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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第30話:思い出のバカンス……値切り交渉

(グランバニア城・王家のリビングルーム)
リュカSIDE

娘に手を出すか! アイツ帰ってきたら四の字固めの刑だな。
視線を奥に向けると、ビアンカのドレスを着たままのリュリュが、両手を広げて俺を迎え入れるポーズをとっている。

そんな娘は無視して、俺はピピン経由で輸送船を1隻手配する。
ある程度の作戦を責任者たる艦長に伝え……
そしてオマルを2.30個用意するようにと。

MH(マジックフォン)から聞こえてくるウルフ等の会話を聞いて、こっちの連中は皆楽しそうにしている。
ウルフは別にしても向こうの連中は殆どが緊張してるに違いないのに、こっちの連中ときたら……

因みに、国庫に或る金を確認してくると言ってMH(マジックフォン)の撮影範囲から出てったオジロンは、このリビングルームの端で図工作業に勤しんでる連中に発破をかけてる。
え、図工作業とは何かって?

やだなぁ……身代金事件が発生してる最中の図工って言ったら、古紙を利用した偽札造りだよぉ!
勿論、遠巻きに見せる事もあるだろうから、札束の表と裏だけは本物の札を使用して、その間には札と同じ幅に切りそろえた古紙を挟むんだ。

手に取って確認された時用に全てが本物の札束もバッグ2つ分は用意しておく必要がある。
(ゴールド)札が百枚で1束。それが50束入るバッグを10個用意する。
即ち5百万(ゴールド)を用意した様に見せる。

だが実質百8万(ゴールド)しか用意してない事になる。
内訳は、見せ金用の本物の札束が入ったバッグが2個。これで百万(ゴールド)……
そして古紙を挟んだ偽物札束が50束(本物の札は1万(ゴールド))が入ったバッグが8個。これが8万(ゴールド)だ。

合計すれば百8万(ゴールド)と、俺の提示した最初の身代金額を遙かに超える大金の出来上がりだ(笑)
犯人が要求した5億(ゴールド)からすると、雀の涙程もありゃしないけどね。

とは言え、ウチに百8万(ゴールド)もの大金があるのか不安になったので、図工部隊を急かしてるオジロンの下まで行き、そっと小声で尋ねてみる。
「そんな大金、我が家にあるんですか?」ってね。

「お前は自分が何者か解ってないだろ!」
何か怒られたよ?
「リュカ……一応私達王族なのよ……」
嫁には呆れられたよ?

「父さん……いくら金に無頓着でも我が家(グランバニア)の国庫には、常時2千万(ゴールド)くらいの資金は用意してあります」
息子にはやんわり諭されたよ。

(すげ)ー、金持ちじゃ~ん。警備の方は大丈夫なの?」
「ワシとウルフで常時万全にしておる!」
助かるねぇ~……部下が優秀だと、王様は馬鹿でも務まる。

「そんな訳で、父さんは身代金を値切る事に集中して下さい」
「そだね、そろそろ値切り開始しますか!」
俺は本物の札束が入った2つのバッグを持ち、オジロンとティミーは札束の上下だけが本物のダミーバッグを手に、舞台中央であるMH(マジックフォン)の前へと戻った。

(ピロリンピロリン)
MH(マジックフォン)を操作しウルフを呼び出すと……

リュカSIDE END



(ルクスリエース・バンデ号)
リューノSIDE

突如鳴り出したMH(マジックフォン)を手慣れた手付きで操作するウルフ。
そして映し出されたのは多数のバッグを侍らせてるお父さんだ。
あのバッグに私達の身代金が入ってるのだろうか……少なくない?

『お待っとうさん。吃驚な事に結構大金があったよ(笑)』
「当たり前だ、王家の金庫だろう!」
まったり喋るお父さんにイライラ喋る犯人。ワザとだって解らないのかなぁ?

「それで、国庫には幾ら程ありましたか?」
『聞いて驚けウルフ。なんと5百万(ゴールド)もあったんだよ!』
そんだけ!? ウソでしょ……一国の金庫に常時準備してある金額が5百万って……

「おいふざけるなよ、こっちは5億を要求してるんだぞ! それなのに要求金額の1%って……認めると思ってるのか!?」
『ほら……やっぱ無理だよ。5億欲しいって言ってるのに5百万じゃ納得しないよ。こっちは出来るだけの誠意を見せたのに……やっぱりブッ殺しちゃって良いんじゃね?』

「ちょ、ちょっとお待ち下さい陛下!」
武断的解決を望む(フリ……だと思う)王様を前に、側近である人質のウルフは待ったをかけて犯人に向き直る。そして犯人をMH(マジックフォン)から遠ざけて小声で何かを訴える。

