ソードアート・オンライン 神速の人狼
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圏内事件 ー事件ー
前書き
超お久しぶりです。
一体前回の投稿からどれだけの月日が経った事やら……(ガクブル
なんとか続きを書くことが出来たのでリハビリがてら投稿を……
第57層の主街区『マーテン』にあるキリトオススメのレストランまでユーリ、アスナ、キリトの3人は足を運んでいた。
「なんていうか、今日は……ありがと」
「「……えっ?!」」
席に着くや否や、ポソリとアスナの口から普段のイメージからは意外な一言に、驚き、思わずキリトと顔を見合わせる。
「ありがとうって言ったのよ。ガードしてくれて」
「あ……いや、ど、どういたしまして」
二人のリアクションに気分を害したのか、アスナは口元を尖らせて言うといつもは攻略会議の場であーだこーだと言い合っているキリトはいつもと違う態度に動揺したのか、しどろもどろになりつつも返答をした。
運ばれてきた食前酒に口をつけつつ、2人のやりとりを見ているとアスナから昼間の事を振られた。
「そういえば、君も攻略じゃなくて、お昼寝……?」
「そ、……まぁ、こいつに邪魔されたけどね。なぁ、キリト?」
「うぐっ……」
アスナがジトッと半目で睨んでくる。大方、攻略をサボった事に少し不満を抱いたのだろうか。
攻略組を名乗るプレイヤーにとって、迷宮区の攻略は義務と言っても過言ではないが少しくらい休みがあってもいいと思う。
もっともキリトよりソフトな対応をしてくれるあたり、日頃からキリトのように素行不良ではないからだろう。
話を強引にだが、キリトへと繋げると案の定、アスナはキリトへと視線攻撃を開始する。
「君、ユーリ君に何したのよ……?」
「べ、別に俺は何もしてないぞ?!」
びくりと肩を震わせて動揺するキリトに対し、アスナから「本当なの?」と真偽を問う質問が飛んでくる。
「まぁ、ナニ、かされたな……。」
「え……⁉︎」
「お、おい!誤解を招くような言い方はやめろって⁉︎」
早速、キリトを見る眼が汚物を見るようなものへと変化する。
キリトがアスナに睨まれ、冷や汗を流していると前菜のサラダが運ばれて来て、これ幸いとキリトが話題の転換を試みる。
「な、なぁ。栄養とかないのになんで野菜なんか食べるんだろうな?」
「えー、美味しいじゃない」
アスナもアスナでキリトから目の前の前菜へと意識を向ける。パラパラと謎スパイスをサラダにふりかけ、レタスっぽい何かを上品に咀嚼してからアスナが反論する。
「まぁ、……不味いとは言わないけど、せめてマヨネーズとかあればなあー」
マヨネーズか。確かまだ作ってないよな、などと思考の片隅で考えているとアスナと目線が合う。
「えーと、ユーリ君って色々調味料作ってたよね?その中にマヨネーズとかあったりするの?」
「いや、その辺はまだ、かな。最近のは、ケチャップっぽいのとか、ソース擬きかな?」
「あ、……アレってそれ使ったのか」
恐らくキリトの言うアレとは今朝渡したバーガーに使ったソースの事だろうか、などと推測しながら、フォークで刺したサラダを口の中へと運ぶ。シャキッとした葉物の食感と瑞々しさ、そして粉チーズ風の味付けの相性がよくて頬が少し緩む。
二人の会話を聞き流して暫し前菜を楽しんでいるとあ!と二人同時に呟くと顔を見合わせる。
「「醤油!!」」
「は?」
会話は調味料議論にまで発展したらしく、日本人が愛して止まない調味料を叫ぶ事になり、事前に照らし合わせたかのようなタイミングぴったりな二人に思わず吹き出しそうになる。
ーーだが、
「…………ィ、イャァァァァァァァァ‼︎」
「「「ーーーー⁉︎」」
聞こえてきた恐怖に満ちた悲鳴により楽しい食事の時間は終わりを迎えた。
◆◇◆
「今のって……!」
「店の外だわ!」
いち早く反応したアスナは表情を険しくさせると、椅子を慌ただしく引き、出口へと走っていく。自分も慌てて前を行く白と黒の背中を追う。
二人の後を追い、悲鳴の発生源であろう円形広場へと飛び込んだ。しかし、そこで信じられないものを目の当たりにする事となった。
