カエサルと海賊
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5部分:第五章
第五章
「御前達のことはわかったからな」
「何がわかったんだよ、それで」
「意味がわからないんだけれどな」
「まあ気にするな。それではな」
こうしてだった。彼は迎えの船に乗り一旦は海賊達の場所から去った。すかしすぐにだった
軍を集めて自ら指揮してだ。その海賊達のアジトに攻撃を仕掛けたのだ。
隠れ家の隅から隅まで見回っていたので何処をどう攻めればいいのかわかっていた。大軍で不意を衝いて一気にであった。海賊達は為す術もなく全員捕まったのだった。
カエサルは縄に括られ座らさせられた彼等の前に立ってだ。胸を張って言うのだった。
「また会ったな」
「何でこうなるんだよ」
「今度は俺達が捕まったのかよ」
「何でなんだよ」
海賊達はその勝ち誇る彼を前にしてぼやくことしきりだった。
「で、俺達捕まったけれどな」
「それでどうなるんだよ」
「一体な」
「あれか?やっぱり」
ここで海賊の一人が言った。
「海賊だから縛り首か」
「ってことは俺達全員か」
「そうなるのか」
「そうなりたいのか?」
カエサルはその彼等にこう返してきた。
「もっとも表立ってはそういうことになるがな」
「表立ってはってどういうことだよ」
「そうしないっていうのかよ」
「縛り首じゃないのかよ」
「御前達がそうなりたいのならそうするが」
カエサルはいぶかしむ彼等にこう返した。
「どうだ、それは。私はそれでも構わないが」
「馬鹿を言えよ」
「誰が自分から死にたいなんて言うかよ」
「俺達は少なくともそこまで絶望しちゃいないぜ」
「まだ生きたいさ」
「ならだ」
彼等の言葉を聞いてからまた言うカエサルだった。
「生きるのだな」
「生き残って何しろっていうんだよ」
「それで」
「まあ海賊は止めろ」
これは絶対だというのだった。
「御前達はそれには向かない。海賊になるには妙に善人過ぎる」
「だから食う為にやってんだよ」
「幾ら何でも人なんか殺すか」
「そこまで腐っちゃいねえよ」
「だからだ。まあ身代金は返してもらう」
それはだというのだ。実はそれ以外にこれといって貯め込んでいるものはない貧乏海賊なのである。
「それでだ。まあどこかで漁師なり商人なりして暮らせ」
「って言われてもな」
「そうだよな」
「俺達何処で暮らせばいいのやら」
「ここ以外にな」
「そもそもだよ」
ここで彼等はこうも言うのだった。
「どっかに移る金もないしな」
「船は没収だろ?」
「俺達のあの船も」
「あんなものもう乗れないぞ」
カエサルはその彼等に話す。
「何時沈んでもおかしくない船だろ」
「それはそうだけれどな」
「けれどあんな船でも一隻しかないしな」
「だよな。それがないとな」
「俺達何処にも移れないぞ」
「船はある」
彼等にまた話すカエサルだった。
「ちゃんとな」
「あるって。どんな船がだよ」
「そんなのないだろ」
「なあ」
「ちょっとな」
「それはな」
「いや、船はある」
まだこう言うカエサルだった。
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