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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦八日目(5)×三高対八高の試合と基本コードについて

昼食時に起きた事は言わずに、食事をしていた俺達と呼んだレオと幹比古と一緒に食べていた。ホントは俺らみたいな生徒は使ってはいけない所らしいけど、俺と深雪の事を知っている者達だからスタミナが付く料理をセレクトしてくれた蒼太達。そして肉料理を食べていたが、先程の騒動が気になったようなので一般用観客席にて移動した時に話した。

「一真、昼頃にホテルロビーにて何やら騒ぎ事があったそうなんだけど何か事件でもあったの?」

「まああったと言えばあったのかな、ホテルのロビーにいた人間に紛れ込んでいたドウターを見つけたんで駆除しただけの事だ」

「ドウターって、人間の姿をしているとは初耳だがホントか?一真」

「最近のはな、元人間で知恵を持った中級から上級の鬼というか化け物というか。四月のアレも元人間だったからな、でもどうやって人間からドウターになったかまでは分からず仕舞いなのさ。ドウターが出たら俺らが出なきゃいけないのに、このクソ忙しい時に出てくるのは俺だって参っちゃうぜ」

最近のドウターは知恵を持つのか、一見人間に見えても中身はドウターなので政府内にいたらあっという間に占拠されてしまうくらいだ。最近のは大亜からだから、どこから来たルートまでは調べたがそこからは見えて来ない。さっきエリカや摩利でも見えない剣劇をしたので、一瞬で終わらせたと言っていたエリカだったのでどんだけ俺が強いのか総合ステータスでもエラーを起こすぐらいだ。

「ドウターもいいが、第三高校の試合を見た方がいいぞ。三高の攻略のため何だから、ドウターは頭の片隅にでも置いとけ」

「一真の言う通りにした方がいいな、あちらがどういう攻撃をしてくるか」

「そうだね。今はドウターより新人戦優勝のために、モノリス・コードに出ているんだから」

そう言って試合が始まったのはいいが、三高対八高のステージは岩場となっている。試合開始からすぐだったが、明らかに三高の一方的な展開となりつつあった。一人旅団とも言われた俺みたいな戦い方をしている一条であったが、残り二人はモノリスの前で静観していた。カルスト地形を模した『岩場ステージ』は『平原ステージ』に次いで障害物が少ないステージとなっている。所々に遮蔽物となる大きな岩が突き出し、転がっているが高低差は無いに等しい。

岩と岩の間を三高陣地から悠然と歩いて進む一条は、堂々とその姿を晒して進軍していた。八高も黙って見ている程バカではないので、一条に向けて次々と魔法を繰り出している。岩陰を伝って三高陣地へ進んでいたオフェンス選手までもが、集中砲火に加わっていたが一条の歩は止まらない。移動魔法で投げつけられた岩や石は、より強力な移動魔法で撃ち落とされた。一条に直接仕掛けた加重魔法や振動魔法は、身体の周囲一メートルに張り巡らせていた領域干渉により無効化されていた。

「・・・・『干渉装甲』は、移動型領域干渉を使うのは十文字家のお家芸だったような気がする」

「要するに一条選手が使っているのは、私達で言えば無効化フィールドとでも言うのでしょうかお兄様」

「そうだな。領域干渉は一定のエリアを事象改変内容を定義せず、干渉力のみを持たせた魔法式で覆う事で、他者からの魔法による事象改変を防止する対抗魔法。俺らが使う魔法をMP10として今の領域干渉はMP20と考えれば、MP20以上の力を発揮すれば干渉装甲をしていたとしても、衝撃までは弾く事が出来ないと考えるべきか」

「一真様の仰る通りかと、にしても継続的に魔法を使いながら息切れしないのは、単に演算領域の容量が大きいだけではないという事のようですね。余程『息継ぎ』が上手いのであれば、センスしか言い様がございません」

