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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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Another21 超特訓

 
前書き
紋章を手に入れた太一。
しかし戦力として… 

 
太一の紋章を手に入れたのはいいのだが、ブイモンに戦力となるように滅茶苦茶にしごかれているのだ。

アグモン[ぶ、ブイモン…少し休憩しようよお…]

ブイモン[何だよもうバテたのか?]

アグモン[だ、だって…もう1時間近くもやってるんだよ…]

ブイモン[情けないな…]

太一「そうだぞアグモン。もう少し踏ん張れよ、今のところもう一段上に進化出来るのはお前だけなんだからな。」

アグモン[でもなあ]

太一の言葉に対する返事の歯切れはよくない。
現時点では何も自分に響く特別なパワーを感じられていないからだ。

ヤマト「ぶっちゃけアグモンが完全体に進化してもゴールドブイドラモンに勝てるとは思えん」

厳しいお言葉。
しかしこれは紛れもない事実だったりする。

アインス「仕方あるまい。ブイモンは戦闘種族…つまり戦うために生まれた存在だ。それに経験値が違いすぎる」

太一「まあ、そりゃあそうだけどさ。ところで光子郎、アインス。どうやったら次の進化ができると思う?」

太一の質問に、参謀としての立ち位置を確立させ始めた光子郎は淀みなく答える。

光子郎「これまでの経験上、進化には大量のエネルギーを必要とします。つまりお腹が空いた状態での進化は難しいですね。それと、パートナーが危険になった時デジモンは進化する可能性が高いです」

太一「なる程…しかしもう一つ上に進化するんだからな、エネルギーも相当必要なんだろうな。なあアグモン、ブイモン」

アグモン[え?]

ブイモン[まあ、あながち間違ってもいないよな]


































アグモン[太一ぃ…もう食べらんないよお]

ブイモン[もぐもぐもぐ、ガツガツガツ…お代わり]

太一「おう」

ブイモンの皿に追加される料理。

ブイモン[オムレツが食いたい]

太一「アインス、ブイモンにオムレツ追加!!アグモンももっと食えよ。ブイモンはお前の倍食ってんだぞ」

アグモン[僕とブイモンじゃあ胃袋に差がありすぎるよお…]

ブイモン[アグモン、それは俺に喧嘩売ってんのか?]

アグモン[滅相もございません…]

大輔「んー、ここら辺はどうなるんだったかな?まあいいや、エテモンの1匹や2匹いても何とかなるか」

かつての太一達から聞いた話ではここら辺だけ濁されていたため、あまり覚えていない。

ミミ「まるで大食い大会みたい」

丈「あながち間違ってもいないよね。まあ、オアシスに雑草の食料があって良かったよ。少しくらい食べ過ぎても食べ物に困らないもの」

アインス「まあ、缶詰めとかもあったし、非常食は充分補充出来たな」

オムレツを太一に渡し、草を抜くと、少し古い絵の缶詰めが出てくる。
それを鞄に入れていく。

タケル「でもあれじゃあアグモンお腹壊さない?」

ガブモン[仕方ない…んじゃないかな?俺達、ブイモンやロップモンみたいに強くないし、アグモンみたいに上の進化は出来ないから…]

ブイモン[お代わり]

ヤマト「まだ食べるのか、あいつの腹は底無しか」

アインス「今まで、お腹一杯食べられていたのに食料の残量を考えなければならなかったから、お腹一杯食べられるうちにということだろう。石田、すまんが手伝って欲しい。私だけではとてもではないが、人手が足りん」

ヤマト「あ、ああ」

ミミ「私も手伝いましょうか?」

アインス「あ、いや…太刀川。お前は食べ終わった皿の回収を頼みたい」

体よく断るアインスであった。

アインス「それにしてもそろそろ止めさせるべきだ。いくらエネルギーが必要だからと言って、あそこまで食べることはないだろうに」

空「そうですね……。これじゃアグモンを追いつめてるようなものだわ」

空と太一は幼なじみだ。
太一のことならなんだって知っている。
同じ幼稚園に通い、同じ小学校に上がり、途中で転校しても尚、また同じ学校になり、クラブもずっと同じサッカークラブで……。

空「太一って、1人で突っ走るタイプに見えるけどあれで結構周りの状況を冷静に見ることが出来る奴なんです」

アインス「ああ、知っている。」

これだけ旅を続けていれば自然と分かってくる。
彼のリーダーシップは独り善がりや我が儘などではない、本物だ。
あのリーダーシップは天性の物で、大輔や賢にもないものだ。

