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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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第13話 天下無双と銀河一

并州のとある村の近くの祠に出没する化け物をなんとかして欲しいと頼まれたバサラ。
夜になるまで村人に休むといいと言われ、夜まで体を休め、祠へ向かう。
その横に銀髪の少女とんとんが歩いている。
この少女に村でバサラの歌を聴かせ、バサラが祠の化け物に歌を聴かせると言うと自分も着いて行くと言い出し、今に至る。
バサラととんとんは祠の入口にある岩の前まで来た。
「これが一晩で置かれていた岩ですね・・・」
その岩は184cmのバサラよりも高く、およそ2mほどの高さがある。
大の大人3人がかりでも持ち上げられないだろう大きさである。
その岩には食物を捧げることと掘られている文がある。
そんな岩にバサラは
「これを置いたのか・・・」
と何やら呆けた顔をしながら呟いた。
そして、
「へへ、こいつは聴かせがいがあるじゃねえか!」
と言い、祠に続く階段を登り始める。
それに慌てて続くとんとん。
そしてそんなバサラに
(バサラさんって、本当に歌を聴かせることしか頭に無いんだなあ・・・)
と心の中で呟く。
それは感心半分、呆れ半分であった。


階段を上がり、少し歩くと祠に着いた。
祠は所々寂れており、年季を感じさせる。
バサラは祠を少し見た後に周りを見渡し、
「いねえなあ、何処に居んだ?」
と言った。
それを聞き、とんとんも周りを見渡すが、化け物と呼べるような生き物がいる気配が無い。
どういうことだろうと思うとバサラは
「どっかに行ってんならここに居りゃ帰ってくんだろ。」
と言い、祠の階段に座る。
だが、
「なんだ。もう、帰ってきたみてえだな。」
「え?」
バサラの言葉にとんとんは気の抜けた返事を返すが、近くの繁みからガサガサと音が鳴る。
そこから姿を現したのは、化け物、ではなく人間だった。
正確には虎のような姿をした獣の被り物を被り、手には戟だろうか、武器が握られている。
そして、被り物ばかりが目立つが体格や服装から察するに
女性のようである。
「・・・・・・」
その女性は無言でこちらを見ながら武器を向ける。
「・・・お前ら、何しに来た?・・・」
そう、バサラたちに静かに聞く少女。
ただ、ただそれだけである。
それだけなのに、この、この息苦しさは、なんだ?
この、女性から放たれている威圧感は、なんだ?
とんとんは目の前の女性に対し、そう感じた。
違う。
この目の前の女性ほど、自分たちとはかけ離れている存在は見たことが無い。
それは、西涼という北方の騎馬民族と戦い、鍛えられてきた自分ですら、だ。
だが、同時に、この人ほど純粋な人は見たことが無い。
とんとんは目の前の女性にそんな印象を受けた。
一方でバサラは、
「何しに来たか知りたいのか?」
と笑顔で言った。
「そいつを知りたけりゃあ」
言葉を紡ぎながら立ちあがり、女性に向きながらギターを構える。
女性はバサラが何かするつもりなのを悟り、警戒する。
だが、危害を加えるつもりが無いと悟り、警戒を解く。
「おれの歌を聴け〜!!いくぜ!!POWER TO THE DREAM!!おれの熱いハート、叩きつけてやるぜ!!」
曲名を叫び、ギターの重低音が周囲に響く。
そして、バサラの歌声が響く。




恋が祠の近くに岩を置いたのは、恋と『みんな』のご飯を貰うため。
そうすれば、恋もみんなもお腹いっぱいになる。
だからやった。
悪いことだとは分かってた。
でも、そうするしか無かった。
岩を置いてからしばらくすると、たまにここに来るやつが居る。
それは、恋を倒すため。
でも、みんな、弱かった。
だから、恋は負けなかった。
どんなやつが来ても負ける気がしなかった。
だけど、こいつは違う。
恋が帰ってくるとここにいた。
また、恋を倒すつもりなのか。
見た限りじゃ、こいつらじゃ、恋には勝てない。
そう思いながら、武器を向けて聞いた。
「・・・お前ら、何しに来た?・・・」
だけど、こいつは、笑いながら、恋の方を向きながら、
「何しに来たか知りたいのか?」
と言った。
そして、
「そいつを知りたけりゃあ」
そい言いながら、何かを構えていた。
何かするつもりかと思って警戒したけど、殺気を感じなかったから警戒を解いた。
そして
「おれの歌を聴け〜!!いくぜ!!POWER TO THE DREAM!!おれの熱いハート、叩きつけてやるぜ!!」
そう叫びながら、歌い出した。
なんだろう?こいつは?
今までのやつらは恋を倒そうと襲いかかってくるやつらばかりだった。
中には、恋を見て、気持ち悪い視線を向けるやつもいた。
それはみんな男だった。
だけど、みんな返り討ちにした。
弱いから殺さないようにするのが大変だった。
その中でも、気持ち悪い視線を送る男たちは、少し痛めつけるとすぐに逃げるやつばかりだった。
だから、男は弱くて、嫌なやつばかりだと思ってた。
だけど、こいつはなんだろう?
恋に襲いかかるわけでも、気持ち悪い視線を送ることも無い。
ただ、歌っている。
それだけだ。
だけど、こいつの歌を聴くと、胸が熱くなってくる。
そして、力が、湧いてくる、こいつの歌の言葉は恋には分からないけど、そんな感じがする。
だから、分かる。
こいつは、今まで見てきた男たちとは、違う。
それだけは分かる。
それに、こんなに、こんなに楽しそうに、こんな笑顔で歌うやつが悪いやつなわけが無い。
こいつの歌を聴いていたい。
こいつと歌いたい。
そう思うと同時にこいつの歌を一緒に歌っていた。


「へへ、おれの歌を歌うとは、上等じゃねえか!!」
女性がバサラさんの歌を聴いていたと思ったら、一緒に歌い出した。
それを見ていたバサラさんは、さらに気持ちを歌に乗せるかのように歌う。
この女性、一見無表情だから、歌いだすとは思わなかった。
というよりも喋ることすらあまり無いような人だと、そんな印象だった。
だから、バサラさんに、バサラさんの歌声に、そして情熱に改めて尊敬の念を抱く。
同時にバサラさんは、一体何者なんだろうと、思った。
そこまで思って、最近この漢に広がる噂を思い出した。
まさか、バサラさん、あなたは・・・



バサラと女性の歌が終わり、ギターの音も止める。
周囲が静かになり、バサラが女性に
「お前の歌、良かったぜ。」
と声をかける。
そんなバサラに、女性が
「恋・・・」
と言う。
「ん?」
「恋でいい。恋は呂布、字は奉先。恋は真名。」
「いいのかい?」
「いい。お前の名前は?」
「熱気バサラ。おれに真名は無えから、好きに呼びな。」
「分かった、バサラ。」
「ああ、恋。」


今、ここに飛将軍と呼ばれ、天下無双と謳われた中華最強の女性と銀河を遊泳するクジラ、生命力を奪うプロトデビルンと呼ばれる生物に歌い続け、遂には心を通わせた人並み外れた情熱を持つ銀河最高の歌手である男が邂逅した。
この出会いが後にどのような影響を与えるのかは、まだ誰も分からない。 
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