蒼太が使った息継ぎとは同種魔法を連続使用する場合、一つの魔法が終了し次の魔法を発動するという切替の事を指す。前の魔法と次の魔法の重複時間が少ない程、魔法師に掛かる負担は小さい。重複時間が短い魔法師の事を『息継ぎが上手い』と形容する。

俺や深雪と言ったイレギュラーな魔法師は数少ないが、一条はそれに比べると蒼太と同じぐらい匹敵するセンスを持っている。途絶える事の無い強力な防御に、八高オフェンスは攻撃を止めて敵陣のモノリスへ向かおうとしていたが甘い考えだ。

「あーあー、一条を撃退するのを諦めてももう遅いっつうの。敵陣のモノリスを攻略する時間もないし、注意が前方に向いていると思ったら大間違いだ」

「そのようだね、一条選手は至近距離からの爆風で八高オフェンスを吹き飛んだようだけど、あれはどういう魔法なんだろう?」

「一目見ただけなら、あれは収束系『偏倚解放』だな。単純に圧縮解放を使えばいいものを、結構派手好きなんだな。一条は」

「へんいかいほう?何なんだその魔法は」

幹比古とレオが不思議がっていたので、俺は視線をフィールドから逸らさずに説明しようとした。

「分かりやすく言うなら、空気を圧縮し破裂させ爆風を一方向に当てる魔法。威力を高めるならば空気の量を増やし爆発を大きく方が良く、方向を限定するなら圧縮空気を直接当てた方が効率がいいとされている魔法だ。詳細を省くとそうなるが、どうやら幹比古やレオももう少し詳細を言わなければいけない様子だな。だが残念な事に俺は現代魔法に詳しくないから、蒼太頼む」

俺は現代魔法を使わないので、簡単な説明なら出来るが詳細は俺でも分からないので現代魔法を使う蒼太にバトンタッチしてもらった。

「了解しました一真様。手間の割に効果があまり無いマイナーな魔法でして、円筒の一方から空気を詰め込んで蓋をしてもう一方を目標に向けて蓋を外す、というイメージだと思って下さい。解放された面から高圧空気が噴出すると、普通に圧縮空気を破裂させるより威力を出せるのと爆発に指向性を与える事が出来るというメリットです。威力を高める為だけなら、普通の空気圧縮で圧縮する空気の量を増やる事や攻撃に指向性を持たせないのなら圧縮空気を直接ぶつけた方が良いと思われます。殺傷性ランクを下げる為に、あえてどっちつかずの術式を使っているのかは分かりませんが、力があり過ぎるというのは一言だと一苦労かと」

俺はご苦労と言ってから、それに関しては俺も同じ事は言えないが。蒼太が薀蓄混ざりの説明をしている間、八高陣地に近付いている一条。このままではジリ損だと思ったのか、ディフェンスと残っていた選手が二人掛かりで一条に挑んでいた。岩が砕かれて、その欠片が一条へ襲い掛かるが足元からは放出系魔法による鉱物からの電子強制放出をするかのような火花だった。前者は規模で後者は改変難度ではあるが、いずれも上級と言えるくらいの魔法であった。

「フム・・・・どうやら八高選手らは弱かっただけではなさそうだ、俺らがすぐに勝利出来たのはここでは言えんがな。例え正面から魔法でのぶつかりだったとしても、防ぐ策はあるからな」

「俺や一真が使うようにすれば、どんな魔法でも鋼の防御力があるからか一真?」

「まあな。お、一条は二人掛かりの魔法を真正面であっさりと無効化されたな。石飛礫の散弾は一条を中心とした球状に展開された運動ベクトルを逆転の力場にてはね返したな。放電は不発で終わってから空気弾か」

試合終了と共に会場が鳴る事で、吉祥寺ももう一人の選手も試合開始から終了まで動かなかった事に対して違和感を覚えた。その違和感を覚えたのは、俺以外にもいた様子で見ていた真由美と会頭らだった。

