ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第31話 少女と3人の男達
ここは、夜の闇が支配する山の中だ。昼間であれば、ひょっとすれば登山客でもかも、と思えるがが、それは有り得ない。なぜなら登山道の整備すら全くしていないし、よっぽどの山好きでもない限り…上ろうとは思わないだろう。獣道も同然だから、山好きでも怪しいものだ。
(一応 妖のオレでさえ、上ろうなんて思いたくないし……。 それに、結構坂きつい……)
体力面は問題ないが、如何せん足場も悪いし、虫も多い。その気になれば、空を飛ぶこともできると思うけれど、ここは山の置くと入っても人間の世界だ。声の正体がはっきりするまでは、あまり派手なことをしたくなかったのだ。
『…ふぅ、たぶんこの辺り、か……? 妖気だけじゃなく、何だか変な気配がしてきた……』
山道を暫く進んでいく事に、殺気。とまでは、いかないが。妙な気配、不穏なその気配が濃くなってきた。だから、ジャックは、慎重に山道を登っていった。
??? side
ジャックが感じていた気配の正体は、すぐに判った。
「やっと追い詰めたぞ! このやろう! ちょこまか逃げやがって」
山の奥、そこでは、男が3人いた。
話の内容から察するに、誰かを追いかけてこの山に入ったのだろう。随分と旅館から離れていた場所だから、人の身であれば、恐らく聞こえないだろう。
「お前は、俺らに売られたんだ! つまり俺らが御主人! その後主人様から逃げだすったーどういうことだよコラァ!!」
3人の内の男の1人が怒鳴りあげた。
「ッ……!!」
怒鳴られていたのは、10代前半程の幼い女の子だった。
(やれやれ… これまた物騒なこと言ってる。な… 大体売られたってなんだよ? 日本でそんなんあるのか? まぁ裏の世界って奴か? ……やっと目が慣れてきた)
暗闇で見えづらかったのだが、慣れた頃にハッキリ飛び込んできた。3人の男達と、そしてその男達に囲まれた少女の姿が。
「~~ッ!!」
少女は喋れないのか、言葉にならないような声を出し、必死に助けを求めているようだった。
「ったく 手古摺らせやがって…てめぇコラ!!」
男の1人が乱暴に少女に掴みかかろうとするが。
「よせよ。とりあえず捕まえられたんだ。それに ガキとは言っても大妖のガキだ、あまり刺激するな。コイツは将来、我々に役に立ってもらわなければならない」
おそらくその男達の中ではリーダー的な存在なのだろう。男の発言に渋々従った。
「わーったよ! ならさっさと引き上げようぜ」
「同感だ!さあ さっさと立て!」
男達が少女の手を握り無理やり立たせた。
「あんまり 刺激してやるな。親に捨てられたショックからか、力が出せてないようだが…万が一がある」
リーダー格が、その乱暴ば男2人にそう言うが。まるで聴かない。はっきり言えば、この男達は、血の気の多いからだ。
「兄貴は慎重すぎなんだよ!」
思いっきりと反論をする。不満タラタラなのだろう。そして、勿論、リーダー格の男もそういわれれば黙っちゃいない。
「って、お前らが軽率すぎなんだよ!」
少女を連れ出しながら醜い言い争いを始めた。ある程度の常識がある男と、血の気盛んな馬鹿2人の言い争い。周囲が森で囲まれているとは言え、相当大きな声で言い争っているのだった。
side out
後ろで、限りなく気配を殺して見ていたジャックは、粗方状況を理解した。
(…親に捨てられた…か、 そう言うの妖の世界でもあるんだな…)
それは、別段不思議なことではない。 人間の世界でも親が子を…子が親を…なんてことは日常茶飯事とまでは行かず、良くある事だから。正直、気分が良いものじゃないが。
(……何にしても、この手のは胸糞悪い。幼気な少女を………。売る親もあれだが、買う方も勿論。売ってる所見たら、ぶっ飛ばしてるとこだ。……泣かれるかもしれないが)
ジャックは更に気配を殺し、男達に近づいていった。その正体を完全に掴む為に。
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