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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦九日目(4)×対ジェネレーター戦からの対ドウター戦

選手が退場を始めてから観客らは、ようやく我を戻した所であった。選手退場に決められた順番は無いので、競技終了時点でゲートに一番近い選手から順番に退場していくが深雪は最後の方になってから地上に降りて来たのだった。一高の応援席へ向かい膝を折って一礼すると、フワリと浮かび上がって氷の上からのスケート靴で滑っている様な滑らかさで空中移動してゲートへ向かった。

俺ら織斑家一行は、優雅な所作に客席から大きな拍手が湧き上がっていたが、通信端末を慌てて操作している姿や興奮の余り怒鳴りつけていた奴で泡を飛ばしている者や上ずった口調で何度も同じセリフを繰り返して回線の向こう側で呆れている者もいた。仮想キーボードに指を躍らせていたり、光学認識パネルへ一心不乱にペンデバイスを走らせる者。

「飛行魔法を見て驚愕したかと思えば、今度は通信端末で何やら盛り上がっている様子だな」

「それとそろそろ私の出番のようですから、一真さんお願いしてもよろしいかな?あの辺りにて、奇妙な無表情をした者がHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)に映るメッセージに見入っている男の姿を確認したから」

「それなら俺も行こうか。分身体で行けばいい事だ、深夜達はここにいろよ?蒼太と沙紀はここにいてくれ、何があってからでは遅いからな」

『了解しました一真様』

「ここは任せて行ってらっしゃいな」

そう言って俺分身体と八雲と共に空間切断でとあるポイントに向かったら、ちょうど男が降ってくる所だったので俺と八雲は隠れていた。すると近くには響子と繁留もいたので、俺らは連とマークしていた人物を待っていた。

「十七号から連絡があった。第二試合のターゲットが予選通過した」

「・・・・電子金蚕を見抜く相手だ。順当な結果なのだろうが・・・・まずいな」

「それだけではない。ターゲットは飛行魔法を使ったらしい」

「バカな!?」

「これで力を使い果たしてくれたのなら万々歳だが・・・・虫が良すぎるか」

「最早手段を選んでいる場合ではないと思うが、どうだろうか」

「賛成だ。百人程死ねば充分だろう。大会自体が中止になる」

「中止になれば払い戻しは当初の賭け金のみだ。損失ゼロとは行かないが、まだ許容範囲内だ」

「客が騒がないか?同業者はともかく、兵器ブローカー共は厄介だぞ。アイツらは諸国政府と太いパイプを持っているからな」

「客に対する言い訳は何とでもなる。今、我々が懸念すべきは、死の商人よりも組織の制裁だ」

「そうだな・・・・実行は十七号だけで大丈夫か?」

「多少腕が立つ程度ならば『ジェネレーター』の敵ではない。残念ながら武器は持ち込めなかったが、十七号は高速型だ。リミッターを外して暴れさせれば、百や二百、素手で屠れるし最終手段として『ドウター化』すればいくら魔法師でも倒せる事が出来るのはいないだろう」

「そうだな。『ドウター化』は我らにも持っているが、それは最終手段として使うしか無さそうだ。異議はないな・・・・?それではリミッターを解除する」

無頭竜からの会話を偵察機によって聞いていた俺らが動くと同時に、十七号と言う『ジェネレーター』が動こうとしていた。観客が次の試合に備えて三々五々に席を立つ中で、男もHMDを外してから立ち上がった。グラサンを付けているので、一見するとどこかの映画に出てくるサイボーグか?と思ってしまう程。表情が欠落しているが、無機質に思える男の身体が動き出すと同時に発動された自己加速魔法。

周辺一帯にいた魔法師ですら気付く前に動いた男は、ちょうどすれ違ったというより待っていた連に襲い掛かった。アイアンクローのようにして無防備な背中へと振り下ろしたかに見えたが、この事件は俺ら以外の者が気付かないままスタンドから強制退場してそのまま外へと戦闘風景ポイントへと向かった。この男はただの人間ではなく、現状把握時は地面までの高さ三メートルだった。

