インフィニット・ストラトス if 織斑一夏が女だったら
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第五話《俺と私》
前書き
ラウラって、どちらかというと一夏が好きだから、恥ずかしがってたんだよね?
じゃあ男一夏がいないならそこまで恥ずかしがらないと思った。今更。
息抜き回?なにそれ。
前編後編?はて。
「う~ん。予定通り、『銀の福音』が暴走したねぇ」
篠ノ之束は、こげたトーストをかじりながら退屈そうにディスプレイを眺めていた。
部屋の至るところには機械の備品がちりばめられ、ケーブルが樹海のように広がっている。
ディスプレイに写し出されているのは『銀の福音』の衛星中継。衛星を無理矢理『福音』を写すようにハッキングしている。
「天才束さんは大丈夫だとしてー、スコールの方が心配だねぇ」
束は、真紅のISを撫でながら呟いた後、とことこと歩きだした。
*
俺は、今までになく、集中していた。
なにか大きな報酬があるわけでもない、この仕事。俺はただ、俺に任せてくれたのが、ただ嬉しかったのかもしれない。
いや、下手したら怪我をする。たぶん、そっちのほうが大きい。
まず、強行手段はとれない。ラウラがこちらに向かってきたら、俺に勝ち目がないからだ。ならばっ!
俺はまず、ラウラとシャルの間に入った。
ラウラを前にシャルを背に。
「いやー、ラウラ!せっかく水着に着替えたのに、そんな隠れてばっかいたらもったいないだろ!?シャルだってそんなベッタリされてたら暑いって!」
俺は後ろに腕を組み、満面の笑みでラウラに話しかけた。
そんな俺の後ろでは、シャルにカメラを見せている。
そう、外壁の硬い城は、中にスパイを紛れさせ、内側から攻めるに限る。
シャルがカメラを手に取る!
ーーやった!
俺は敵の参謀を仲間にした。と思った。だが・・・。
「ねぇ、ラウラ。一夏もラウラの写真、撮りたいらしいよ?一枚位、撮らせてあげてもいいんじゃないかな?」
シャルは満面の笑みでそう答えた。
あら、普通に言っちゃった。
「・・・」ラウラは頬を赤らめながらうなずいた。
・・・あれ?簡単にいくじゃないか。黛さんは何をてこずっていたんだ?
まぁ、OKはもらえたし、さっさと撮って黛さんに渡そう。
その時。俺の近くには悪魔が近づいていた。
俺は、シャルからカメラを受け取り、少し離れる。
「それじゃ、撮るぞー」
俺はカメラを覗いた。
瞬間。俺の頭に何かが勢いよく当たった。
ビーチボール。紛れもないビーチボール。威力を除いては。
それはものすごい勢いで俺に当たった。
バチィン‼ と、いい音をたて。
ボールが破裂する。
俺は、半分意識が飛んでいた。
ボールを飛ばしたのは、千冬姉だ。
自称夏のサマーデビル、櫛灘さんの打ったサーブが一般客へ向けて飛んで行き、それを千冬姉が弾いたのだ。
俺はバランスを崩し倒れかける。
カメラが俺の手からこぼれる。
俺が覚えているのは。
カメラに頭突きをしたところまでだ。
俺は、夢を見ていた。
小学生の頃の夢。
頬に絆創膏を貼った俺は、千冬姉と手を繋ぎながら、夕日で赤黄色に染まっている河川敷を歩いていた。周りに、歩いている人はいない。
ーーあぁ、そういえば、この頃はよく喧嘩してたっけな。
俺は、箒の道場に通い剣道をならい、千冬に体術を習っていたため、例え性別がちがくとも喧嘩で負けることはなかった。
つまり。他の人より強かったことで天狗になっていたんだ。
「どうして・・・お姉ちゃんが謝るの?」俺は、不貞腐れながら話していた。
「なに、妹のやったことは、姉が責任を持つものさ」千冬は笑う。
「違う!悪いのはあいつ等だ!私達は悪くない!」
ーーあれ。この頃の俺は、自分の事を『私』と言っていたのか。
千冬は幼い俺と、目線を会わせ、俺の肩に手を置いた。
「いいか。確かにお前はいじめている人を助けた。だが、おまえは護るためだけではなく、傷つけるために力を振るってしまったんだ・・・。少し、やり過ぎたんだよ。」
「じゃあ・・・どこまでが護るためなの?私は、どうすればよかったの?」
「そうだな・・・その基準はとても難しいからな・・・。」
千冬は少し考え、こう答えた。
「よし、じゃあ、明日からは人をなるべく傷つけない闘い方を教えてあげるよ」
・・・そのときの幼い頃の俺は、スカートをはいていた。
今の俺は、恥ずかしくてスカートははけない。
思い出せない・・・。
俺は、いつから性同一性障害になったんだ・・・?
目を覚ました時には、もう日が暮れかけており、部屋は夕日の色に染まっていた。
「目が覚めたか」
顔を左に向けると、千冬姉が書類に目を通していた。
「千冬姉・・・どうやったらボールを破裂させられるんだよ・・・」俺は、元気なく言った。
「すまなかったな。咄嗟のことだったので加減が出来なかったんだ。まぁ、当たったのがお前でよかったよ。」千冬姉は少し笑った。
「確かに俺でよかったけどよくない・・・」俺は元気なく答える。
1日しかない自由時間がもう終わるのか・・・そう考えるとどうも元気がでない。
それにしても・・・
俺は、何気なく、尋ねた。
「千冬姉、俺って、いつから一人称が『俺』になった?」
後書き
何だかんだでもう物語が中盤ですー
書き始める前に原作もっかい見直せばよかったなーと後悔。
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