東方喪戦苦~堕罪編~
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逃れられぬ、戦いの運命
前書き
あの忌まわしい事件が収束したあの日から、五年もの歳月が過ぎたーーーーーー。
幻想郷に住み着いて、五年程が経った。
始めてこの地に来た時は無知な少年だった俺は、今や19歳になり、とある森の奥地でひっそりと暮らしていた。
至極当たり前のことだが、身長は劇的に伸び、体重は増え、髪も伸びた。
その伸びた襟足を後ろで縛っている。女性程髪が長い訳ではないが、少しとめる程度にしばっているのだ。
「森はやはり良いな」
菜「········」
森の中の道を車椅子を押しながら話し掛けるが、彼女は返事をしない。
否、返事が出来ないのだ。彼女は“あの事件”の被害者なのだから。
そう、あの事件と言うのは他でもない、俺がこの世界に住む発端となった事件。
葉川 裕海率いるオーダーと名乗る組織との度重なる交戦、この事件で多くの尊い命が失われた。
その裕海に彼女は操られていたのだ。
出「なにをぼーっとしとるのじゃ?はやくいこうぞ?」
と、俺のコートの裾をグイグイと引っ張ってくるのは、出雲。
この子は、親が見つからず、俺達が親代わりしている。
出雲には、当然だが衣服や食事等全て提供している。その印に、俺が創り出した衣服を紹介する
内側は白で外側は青と言う柄のパーカーで、フードには黒い点が二つと、黄色いツバが付いていた。
出雲は、このパーカーが大のお気に入りで、フードを深く被ると、ペンギンの様な格好になるのだ。
出雲は動物になりきるパーカーをこの他にも沢山持っている。
「いや、ちょっと物思いにふけてただけさ、行こう」
再び、森の奥へと車椅子を押しながら進みだす。
出「ふける?むくろは、そんなにふけてないぞ?」
その言葉に俺は思わず、吹き出した。
「ははっ、そう言う老けるじゃないんだよ」
出「どーいう、ふけるなのじゃ?」
出雲は頭を抱え込み、唸りながら考えてた。
「そろそろ着くぞ」
程なくして、少し開けた場所に出る。
そこには切妻屋根のログハウスが建っていた。
出「やちよ~!ただいまなのじゃ~!」
大きく手を振って、八千代の方に走り出す。
八千代というのは、俺の家族みたいなもんだ。だが、なんだか複雑な物だ
八「お帰り~、出雲~!」
八千代は出雲を抱き抱える。
「ただいま」
そういって、微笑みかける。
八「お帰りなさい。骸」
そういって、全員で家の中に入り、菜々を車椅子からベッドへ移動させ、ベッドの傍らに座る。
すると、家の扉を忙しく叩く音が聞こえた。
八「なに?」
「俺が出るよ」
玄関に行き、扉を開けると、そこには、鬼隆が立っていた。
「鬼隆!?どうした?」
鬼隆というのは、元オーダーの幹部であったが、更正して今ではエイジスと言う組織に身を投じている。
鬼「オーダーの残党が発見されたと諜報員から報告があった。至急、あんたに伝えるように、と」
「····そうか」
俺は、戦うことから逃れられない、ある種、遺伝子情報に組み込まれているのか、宿命的な物なのか、と錯覚してしまう程だった。
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