零から始める恋の方法
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ダークマター ~Ninety Five~
前書き
タイトルの意味わかる人はマジ同志。
・・・十分今でも猛威振ってるダークマターさんマジチート。
「ここが雪菜さまのお部屋です」
「わあ・・・!」
ふかふかのベット!
しかも、広い部屋!!
もう、布団を敷く生活とはオサバラだ!!
「ベット・・・はあ・・・夢にまで見たベット・・・なんてふかふか・・・」
「あ・・・あの・・・雪菜さま・・・?」
「はっ!べ・・・別に生まれて初めてベットに寝たとかそういうわけじゃありませんからね!わ、私だってベットで寝たことぐらいありますよ!そ・・・その・・・学校の保健室とかで・・・」
「は・・・はあ・・・」
なんか地雷踏んだ気がする・・・。
これはひょっとして『こいつどんだけ貧乏なんだよ』みたいな!?
そ・・・それだけは避けたい!
なんか変に同情誘ったみたいで気分が悪いし、なによりそう思われるのも嫌だ!!
こ・・・ここはいったん話をそらして・・・。
「え・・・えーと・・・今日の夜ご飯作るの手伝いますよ!」
「いえ・・・そんなお客様に・・・」
「話は聞かせてもらったよ!」
「利英さん!?」
「利英さま!?まさか愛しの恋人とここで愛の巣を!?でしたら、私は隅の方で目立たないように熱いまなざしで見守っていますね!」
いや・・・べつに私は利英さんと恋人同士なんかじゃないし・・・。
それに、そういう時は部屋を出るものじゃないの?
「・・・いつも通りだね。とにかく、せっかくだからみんなでカレーでも作らない?」
「ベタですね」
「ベッタベタですね。あ、そういう意味でおっしゃったのなら私は部屋の隅に・・・」
「あ、もうそのネタはいいから」
ナイス利英さん。
というか、そんなに見守りたいんだろうか・・・。
確かに利英さんは行動の一つ一つがかわいらしいけど、そこまでかと言われると正直・・・。
で、台所。
流石は金持ちだけあって、調理器具も全て最新のもの。
IHや圧力鍋、あとは何故かドネルゲバブを作るやつもあった。
「いろいろあるんですねえ・・・。あ、IH使ったことないのでやり方教えてほしいです」
「え?」
「え?」
「え?」
なんか全員にはてな顔された・・・。
そんなに不思議なことかな・・・。
「いまどきIHの使い方も知らないなんて・・・」
「雪菜さま・・・普段どうやって料理を・・・」
「もちろんガスで」
逆にIHとか使ってる人みたの初めてだ。
学校の調理実習でさえ見たことないのに。
「と・・・とりあえず煮込んだりするのは想夢たちに任せておこーねー。私たちは食材を斬ろうねー」
ん?
なにかが違うような・・・まあ、いっか。
「包丁ぐらいは使ったことあるよね?」
「ええ、さすがに石包丁とか使ってませんよ?」
「んじゃあ、はい」
「あ、ありがとうございます。それと人に渡すときはこう・・・刃を向けないように渡してくださいね」
こういうところをちゃんとしておかないと万が一のこともある。
流石に前半からトマトケチャップを見るような真似はしたくない。
「はーい。なんか雪ちゃんお姉さんみたいだね!」
「・・・お姉様とおよ・・・」
「じゃあ、私はこれね」
最後まで言わせてよ。
ちょっと「オホホホホホホホホ!!」とか口もとに手刀をあてつつやりたいじゃない。
てか、それ包丁じゃないよね。
「あの・・・それって料理できるんですか?」
「私はいっつもこれ使ってるよ?」
楽しそうに姉妹でお湯を沸かしてる紗由利さんを『なんでこいつ鋸なんて使ってるの?』と目で訴えてみると『たぶん大丈夫』と還された。
・・・不安だ。
「あの・・・包丁使いましょう?まだ包丁ありますし・・・」
「いやあ、この|刹那狂閃は職人に作らせた名刀ならぬ名鋸・・・。そこらの正宗よりもよっぽど切れ味がいいよ!」
なんで比較対象が日本刀なんだろうか・・・。
しかも、料理に日本刀以上の切れ味を期待して何をするんだろう?