広場の一角には、石造りの建物がそびえている。そして、二階の窓から一本のロープが垂れ、その先端には男性のプレイヤーが吊るされていた。
吊るされたフルプレート・アーマーを全身を包み、大型のヘルメットを被った男の首元にはロープががっちりと食い込み、苦しそうに喘いでいる。だがしかし、ここは仮想世界であり、窒息なんてありえない。
広場に集まったプレイヤー達を恐怖に陥れているのはそれではない。
恐怖の根源にあるのは男の胸元を深々と貫いている漆黒の短槍にある。そして、その傷口からは血のような紅いエフェクト光が明滅を繰り返す。
つまり、今この瞬間も男のHPにダメージが生じている事となる。
「早く抜け‼︎」
驚愕から覚めたキリトが叫ぶ。その声に従い、男の両手がのろのろと動き槍を抜こうとするが、逆棘の生えたその槍は微動だにしない。
「くっ……」
どうするべきなのか、思わず苦悶の声が漏れる。
普通、『圏内』ならHPが減る事はまずない。それはここアインクラッドにおける絶対的なルールであるから。だが、男の胸元から溢れるように明滅を繰り返すエフェクト光が不安に落とし入れる。
「……なるようになれ!」
動揺して動かない体に喝をいれると石畳の床を駆ける。
「キリト!受け止めろ!
「っ……!わかった!」
すぐに男が吊るされている真下まで辿りつき、速度をそのままに思い切り跳躍する。
届くかどうかは五分。うまくいく事を願い、腰に吊るされた刀の柄へと手をかけ、一閃ーー
「よしっ!…………なっ!?」
「ーーーー……‼︎」
刀がロープを切断し喜びを覚えたのも束の間。男を首吊りかは解放した刹那、大きく目を見開き、宙を凝視した男は掠れた声を発する。
「嘘、だろ……⁉︎」
ガラスが砕けるような破砕音とともに男の仮想体が青い閃光とともに消滅した。
「……くそっ!」
なんとか無事に着地すると、言い表せない感情をぶつけるが如く壁に拳を叩きつける。
救えなかった……
後悔の念が渦巻き、脱力する。体に力が入らずに、教会の壁へと凭れかかる。
野次馬達の悲鳴に混じって、アスナやキリトの指示する声が聞こえるがどうも体が動く気がしない。
気だるさを感じる体に鞭打って、周りで慌ただしく聞き込みや調査を行っていたキリト達の下へと合流する。結果を聞いてみたが、案の定、首は横に振られる。
「隠れてる奴は疎か、ウィナー表示まで出ないなんて……」
ありえない、とアスナが呟く。
本来、"圏内"においてプレイヤーは一部の例外を除き、ダメージを受ける事は絶対にない。
そして、その唯一の例外が『決闘』だ。
初撃決着、HP半損で決着、HPの全損と3つの種類があるがどれも必ずデュエルの終了後には、プレイヤーの名前、試合時間が書かれたウィナー表示と呼ばれる窓が出現する。
いずれにせよ、上記の二つーー『圏内でのダメージ無効』と『ウィナー表示』ーー、はSAOでの絶対的なルールと言っても過言ではない。
だが、その二つが破られたとしたら、
「システムの隙を突いた新たな『圏内PK』の可能性、か……」
「その可能性が高いでしょうね。いづれにせよ、このまま放置にはできないわね。早く仕組みを突き止めて対抗手段なりを公表しないと大変な事になるわ」
「あぁ、今回ばかりは無条件で同意するよ」
ボス攻略会議など、いつもは対立している事が多いキリトとアスナだが事態が深刻なため、珍しく意見が一致する。
そして、アスナはこちらへと視線を向け、一言
「もちろん、ユーリ君にも協力してもらいますからね」
「……げっ」
またしてもこの二人と行動する羽目になり、内心面倒だと思ったことが看破されたのかピシャリと言い放つアスナ
「言っとくけど、お昼寝の時間はありませんからね!」
「……はい」
流石に「寝てたのはどっちだよ……」などと火に油を注ぐような真似はしない。むしろ、できない。
こうして、探偵トリオが結成されたのだった。
◆◇◆
第一発見者への事情聴取やら、凶器である短槍の解析などを終え、第22層の町、コラルの村外れにある我が家についたのは既に日が暮れてからだった。
