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戦国異伝

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第二百十七話 九州騒乱その二

「耳川の戦で大敗し」
「昔日の勢いはないでおじゃるか」
「双方共でおじゃる」
「島津には敵わないでおじゃるか」
「そうなったでおじゃる」
 それが今の九州だというのだ。
「最早島津の九州統一は時間の問題」
「そして九州を一つにしてから」
「そうしてでおじゃるな」
「右大臣殿にでおじゃる」 
 その信長にだというのだ。
「それを認めて頂くと」
「島津殿は天下を目指してはおられぬと」
「それは確かでおじゃるが」
 だがそれでもだというのだ。
「九州はでおじゃる」
「完全に手中に収めたい」
「そう考えているでおじゃる」
「しかしそれは」
 山科はここまで聞いて述べた。
「右大臣殿にとっては」
「望ましくないでおじゃる」
「島津家はあくまで」
「薩摩と大隅だけ」
「二国でおじゃるな」
 島津がこれまで守護に任じられていただ、この二国だけだというのだ。
「まさに」
「そうでおじゃる、それ以上は」
「既に九州の南を抑えていようとも」
「この二国以外が」
「渡せぬでおじゃるな」
「そうでおじゃる、後は」
 近衛はこのことについても言った。
「琉球でおじゃるが」
「あの薩摩よりさらに南の」
「あの国は右大臣殿が直々にでおじゃる」
「織田家がでおじゃるな」
「そうでおじゃる、その貿易を一手に持ち」
「担われるでおじゃるか」
「その様でおじゃる、奄美等も直轄にされるとか」
 こう山科に話すのだった。
「その様に聞いているでおじゃる」
「何故奄美まで、でおじゃるか」
「何でも砂糖を手に入れたいとか」
「何と、砂糖を」
「左様でおじゃる」
「何かとお考えでおじゃるな」
 山科は近衛が話すことを聞いて唸って言った。
「右大臣殿は」
「全くでおじゃるな、流石は天下人」
「天下を大きく変えられる」
 まさにというのだ。
「そうした方でおじゃるな」
「全くでおじゃるな」
「では麿達は」
 朝廷の者達はというと。
「その右大臣殿の天下を支えるでおじゃる」
「公家の立場から」
「そうしようでおじゃる」
 こうしたことを話していた、都の公家達は信長が築き上げる天下泰平を心待ちにしていた。そうしてだった。
 その中でだ、一人だけはだった。
 高田についてだ、都の者達も言っていた。
「あの方だけは」
「どうにもじゃな」
「何かな」
「いつも暗い顔をされて」
「織田様の天下にもな」
「あまりな」
「楽しまれていないのか」
 信長の催しにも出ない、それは一度たりともだ。 
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