黒魔術師松本沙耶香 仮面篇
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2部分:第二章
第二章
「貴女に用があるの」
「先程のお話ですか」
「そうよ。それでね」
また彼女に声をかける。
「貴女。奇麗な顔をしているわね」
「あっ、有り難うございます」
それには素直に礼の言葉を言う。しかしこれもまた沙耶香の計算のうちだったのだ。彼女が次第に自分の巣の中に入っていくのを心の中で満足していた。
「あまり奇麗なのでね」
「ええ」
「いただきたくなったわ」
「いただく?」
「そうよ」
何を言いたいのかわかりかねているその隙にまた入る。一歩すっと前にまた出る。これで間合いは完全になくなった。沙耶香と彼女の顔はもうすぐそこで見詰め合うようになっていた。
「貴女をね」
「あの、一体何を」
「目を見るのよ」
ここで沙耶香を有無を言わせぬ強い口調を彼女に出した。
「さあ。私の目を」
「貴女の目を」
「見なさい」
今度は命令口調であった。しかしそれは決して強制ではなくむしろ捕らえたものを奥へと引く込むような、そうした魔力を含んだ言葉であった。
「私の目を。今から」
「わかりました」
その言葉に頷く。そのまま沙耶香の目を見るとそれまでの沙耶香の目ではなかった。
黒いブラックルビーの目が妖しく光った。それと共にその黒が赤に変わった。紅のルビーを思わせる瞳がそこにあった。それが彼女の目を覗き込んでいたのであった。
「あっ・・・・・・」
「さあ」
沙耶香はその紅い目でまた彼女に言う。
「まずは唇を差し出しなさい」
「唇を」
「続いて貴女自信を」
囚われた囚人に言うが如きであった。
「私に」
「貴女に。私の全てを」
「そうよ。差し出すのよ」
既にその手を制服にかけている。スカーフを外し胸にそっと手をやる。それからスカーフを外した手を後ろにやりゆっくりと抱き寄せるのであった。
「怖くはないわ」
抱き寄せながら囁く。
「むしろ」
「むしろ?」
「貴女がこれまで味わったことのないことを教えてあげるわ」
「それは一体」
「それは今からわかるわ」
彼女の目の光が鈍くなりとろんとしてきていた。恍惚をしてきているのがわかる。既に胸と背中を沙耶香に愛撫されそれに溶けようとしているのだ。沙耶香はそんな彼女の唇をまず味わった。
「んんっ・・・・・・」
唇と唇を重ね合わせる。そうして舌を相手の中に入れていく。舌と舌をまるで二匹の蛇の様に絡み合わせる。絡み合わせると共にその香りも楽しむ。まるで百合の様なかぐわしくも甘い優しい香りが彼女の口の中にはあった。沙耶香はそれも感じていた。
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