リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another7 喧嘩
前書き
大輔キレました
アインス「さ、寒いな…」
自分の身体を抱き締めるアインスにロップモンが駆け寄る。
ロップモン[大丈夫、アインス?]
アインス「ふっ、私も年老いたというわけか…」
大輔「いや、お前見た目も中身も若返ってんじゃん…逆に……」
至極尤もなツッコミをアインスにする大輔であった。
太一達には聞こえないようにヒソヒソ会話をする大輔達。
ロップモン[私はこういう寒い場所好き~!!]
いつも通り耳を動かして飛ぶロップモン。
ブイモン[そういや、ロップモンもどっちかって言うとガブモンみたいに寒冷地にいるのかもな]
ロップモン[ガブモンとゴマモンは寒冷地出身だからね~。もしかしたらガブモンとゴマモンの村とかあるかもよ?]
ガブモン[どっかにあるのかなあ?]
ゴマモン[オイラだらけの村]
大輔「寒冷地ならともかく、他の場所なら確実に暑苦しい村だな。」
太一「まあ、寒いのも悪くないだろ」
アインス「何故?」
太一「雪が積もれば、雪合戦出来るぜ?」
タケル「雪合戦!!」
太一の言葉に急に元気になるタケル。
大輔「雪合戦ねえ、俺はとっくに卒業しました。今の時代はかまくらですよかまくら」
アインス「うむ、かまくらの中で鍋をつつきたい物だ。蜜柑もいいな。後熱いお茶も」
ミミ「アインスさん、それおばさん臭い」
アインス「おばっ!!?」
ガーンという効果音が聞こえてくるようだった。
無邪気に喜ぶ仲間達を見て、丈は不満げだった。
丈「気楽なんだから。雪なんて降られたらたまんないよ」
空「丈先輩。何一人で深刻な顔してるんですか?」
1人会話の輪から外れている丈に空が気づいた。
丈「深刻にもなるさ。考えてもみろよ、これ以上気温が下がれば野宿だって難しくなる」
アインス「まあ、それが普通だろうな…」
丈「寒冷地では食料の調達だって大変になるだろうし…頭が痛いよ。僕はみんなを守らなくちゃいけないからね。僕が、一番年上なんだから」
大輔「年上ですか…」
一番の年上はアインスですと、言ったら言ったでどうなるだろうかと思う大輔であった。
森を抜けると、そこには一面の雪原が広がっていた。
丈「ほら見ろ。僕の心配した通りだ」
空「これからどうするの?」
丈の言ったことが実現し、空も不安げに訊いた。
太一「とりあえず、先へ進む!!ここでボケッとしててもしょうがないだろ」
太一の意見には、すぐに異議が出された。
ヤマト「この雪原をか!?」
アインス「ふむ、確かに今この雪原を進むのは危険かもしれないな」
太一「じゃあどうするんだよ?前は雪原、後ろはあの山。どっちにしろ、どっちかに進むしかないだろ!!」
大輔「まあ、確かに。でも少し休憩してからの方がいいんじゃないですかね?せめて雪が止むまで」
ブイモン[ここら辺に確か温泉があったな]
全員【温泉!!?】
“温泉”という単語に大輔、アインスを除いた全員が振り向いた。
ブイモンは少し目を見開きながらも落ち着かせる。
ブイモン[言っとくけど温泉には入れないぞ。湯の温度が半端じゃないからな。でもあそこは寒冷地出身じゃないデジモンが寒さを凌ぐ場所として使われるんだ。そこで休憩、もしくは野宿]
ミミ「そんなあ…」
久しぶりに入浴出来るかもと思ったミミは沈んだ。
ブイモン[次があるって、よっしゃあ!!ついてこい野郎共!!]
全員【おお!!】
ミミ「私と空さんとアインスさんは女の子よ!!」
アインス「(私は女の子の年齢を遥かに越えているがな)」
自分で言って虚しい。
ぼこぼこ
ぶくぶく
温泉のある場所に着くと確かに毒々しいほど鮮やかに色づいた温泉は、これでもかと沸騰していた。
ブイモン[ここがその温泉だ。見事に入れなさそうな感じだろ?]
