零から始める恋の方法
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ドキドキ肝試し2
「おい、起きろ」
「私はもう寝ます。朝になったら起こしてください。それでは・・・」
「だから、寝るなって」
私が上品な姿勢で眠りにつこうと思い、寝っころがると頭にチョップを入れられる。
わー、暴力はいけないんだー。
しかも、微妙に痛いし・・・。
「先輩・・・力こめましたね?」
「感謝しろ、眠気を吹き飛ばしてやったんだからな」
なんかちょっとイメージと違うような・・・。
まあ、だけど一目ぼれ補正のおかげで私の気持ちは揺らぎもしないけどね!
「それでどうしましょうか・・・。噂が本当だと私たちはここでずっと過ごしていかなければならないんですよね?」
「いや・・・一応七不思議の会談は全て真夜中に限定されているからな。朝になれば、このおかしな現象も収まるはずさ」
だといいんだけど・・・。
しかし、廊下の先は先が見えないほどになっており、本当に無限に続いているらしい。
おとなしく朝を待つしかないのか・・・。
「あ、ではほかの生徒さんたちもここに迷い込んでくるんじゃ・・・」
「・・・さあな。運よくここを避けるか、あるいは人数制限があるのか・・・。とにかく、さっきからもう二十分ぐらいたってるが、全然人なんて来ちゃいないな」
・・・つまり、二人っきりだと。
私の中の悪魔がこうささやいている気がする。
『キスでもして既成事実作っちゃえ!』
・・・と。
ぶっちゃけ、そうしたいのはやまやまなんだけど・・・。
恥ずかしいじゃん。
というか、そこまで雰囲気を持っていける自信がない。
しかし、天使の中の私はこういう。
『先ずは雰囲気の作成からです。そのあとはなし崩し的に子供を成すことができるでしょう』
・・・と。
って、あんた天使だよね!?
私の中の悪魔がドン引きしてるんだけど・・・。
と、とりあえずここは二人っきりだということをアピールして私に気を・・・。
「せ、先輩!」
「ん?なんだ。腹でも減ったか?」
「あ、いえそういうわけではなくてですね・・・!そ、その・・・私たち今二人っきりですね!」
「そうだな」
軽く流された!?
私の中のこの気持ちはいったいなんだったのってぐらい軽く流された!?
「で、ですから・・・二人っきりだとこう・・・わかりませんか?」
「ああ、確かにこんな不思議現象で二人っきりだと確かに・・・な。わかるさ」
お。
通じた・・・。
で、でもでもということは先輩からこう・・・熱いキ・・・キスが・・・。
いやいや、待て待て私!
漫画とかだと先ずは優しく抱きしめられるところからだから・・・しまった!風呂入ってくればよかった・・・。今日体育あったのにー・・・。
「確かに心細いよな。何か話でもしようか」
うぅ・・・違うー・・・。
で、でも雰囲気はそれっぽい!
あとはうまく誘導すれば・・・!
「そ、そうですね・・・。あ、そういえば好きな人とかいますか!?」
ここは恋愛系の話題で異性を意識させて・・・!
「いない」
即答!?
こ・・・これは逆にすでに付き合っている人がいるのではないか!?
そうなると望みはほぼないも同然・・・いや、ただ単にそういう話題が嫌いというだけかもしれない!
まだ・・・まだ希望はある!
「あ・・・あの・・・では最近サッカー部のフォーメンションをいろいろ考えたんですけれど、効いてくれないでしょうか」
「別にかまわないが・・・。俺より海森さんとかに相談したほうがいいだろ」
海森さんというのは三年生のマネージャーで、実質マネージャーのトップだ。
選手の最終的なスケジュール管理なども全て海森先輩の一括で決まるといってもいいほど。
まあ、普通にやさしそうなほんわかした人なんだけどね。
なんか優しいお母さんって印象だ。
「ええ・・・。ですが、選手の方にも聞いておかないと・・・現場の方の意見というのは重要ですし・・・」
「なるほどな。そういうことなら協力しよう。どんなのだ?」
「そ・・・それでー・・・ここは・・・うぅん・・・央山しぇんぱいを軸にした・・・うぅぅん・・・」
「眠いのか?無理はするな。もう夜も遅い。本来なら帰ってる時間だ」
「で・・・でもー・・・そうしたら上本先輩とお話しできないです・・・」
「さみしいのか?気にするな、不安にさせないように側にいてやるよ。朝になったら起こしてやるさ」
そう言うこと言われると乙女心がこう・・・キュンキュンしちゃう・・・。
しかし、せっかくの二人っきりの時間を睡眠なんかでつぶしたくはない・・・。
で・・・でも・・・側にいてくれるって・・・。
「じゃあ・・・約束してください・・・」
「なんだ?変なのじゃなければある程度は聞いてやるが」
まあ、この時の私は内心かなり不安だったのかもしれない。
得体のしれない怪奇現象に突然会い、もしかしたらずっとこのままなのかもしれない。
だけど、上本先輩とはもっと一緒にいたい、二人っきりのこの時間はできればずっと続いてほしい。
たとえ、この思いに気付かれていなくても。
今かけてくれた言葉がすべてただの優しさからくる言葉だとしても。
それでも、私はその言葉一つ一つに、かけてくれたその優しさの一つ一つで、自分の恋心を満足させようとしていたのだろう。
でも、そんなことは最初から無理だった。
入学式のとき助けてくれた時から好きでした。
ずっとずっと大好きでした。
私とお付き合いしてほしいです。
告白するときのセリフならいくつも考えた。
だけど、言えたことは一度もなかった。
自分が臆病だから。
嫌われるのが嫌だから。
変に距離を取られるのも嫌だから。
理由はいろいろある。
だけど、今は・・・今だけは・・・。
「お・・・おい・・・これって・・・キ・・・」
「言っちゃ・・・ダメ・・・ですよ?恥ずかしいですから」
だけど、今だけは少しでもこの思いをかなえてあげたい。
ほんのひとかけらでもあなたにこの思いが伝わるのなら、今はそれで満足だ。
でも・・・。
「いつかまた、私とお話ししてくださいね?」
でも、この思いは実らせてあげたい。
ページ上へ戻る