FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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旅の仲間たち
妖精の尻尾にて・・・
「あらあら、可愛いわね」
「そこかよ・・・」
俺たちはギルドに戻ってきたのだが、小さくなったナツさんを見てミラさんとカナさんがそう言う。
なんでもナツさんはレギオン隊の一番槍、ダンの使う『魔槍ハバラキ』によって小さくされたらしい。おかげでナツさんは今はハッピーの頭に乗っかって不機嫌な顔をしている。
「ちょっとナツ、頭重いんだけど」
「俺だって好きで乗ってんじゃねぇよ!!」
ハッピーの言葉にナツさんが怒る。だけど全然迫力ねぇなぁ・・・
「おわぁ!!」
すると、小さくなったナツさんのマフラーをグレイさんがつかんで持ち上げる。
「おい、マックス」
「あ?」
ナツさんは暴れてグレイさんから逃れようとするが、グレイさんはそんなの気にすることもなくマックスさんに話しかける。
「また売店始めたらどうだ?このチビつり目グッズ、案外売れそうだぜ!」
「ハハッ・・・」
グレイさんの酷い提案にマックスさんは苦笑いする。
「俺はグッズじゃねぇ!!」
それを聞いたナツさんは怒って炎を吐くが、その威力もものすごく弱い。
「「「「「「「「「「あはははははははは!!」」」」」」」」」」
「そのサイズだとそう見えても仕方ないよ」
そのナツさんを見て皆さん大笑いし、ハッピーも笑いを堪えながらそう言う。
「うるさいわね!!集中できないでしょ!?」
そんな大笑いしているギルドの中、ルーシィさんはハートフィリア邸から持ち出した『星空の鍵』に目を通している。
「あ・・・」
「どうしたんですか?」
「何かありましたか?」
ルーシィさんが本を読んでいると何かに気づいたようなので、ウェンディと俺が声をかける。
「うん!!みんな聞いて!!」
ルーシィさんはナツさんで遊んでいる皆さんにも声をかける。皆さんそれを聞くとルーシィさんの近くに集まってくる。
「色々わかったの」
「何がだよ」
ルーシィさんは本を取り出して皆さんに見えるように表紙を見せる。
「あたしのお父さん、この本の内容をなぞってたの」
「どういうことだ?」
ルーシィさんの話に俺たちは耳を傾ける。ジュビアさんはグレイさんを目をハートにして見つめてるだけだけど・・・
「『星空の鍵』っていう物語はね、小さな女の子が全部集めると幸せになるって言われてる6つの鍵を探して旅をする話なの」
「はぁ~、ジュビアも幸せになりた~い」
ジュビアさんはそう言うけど、グレイさんを見つめてるだけで十分幸せそうに見えるんですけど・・・
「でもね・・・その子の代わりに、周りの人たちが不幸になってしまいましたってオチでもあるのね・・・」
「うわぁ・・・」
「どうなのさ、そう言うオチって」
「茶々をいれると話がわかんなくなるでしょ!!」
ルーシィさんから本のオチを聞いたセシリーとハッピーは茶々を入れたけど、それをシャルルに怒られてしょんぼりしながら謝る。
「それで?」
エルザさんはルーシィさんの方へと話を戻す。
「1つ目の鍵は旅をするって書いてあるの」
「鍵が旅なんかするか!!」
「バカか、ものの例えだろうがよ」
ルーシィさんに噛みつくナツさんにグレイさんが言う。
「だから、それが何なんだよ!!」
「ナツさん・・・よく考えてくださいね?」
「レギオン隊が最初に襲ったのはどこだ?」
俺とグレイさんがナツさんにわかるように説明する。
「ん?てことは・・・」
「そう、時計の針はここに運ばれてきた。つまり旅をしたってこと」
あの針はミッシェルさんがルーシィさんを探してあちこちに行き、『旅』をしながらここまで来た、ということですね。
「全ての事件は、そこから始まっているわけ」
俺たちはルーシィさんの話に聞き入る。ルーシィさんはそれを見て続きを話始める。
「主人公の少女は、残り5つの鍵を探して旅をするの。そして、色々なとこで鍵を見つけていく」