空「でも…………今は、紋章を手に入れてからの太一、なんだか人が変わっちゃったみたい……。」

アインス「気負っているのだろう。いつまでも大輔とブイモンに頼ってもいられない。もし何かあったらみんなを守れるのは自分だけだとな。それは力を持つ者誰もが思うことだ」

空「アインスさん…」

アインス「そのうち、元の八神に戻る。信じなさい」

空「は、はい」

空はアインスがいてくれてよかったと思う。
自分よりずっと冷静で頼りになる人だ。

丈「あああっ!!?」

その時丈が素っ頓狂な声を上げた。
自身のタグがちかちかと光っているのだ。

丈「僕の紋章が近くにあるのかも!!」

その言葉に素早く反応した太一が、愛用の単眼鏡で辺りを探る。
近くに何か古めかしい建造物が見えた。
かなり大きい。

丈「きっとあそこに紋章があるんだ…うわ!!」

走り出す丈だが、いくらも行かないうちに躓いて転ぶ。
砂に埋まった黒いケーブルに足を取られたせいだった。

アインス「大丈夫か?何故こんなところにケーブルが…」

幸い丈は砂まみれになっただけで怪我もなかったため、気にせずに子供達はそこを離れた。

































エテモン[ストーップ!!!!]

モノクロモンに牽かせた笑天門トレーラーを急停止させ、エテモンはパソコンを弄る。

エテモン[アチキのネットワークに反応があったわ!!L7エリア……コロッセオの近くね]

[…御機嫌ですね]

エテモンが子供達を追いかけるべく休みなしで虐待レベルにモノクロモンを爆走させながら探していたことが幸いしたようだ。

エテモン[当然よ!!アチキを馬鹿にした報いを受けさせてやるわ!!]

喧嘩ふっかけてきたのはそちらなのに理不尽である。































子供達が辿り着いたそこは、古代ローマ風のコロッセオだった。
かつては賑わっていたのだろうそこも今はすっかり寂れ、不気味なほど静かだ。
だがそれに不似合いな真新しいオーロラビジョンとサッカーゴール。

アインス「怪しさ大爆発だな」

ロップモン[だよね。]

大輔「よし、皆で手分けして紋章を探しましょうか」

全員【はーい】

ロップモン[(誰がリーダーか分かんない)]

その時、アグモンが苦しげに尻餅をついた。

太一「どうした?」

アグモン[もう動けない。ちょっと休ませて…]

太一「何だよ、しっかりしろよ!!」

アインス「休ませてやれ、動けない奴に無理させても邪魔にしかならん。お前達、それらしい物を発見次第、声を上げろ。散開!!」

パンッ!!

アインスが手を叩くのと同時に全員が紋章探しを開始。

大輔「えっと、確かルカの場合は…いや、ルカのことが適応されるとは限らないし…」

ブイモン[えっと…確か昔話で聞いたよな…えっとゴールの石畳の下…じゃないか?昔、丈が偉そうに言ってたじゃん。丈の癖に]

大輔「なる程な、タケル、パタモン。石畳を退かして、穴掘るの手伝え」

タケル「え?何で?」

大輔「こういうレアアイテムってのは、何もなさそうなとこにあるような物なの」

タケル「あ、そうだよね。ゲームでもレアアイテムって見つかりにくい所にあるし」

パタモン[石畳を退かしてここを掘ればいいの?]

大輔「ああ、頼む」

ブイモン[紋章よりチョコがいいな]

大輔「紋章よりチョコかお前は?」

石畳を退かして、穴を掘り始める大輔、タケル、ブイモン、パタモン。
そこに太一がやってきた。

太一「何してんだお前ら?」

大輔「紋章探しですよ。石畳の下にあるんじゃないかなと。」

太一「そうかあ?」

タケル「あ、何かケーブルが…」

タケルの手がケーブルに触れた途端に突然喧しい声が。

エテモン[オホホホ!!アチキってグレイトォ~!?コロモンの村ではよくもやってくれたわねん!!?倍にして返してあげるわ!!]

我らがエテモン。
呼ばれてなくても即参上。

大輔「エテモンキーじゃねえか」

エテモン[エテモンよエテモン!!どこぞの漫画のキャラ出さないで頂戴!!]

取りあえず対向線上にあるサッカーゴールの下に逃げる子供達。
だが、アグモンが逃げ遅れた。
気づいた太一、大輔、ブイモンが戻ろうとするが、サッカーゴールを檻のように倒されてしまい出られなくなってしまう。

ブイモン[あらら、どうやら罠だったようだな。]

エテモン[オホホ。あんたもいるのは好都合、アチキがあんたをコテンパンにしてあげるわ!!邪魔されちゃ適わないから、スペシャルゲストも用意したわ!!]