全員【確かに…】
パルモン[でも…あったかいわあ…]
ヤマト「とりあえず、寒さは凌げるな」
温泉に入れないが、それだけが救いだろう。
丈「呑気なこと言ってる場合か!!食料はどうするんだよ?ここには食料なんて…」
タケル「あるよ」
丈の言葉を遮って、タケルが簡潔に言った。
丈「何言ってんだよ、こんなゴツゴツした岩だらけのとこに…」
タケル「ほら!!」
大輔「冷蔵庫だ」
丈「そ、そんな馬鹿な…」
タケルが指差した先にあったのは、一台の冷蔵庫。
太一などは素直に喜んだが、こんな所に冷蔵庫があるというあまりの非常識さに丈は思わず嘆いた。
丈「何でこんな所に冷蔵庫が~!?」
大輔「ラッキー、正に天の恵みって奴だな」
丈「そういう問題じゃないだろ!!」
アインス「肉か野菜が入っていればいいのだがな」
丈「だから~!!」
非常識を受け入れてしまっている大輔達と他の子供達に、丈は1人で抗議を続けていた。
ブイモン[卵だ]
アインス「そうか、では今日は卵料理にしようか。」
調味料を取り出し始めるアインスを丈は止めようとする。
丈「ちょ、ちょっと待ってよ。食べられるかどうかなんて分からないじゃないか」
ブイモン[大丈夫、新鮮だから食べられる。あーん]
確認のために割った卵を口に放り込んだ。
丈の抗議も軽く流してしまうブイモン。
丈「何言ってんだよ!!食べられるにしても、人の物を勝手に食べるなんて泥棒と変わりないじゃないか」
ブイモン[俺の物は俺の物、落ちてる物も俺の物]
ロップモン[何そのジャイアニズム?]
ヤマト「それに仕方ないだろ。腹減ってるんだから」
空「事情を話せば分かってくれるわよ」
光子郎「何しろ、非常事態ですからね」
テントモン[夕食はこれで決まりや!!]
丈の抗議はあっさりと流されてしまった。
大輔「さあ、みんな。食べて下さい」
オムライス、茹で卵、目玉焼き、オムレツなどの卵料理が並ぶ。
オムライスは最後の楽しみにしてまずはオムレツなどを食べ始める。
太一「美味い!!」
ヤマト「このオムレツ、オムレツがフワフワして中のチーズがトロトロしてて美味いな」
大輔「メレンゲオムレツなんですよ。何なら今度レシピ教えましょうか?」
ヤマト「頼む」
アインス「米が殆どないが、寒冷地を抜ければ何とかなるだろう。」
ゴマモン[なんだ丈、食べないのか?]
1人箸が進まない丈に、ゴマモンが声をかけた。
丈「うん。うちに帰ればこんな苦労しなくていいん」
大輔「そう言えば、みんなは目玉焼きに何かけますか!!因みに俺はケチャップ」
空「(凄い割り込み方。でもナイスよ大輔君)」
強引に割り込んで別の話題に切り換えた大輔。
丈「ケチャップだって?目玉焼きには塩胡椒って決まってるじゃないか」
アインス「私は塩を単品で」
太一「俺、醤油」
ヤマト「マヨネーズ」
空「私はソース」
光子郎「僕はポン酢を少々」
大輔「ポン酢…あ、でも大根おろしと一緒にすればもしかしたら…」
アインス「さっぱりして美味しいかもしれんぞ」
タケル「そうかなあ?」
光子郎「美味しいですよ」
ミミ「えー、みんな変よ。目玉焼きといったらお砂糖!!その上に納豆をのっけたのも大好き!!」
ミミの爆弾投下。
そこにブイモンが決然と立ち上がった。
ブイモン[そのチョイスに異議あり!!]
ミミ「え?」
ブイモン[目玉焼きに砂糖はともかく納豆だとお!!?目玉焼きには蜂蜜だろ!!]
