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戦国異伝

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第二百十八話 太宰府入りその三

「だからです」
「公方様から言われたことはないが」
「しかしです」
「信濃を攻めたからか」
「はい、貴方は奸臣でした」
 そうだったというのだ。
 しかしだ、謙信はこうも言った。
「ですが今は」
「能臣か」
「天下の柱である」
「貴殿の様にか」
「わたくしもまた、ですか」
「わしはそう思う」 
 信玄も今は穏やかな笑みだ、その笑みを謙信に向けて話しているのだ。
「貴殿こそ天下の能臣でじゃ」
「柱であると」
「そうじゃ、では今天下はな」
「多くの柱がありますな」
「そしてその多くの柱がな」
「上様も支えておりますな」
「そうなるな」
 信長、彼もだというのだ。
「やはり」
「そうですか、ではこの戦で九州も収め」
「その戦を見てな」
「奥羽の残りもまた」
「うむ、降ってな」 
 織田家にだ、そしてというのだ。
「遂にな」
「定まりますな」
「天下がな」
「そしてその後で」
「政に本格的に入るわ」
「既に天下はかなり定まっておりまして」
 その政もというのだ。
「進めておりますが」
「より一層な」
「ですな、ではその為にも」
「海を渡り」
「そして戦いましょう」
「まずは我等が宗麟殿に挨拶をし」
 信玄と謙信でだ、先陣を務める二人でだ。
「そして他の者達は」
「二十五将、二十四将は」
「先に岩屋城に行ってもらう」
 島津が攻めているその城にというのだ。
「さすればな」
「岩屋城を救えます」
「そうじゃ、宗麟殿には会わねばならぬ」
 信長の名代としてだ、信玄謙信の二人ならばだ。信長の名代も無事に務められるのだ。それでなのである。
「だからな」
「では」
「うむ、それでは」
「参りましょう」
 海を渡ってだ、こう言ってだ。
 二人は自分達が率いる先陣を渡らせた、船は既に西国の船を使っていて無事に渡れた、玄界灘には既にである。 
 九鬼が織田家の水軍の精鋭を率いていた、その九鬼にだ。
 鶴姫がだ、こう問うた。
「ここは、ですね」
「うむ、軍勢が海を渡るまではな」
「こうして海を守り」
「島津に味方する海賊達にもな」
「手出しさせなければいいですね」
「そういうことじゃ、しかし」
 ここでだ、九鬼はこう言ったのだった。
「島津についておる海賊もな」
「殆どいませんね」
「元々九州の南には海賊が少ない」
「琉球の方にはいますが」
「あの国にはじゃな」
「います、しかし」
 それでもなのだ。
「薩摩からは離れていて」
「別の国じゃしな」
「はい、ですから」
 それでだというのだ。 
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