殺戮指令を受けて最初に襲い掛かった相手である連は、背中を向けていたが攻撃を躱して手首を抑えて身体を回転してから男を外まで放り投げた。正面から向き合っても人間の知覚能力では反応出来ない速度であるが、それを軽く投げ飛ばす程の力を持っている魔法師はいないとも思える。魔法師は自己加速魔法により、筋力で可能な限界を超えた速度で動く事が出来るのは知っている。

魔法で加速するのは運動速度であるので、知覚速度という感覚器の生化学反応速度の事でもあるが、知覚神経の伝達速度と大脳の情報処理速度まで速度アップしない。人体の知覚速度は運動速度よりかなり高く設定されていて、それ故肉体的限界を超えた速度で動いてコントロール出来るが知覚速度で限界を超えた領域にて、肉体運動をコントロールする事は不可能。魔法師という生物でも限界というモノがある事で、魔法による自己加速に魔法では限界は無いが知覚能力では制御可能には上限がある。

「お、連が『ジェネレーター』を放り投げたぞ。生体兵器でも驚く事はあるんだな、普通の人間という魔法技能があったとしても普通なら対処は出来ない。普通の人間で魔法師ならな」

「アイアンクローは一真さんお得意の技でしたな。生体兵器が使ったというアイアンクローの腕はどうですかな?」

「失格だな・・・・あんなのはただの鉤爪使いと一緒だ。俺のアイアンクローと一緒にされては困るが、腕を振り下ろした勢いで身体が逆さまになっているな。普通なら死ぬが、スタンドフェイスを越えた場外ホームランとなり吹き飛ばされた哀れな生体兵器。加速を故意に省略してからの移動魔法により、普通なら二十メートルから叩き付けられて終わりだがどうなるかな?」

「場外ホームランとは今では余り使わない言葉ですな。通常なら衝撃で意識を失くすか、恐怖かパニックとなり為す術もなく落下という状況をどうするかは見物ですな。それと『ジェネレーター』について詳しい事は繁留が知っているみたいだけど、僕より説明が上手いんじゃないのかな」

すぐ近くにいたであろう響子と繁留の二人と合流を果たしたが、今回の八雲は坊主で本来なら俗世を関わらないはずだが今こうして俺の手伝いとしてここに来ている。似非坊主とも言われるが、今の格好は法衣を纏ったモノではなく私服を着ているとてもレアな服装をしている。

「久々に見たが今回の役が坊主とは、僕的にもその格好自体がとてもレアだと思うね。僕らと同じ記憶共有者同士だし、知っておいて損はないから説明するよ。『ジェネレーター』は脳外科手術と呪術的に精製された薬品投与によって、意識と感情を奪い去って思考活動を特定方向に統制される事で魔法発動を妨げる様々な精神作用が起こらないようになっている」

「精神作用というと、僕で言うなら雑念かな?」

「そうね。雑念が起きないように調整された個体で、実戦では安定的に魔法が使えるように仕上げた生体兵器。魔法を発生される道具の事をジェネレーターって言うんだけど、改造された魔法師だから道具に恐怖やパニックという事には縁が無いモノよ」

八雲に説明をしていると、ちょうどホームランからの慣性中和魔法を発動しようとしていた。減速して急ブレーキをしたとしても、ダメージは避けられないが慣性を低減させて衝突のダメージを和らげる事が出来るという計算を瞬時にやってみせた。呪薬の効果は意志・感情・知覚能力の調整や身体機能向上にて、脚のバネや腹筋と背筋に両腕まで使って落下速度吸収して見せた。

「あの段階から間に合わせるとは大したモノだが、織斑少将にはどう見えましたかな?」

両手両足を地に付けたまま声のした方へ顔を上げた十七号だったが、自分を投げ飛ばした連の姿を確認と同時に後ろに俺らがいる事を察知した様子だった。

「普通なら血溜まりが出来てオジャンだが、生体兵器であっても及第点かな。お前は何者だ?と言わなくとも分かっているつもりさ・・・・ドウターという霊に取り付かれた生体兵器よ」