「おい聞け。あの国王は金を払いたくないんだよ! でも愛娘と息子に説得されて渋々金を用意したんだ。まぁ金を用意したのは殿下とオジロン大臣だろうから、本当に国庫にはあれだけしか金が無いんだと思われる。それなのに要求額より安いって断ったら、金どころか命までも無くなるんだぞ! 俺達人質だって、身代金受け取りを断り自分達の身が危険になると察したら、一斉に抵抗するからな! 大人しくしてたって殺されるんだから、精一杯抵抗する! 人質は1000人程居るんだし、陛下は大鳥(ラーミア)でモンスターを直ぐに送り込んでくるだろうし、それまでに俺達人質が全滅するとは思えない……僅かな望みに賭けるだろう」

ウルフが居れば犯人グループは全滅出来るだろう。
でも人質にも被害が出る事は間違いないし、武断的解決は絶対に下策である事は確かだ。
う~ん……犯人が5百万(ゴールド)で手を打たなきゃ如何なっちゃうんだろうか?

「し、しかし……」
「しかし何だ!? お前等5百万を稼ぐのがどんなに大変なのか解ってるのか? 5億じゃないから拒否って馬鹿としか思えないぞ!」

『あ~犯人君達……私の話を聞いてくれないだろうか?』
MH(マジックフォン)から離れて一生懸命犯人を説得してると、ティミーが優しい口調で話しかけてきた。

「な、何だ?」
『うん。先程も言ったと思うが、1年待てば税金を徴収して5億(ゴールド)用意する事が出来る。でも1年は待てないだろ?』

「あ、当たり前だ!」
『だから時間を金で買ってくれないだろうか?』
あ゛? アイツは何を言ってるんだ……

『つまりだ……我々は5億(ゴールド)支払う。しかしそれは1年後だ。だから君達は我々に4億9千5百万(ゴールド)を支払い、1年という時間を購入して欲しいんだ。その差額が今から支払う5百万(ゴールド)……お釣りって事だね』

「なるほど……流石殿下ですね!」
いや違う。
あれはティミーが考えついたんじゃない。きっとお父さんが思い付いた事をティミーが発案した風に装ってるんだ。

『それに如何でしょう……その船も身代金の一部としてお支払いするというのは?』
「船……?」
「大臣閣下! それも良い提案ですよ。この規模の客船であれば、1千万(ゴールド)くらいで売れるはず……まぁ5億には程遠いですけど、合計1千5百万(ゴールド)身代金支払いになる!」

現金5百万と豪華客船1隻……
連中の要求がとんでもないのであって、これはまずまずの成果だと思える。
犯人もそう思ってくれるだろうか?

「そ、そうだな……時間なんて普通は買える物じゃないし、この船も結構良い船だし……その申し出を受けてやっても良い」
人質の事を置いといても、命か1千5百万かと聞かれれば、答えは一つだろう。

『そんな大盤振る舞いしてやる必要ないのに……』
MH(マジックフォン)の向こう側で、ティミーとオジロンさんの腰の低い対応に不平を漏らすお父さん。きっとお芝居なんだろうけど、不安になってくるわ。

『では……船もお渡しすると決まったので、我々は軍の輸送船で身代金を即時届けようと思います。身代金受け渡しと同時に人質全員を解放して戴きたい』
「な、何だと!? この船に軍艦を近づけるのか?」

『ご、ご安心下さい。軍艦と言っても輸送船1隻……攻撃能力も無く、人や物を運ぶ為だけの船です』
「し、しかし……」
オジロンさんの提案に不安を見せる犯人。即座に拒絶しないのは、お父さんが今にもモンスターを嗾けてきそうだからだ。

『犯人さん、我々は今回の事を犯罪事件だと考えていない。これはビジネスだ……ビジネスには信頼関係が必要です。貴方達は人質を無傷で受け渡す。我々は金品を差し出す。この流れを信じて欲しい』
信じられるだろうか? 人質さえ戻れば、制裁与奪は思いのまま……

『ウルフ様を……今すぐウルフ様を解放して下さい!!』
「「うぉ!?」」
犯人がティミーの言葉に疑問を感じてると、突如MH(マジックフォン)に巨乳な姫が涙ながらに姿を現した。

『こ、こらリュリュ……大人の会話に口を挟むんじゃありません。そんな我が儘を言ったって、彼等がこちらを信頼してなきゃ話はご破算なんだから……』
大泣きするリュリュ姫を抱き締め、こちらに視線を向けたお父さん……その顔は恐ろしい笑顔に包まれてる。

「よ、よし……お前等を信じよう!」
恐怖を感じた犯人は、慌てて身代金と人質の同時交換を認めた。
ウルフに視線を移すと少しだけ笑った……ここまで計画通りなの?

「お前等を信じるが、人質受け渡しに要求がある。それは国王が勝手な事をしない為、同席させる事。それと王子のアンタも一緒に来て全てを仕切る事。それと姫様も同行させる事だ!」
お父さんを寄こさせるのは裏で勝手な事をさせない為。ティミーは話し合いを進める為。リュリュさんは……何だろう、目の保養か?

リューノSIDE END



 
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