英さんを呼び止める私。
 そうだ、一番の問題はこれだ。


 「どうして早く言ってくれなかったんですか!私スクール水着しか持ってませんよ!」


 「いやいや、大丈夫だよ。私もだから」


 いや・・・そういう問題じゃなくて・・・。
 というか、その赤信号、みんなで渡れば怖くないっていうのはもう古いから!


 「みなさーん、そろそろ行きますよー」


 この中で唯一の成人にして運転免許持ちの紗由利さんが車に乗るように促す。
 集合場所の凛堂家から最寄りのプールまでが結構な距離なので、車で移動することにした。
 というか、想夢ちゃん体力では自転車や徒歩では厳しいと判断したらしい。


 ・・・唯一利英さんと紗由利さんだけは徒歩で毎年通っていたらしいけど。
 まったく、この超人二人はどうなっているんだろうか。


 「お、フォードじゃん!いい趣味してますねー」


 「わかります?このこはですね・・・」


 なんかあそこはあそこで盛り上がってるらしい。
 というか、車内は結構ぎゅうぎゅう詰めになりそうだ。


 「六人を収容するには少し狭い気が・・・」


 「まあ、普段の二倍だしねー。というか、この車自体久しぶりに乗るし」


 「そうですね。普段は私の買い出し用とかそのようなことにしか使っていませんので」


 少し狭苦しい思いをしつつも、キャンプに行くような雰囲気でみんな楽しみにしていたので、それほど苦でもなかった。

 
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