すでにシィは迷宮区の探索を終え、帰ってきているらしく窓から漏れる灯りは二人に振り回され、疲労困憊した心にどこか安心感を与えてくれる。
「おかえり〜」
「ん、ただい……」
ただいま、と言い終わる前にお気に入りのソファへと倒れこむ。
自分が思っていたよりも疲れが溜まっていたらしい。腰から垂れる尻尾も力無さげに垂れてしまっている。
ソファへと突っ伏したまま動かないでいるとすぐ隣にシィが腰掛け、サラサラと指で髪の毛を梳いてくる。心地よさにウトウトとしかけているとシィから発せられた言葉に驚愕させられる。
「なんか、上層の方で公開処刑があったんだって?」
「……公開処刑?」
なにやら物騒なワードにソファに突っ伏した状態から顔だけを上げ、聞き返す。
「首吊りされた男の人が、槍に心臓を貫かれて死んだって聞いたけど……違った?」
「どこの串刺し公だよ……。とりあえず、公開処刑っていうか、圏内PKな?」
考えるまでもなく、口伝によって人から人へと噂が伝わっていった際に事実と誤差が生まれてしまったらしい。
なるほど、どうやら圏内PKは下層では公開処刑という認識になっているらしい。そして、早めに手を打たないと面倒な事になりそうだな、と頭の片隅に留めておく。
「ん……まぁ、詳しい話は夕食の後にしますか」
「謎解きはディナーの後でってやつだね!」
シィは、それは違う、という俺の否定の言葉を聞く前にダイニングの方へと駆けていき、嬉々としながら準備を取り掛かっていた。
奇怪な事件があったのによくそんなに喜べるなとシィの楽観的な性格を羨ましく思いつつ、疲れた体に鞭打ち、夕食の準備へと取り掛かる事にした。
そして、夕食後。
殺人事件の概要を話しながら、食後のティータイムと洒落込んでいた。
「ダメージを受けるはずのない圏内で人がね〜……」
神妙そうに傾きつつ食後の紅茶を啜り、紳士ぶった態度をとるシィだが、残念なオーラが漂ってしまっており惜しい。
食事の後、話した事と言えば今日の調査で分かった事、主に被害者の名前や人物関係、そして、第一発見者である中層の女性プレイヤー"ヨルコ"さんの事。そして、男の心の臓を貫き、その命まで奪った元凶の逆棘の短槍の情報について。
ざっとこんな感じなのだが、シィが先ず目をつけたのが例の槍だった。
「名称は"ギルティソーン"。罪の荊って訳だけどなんかわかるか……?」
俺が一番信用できるという身も蓋もない理由でキリトに押し付けられた逆棘の槍をストレージから取り出し、テーブルの上に置く。
何か名案を思いついてくれるんじゃないか?と淡い期待と共に目の前で、逆棘の槍を弄んでいるシィを見つめていると口元を歪めた。
「……悪趣味」
「は?」
思っても見ない、と言うか完全に的外れな感想に声が引き攣る。
「だってさ、普通槍っていう武器は突きとか薙ぎ払いが主な攻撃手段なんだけどそこにこんな物付けたら、邪魔でしょ。まぁ、ぶっ刺して引き抜く時に追加ダメは出るんだけ微々たるものだし?それに摩擦力云々のせいで次のモーションが遅くなるから、私として歓迎しないかなー。それに、モンスターだと恐怖心とかないからこういうのって効果ないんだよねー」
「まぁ、そう考えるよなー」
腕を組みつつ、今朝キリアスコンビとともに調べた事を含め整理していく。
彼女の言う通り、対Mob戦において貫通継続ダメージはほとんど意味をなさない。
そもそも、貫通継続ダメージは武器が身体に突き刺さっている状態で発生するものであり、与えられるダメージも極々微量だし、モンスターだとすぐに引き抜かれポイっだ。
武器に返しをつければ、抜き辛くなるがデメリットとして武器の性能が落ちたり、扱うのに必要な筋力値が増えたりといい事はない。
だからこそ、メインアームを逆棘が生えたような特殊仕様なものにする輩は相当な下手物好きか、何か拘りがある奴くらいだ。
「……はぁ、明日からの捜査に期待か」
シィからも事件のヒントになりそうな案も得られず、落胆のため息を吐く。
そして、重要証拠に万が一の事態がないためにストレージにしまおうと手を伸ばした時、屋外に多数のプレイヤーの反応が《索敵》に引っかかる。
「こんな夜中にお客さん……?」
