戦国異伝
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第二百十七話 九州騒乱その十一
「岩屋城が陥ちてもな」
「もう島津家に九州をやることはですか」
「ないと」
「充分九州に入られる」
玄界灘を越えてというのだ。
「だからな」
「間には合っている」
「そうなのですね」
「そうじゃ、しかしじゃ」
それでもとだ、こうも言うのだった。
「あの二人は欲しい」
「高橋殿と立花殿は」
「お二人共」
「うむ、欲しい」
人がというのだ。
「人は宝じゃ」
「御屋形様の言葉ですな」
幸村が笑って問うた。
「人は城」
「そうじゃ、どれだけ土地があってもな」
「人がいなければですな」
「何にもならぬ」
それ故にというのだ。
「だからこそじゃ」
「ここは」
「そうじゃ、あの二人を救いじゃ」
「織田家の家臣とされるのですな」
「そしてじゃ」
さらに言う信長だった。
「その二人の子のな」
「立花宗茂殿も」
「あの方も」
「欲しい」
その彼もというのだ、そしてだった。
信長はここでだ、傍らにずっといた家康にだ、こう言った。
「御主のところの平八郎と並ぶだけの者をな」
「そう言われますか」
「そうじゃ、わしも平八郎を手に入れる」
「その立花殿をですな」
「そうじゃ」
是非にというのだ。
「そうするわ」
「やれやれ、吉法師殿は変わりませんな」
家康は笑ってその信長に応えた。
「昔から」
「何でも欲しいというところがじゃな」
「はい」
「ははは、確かにな」
「欲張りですな」
「そうじゃ、わしは欲張りじゃ」
自分でも笑って言う信長だった。
「だからじゃ」
「立花殿も家臣に迎えられる」
「そうするわ」
「ですか」
「しかしじゃ」
「しかしですな」
家康はまた信長に応えた。
「その為には」
「間に合わせる」
岩屋城にというのだ。
「是非な」
「人もですな」
「わしは手に入れる、しかし」
ここでだ、信長は。
顔を曇らせてだ、家康にこんなことも言った。
「竹千代、どう思うか」
「そのお三方が仕えておられるですな」
「そうじゃ、大友宗麟じゃが」
「はい、あの方は」
「うむ、どうもな」
こう難しい顔で言うのだった。
「おかしなものがあるな」
「はい、確かに」
「耶蘇教を守っているのはいいが」
「神仏をですな」
「神社仏閣を壊して回っておる」
自身の治める領国内だけでなくだ、出陣したその先々でもだ。宗麟はそうしてきているのである。そしてだ。
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