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ソードアート・オンライン -Need For Bullet-

作者:鋼鉄の翼
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-Bullet4-黒い影

  「B隊は前へ! 追い詰めるよ!」
『敵!攻撃きます!』
「総員対ショック用意!」
  指示と銃声が鳴り響く。本日も空は赤く。絶好の銃撃戦日和である。
  「たらこさん。B隊の掩護をお願いします。」
『了解。キャプテン。』
  トッププレイヤーの一人である薄塩たらこさんも加わり、今日も絶好調だ。
『姉御!硬いのが出てきたっす!掩護お願いします!』
「了解!待ってな〜!」
  PTRDが火を吹き、2足歩行ロボットのような敵の胴に風穴が開く。
 現在我がサジタリウスはダンジョンボスモンスターを攻略中である。殲滅と言ったほうが正しいかもしれないけど……
  「敵HP残り少ないよ!撃ちまくれ!!」
  サブマシンガン、アサルトライフル、狙撃銃、軽機関銃からロケット砲、グレネードランチャーまでもが一斉に火を吹きボスに向けて牙を向く。
 オーバーキルの火力を浴びたボスは、爆炎の晴れたあとには影も形もなかった。
  「オールミッションズコンプリート。よーしみんな。帰るよ〜!」
『A隊了解!』
『B隊了解!』
『C隊了解。さー打ち上げだ。』
「総員警戒緩めない!総員乗車次第いつもの店に集合!」
  笑い声とエンジン音が荒野に木霊する。 我が海賊団(サジタリウス)は今日も絶好調である。
 
 
  「えー‥‥今日もお疲れ様でした〜!実際のお酒じゃないけどじゃんじゃん飲みましょー!」
「「「おおっ!」」」
 場所は変わってグロッケン市のとある酒場。店内は貸切状態だ。
「では本日のラストアタック賞!銃士Xことティア!乾杯の音頭をお願いします!」
「わ、私?! 仕方ないわね……じゃあ‥‥本日も勝利を祝して!乾杯!」
  「「「乾杯!」」」
 カチンとグラスをぶつける音が店のそこらで鳴り響いた。
 
「ちょっとミウラ。ああいう事するなら先に言いなさいよ! あまり得意じゃないのよ!」
 プンスカ怒りながらボクに詰め寄ってきた銀髪美少女は銃士X(マスケティアイクス)ちゃんである。ボクはティアと呼んでいる。メインアームはM14EBR。そしてその正体はボクのクラスメイトの土屋瀬奈ちゃんだったりする。ちなみに最近の悩みは「中二病感あふれるこの名前を変えたい」らしい。
  「ごめんごめん。うっかり言うの忘れてた〜。」
「嘘つけ。わざとでしょ!嘘をつくのはこの口か!」
「まあまあ。ごめんって〜!これでも飲んで飲んで〜」
 頬を引っ張ろうとするティアの手をくぐり抜け、彼女の手にグラスを押し付ける。
  「ぷはぁ‥‥やっぱ一仕事した後のこれは美味い!」
「まったく。またオジサン化してるわよ。ミウラ。」
「聞こえなーい。 さーてたらこさんにそろそろ挨拶してもらわないと……」

 呆れたようなため息をついているティアは放っていおいて‥‥たらこさんを探す。
 彼はすぐに見つかった。 ひときわ大きなグループの中心に居たからだ。
「たらこさん。」
「おう。姉御さん。」
「た、たらこさんまでその呼び方っ?! ま、まあいいや。あの、今日の総評みたいの貰えたらなって。」
「俺? 俺みたいのが言ってもいいのか?」
「はい。たらこさんから見たみんなの動きを知りたいんです!」
 周りからの視線もボクと同意権のようだった。
「そう言うことなら。わかった。」
「ありがとうございます!」

 たらこさんをビールケースで作った特設のステージへ案内する。
 
「あーどうも。 えー総評? 総評と言ってもまあざっとした感じですが……」
 壇上に上がったたらこさんは各隊と、そして個人の動き、戦術へ意見を述べていった。 戦闘の中で味方の動きをほぼ全て見ている。 これが彼の強さの秘訣なのだろうか。

「まあというわけで! みんな力は十分にある! BoB優勝は誰が勝ち取っても不思議じゃない!だから…おいお前なんの冗談だ? 」
 人混みが割れる。そこには黒いギリースーツの人物が立っていた。
「誰……? うちにあんなのいたっけ‥‥全くバカばっかりなんだから‥‥」
 どこのバカか知らないけど流石に失礼だろう‥‥ここはリーダーらしくぶん殴ってあげなくては。
「ねぇ君。何やって」