ルーシィさんは本をめくり、内容を確認しながら俺たちに説明する。
「最後は聖堂にたどり着いて、6個目の鍵を見つけるのよ」
「聖堂・・・?まさか・・・」
エルザさんはマグノリアにあるカルディア大聖堂だと思い、その方角を向く。しかし、ルーシィさんは首を振る。
「ううん。この街のカルディア大聖堂じゃないわ。もっとずっと遠く・・・」
「なぜわかる?」
エルザさんはルーシィさんがそれを知っているのが不思議で聞いてみた。
「あたし、子供の頃この話が好きで、色々調べてみたことがあるの。そしたらね、『星空の鍵』のモデルになった場所がわかったんだ。お父さんは・・・時計の残り5つの部品をその場所に分散して隠したんだと思う!!そのような話、してなかった?」
ルーシィさんはミッシェルさんに話を振る。突然振られたミッシェルさんは戸惑いながらも答える。
「い・・・いえ、特には・・・亡くなる頃、とっても無口だったから・・・」
ミッシェルさんの言葉を聞いてルーシィさんは辛そうな顔をする。
「とにかく、この星空の鍵のモデルになった場所にいけば、残りの部品は手に入れられるわ!!間違いない!!」
ルーシィさんがそう言うと、ギルドの皆さんは唖然としている。
「レギオン隊は、どうして時計の部品を狙っているのかはわからない。でも、『混沌が訪れる』なんて言われたら、放っておくわけにはいかない!!」
時は刻まれ、やがて混沌が訪れる・・・かなり不気味な一節ですよね・・・
「あたし、探しにいってくる!!」
ルーシィさんは混沌が訪れるのを防ぐため、時計の部品を探すことに決めたらしい。その後ろでなぜかミッシェルさんが泣いてるけど、大丈夫かな?
「お前一人でか?」
「うん。マスターにはやめておけって言われたけど、なんか気になるし・・・」
「そうですね・・・」
ルーシィさんはナツさんに答え、ミッシェルさんはルーシィさんにうなずく。
「ナツはこのままじゃ役に立たないしね!!」
「ハッピー!!お前俺よりでかくなってから一々とげがあんなぁ!!」
「違うよ!オイラが大きくなったんじゃなくて、ナツが小さくなっちゃったんだよ」
ハッピーはナツさんの頭をポンッと叩いてそう言う。なんかあいつ、優越感に浸ってるなぁ・・・
「どうするよぉ、レギオン隊も、このネタに勘づいてんじゃねぇか?」
「ですよねぇ。あいつらも本の内容は覚えてるから、モデルの場所もすぐに割り出すかも知れないですし」
「だとしたら、時間との勝負になるぜ」
グレイさんと俺はサミュエルが本を読んでいたのを思い出してそう言う。
「残りの部品が全て集まった時、何が起こるのか定かではない」
マカロフさんはカウンターでお酒の飲みながら話を始める。
「じゃが、世界の混沌は避けねばならぬ」
マカロフさんの言う通り、世界に混沌が訪れるのは避けないと・・・じゃないと、大変なことになるのは火を見るより明らかだ。
「チームを編成しよう」
エルザさんがそう提案する。ルーシィさん一人じゃレギオン隊に先を越される可能性もあるけど、俺たちは仲間だ!!全員で動けば、奴等よりも先に部品を集められるはず!!
というわけで、俺たちはチームを決めて、星空の鍵のモデルの地へと散開した。
「ん~!!気持ちいいね~」
「本当だね~」
カナさんとセシリーは大きく背伸びをしながらそう言う。空は青空、辺りは緑豊かな草原、カナさんたちの言う通り、すごく気持ちがいい。
「なんだか、ルーシィさんが言ってた物語みたいですね」
「どういうことよ?」
ウェンディにシャルルが質問する。
「『星空の鍵』の女の子は、世界中を旅したんでしょ?きっと、こんな感じだったんじゃないかな~、て」
「なるほど、言われてみるとそうかもね」
ウェンディの話に俺は賛同する。
「呑気ね。その子が幸せになったこととで、周りの人は不幸になって、世界は混沌に陥ったのよ?」
「あぁ、そっか」
「私は少女じゃないけどね」
シャルルに言われてウェンディは納得し、カナさんはなぜか胸を張る。少女って言うと、この場合はウェンディかな?でも一緒にいる俺たちはどうなるんだ?
