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何かわからないうちに

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第四章

「住んでいるお家はね」
「普通か」
「別に凄くないか」
「ごく普通のものか」
「そうなんだな」
「そうだよ、これは大抵の神社でもそうだよ」
 その大社だけでなく、というのだ。
「お寺も天理教やキリスト教の教会も」
「本堂とかは大きくてもか」
「神主さんや住職さんが住んでる場所は普通か」
「広くも立派もなく」
「贅沢でもないんだな」
「贅沢とかとんでもないよ」
 大輝は皆にこのことも否定した。
「宗教のお家は本当に質素だよ」
「あんなでかい社でもか」
「そんな感じか」
「もう外車とか普通にあるとか思ってたけれどな」
「違うんだな」
「だって神社というか神道のことでも一番上の皇室の方々でもだよ」
 大輝は言わずと知れた日本の国家元首であられる方とご家族のことにも言及した。
「質素なんだよ」
「ああ、皇室はな」
「皇室の方々凄いよな」
「驚く位質素だよな」
「国家元首なのにな」
「日本は世界第三位の経済大国なのにな」
 それだけに相当に贅沢が出来るのにというのだ。
「それでもな」
「何処ぞの将軍様と比べると全然違うな」
「びっくりする位質素だぜ」
「あそこの将軍様の国なんか将軍様一人の贅沢で国家予算の二割使うんだぜ」
「もう高い酒にご馳走ばかり飲んで食ってな」
「国民餓えててもそんなのなのにな」
 そうした国、独裁者と比べてというのだ。彼等も。
「質素だよな」
「気品ある質素だな」
「明治天皇なんて軍服の裏破れてたら縫って終わりだったらしいぜ」
「昭和天皇も使えるものは最後まで使われる方でご寝室も質素で」
「皇室は本当に質素だよ」
「俺達の方がいい暮らししてねえか?」
「その皇室の方々を見てもだから」
 それでとだ、大輝も言うのだ。
「ご本家もうちも質素だよ」
「そんなもんか」
「大社でもか」
「神主さん達の生活は質素か」
「そんな感じか」
「色々と出費もあるみたいだし」
 このこともだ、大輝はわかってきていた、成長と共に。見れば彼もあどけない顔から目はそのままあどけない感じだが黒髪をショートヘアで伸ばし額をかなり隠している。眉は細くそれでいて色は濃く斜め上に一直線になっている。
 白い細面で口は小さく鼻の形は丸めでまとまっている、詰襟の学生服が非常によく似合う顔立ちとスタイルだ。
「結構しんどいんだよ」
「それでそこにか」
「御前は入るんだな」
「沙織ちゃんと結婚して」
「婿養子で」
「そうだよ」
 その通りだとだ、大輝も答える。
「その為に今から色々勉強してるしね」
「神主さんになる為にか」
「そういえば御前弓道部だしな、沙織ちゃんと一緒で」
「弓道も神社でするからか」
「だからか」
「そうだよ、本当に今からね」
 まだ学生だがそれでもだというのだ。
「勉強中だよ」
「それ考えると大変だな、御前も」
「何かとな」
「神主さんになるのも楽じゃないな」
「そうしたことをする暇もないとか」
「婚約者がいても」
「いや、だからね」
 その話になるとだ、大輝は笑って返した。 
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