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祈りは通じる

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第六章

「これまで以上にな」
「働いてそして」
「ああ、神様仏様にもな」
「お願いするよね」
「するぞ、これまで以上にな」
 こう言ってだ、実際にだった。
 正蔵は侑枝と共に首相がその国に行くことを発表した直後から神社仏閣に行く回数を増やした。そしてだった。
 ことの成り行きを見守った、首相は実際にその国に入り。
 その国の国家元首と会った、独裁者として悪名高きその人物とだ。その会談からこれ以上はないまでに恐ろしいことがわかった。
「本当だったな」
「そうね」
 正蔵は侑枝と話した、そのことを。
「拉致は事実だったな」
「あの国がしていたのね」
「ああ、しかも向こうの国家元首自ら言うなんてな」
「それは想像外だったわね」
「ああ、しかしな」 
 ここでだ、正蔵は言った。このことを。
「向こうから攫った人を返すなんてな」
「言うなんて思わなかったわね」
「金が欲しいんだろうな」
 何故攫ったj人を返すと向こうから言い出したのかをだ、正蔵はこのことを根拠として推察した。
「だからだろうな」
「あの国酷い状況だから」
「金がないし、そもそも食いものもない」
「餓えているのよね、国民の人達が」
「そんな状況だからな」
「攫った人達を返してそのうえで」
「金を貰いたいんだろうな」
 それでというのだ。
「考えてみれば図々しい話だけれどな」
「そうよね、攫った人を返すからお金くれとか」
「図々しいにも程がある」
「本当にね」
 夫婦でだ、このことは怒って話した。
「どれだけ厚かましいのよ」
「こんなに面の皮が厚い国もそうそうないな」
「あの国だけよね、けれど」
「ああ、これでな」
 しかしとだ、正蔵は確かな声で侑枝に答えた。
「若しかするとな」
「攫われた人達も」
「本当にひょっとしたら」
「色々と状況がわかるかもな」
「そうよね」
「こうなったら本当にもっと熱心に働いてお願いをするぞ」
 正蔵は侑枝に熱い声で言った。
「いいな」
「ええ、わかってるわ」
 侑枝も正蔵に応える、そしてだった。
 二人でさらにだった、神社仏閣に参拝してお願いをした、キリスト教や天理教の教会にも参拝した。天理教本部等にもだ。あえて関西まで行って参拝した。
 勿論比叡山や高野山にも登って天理教本部もある奈良や京都、それに大阪の大きな神社仏閣でお願いをして伊勢神宮にも行った、愛知の熱田神宮にも。
 日光東照宮にも行った、そうしたところまで行ってだった。
 二人で必死にお願いをした、そうしているうちに。
 何とだ、二人のところに思わぬ報が来た。その報はというと。
「えっ、攫われた人達が」
「戻って来るんですか」
「そうなんですか」
「首相との階段であちらの国家主席が言ったんですか」
「そうらしいです」
 二人と同じ支援者の人がだ、二人の家まで来てこのことを話したのだ。二人はその話を聞いて目を丸くさせた。
 そしてだ、その人に問い返した。 
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