「お前たち!!」
「「「「「?」」」」」
俺たちが話していると、前を大荷物を引っ張って歩いているエルザさんが声をかけるので前を向く。そこにいるエルザさんは、なぜかピンクのシートを広げ、腰を下ろしていた。その周りにはたくさんの料理が並んでいる。
「ここに座らないか?」
「「「「「?」」」」」
エルザさんは何をしようとしているのか俺たちにはわからずにみんな固まっている。
「あぁ・・・気持ちのいい物だな、ピクニックとは」
エルザさんは清々しい笑顔で耳を疑うような単語をいい放った。
「・・・はい?」
「ピクニック・・・?」
俺とカナさんはエルザさんにそう言う。
「一度やってみたかったのだ!!ピクニック!!」
エルザさんは当初の目的を完全に忘れているようだ・・・もう完全にピクニックをすることしか考えていないような顔をしている。
「ちょっとエルザ・・・趣旨が違ってきてるよ」
「僕たちの目的は~・・・」
カナさんとセシリーがエルザさんを説得しようとするが、エルザさんはサンドイッチ片手に目をキラキラさせている。
「人生初のピクニックだ!!ピクニック!!」
エルザさんがピクニックって言うと、どこからかやまびこが聞こえてくる。どこで反響してるんだ?
「そんなことしてたら、レギオン隊に先を越されるわよ!!」
シャルルもエルザさんを止めようとするが、エルザさんは楽しそうな顔をしたまま答える。
「全ては計算済みだ。途中で一度だけピクニックをしたところで、先を越されることなどない」
「その計算は何を基準としてるんですか?」
あいつらがどんな移動手段を持っているのかもわからないのに、なんでそんな自信満々に言えるんだ?俺が疑問をぶつけると、エルザさんはフフッと笑ったあとにこう言い放った。
「私の勘だ!!」
「「「「「・・・・・」」」」」
エルザさんのあまりにも真剣な表情でのボケに、俺たちは言葉を失う。
「ああ・・・風が吹き渡り、どこまでも広がる草原・・・」
エルザさんは一口サンドイッチを口に含むと、涙を流しながら「うまい!!」と感動している。
「エルザさん・・・」
「価値観が違いすぎる・・・」
「かなりね・・・」
「なんかやっぱりどこか抜けてる・・・」
「でも楽しそうだよね~!!」
セシリー以外の俺たちはエルザさんを見て呆れている。人生初のピクニックに感動するのはわかるけど、なぜこのタイミングなんだろうなぁ・・・
エルザさんがさらに目を輝かせていると、その後ろから馬にまたがった男たちが現れる。馬?なんか変だけど・・・ここは馬ってことにしておこう。
「おいおいおい!!誰に許可もらってピクニックやってんだ!!」
男たちはピクニックをしている俺たちに向かって怒声をあげる。
「許可・・・だと?」
エルザさんは表情こそ見えないが、明らかに態度がさっきまでとは違っている。
「ここは俺たちの草原だ!!勝手にピクニックしてもらっちゃ困るんだよ!!」
男たちはそう言う。また厄介なことになってきたなぁ・・・
「皆さん、ちょっとピクニックにこだわりすぎじゃ・・・」
「あれ・・・馬?」
「二人とも今そこ気にします?」
ウェンディとカナさんに俺は突っ込みをいれる。今俺たちがすべきなのはこいつらを何とかすることなんじゃ・・・
「この広く爽やかな草原で、ピクニックをしてはいけないと言う法律でもあるのか?」
エルザさんは食べかけのサンドイッチを奥と、ゆっくりと立ち上がる。
「ん?」
そんなエルザさんを見て、男たちは何かに気づく。
「おいおいおい!!こいつら妖精の尻尾だぜ?」
「最近何やらお宝を探してるって話じゃねぇか」
「おいおいおい、ちょうどいいじゃねぇか。そのお宝、いただこうか?」
男たちは俺たちに剣を向けて大笑いする。だけど、それ以上に聞き捨てならないことが俺たちにはあった。
「なんでこいつら俺たちが鍵を探しているのを知ってるんだ?」
お宝ってのはたぶん鍵のことだろう。なぜこんなモブキャラ「モブって言うな!!」が知ってるんだ?