太一「蜂蜜!!?」
ヤマト「それもう菓子だろう!!?」
ミミ「むう、でもメープルシロップや生クリームも美味しいわよ!!」
ブイモン[チョコレートソースやジャムとか…]
ヒートアップする甘味目玉焼き論争に大輔達はついて来れない。
大輔「空さん、俺達がしてたのは目玉焼きにかける調味料の話でしたよね?断じて菓子の話じゃありませんでしたよね?」
空「そ、そうね…」
丈「えええぇー!!皆目玉焼きにそんな変な物をかけるのかい!?ショックだ!!日本文化の崩壊だ!!」
ヤマト「おい…丈」
太一「そこまで悩むか?…普通」
アインス「まあ、個人の好みだ。」
ロップモン[丈って変な人だね]
丈「変って…」
サラリと変な人と言われて停止する丈。
ロップモン[みんなを見てみれば?多分、私と同意見だろうから]
周りを見れば、困惑したような太一達に丈は頭が冷えたのか深い溜め息を吐きながら大人しくなったのだった。
大輔「ふう」
アインス「お疲れ、大輔」
食後の運動に特訓しているブイモンとロップモンを見守っていた大輔に労いの言葉をかける。
大輔「ああ」
アインス「今日のメレンゲオムレツは美味しかった。私はまだあんな風に作れないんだ…」
大輔「現実世界に帰ったら教えてやるよ」
アインス「ありがとう。ではそろそろ寝ようか」
太一「…何度も同じこと言わせんなよな!!」
大輔、アインス「「ん?」」
太一の怒声に大輔とアインスが振り向き、ブイモンとロップモンは特訓を中断した。
大輔「何してんですか?あの2人?」
アインス「喧嘩か?」
空「そうなの、ムゲンマウンテンに登るか登らないかで揉めてるんです」
太一「何だよ!!そんな逃げ腰じゃ埒があかねぇだろ!!」
ヤマト「お前の無鉄砲につきあわせて、みんなを危険にさらす気かよ?」
太一「っだとぉ!!?」
丈「待ってくれよ2人共、まずは落ち着いて話し合おう?」
どんどんヒートアップしていく言い争いに、丈は仲裁に入ったが、太一とヤマトから出た言葉が丈を混乱させる。
太一「じゃあ、丈はどう思う?」
ヤマト「どっちに賛成なんだよ?」
丈「ど…どっち、って……」
思わず太一とヤマトを見比べる。
丈「…太一の言っていることは正しいよ。あれに登れば、これからの指針になると思うよ。」
太一「ほら見ろ!」
丈「だけど、ヤマトの言うことも尤もだ!みんなを危険に晒してまで、あの山に登る意味があるのかっていうと…。」
そこまで言って悩む丈に、2人ががくりと肩を落とす。
太一「ともかく!行けるとこまで行こうぜ!!」
ヤマト「だから、違うって言ってるだろう!!」
丈「待てよ!!今考えてるんだから、ちょっと待てって!!落ち着けよ!!」
ヤマト「熱くなってるのは、丈の方だろう!!」
丈「何だよ!?僕は君達を…!」
太一「だから行けばいいんだよ!!」
ヤマト「何でそうなるんだ!」
丈「聞けよ!俺の話も!!」
大きくなっていく3人の声。
大輔「………」
大輔のこめかみに青筋が浮かんでいた。
アインス「お前達、いい加減止め」
大輔「…いい加減にしやがれえええええ!!」
アインス「え!!?」
大輔の怒声に全員が停止した。
そして3人に歩み寄る。
大輔「座れ」
ヤマト「え?」
大輔「座れって言ってんのが聞こえねえのかああああああ!!!!」
太一、ヤマト、丈「「「はい!!!!」」」
大輔の怒声に3人が正座した。
タケル「大輔君、凄いや!!」
上級生3人を正座させた大輔にタケルは尊敬の眼差しを向けた。
大輔「太一さん、ヤマトさん、丈さん。これから俺が言おうとしていることは多分、全員が思っていることだと思うから、みんなの言葉だと思って聞いてくれ」
太一「お、おい…」
ヤマト「何で俺が…」
大輔「いいから黙って聞け!!明日の朝飯抜きにされてえのか!!!!?」