「予想以上ね、一条の『プリンス』は・・・・」

ディスプレイから視線を外して、真由美は会頭に話し掛けた。いつもの相方である摩利の姿はないが、今邪魔すると馬に蹴られる類の取り込み中でまさか偽物の彼氏がいたので本物の彼氏は男子トイレにて、眠らされていたからだ。摩利は本来ベッドで安静ではあるけど、俺が毎日の朝に診察をするので大丈夫だが他の幹部までもが固い事を言う事はしない様にとの事。

「何だか、十文字君のスタイルに似ていた気がするんだけど」

自分のスタイルに似ている、と言われても会頭としては答えにくい事だろう。会頭が返事する前に鈴音が会話に加わる。

「恐らく、意識しての事でしょう。一条家の戦闘スタイルは本来、中距離からの先制飽和砲撃だったはずです。現に予選リーグでは遠方からの先制攻撃でディフェンスを無力化していますから、根拠はありませんがこれは一条選手の挑発かと思います」

「挑発?」

「俺のスタイルを意識しているのかどうかは分からんが、これは織斑に対する挑発と取ってもいいくらいだ。正面から撃ち合ってみろという事だが、一条はミスをした事でこちらの勝利に揺らぎはない事が確定した」

「気持ちは分かるけど、それとどう一真君が関係するのかしら?」

随分と子供っぽい事だったが、それとどう関係するかは織斑の戦闘面についてを知れば分かる事だった。ここにいる真由美と会頭だけは、織斑一真の本当の力という事を知っている。本来の容姿と年齢に、本来の力がどのくらい凄いかは実際対ドウター戦でしていた面。

一真の武器は何も機動力と洞察力だけじゃない、魔法力と戦闘技能の二つのエキスパートだと言う事を。そして正面から撃ち合ってみろという挑発にとって、一真にしてみたらその挑発を受けて逆に撃ち合ってやるぜと言うだろう。

「織斑の力は、これまで見せてきた以上の力を持っている事を知っている俺と七草にとってみればの事だ。相手はミスした事を思っていないから、織斑の力を甘くみないで貰いたい所だ」

「そうよね。今まで見せてきたのは、全てハンデがあったからあそこまで力を抑えてきたから。それを外すとどうなるかは流石の私でも分からないわ」

一高の限定された幹部二人がそう言った本当の理由については話さないでいたが、精々一条は逆鱗に触れないように願ったのだった。一方俺はというと、正直言って舐めていると感じ取った。本来の力は二試合ともセーブしてきたからであって、本来の力を使うとなると気絶以上となってしまう。

第三高校というより、吉祥寺の狙いがあえて隙を見せる事で俺を真っ向勝負へ誘っているという事をね。だがそれは最悪のシナリオであって、俺は忍びではなく半分戦闘狂だ。少し解放するとどうなるかは、実際使わないと分からない。

「あの挑発から見て、きっとアイツらは一真を真っ向勝負へ誘ってるね」

「にしても、あの防御力を攻略しないとなー・・・・という考えは一真の頭にはないんだろうぜ」

「当たり前だ。俺の性分は戦闘狂であり、真っ向勝負の砲撃戦がしたいのなら俺も砲撃戦でもするか。一条もだが吉祥寺選手の方も何を使うかは何となく分かるが、俺が名無しの時に使ったであろう『不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)』を使ってくるだろう。もう一人は分からんが、雑魚だと考えればいい事だ。なので警戒しとくのは『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』である二人だけだな」

吉祥寺真紅郎が発見した『基本コード』は加重系統プラスコードだから、この二人に説明する事もない。既に知っていた事だったので、説明する気はないが何か説明しなければならないと思った。魔法式の研究分野には『基本コード仮説』と呼ばれている理論がある。

