戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百十七話 九州騒乱その四
「その大坂城だが」
「はい、あの城ですね」
「あの城はですね」
「相当に大きな城ですね」
「安土城と並ぶまでに」
「うむ、あの城に江戸城も凄い」
関東のあの城もというのだ。
「一度関東に行った時に見たが」
「その江戸城もですね」
「素晴らしい城とのことですね」
「大きく見事な天守も持ち」
「守りの固い」
「ここに姫路城や名古屋城もある」
この二つの城もというのだ。
「守りは万全ではあるしじゃ」
「こうした時にも役に立つ」
「はい、城は」
「戦の足掛かりとして」
「兵糧等を置き戦を見る」
「そうした場所にもなりますな」
「兄上は考えておられる、大坂から瀬戸内で兵糧等を送る」
船を使ってというのだ。
「忙しくなるわ」
「して兵の数は」
「九州に向かう兵は」
「三十万は超える」
それだけの数になるというのだ。
「そして将帥もじゃ」
「天下の名将が揃う」
「そうなりますな」
「かつてないまでのものになる」
「ではその戦を」
「勘十郎様が支えられますな」
「そうなる、やりがいのある仕事じゃ」
信行は口元を綻ばさせてこうも言った。
「わしは戦場で働くことは苦手じゃが」
「はい、こうした仕事はですな」
「得意ですな」
「昔からな。政じゃな」
信行の得意なことはというのだ。
「出来る、だからこちらでな」
「上様をお助けして」
「そうしてですな」
「天下のお役に立たれるのですな」
「これからも」
「そのつもりじゃ、では大坂に行く」
こう言ってだった、信行は実際に一時都を後にして大坂城に入った。そしてその巨大な城を見て唸って言った。
「全く以て凄い城じゃ」
「まことにそうですな」
共にいる末弟の長益が応えた。
「いや、恐ろしい城です」
「この城は安土と並ぶ織田家の城」
「はい、天下を治める為の」
「東国には江戸城があるが」
まずはだった。
「この大坂城もな」
「恐ろしい城です、いや恐ろしいのは」
それはというと。
「この城の縄張りをし普請奉行をした猿ですな」
「うむ、猿はな」
「こうした城の普請にも才がありますな」
「色々と才のある奴じゃ」
「そうですな」
全く以てというのだ。
「いや、兄上も恐ろしい者を見出されました」
「天下の才じゃな」
信行は羽柴をこうまで評した。
「若しかしたら天下人にもなれるやもな」
「兄上がおられなければ」
「そうやもな」
こうまで言うのだった。
「あ奴は」
「ううむ、猿ならば」
「織田家の家臣でよかったわ」
「敵となれば恐ろしい者なのは確かですな」
「だからじゃ」
それでというのだ。
ページ上へ戻る