太一、ヤマト「「いいえ!!」」
朝飯抜きは勘弁だと、胃袋を掴まれた2人はすぐに黙る。
大輔「ならいい。まずはヤマトさん!!ヤマトさんはまず広い心を持て!!!!右も左も分からない状態で、出来るだけ慎重に行きたいっていうヤマトさんの気持ちは分かる。俺もヤマトさんの立場ならそうする。だから太一さんの行動に腹が立つのも分かるよ。でもな、だからっていきなり頭ごなしに自分の考えを否定されたら太一さんじゃなくても頭に来るだろ!!!!いちいち突っかかるなっ!!!!」
ヤマト「ぐっ…」
太一「そうだ、大輔!!もっと言ってやれ!!!!」
大輔「あんたもだ!!!!」
太一「え?」
大輔「太一さんはまず自分の考えを他人に押し付けようとするのを止めろ!!!!確かに太一さんのこの訳分かんない状況を少しでも打開したい気持ちも分かる!!!!だからってみんなのことを蔑ろにするな!!!!ムゲンマウンテンに登るにしたって体力のない面子はどうなるんですか!!!!」
太一「そ、それは…」
ヤマト「ほらみろ」
大輔「最後に丈さん。丈さんは今回巻き込まれただけだから厳しいことは言わない。まず、丈さんは周りをよく見て、相手に流されたりしないでよく考えて、自分の意志をしっかり持って発言してくれ。それから上級生は丈さんだけじゃなくて空さんやアインス達もいるんだから、1人で背負い込まないこと。俺が丈さんに言いたいのはそんだけ…さて」
大輔の視線は再び太一とヤマトに。
ブイモン[なあ、まだ終わんないのか説教?]
横になりながら呆れたように見るブイモン。
ロップモン[だよねえ、もう1時間過ぎたんじゃない?]
アインス「誰かが止めなければずっと説教時間になっているだろうな」
太一「全く説教が終わんねえ!!もう1時間過ぎたんじゃねえのか!!?(小声)」
ヤマト「大輔も1時間以上正座しているのに平然と…化け物か!!!?(小声)」
太一「お前のせいだぞヤマト!!(小声)」
ヤマト「何だと!!?お前のせいだろ!!(小声)」
大輔「おい」
太一「はあ!!?お前が突っかかってきたせいでこうなったんだろ!!!!(小声)」
大輔「…おい」
ヤマト「お前がちゃんと考えていれば俺だって…(小声)」
大輔「………人の話を聞けこの馬鹿共ーーーーーーーっ!!!!!!!!」
ズビシィッ!!!!
太一、ヤマト「「ゔっ」」
太一とヤマトの脳天に大輔の強烈なチョップが叩き込まれた。
アインス「…何をしているんだあいつらは……(汗)」
空「似たり寄ったりね……(汗)」
アインスと空が明日も早いからと言わなければ、多分朝まで説教が長引いていただろうと、後にブイモン達は語るのだった。
丈「……周りや相手に流されたりしないで、自分の意志をしっかり持って…か…」
今までの自分を振り返る。
今までの自分は、悲観的になりすぎて周りの空気を乱したり、優柔不断すぎて、逆に状況を悪化させてしまった。
丈「よし…僕がムゲンマウンテンの頂上に行って調べてくれば、島の全体を知ることが出来るし、みんなを危ない目に遭わせなくて済むはずだ」
これは丈が周りや相手に流されずに自分の意志で考えたことであった。
書き置きをして丈はムゲンマウンテンに向かう。
大輔「………」
アインス「いいのか大輔?城戸を行かせて?」
大輔「大丈夫、ゴマモンがついてったしな」
口では何だかんだ言ってもゴマモンはパートナーの丈を大切に思っている。
何があっても丈を守ってくれるはずだ。
大輔「俺達も寝ようか」
アインス「ああ」
寝床に戻る2人。
翌朝、空に起こされた大輔達はムゲンマウンテンに向かうと、ゴマモンが進化したイッカクモンがいたのだった。
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