「さぁ?けど、こんな大人数で訪問なんてタダ事じゃないだろ……」
人数にして、五、六人。ちょうど1パーティー分の人数が玄関扉を囲むようにして、位置取っていた。それから間もなくして、コンコンとノック音が聞こえてくる。
警戒心を強めながら、扉を開けると、銀色に青の刺繍がされた顔以外を鎧で覆ったプレイヤーがすぐ目の前に立っていた為に思わずギョッとする。
「夜分遅くにすまないな」
「……シュミット」
シュミットと呼ばれた青年は恭しく一礼をし、非礼を詫びた。一応、良識はあるようだ。
「で、聖竜連合の人がどうしたんですか……」
「単刀直入に言おう。圏内PKに使われた武器をこちらに渡してもらいたい」
「はぁ〜〜?」
戸口に立たせたまま要件を問へば、武器をタダで寄越せと言われ、思わず声が裏返る。明らかな非マナー行為に怒りの感情が露見しそうになるが、ここで言い返せば面倒事ーー渡すまで居座られそうーーになりそうなので、グッと堪え、片手を振り、アイテムストレージを開く。
先ほど収納したばかりの黒い槍を取り出す……のだが、ふと疑問がよぎり、操作の手が止まる。
「そういえば……、なんで俺が持ってるって知ってるんだ?」
アスナとキリトと共に三人で行動していた為、例の槍を誰が持っているかなど特定はできないはず、なのだが現にシュミットは開口一番、俺が持っていることを当ててきた。
すでに、他二人を当たっているのなら話は別なのだが……
(てか、なんで俺らのホームが知られてるんだ)
頻繁に来客が来ても面倒だ、という理由でこの家の場所は極一部、親しい人物にしか教えていない。もちろん、シュミット含め聖竜連合の連中とはボス戦くらいの付き合いぐらいしかないので教えているわけがない。
ということは、どこからか情報が漏れたわけだが、情報屋の『鼠のアルゴ』には口止料を払っている為に先ずない。人のプライベートをペラペラ喋る馬鹿はどいつだと内心憤慨していると、シュミットが口を開く。
「あぁ。それなら、キリトの奴がお前が持っている事と居場所を教えてくれたぞ」
どうやら、馬鹿はキリトだったらしい。
「……あいつ」
「昼寝を邪魔されたばかりか人のプライベートまでペラペラと!」
後で絶対にしばくと心に決める。
復讐方法を頭の片隅で考えつつ、アイテムストレージを探っていると今しがた放り込んだばかりの例の槍を見つけた。
「……ついでに、鑑定の手間を省いてやるよ。名称は《ギルティソーン》、製作者は『グリムロック』だ」
「っ!?」
そう口にした瞬間、シュミットに明確な反応があった。
震える手で槍を受け取ると、掠れた声で礼を言うと足早に帰って行ってしまう。
「……はぁ、帰ったか」
先の団体が索敵範囲外まで離れたのを確認し、ため息とともに肩の力を抜く。ああいった緊迫した雰囲気は精神的な面で結構負担が来るので苦手だ。
重要証拠である槍は持って行かれてしまい、アスナからお小言をもらいそうだが、もうアレから得られる情報はほぼないので大した痛手ではない。だが、それよりも一つヒントらしきものを得られた成果は嬉しい。
「シュミット、絶対何か隠してるね」
「……あぁ」
被害者であるカインズ氏と槍の製作者グリムロック、そして彼の名前を出した時明らかに動揺を見せたシュミット。少しずつだが、人物関係が見えてきた。
捜査初日にしては、なかなかの成果ではないか?と少し嬉しくなってしまう。だけど、今日はもう限界がきたらしく目を開いているのも億劫になってきた。
「んーー、おやすみ……」
フラフラとしながら寝室へと向かい、ベッドに横になるや意識を手放した。
後書き
圏内事件のお話にうちのオリキャラを投入する構成となってます。
そこ、オリ主、ヒロインの影が薄いとか言っちゃダメ!
まあ初見でロジックを見破るみたいな原作ブレイクはしない予定なので(パクリ。ダメ、絶対)
ちなみに自分は感想が貰えると執筆速度が(当社比)二倍になります。続き読みたいなーという方がいらっしゃれば、ぜひ感想をば。
それではノシ
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