笑みを浮かべた連は、独立魔装大隊大尉は獣のような両手両足を地面に付けた十七号を観察しながら俺に振ったのだった。そして心眼で生体兵器に浮かぶドウターを見つけた事で、俺らは対ドウター戦用の武器を取り出したのだった。俺と八雲はエクスカリバーを抜いた状態で、繁留はライフルにメモリを差した状態で銃口を向けて、響子は部分展開させながらライフルビットやシールドビットを取り出した。

「それにしても、同じ高さから跳び下りて手も付いてない連もどうかと思うが、俺らだとそれが普通だと見えてしまう。さっさと姿を現せドウター!」

俺は片方の手からの光球により、十七号と呼ばれた生体兵器が強制的にドウター化になった事で、俺らは改めて戦闘態勢を取る。退路を塞ぐのは、ソレスタルビーイング総司令官織斑一真とバカ弟子の九重八雲と独立魔装大隊の響子と繁留は大尉と少尉だが、俺は少将と呼ばれる事が多い。記憶共有者には特に呼ばれるが、階級に関しては大佐か少将のどちらかとなる。

脱線しかけたが、十七号と呼ばれた生体兵器がドウター化になったので強制的にゲートを出現させた。ゲートから出て来た小型ドウターだが、そのほとんどを響子と八雲によって成敗されていた。ドウター化というのも『ジェネレーター』にとっては、組織の命令だけが行動を決定するインプットである。命令に従い、観客だった連を襲い掛かろうとしても相手は俺へと自動的に変わったのだった。

連は専用闘具を装着して、分身となったもう一人の十七号へ立ち向かっていった。速度は明らかに違うが、分身を殴り飛ばしてから本体へと戻って行った事で戦闘対象を十七号からゲートから出てくるドウターを倒していた。

「全く、最近のドウターは悪霊のように取り付くタイプのようだな。魔薬でドウターになるのではなく、俺というイレギュラーがあるからかもしれない。変異かどうか何て知らんが、俺が他外史へ行くと必ず付いて来る敵」

「随分前までは大型ゲートによる侵攻やらが多かったが、この外史へ来てからのドウターは織斑少将の言う通りなのかもしれない。化成体や幽体というオカルトなキーワードが、ありますからな。だがドウターという敵を排除するのが目的であるCBにとって、来た以上は守護する決まりですものね」

俺は独り言のように言っていたが、連が代わりに俺の疑問に答えてくれたようだった。さてと強制的にドウター化になったのであれば、聖剣エクスカリバーで倒す手しか無いので一振りで本体を倒したのである。倒したと言ってもドウター化を解除して元に戻った瞬間、雷撃によって機能停止させたからだった。本来の連は『(まぼろし)』ではなく『(てん)』だと、ここにいる繁留にお喋りしながら捕えるんだと。

「『(まぼろし)』は表の武術で『(てん)』は裏の武術。応用されたとも違うが、連は真似事のようだと言うはずがここではそこを省いている。古式魔法を使う者である八雲にとっては、見たかったんじゃないか?」

「僕は確かに古式魔法を使う伝承者であるけど、その前に僕は一真さんの部下だ。魔法以前だと対人戦闘のエキスパートである一真さんに勝てた事はないですが、連のような白兵戦を好む者は僕としては歓迎かな」

「本当に四人共仲が良いのですね。今回の役が少将の部下じゃない事で、役得感はしないですわ。でもたまにはお相手してくれますでしょうか?」

俺・八雲・連・繁留は、ドウターを倒しながら喋っていたので響子としては役得感が無さそうだった。まあ他外史では妻だったり、国連軍では部下だったりなんだがここに来たら元部下で国防軍の者だ。

そんで全てのドウターを倒してから、門を専用ガンにメモリを差した状態で閉じた。戦いが終わったので、俺と八雲は元の場所へ戻ると言ったが、残りの者は生体兵器である機能停止した『ジェネレーター』を確保してから現隊長である玄信に報告した。 
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