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真田十勇士

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巻ノ五 三好清海入道その九

「どれだけの腕か」
「それが楽しみですな」
「さて、どれだけの剣豪か」
「上泉信綱程であれば」
「是非共ですな」
「そうじゃな、岐阜に行くのが楽しみじゃ」
 幸村にしてもというのだ。
「だから進もうぞ、西にな」
「殿、岐阜ですが」 
 清海はここでその岐阜について話した。
「あの地はそれがしもいましたが」
「どうした場所じゃ」
「一言で言うと栄えております」
「織田家の本城だったからのう」
「それだけに見事な城下町でして」
「店も人も多いか」
 幸村はその栄え具合を問うた。
「やはり」
「相当に」
「それに周りの田畑もよいそうじゃな」
「美濃自体が」
「確かにのう、まだ美濃の東しか見ておらぬが」
 その美濃の東でもだったのだ。
「どの村も豊かでな」
「よい田畑でしたな」
「うむ、村の家も大きくてよかった」
「織田信長殿は政が相当よかったですな」
 ここでこう言ったのは由利だった。
「やはり」
「うむ、わしが聞いたところによるとな」
「信長公はですな」
「政にもかなり秀でておられた」
 戦だけでなくというのだ。
「苛烈な方ではあられたが」
「それでもですな」
「民にはよい人であった」
「そうなのですな」
「そうじゃった、税は軽くしかも民の為の政をしておった」
 幸村は己が思う信長を家臣達に話した。
「田畑も堤も橋も整えてな」
「民がよい暮らしを出来る様にしていた」
「左様ですか」
「暴虐の方ではなく」
「民にとってはよき方でしたか」
「そうじゃ、相当な名君じゃった」
 それが織田信長という男だったというのだ。
「あの方はな、信玄公もそうじゃったが」
「信玄公は見事でした」
「立派な方でした」
 穴山と海野が幸村に答えた。
「それがしから見ましても」
「戦だけでなく政もです」
「民の為に常にお心を砕かれ」
「素晴らしい政をしておられました」
「そうじゃったな、そういえば御主達じゃが」
 幸村はその穴山と海野に問うた。
「その名はそれぞれ」
「はい、実は穴山家の者です」
「それがしは海野家の」
 二人もその通りだとだ、幸村に答えた。
「これまでお話していませんでしたが」
「実はです」
「分家のしかもその中でも傍流とはいえ穴山梅雪殿の方です」
「それがしも海野家の末席におりました」
「まあ家の端の者でしたので禄もなく雇われ兵をしておりました」
「忍になり食い扶持を稼いだり山で暮らしていました」
 二人は幸村にそれぞれの身の上も話した。
「そうした次第で」
「家とはです」
「二人共か」
「はい、離れています」
「ご本家もそれがしのことは忘れておるかと」
「左様か、わかった」
 幸村は二人の言葉を聞いて頷いて納得したことを示した、そのうえで言った。
「ではな」
「はい、それでは」
「これからも宜しくお願いします」
「そういうことでな、そして御主は」
 幸村は今度は清海に顔を向けて彼にも問うた。 
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