「情報が漏れてる?」
「レギオン隊を敵に回してるんだもの」
「漏れてもそれほどおかしくはないよね~」
シャルルとセシリーの言う通り、あのレギオン隊とやらのせいで情報が漏洩してるんだろうな。まったくめんどくさいなぁ。
俺たちがそんな話をしていると、いつの間にか男たちはエルザさんの用意していた料理を頬張っていた。
「おいおいおい、うめぇなこれ!!」
「ちょうどいいぜ!!腹減ってたんだ!!」
楽しそうに飲み食いしている男たち。あ~あ、そんなことしたらきっと・・・
「初だったのに・・・人生初のピクニックだったのに!!」
エルザさんは負のオーラを放ちながらそう叫ぶと、雷帝の鎧へと換装する。
「そこ!?」
「ピクニック邪魔されたから怒るの~!?」
「スイッチが入った!?」
「目が本気だ!?」
「エルザさんちょっと怖い・・・」
俺たちは戦闘体制に入ったエルザさんを見て恐怖を感じている。無論、それは俺たちだけではなく、料理を食べてしまった男たちも感じたようで、
「「「「「「・・・・・」」」」」
エルザさんの方を見て金縛りを起こしていた。
「許さんぞ!!」
エルザさんはジャンプすると槍から雷を出して男たちに攻撃する。
「「「「「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」」」」」
雷を受けて悲鳴をあげる男たち。
「あれ、やりすぎなんじゃ・・・てか馬?」
「あの人たちここで死んじゃうかも・・・」
「エルザさん、大丈夫でしょうか?」
エルザさんの圧倒的な攻撃を見ている俺たちは男たちの心配をし始める。
「どうしてあそこまでピクニックにこだわるのかしら?」
「きっと深い事情があるんだよ~」
シャルルとセシリーがそう言う。だけど、ピクニックに深い事情ってなんだよ!!
「この恨みは、一生忘れんぞ!!」
エルザさんは目を赤く光らせて最大パワーの電撃を男たちにお見舞いし、男たちはお星さまへとなりました。めでたしめでたし。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
エルザさんはあまりにも力が入りすぎたのか、肩で大きく息をしている。何もそこまでしなくても・・・
「よし!!気を取り直して―――」
エルザさんはもう一度ピクニックをしようとシートの上を見る。しかし、そこはさっきの男たちのせいで食い散らかされた食べ物しか残っていなかった。
「あぁ・・・」
エルザさんはがっかりしてorz状態になる。お気持ち察します。
「それより、いい加減に目的地に向かわないとまずいんじゃない?」
シャルルの言う通り、あの変な奴等のせいで時間を食ってしまった。これ以上こんなところでピクニックしてたら、さすがにまずいだろうな。
「エルザ、そろそろ行くよ」
「早く時計の部品を集めないと!!」
「早く行きましょう!!」
「待ってくれ!!もう一度、もう一度だけ~・・・」
「「「「「そんな時間はない(ありません)!!」
どうしてもピクニックを諦めきれないエルザさんだったが、俺たちはそんなことなどお構いなしに目的地へと向かうことにした。
その道中、がっかりと肩を落として歩くエルザさんの姿は、S級魔導士としての威厳は微塵も感じられなかった・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルは安定のウェンディと一緒のチームでの行動にさせていただきました。
次回もよろしくお願いします。
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