大輔「…グレイモン。サーバ大陸のグレイモンか。ブイモン、勇気のデジメンタル、試してみるか?」

ブイモン[おう]

大輔「デジメンタルアップ!!」

ブイモン[ブイモンアーマー進化!フレイドラモン!!]

太一「アグモンも進化だ!!」

アグモン[アグモン進化!グレイモン!!]

2体のグレイモンがぶつかり合う。
しかしグレイモンの動きがおかしい。
攻撃の動作がどうにも重そうなのだ。
おまけに盛大に放とうとしたメガフレイムは不発、代わりにげっぷが出てしまう。

フレイドラモン[食いすぎで身体が重いのか、ならさっさと片付けてやるよ]

エテモン[上等よ!!あんまだかアーマーだかなんだか知らないけどアチキの敵じゃないわ!!]

フレイドラモン[行くぜ!!どりゃりゃりゃりゃりゃ!!]

紋章が刻まれ、デジメンタルの出力も上がっているためか、一撃の威力も上昇している。
しかし…。

エテモン[中々やるじゃない。でもそんなヘボパンチじゃあ、アチキには勝てないわ!!]

フレイドラモン[痛っ!!?]

反撃を喰らい、僅かにふらつく。

パタモン[フレイドラモン負けないで!!エテモンなんかやっつけちゃえ!!]

フレイドラモン[言われなくても!!昔ならエテモンの1匹や2匹…やっぱり弱くなってるな。よし、切り札だ!!久しぶりの…オーバードライブだああああああああ!!!!]

フレイドラモンの身体から紅いオーラが吹き荒れる。

フレイドラモン[…はあああああああっ!!!!]

気合いを入れるとオーラの放出が止む。

エテモン[何がオーバードライブよ!!変なオーラ纏ったくらいでいい気にならないでよね!!]

フレイドラモン[そんじゃあ行くぞ!ナックルファイア!!!!]

エテモン[グレイトフルナッコー!!!!]

カッ!!

フレイドラモンとエテモンのパンチの激突。
閃光が辺りを支配するが…。
次の瞬間、ゴールにフレイドラモンが吹っ飛んできた。

ガシャアアアアアアンッ!!

丈「ぎゃあっ!!?」

何気に丈を巻き込み、吹っ飛んだタグが大輔とタケルが掘っていた場所に落ち、地面が光り、丈達は穴の中に。

フレイドラモン[お~、痛てて、痛ってってえ~…あれえ?おかしいな、オーバードライブ発動してんのに何でやられちまうんだ?]

エテモン[……あんたオーラ纏っても全然強くなってないわよ]

フレイドラモン[え?マジ?おかしいな。オーバードライブなら一段階くらいパワーアップ出来るはずなんだけどな]

エテモン[全然なってないっつーのよ!!]

フレイドラモン[…うーむ]

ポクポクポクポクポクポクポクポク…チーン。

フレイドラモン[ああ、そうか。奇跡の紋章がないせいでオーバードライブのパワーアップが大したことないわけか]

大輔「つまり、奇跡の紋章とデジメンタルに刻まれた紋章が共鳴して大幅パワーアップになってたわけだな。こりゃあ早く紋章見つけないとな。デジメンタルアップ」

フレイドラモンからゴールドブイドラモンにアーマーチェンジ。

ゴールドブイドラモン[まあ代わりにこの形態で戦うからいいけど]

エテモン[うげえええ!!あんたいちいち形態変えるの卑怯じゃないのよ!!]

ゴールドブイドラモン[お前に言われたくない]

エテモン[ゴールドブイドラモンだが何だか知らないけど、ちょっと派手になったからって調子に乗るんじゃないわよ金ピカ犬ドラモン!!ウキィイイイイ!!]

ゴールドブイドラモン[ハイハイ、ツオイツオイ]

バキッと襲い掛かるエテモンを殴り飛ばすゴールドブイドラモン。
今度はエテモンが吹っ飛ぶ番であった。






























そしてグレイモン同士の戦いにも変化が起きていた。

太一「グレイモン!進化するんだ!!」

空「太一、無理だわ!!」

何とか脱出した空の制止も聞かず太一はその手を振り払う。

太一「無理じゃない、絶対進化出来る……いや、させてみせるっ!!!!!」

太一は走り出した。
進化の条件の1つ。
危機的状況を作り出すため。
しかし、人はそれを勇気とは言わない。
無謀と呼ぶ。

アインス「馬鹿者!!無謀だ!!止せ!!」

アインスの制止も聞かずに太一は敵グレイモンの前に。

太一「グレイモン、俺はお前を信じてる!!進化するんだ。グレイモン!!」

その時、太一の紋章が輝いた。
オレンジ色の輝きではない血のような禍々しい輝きがグレイモンを。
そしてグレイモンは、姿を変えた。
より巨大で、より禍々しい姿へと。

大輔「あれは…スカルグレイモン!!?」

エテモン[ええ!!?ちょ、どういうことよこれ!!?]

