魔界転生(幕末編)
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第10話 近藤の疑惑
8月の変、芹沢鴨事件、池田屋事件、禁門の変と数々の出来事にからみ活躍してきた新撰組はすでに京に名を馳せていた。
京都守護隊である、会津藩は歯ぎしりをしながらも新撰組を切ることも出来ず、松平容保は局長・近藤勇と副長・土方歳三を呼び寄せ、労を労い酒の席に招待した。
「なぁ、としさん。この後、飲みなおそう。こういうのは堅苦しくてしょうがない」
近藤は会津藩士のねたみの目にさらされているのが好きではなかった。
「あぁ、そうですね。こんなんじゃ酔いも回らない」
土方はクスっと笑った。
美味しくもない酒の席も終わり、近藤と土方は屋台にいた。
夜もかなり更け、屋台しか開いてはいなかったからだ。
「なぁ、トシよ。やっぱり、こういうのがいいなぁー」
近藤はしたたか呑み酔いも回っていた。
「近藤さん、ちょっと飲みすぎですよ?」
土方は豪快に笑う近藤の姿をみて笑った。
「新撰組は京の守護隊。やっと、ここまできたんだなぁー」
今度は涙声が交りだした。
「いや、近藤さん。まだまだこれからです」
土方の横顔には強い決意が現れていた。
近藤はその横顔をまじまじと見つめた。
頼もしさはあるが怖さを近藤は感じていた。何故なら、近藤には疑惑があったからだった。
それは、先の芹沢事件、そして、池田屋事件が頭にこびりついてはなれなかった。
芹沢事件に至っては確かに新撰組最大の危機だった。
当時の新撰組局長であった芹沢の行動は目に余るものだった。
商人からは賄賂を請求し、女を犯し、罪のない人々を切り、暴虐無人で肩で風を切った。
芹沢を排除しなければ新撰組の未来はなかった。
土方の芹沢暗殺に乗っかった。それはいい。
が、特に疑惑が強いのは池田屋事件だった。
当初は会津藩との共闘だった。が、会津を待たずに強行を示唆したのは土方だった。
長州藩の浪士たちが潜伏している場所も特定できない状況であるにも関わらずだ。
が、しかし、近藤隊は池田屋へ土方隊は四国屋へ向かった。
これが一つの疑惑だった。
池田屋には確かにいた。が、自分の隊は少数だった。
自分と沖田がいたとはいえ、多勢に無勢。
やられても仕方がなかった。が、すぐに土方隊がやってきた。
まるで池田屋に敵がいたのを知っていたかのように。
ましてや、事件が解決した後に会津が大量の兵を率いて現れた。
これでは会津の顔が丸つぶれだ。
近藤は疑惑を感じたのはこのことだった。
本当は土方は池田屋に敵が潜伏していたのを知っていた。が、新撰組自体が一気に攻め込めば終わったはずだった。が、会津が到着するのを見計らうように土方隊が到着した。
それはまるでどこかに隠れていて会津を出し抜くための策略だったのではないかと思える程のタイミングだった。もしくは、会津に偽の情報を流して到着を遅らせたのではないかと。
本当は会津の方が出し抜く筈が土方の方が上の上をいったのではないかと。
近藤は戦いが終わった後冷静になったときその疑惑が頭をよぎり、背筋が凍ったほどだった。
「なぁ、としさん」
近藤は酔った目を土方に向けた。
「なんだい?」
土方はニコリを微笑んで近藤へ顔を向けた。
「いあ、新撰組がこんなに有名になったのは、トシのおかげだよ」
近藤はその疑惑をぶつけてみたかったが、辞めることにした。何故なら、結果的に新撰組は有名になったのだから。
「変な近藤さんだな。酔っ払いすぎたんじゃないのか?」
土方は大声で笑った。
「そ、そうかもな。よし、呑もう」
近藤は月に向かって盃を突き上げた。
後書き
今回は少々志向を変えてみました。
時代の軸に背いて私的な考えを載せてみました。
私はきちんと歴史を学んだ者ではなければ学者さんでもありません。
ただ、想像だけの考えなのです。
気を悪くする人もいれば全然貴方は的外れなことを書いていて不愉快だという方もいると思います。
ですが、こういう考えもあるのだなと思って読んでくれると幸いです。
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