ドリトル先生と森の狼達
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第六幕その六
「だから行こう」
「その山犬さんのところにだね」
「今から行くんだね」
「そうするんだ」
「これから」
「うん、そうしよう」
「じゃあね、先生」
蝮さんも先生に言ってきました。
「またね」
「うん、またね」
「それにしても先生が噂通りの人でよかったわ」
「噂通りって?」
「私が蝮といっても別に怯えないからね」
「毒があるからっていっても」
「よく怖がられるのよ」
蝮さんはこのことは残念そうに言いました。
「毒があるから噛んでこないかって」
「自分からは獲物を捕まえる時か追い詰められた時以外にはね」
「噛まないって知ってるのね」
「うん、蛇の習性もね」
それもというのです。
「僕は知ってるからね」
「蝮のこともね」
「うん、そうだよ」
「だからよかったのよ」
「蝮さん達のことも知っているから」
「理解してくれている人については嬉しく思うものよ」
それこそというのです。
「誰でもね」
「僕がそうした人っていう噂があるんだ」
「聞いていたわ、そしてその聞いていた通りだったから」
「よかったんだね」
「ええ、お話も出来てよかったわ」
蝮さんはにこにことしてです、お口から出した舌を動かして言うのでした。舌がちろちろと動いてそれ自体も生きものみたいです。
「またお会いしたいわ、本当に」
「ではまた機会があればね」
「お会いしましょう」
こうしたことをお話してでした、蝮さんは先生達の前からそのお身体を這わせて去りました。そしてでした。
先生はいよいよ、というお顔で皆に言いました。
「じゃあね」
「これからだね」
「その山犬さんのところに行くんだね」
「そうするんだね」
「そう、行こう」
先生は意気揚々としてです、皆をその山犬さん達のところに誘います。その中で。
王子は森の中を見回してです、先生に言いました。
「もうここまで来るとね」
「森もだね」
「人が入っている気配がしないね」
「そうなってきたね、確かに」
「本当にこうした場所だと」
王子はしみじみとした口調で言うのでした。
「妖怪がいてもね」
「不思議じゃないっていうんだね」
「村の人がそうしたことをお話してたけれど」
「そうしたお話は無視したらいけないよ」
先生は王子に確かな顔で答えました。
「日本でもどの国でもね」
「その場所に伝わるお話を」
「迷信もあるけれど」
「実際に行ってはいけない場所もあって」
「そうした場所に入るとよくないんだ」
「あの一本だたらのお話ですか」
トミーも言うのでした。
「山の神様とか」
「そうだよ、今は十二月二十日じゃないけれど」
「その山にはですね」
「入ったら駄目だよ」
先生は民俗学の見地からも言いました。
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