ゴールドブイドラモン[暗黒…進化か!!?]

アインス「デジメンタルアップ!!」

ロップモン[ロップモンアーマー進化!ビットモン!!]

ビットモンにアーマー進化し、太一をスカルグレイモンから離す。
あまりにも巨大なスカルグレイモンに、敵のグレイモンは一目散に逃げ出した。
だが、僅か一歩で距離を詰められ、グレイモンは片手でいとも簡単に払いのけられた。
吹き飛んだグレイモンはエテモンと激突。
すると、スカルグレイモンはグレイモンとエテモンに追撃を放った。

大輔「やばい!!みんな逃げろ!!」

スカルグレイモンのミサイルはグレイモンを消滅させ、エテモンを吹き飛ばした。

アインス「…っ!!」

スカルグレイモンの完全体離れした破壊力に思わず戦慄してしまうアインス。

大輔「…っ、昔も思ったけど、単純なパワーだけなら究極体に迫るかもしれねえ…!!ゴールドブイドラモン、スカルグレイモンを元に戻すんだ!!」

ゴールドブイドラモン[任せろ!!ブイブレス…]

必殺技を繰り出そうとした瞬間にゴールドブイドラモンの進化が解除された。

ブイモン[あ…くそ!!大輔!!もう一度ゴールドブイドラモンだ!!サジタリモンでもいい!!]

大輔「よし、デジメンタルアッ」

言い切る前にスカルグレイモンはコロッセオから飛び出した。

大輔「しまった!!」

大輔達も外へと向かう。
何度も何度も、ミサイルを撃ち上げるスカルグレイモン。
呆然となる子供達の視線の先で、エネルギーを使い果たしたスカルグレイモンはコロモンへと戻ったのだった。




























そして無言のまま、コロモンに歩み寄る。
アインスはコロモンを抱き上げ、怪我がないのを確認すると、太一に渡した。

アインス「安心しろ、怪我はない。ただエネルギーの過剰消耗による疲労だ」

ブイモン[大丈夫かコロモン?]

コロモン[うん……でも、みんなに…酷いことしたみたい……ごめんね…]

悲しそうに、悔しそうにコロモンはぽたりと涙をこぼした。

大輔「お前のせいじゃねえよ。勿論太一さんのせいでも。太一さんもお前も皆のための行動だったんだからな。空回りしちまったけど」

無言の太一の胸を打ったのは、コロモンの次の一言だった。

コロモン[……みんなの期待に、応えられなくて……ごめんね……]

太一「コロモ……っ」

コロモン[ブイモンも…ずっと特訓してくれたのに…]

ブイモン[気にすんな。誰もあんなことになるなんて思わないって。事故だよ事故。な?]

太一「…事故なんかじゃない。俺が1人で突っ走ったからだ。そうだよな空、ヤマト」

ヤマト「ああ…あ、いや…」

空「うん……あっ、いえ……」

思わず肯定してしまい、焦る2人。

太一「俺、焦ってた。デビモンとの戦いとか、ブイモンが戦ってんのに全然役に立てなくて…そしてようやく紋章を手に入れて、ようやく足引っ張らなくて済むんだって…そう思ったら…」

アインス「焦りは判断を曇らせる…正にその通りだな」

大輔「太一さん。戦っているのは太一さん1人だけじゃないんです。」

ロップモン[1人の力は皆のために、皆の力は1人のために!!だよ]

ブイモン[……エテモンも吹っ飛ばされたのは不幸中の幸いってやつだな。皆、少しでも進もう。]

太一「悪かったな、皆…………ごめんな、コロモン」

誰も責める気などなかった。
ヤマトが何も言わず太一の肩を叩く。
やり方はどうあれ、太一はコロモンを信じ、期待してくれたのだ。
コロモンもそれを分かっていたからこそ、静かに微笑んだ。 
 

 
後書き
何かゴールドブイドラモンが肝心な時に役立たずな形態になりつつあるような… 
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