 パンッ! と乾いた銃声が静まり返った酒場に響く。たらこさんの左胸に赤い着弾エフェクトが弾けるが、ここは街中の酒場。つまり『圏内』で、ノックバックこそ受けるもののダメージを与える事なんてできない。一切無意味な行動のはずだった。
 普通ならば何事も起こらない馬鹿げた挑発行為

「おいお前いい加減にっ‥‥がっ……あっ‥‥」
 しかし普通じゃなかった。たらこ氏が苦しみだす。胸を抑えまるで本当に『死にそう』な様子で膝をつく。ありえない。たとえバグでダメージが入ったとしてもそれはゲーム上の『アバター』のHPバーが減るのであって現実の人体に影響を与える事はありえないのだ。 誰もが動けなかった。そして、彼は床に倒れると同時に消えた。
Line disconnect(回線切断)
 その表示が彼の居たところに一瞬瞬いて、そして消える。
「うそ……そんな‥‥馬鹿なことって……」

 黒い人物はまだ硝煙が揺れる黒い銃口を高々とかざし叫んだ。

「…これが本当の力、本当の強さだ! 愚か者どもよ、この名を恐怖とともに刻め!」


「俺とこの銃の名は『死銃』……『デス・ガン』だ!!」
死銃(デス・ガン)』と名乗ったそいつは左手でメニューを操作しながら小さく、しかしはっきりとこう言った。

「次はお前を殺す……」

 思わずぬいた銃口の先にすでにそいつはいなかった。
 はっきりと感じた明確な殺意。虚空に向けられたUNICAの銃口は、ほんの少し震えていた。

「ミウラ。大丈夫だ。落ち着け。」
虚空へ銃を向け固まっていたボクの手を大きくて温かい手が包み込む。
「っ‥‥先輩‥‥先輩‥‥!」
「大丈夫。大丈夫だ。あんなのただのドッキリだ。気にする事はない。」
ボクを包み込んだ大きな手は、ボクの震えが収まるまで優しく背中を撫でていた。

「みんなすまん。今日は解散する。あの黒フードはよくわかんねぇが全員一応警戒しておけ。たらこのドッキリだったらC4をたらふくプレゼントしてやる事にする。いいか。」
「了解」

「まあ姉御もあんなあんなっちまったしなぁ‥‥」
「仕方ねぇよ。よくわかんぇがありゃビビるぜ。ほんとドッキリだったら焼きたらこにしてやろうぜ。」


「マスケティア。お前ももう今日は落ちろ。明日も学校だろ?」
「そうだけど‥‥ミウラ。大丈夫?」
 心配そうに背中を撫でながら顔をのぞき込んでくるティア。ダメだ。あんなので心配かけちゃダメだ。
「うん。大丈夫だよ。ちょっとびっくりしただけ。ほら、ボクちょっとビビリだから。」
 だから心配をかけないように笑顔でそう応える。
「……そう。ならいいけど‥‥」

「ごめん。ボクもう落ちるね。お風呂入ってさっぱりして寝ることにする!」
「ああ。それがいい。」
「うん。おやすみ。」
「おやすみ〜」
出来る限りの笑顔を保ちながらボクはログアウトボタンを押した。



「はぁ……ダメだなぁ‥‥なんであんなので……はぁ‥‥」
 ベットサイドのテーブルに置いているエアガンを引き寄せ、抱きしめる。ヒンヤリとした金属の冷たさがボクの心も落ち着かせてくれる。この金属の感触はボクに落ち着きをもたらしてくれる。
 まったく変なドッキリに引っかかったもんだ。死銃。奴はそう名乗った。その名前は一部の間で有名だ。奴が撃ったのはたらこさんで初めてじゃない。少し前にトップランカーのゼクシードという男も銃撃されている。まあそれは直接じゃないらしいがそれ以来ゼクシードはGGOに姿を見せていない。巷じゃ引退ドッキリだとか騒がれていて死銃はそのための道化だと言われている。しかし、本当に奴がゼクシードを殺したと考える人も少なくない。
 そう、今日出会った奴の目は道化の目じゃなかった。ガスマスクの奥に見えた目は確かに狂った狂人の目をしていた。奴は一体何者なんだろうか‥‥本当にドッキリだったのだろうか‥‥本当に人を殺せるのだとしたら……どうやって……


「ああだめだ。だめだ。こんなこと考えたってしかたないじゃん! 全くもうせっかく楽しかったのに台無しだよ! 覚えてろよ!次現れたら絶対にぶっ飛ばしてやる。 」 
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