カエサルと海賊
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4部分:第四章
第四章
「私も何かと苦労している」
「あまりそうは見えないけれどな」
「そうだよな」
「全然な」
海賊達はカエサルの今の言葉は信じようとしなかった。
「滅茶苦茶偉そうだしな」
「こんな偉そうな奴見たことないよな」
「だよな。それで苦労してるってのか」
「嘘だろ」
「いや、実際に苦労しているぞ」
カエサルは胸を張ってこう主張する。
「これでも何度か殺されそうになった」
「また物騒な話だな」
「そうだよな」
「そんなことがあったのか」
「そうだ。その中を生きてきたのだ」
これは本当のことだった。実際に彼はローマでのその民衆派と元老院派の対立の中にいてだ。何度か殺されそうになっているのだ。
その他にも元老院派に睨まれ何かと困ってきている。ロードスに留学に向かうことにしても彼等から身を隠す為という理由もあるのだ。
それでだった。彼は言うのであった。
「だからだ。苦労はしているぞ」
「まああんたがそう言うんならな」
「それを信じるか」
「そうだよな」
「嘘を言っているようには見えないしな」
「嘘を言っていい時とよくない時がある」
カエサルは今度はこんなことを言った。
「今は言ってよくない時だ」
「まあな。本当のことを言っても信じにくい話だしな」
「とりあえず本当にしても凄い話だしな」
「全くだよ」
「そういうことだ。さて」
カエサルは散歩を続けながら言っていく。海賊達の隠れ家を細かいところまで見ながらだ。
そうしてだ。今度はこんなことを言うのだった。
「さて、歩くのも飽きた」
「さっさと寝てろ」
「大人しくしてろ」
「生憎だがじっとしているのは性には合わない」
また海賊達の言葉を聞こうとしない彼だった。
「魅力的な女性と遊ぶか書でもあれば別だが」
「悪いがどっちもないぞ」
「それはどうしてもな」
「わかっている。だからだ」
両方共ないと告げられても全く悪びれずにだ。また言うのだった。
「それではだが」
「今度は何だ」
「一体何が欲しいんだ」
「この場合は何をしたいかだな」
平然と彼等に言い返してだった。
「そうなるな」
「本当にああ言えばこう言うだな」
「次から次によくもまあ」
「とにかく。それでだ」
「何をしたいんだよ」
「稽古でもするか」
海賊達の粗末な剣や斧やらを見ての言葉だった。
「動いていないとなまってしまうからな」
「ああ、そうかよ」
「それじゃあな」
「今度はそれだな」
彼等も嫌々ながら頷いてだ。そうしてだった。
カエサルは今度は彼等と剣や槍やそういったものの稽古をしたのだった。そうしたことをしながら時間を潰してだった。
身代金が届いた。海賊達はそれを受け取ってカエサルを解放する時になってやれやれといった顔を見せるのであった。
「これでお別れだな」
「ああ、二度と来るなよ」
「何があってもな」
「ははは、それは安心しろ」
カエサルはうんざりとした彼等に笑って話した。
「私はまた来る」
「だから来るなっての」
「もうあんたとは会いたくないからな」
「会っても捕まえたりしないからな」
「関わりになりたくないんだよ」
「まあまた会おう」
しかしカエサルはまだ言うのだった。
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