下手したら台所ごと斬れるんじゃないだろうか。
こうして、若干不安になりつつも数十分後には無事完成した。
「はい、ではみなさん。手をお膝に置いて」
「「「「いただきまーす!」」」」
カレーだけだと物足りないということで、比較的まともに料理ができる私と紗由利さんでスープを一品用意しておいた。
鶏肉で手っ取り早くダシをとり、野菜で脂味を緩和したあっさりめの味付けだ。
因みにその間残り二人は料理に飽きてゲームをしていた。
「利英ねーさま、このスープおいしいねー!」
「そうだねー!流石!紗由利!よっ、料理長!!」
「雪菜さまの味付けがうまかっただけです」
正直言って、一人で家事をこなしているというだけあって紗由利さんの料理スキルはすさまじかった。
千切りをさせれば残像が見え、目測で既定の量を小数点第四位ぐらいまで正確に測り取ったりなど、相当人間離れしていた。
因みに、隣でゲームをしていた二人の戦いの模様をチラみしたところ、お互い点数の取りすぎで表示がバグっていた。
「紗由利さんもすごかったです。さすが一人で家事をこなしているだけありますね」
「いえいえ、そんな。あ、想夢。その程度しか食べない様では大きくなれません。なので、お姉ちゃんのご飯を分けてあげます」
さりげなく、異形のソレを想夢ちゃんに差し出す紗由利さん。
・・・たしかにソレはこの世のものとは思えないまさに|暗黒物質とも呼ぶべき姿。
これは私たちが比較的まともな料理を作っていた時、テトリスに飽きた二人が隣で勝手に作っていたものだ。
二人からすれば、これはノリをちりばめたラーメンサラダだとか。
確かに、表面の粘り気を帯びた黒いモノを取り除けば、半ばゲル状になった黄色い何かとなぜかうごめいている緑色の何かがみえる。
しかも、表面の黒いモノでコーティングされていたから、中の瘴気を封印できたいたが、今となってはその外郭は取り払われ、中の瘴気が溢れ出してきた。
この瘴気紗由利さんには見えているらしいが、作った諜報人どもには見えていないらしい。
これはおそらく料理ができない人が料理をできる人へ向けた憎しみの集大成なのだろう。
本来ならばそれは受け止めるべきだが、実際そこまでしてやる義理も義務もない。
よって。
「利英さん、私お腹いっぱいなので食べてくれませんか?」
「えー・・・せっかく作ったのにー・・・。ぶーぶー」
「利英さんの作ったお料理ならまた食べてあげますから・・・ね?」
とにかくこいつを食べると絶対死ぬ。
利英さんは何かとハイスペックだからきっと胃袋もハイスペックなはず・・・!
この見るからに『くったら死ぬぜー?』というフィールを発しているこの物体は即座に焼却処分するべきだが、作った本人たちの前でそれは残酷すぎる。
よって、作った諜報人どもに自分たちがいかに危険物質を作ってしまったのかを理解させることにした。
これに懲りてしばらくは台所に立たせないようにしようという魂胆だ。
「しょーがないなー。じゃあ、いただきまーす!」
「ぐ・・・ふぅ・・・し・・・死ぬ・・・。なんか・・・お花畑が・・・」
「想夢・・・想夢ーーーーー!!」
っく・・・想夢ちゃんにはまだ早かったか・・・。
これは例のアレを食した次の瞬間の場面だ。
想夢ちゃんは例のアレを食した瞬間、泡を吹き、白目をむいて痙攣しながら椅子から転げ落ちた。
で、利英さんはというと・・・。
「זה מאוד מסוכן. אנחנו מייד יבוטלו. בני אדם בסביבה, לרצות את החופשה הדחופה. מלא היקפי ושל חומר זה, אנו נפעל את פעולת חיטוי באזור בתוך 30 שניות מאוחר יותר.」
なんか呪文を唱えていた。
「アレは・・・雪菜さま!止めてください!利英さまのジェノサイドが始まってしまいます!前半からトマト祭りは流石に不味いです!!」
もうジェノサイド!?
早すぎじゃないの!?
「利英さん!やめてください!危ないのはダメです!」
「・・・あれ?私・・・あれ?あれあれ?」
ふう・・・どうにか戻ったみたいだ。
しかし、危なかった。
なんかいかにも例のアレの存在ごと抹消しそうなオーラを出していた。
本当にとめられてよかった。
「利英さん、もうしばらくは台所に立たないでくださいね!」
「えー・・・なんでー?」
「・・・アレ、まだ残ってますが・・・食べます?」
「申し訳ありませんでした!しばらくは台所に近づかないことを誓います!!」
こうして、私たちの楽しい料理パーティーは終わりを迎えた。
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