『それなりに広く支持されている仮説だが「加速」「加重」「移動」「振動」「収束」「発散」「吸収」「放出」の四系統八種にそれぞれ対応したプラスとマイナス、合計十六種類の基本となる魔法式が存在していて、この十六種類を組み合わせる事で全ての系統魔法を構築する事が出来るという理論だ。基本となる魔法式が「基本コード」だが結論からだと全ての系統魔法を構築出来るという点でこの仮説は間違えでありその間違いが「基本コード」は実在する』

『早くも混乱する所もありますが、四系統魔法にはどう組み合わせをしたとしても十六種類の「基本コード」だけでは構築出来ない魔法があるという事ですな』

『烈や響子らも聞いているという事は、これは全員聞いた方がいいのか?ま、それは良いとして基本コード仮説は誤りであり、基本と呼ばれるだけの特徴を持つ魔法式は存在する。現代魔法は、魔法式に改変後の事象状態を定義する事で様々な作用力を発生させる。改変を生じさせる為の作用力も魔法式の中に定義されているが、それは何だと思う?蒼太』

『魔法が作用した結果を定義する事無しに発生しないです。基本コードは、作用力そのものを直接発生させる事が出来る。基本コードは「加速」「加重」「移動」「振動」「収束」「発散」「吸収」「放出」の作用力そのものを定義した魔法式。個体のエイドス全体に働きかけるのではなく、個体上の一点に直接力を及ぼすという魔法が可能になります』

『そして現在発見されている基本コードは、加重系統プラスコードの一つだけなのは織斑少将がそうさせたのでは?まあ私共も知ってはいますが、知らない者にとってはいい勉強会となりますな。発見したのが第三高校の吉祥寺真紅郎でありまたの名を「カーディナル・ジョージ」ですな』

『玄信の言う通りとなったので、これで勉強会は終了だ』

との事だったが、説明が長くなったが警戒するのは一条と吉祥寺の二人だけだという事を理解している二人である。基本コードは確かに厄介な代物であるが、俺らの脅威ではない事だけは明確である。基本コードを使用した魔法は、作用力そのものを定義するが故に、一般魔法に不可欠な事象改変結果を定義する必要性はない。

例えば破城槌と不可視の弾丸だと、同じ効果がある術式ではあるが、破城槌は圧力をかける面全体の状態を加重点に圧力が掛かった状態丸ごと改変する必要があるが、不可視の弾丸だと圧力を掛ける面は、壁面やら床面か人体の表面でも何でもいい状態を書き換える必要がないが、圧力全体を書き加える魔法だ。

対象物の情報を丸ごと書き換えるのに対して必要とされるのが、情報の記述=魔法式はずっと小さくすれば済むし対象物そのものの情報改変するものではない。対象となった事象の情報改変を妨げる『情報強化』では防御出来ない点がある。小さな魔法式で、事情改変対象情報の強度に影響されずに魔法発動できるという事は大きなアドバンテージとも言える。

「幸いというか、『不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)』には作用点を視認しなければならないという欠点があるので、俺達はそれを利用する事で攻撃を受けない事が出来る。シールドビットメモリかメタルメモリの力が作用されれば、いくら魔法が得意な者でもそれを受け続ける事が出来るのは俺らぐらいだろう」

「要するに常にメタルメモリによって、防御姿勢を取ればいいんだな」

「レオの言う通りだけど、僕にはそういう防御方法は無いに等しいんだけど?」

「幹比古には後々教えるんで、今は九高との試合に集中しようか。そろそろステージが決まる頃だし、準備も必要だ」

俺らは立ち上がり、本部へ行く事となった俺達だったが、本当の力を発揮するのは第三高校戦まで取っとく事にした俺だった。それに俺の性格を知っている者にとっては、あの挑発を逆に燃えてしまった一真をどう止めるかだった。元部下だった響子や烈でさえ、俺が正面から撃ち合ってみろという挑発が大きな敗戦になる糸口となってしまったという事はまだ気付いていない第三高校のメンツ達。 
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